①クマに出会ったらどうすれば良いのか

<人身事故はなぜ起きるか>

ツキノワグマに人を襲う習性はありません。身体は大きいのですが、大変臆病な動物で、人を恐れています。山中では昼行性ですが、人家近くでは人を恐れて、夜間や早朝などに動きます。うっかり人間に出会ってしまうと、恐怖のあまり、人間を前足ではたいて、そのスキに逃げようとします。これがクマによる人身事故です。また、タケノコなどの山菜をクマが食べているときに人が近づくと自分のエサを取られまいと人を傷つけることがあります。

<人身事故を防ぐには>

◎まず一番大事なことはクマの目撃が多い場所には行かないこと。知らずに入ったとしても、クマのフンや足跡、獣の匂いを感じたらすぐに引き返すことが大事です。クマは大変臆病ないきものなので会わないようにしてあげることが一番大事です。

◎大声や笛・鈴などで、クマに人間の存在を早めに伝えること。そうすれば、クマは自分から、そっと立ち去ります。ホイッスルは軽く、音も遠方まで届くのでクマとの遭遇を回避できます。音が出っぱなしのラジオ等は、自分がクマの存在に気づきずらいのであまりよくありません。

◎うっかり出会ってしまった時は、クマをこわがらせないように、クマに優しいことばをかけながら、少しずつあとずさりして離れてやってください。怒ったり棒や石を投げたりすると、クマは人間にやられると思って、走り寄ってきて、人間をはたいて逃げることがあります。

◎クマを放獣するとき、お仕置きと称して、トウガラシスプレーを吹き付けたり、花火や棒で脅すと、クマは人間に対して必要以上の恐怖感を持つようになり、次に出会った人間に対して、パニックを起こし、人から逃げたい一心で、人身事故を起こすのではないかと予測されます。→誤捕獲グマの放獣にあたっては、何もせずにそっと逃がしてやるのがいいと思われます。


②クマの被害防除

 ツキノワグマを集落の近くで目撃したとき、いきなり捕獲罠を設置するのではなく、まずは防除をすることが大切です。

・クマの誘引物の除去

・クマが隠れられる草むらの刈り払い

・電気柵の設置

電気柵を使った防除法(岩手大学名誉教授の青井俊樹先生にお聞きしました)

ツキノワグマが何か農作物を目的に集落に現れた時になかなか農作物を除去することはできません。そこで農作物を囲う電気柵がとても有効です。電気柵は市販の規格にあったものを必ず使ってください。電圧はバッテリー容量と電気柵の長さによって決まりますが5000ボルトを維持できるようにしてください。そして電気柵は地面から15cm、35cm、55cmの位置に設置するとほぼ完璧にクマの侵入を防げます。地面から15cmの高さは草が伸びてくるとアースになるので刈り払いをしっかりしてください。この15cmが高すぎるとクマは穴を掘って電気柵の下から入ってきます。

③クマはなぜ出てくるのか

北海道羆研究会(代表:門崎允昭先生・日本熊森協会顧問)会報第14号より

原因は4大別されます。

<集落に誘引物があるとき>

作物(農作物・牧草)・果樹(果実)・家畜・生ゴミ等を探すためにクマが人里に現れることがあります。この種のクマは年齢・性別・母子・兄弟(母から自立した後、兄弟姉妹で短期行動することがある)に無関係で集落に現れます。

<住宅地を通過するため>

樹林地を徘徊していて、樹林地そばの道路や住宅地付近を通過するため、又は樹林地から樹林地に移動する過程でその間の道路や宅地を横断通過するために出て来ることがあります。この種のクマも年齢・性別・母子・兄弟に無関係です。但し、母グマから自立した若グマは知恵が未発達で人と遭遇する様な時間帯に出て来る事がありますが、それ以外のクマは本能的に人を避けて行動する特性が強く、人と会いにくい時間帯に通過します。

<好奇心を満たすため>

母グマから自立した若グマが自分の生活圏を確立すべく森林地帯を探索徘徊していて、林地の端に来てしまい、そこに人家や農地や果樹園があるのを見て、好奇心を起し、その好奇心を満たすために(それを確認すべく)学習に出て来ることがあります。札幌市で2011年に円山等に、そして2012年に藻岩・川沿・真駒内などに夜出て来たクマがこれに該当します。

<その他の原因>

・稀ですが、発情期の5月6月に発情したオスを避けてメスが逃げ出て来る事があります。

・更にこれも稀ではありますが、母子で林地を徘徊中に市街地に近づいてしまい、子グマが興奮して市街地に出てしまい、心配した母グマも子グマについて共に出て来てしまうことがあります。

④子グマを見つけたときに、どうすればいいのか

<山で子グマを見つけても触れないでください>

山で子グマに出会ったら、必ず近くに母グマがいます。

勇敢な母グマは、子供を守ろうとして人間にとびかかってきます。子に対する母の愛は人間以上です。すぐにその場を静かに立ち去って下さい。

臆病な母グマの場合、人間が立ち去るのを物陰に隠れて待っています。子グマを見守っていたが、母グマがいつまで待っても現れなかったからとして、子グマを保護したと持ち帰る人がいます。(鳥獣保護法違反)これは保護ではなく誘拐にあたります。母グマが子グマを見捨てることはありませんので、心配せずに子グマにふれずにそっと帰ってきましょう。

母グマが子グマを置いて餌探しに行っている場合もありますが、かならず母グマは子供のところに帰ってきます。心配は不要です。

クマの飼育を安易に考えないこと・・・子グマにとって、大自然の中で母グマに育ててもらうほど健康で幸せなことはありません。クマは犬よりもずっと寿命が長く、最高齢で37歳まで生きたのもいます。クマを飼うということは、一人の飼育者の人生を使い切ることになるほど大変なことです。あえて子グマを飼うことは考えないでください。