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<冬の京都奥山調査> これこそ餌付け、野生動物たちを山から次々とおびき出している

1月27日、雪が積もる京都の奥山を調査しました。林道に入ると、道沿いの雪上にベージュ色の粉がまかれていました。

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米ぬかでした。見渡すと、道路沿いに何カ所かまかれています。地元の人に聞くと、こうやって山奥から動物たちをおびき出すのだそうです。イノシシなら、1頭仕留めたら、30万円で売れるということでした。こうやって1年中、山奥から動物たちをおびき出しておいて、動物が山から出て来たからけしからんと、動物を敵視する。人間の道徳観として、疑問でした。

 

よく見ると、そばにイノシシの足跡が少しありました。さっそく、米ぬかにつられて出てきてしまったのでしょう。

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イノシシノの足跡は、シカと違って、ひずめだけではなく、かかとの部分にもへこみができます。木の枝で示しているのがかかとのへこみです。

 

ヌカは、イノシシをおびき寄せるためにまいたのでしょう。水に少し濡れて酵母菌により発酵すると、アルコール臭を発するようになります。こうなると、クマをはじめ、いろんな動物がやってくるようになるそうです。昆虫も集まってきます。森の動物たちは甘い樹液等の好物を探す時、糖分が発酵して醸し出すアルコール分を手掛かりにしているということです。

ヌカ以外にも、箱罠、囲いわななど、人里には果物、野菜、ヌカ、ハチミツなど、中においしい物が入った罠がいっぱい仕掛けられています。このような行為こそまさに餌付けですが、国が咎めないのは不思議です。最近、動物が山から出て来るようになった原因はいくつかありますが、一つはこの餌付けでしょう。

 

積雪は40センチぐらいでしたが、雪道は歩くのがなかなか大変でした。長靴に入ってきた雪が、中で溶けて、足が濡れてしまい、もう冷たくてたまりません。こんな中、冬籠りしないシカやイノシシは、エサを探して歩くのかと思うと同情します。雪道に全くシカの足跡がないのは、シカはこの時期、川の中を歩くからです。

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京都府の人工林率は37%ですが、このあたりはスギの人工林が多い所です。人工林にする前は、ウラジロガシなどの実のなる木がいっぱいあったそうです。戦後の開発と人工造林で野生動物たちの奥山生息地を人間がどれだけ広範囲に壊滅的に壊したのか、私たち人間は忘れてはなりません。自分たちのしたことに責任を感じる人間でありたいです。

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延々と続く人工林

 

下の写真の左側斜面は、長年観察してきた人工林の皆伐跡地です。冬は葉っぱを落としていますが、何もなかった斜面に、シカが食べないタラノキがかなり大きく育っていました。自然はどんどんと遷移していきますから、そのうち先駆種のタラノキは消えて、次の木が生えてくることでしょう。いつそうなるか。すべて自然が決めることです。

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冬でないと学べないいろいろなことを、この日学びました。

寒かったけれど、とても気持ちの良い楽しい調査でした。人間は本来、自然と接することによって、心身の健全を保てるように作られているとつくづく思いました。寒いですが、みなさんも、冬の自然の中に出かけてみませんか。

 

<JA京都のことを追記>

移動中の車の中で、JA京都から電話が入りました。先日京都新聞で、JA京都が職員をハンターに養成して、野生鳥獣の捕殺を推進するという記事が出ていました。どういう被害状況なのか教えてもらいに行って、野生動物を殺すだけでは農業被害は解決しないという私たちの話も聞いてもらおうと思い、アポを取っていました。

しかし、担当者は突然アポを取り消して、熊森とは絶対に会わないと言い始めました。会って意気投合出来ないかもしれませんが、対話によって、双方学ぶものがあるはずです。懇談を楽しみにしていたので、本当に残念でした。

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