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なぜ「植えない森造り」でなければならないのか 平野虎丸顧問のブログより

「植えない森造り」でなければならない訳を、代々林業家の家で育たれた熊森の平野顧問が誰にでもわかるように、ブログに上手にまとめておられるので、以下にご紹介させていただきます

 

2018年09月21日

植えない森は、過程が大事

 

平野虎丸です。ご訪問ありがとうございます。
森は、植えないでも森になるので「植えない森」を皆さんにお奨めしていますが、植えたほうが早く森になるのではないか、とよく言われます。
しかし、植えない森は、森になるまでの過程がすばらしく、大事なのです。
森、と言えば、皆さんは樹が生い茂っているところ、と思われているかもしれませんが、森にも人間と同じように、種の時代から赤ちゃん、幼児、青少年時代などいろいろな時代を経て大人の森になっていきます。
まず、木が伐採されたあと、

 

●その地域の野草やイチゴなどトゲ類の先駆植物が発芽する。
●野草にチョウやハチなど昆虫がやってくる。
●ウサギやシカなど草食動物がやってくる。
●昆虫の幼虫や成虫を餌とする野鳥がやってくる。
●野鳥を餌とするタカやフクロウなど大型の野鳥がやってくる。
●木イチゴなど先駆植物に赤や黄色の実がなる。
●埋土していた森を構成する木の種が発芽して、成長を始める。
●周辺にある木の種や野草の種が飛んでくる。
●野鳥が種を撒き、木の種類を増やす。
●野草や木々、野鳥の種類が増えていく。
●先駆植物の棘類が成長して最終的に森を構成する木々をシカの食害から守り、森が本格的に成長を始める。
●森の成長と共に、茅を始め草原植物が姿を消し始め、先駆植物も枯れて森を構成する木々の肥料となっていく。
●森を構成する木々、というのが、皆さんが植えたいと思われている樹木です。
サクラ、クヌギ、ケヤキ、モミジなどです。
●森の初めに生えてくる先駆植物や草原植物は最終的な森の構成員ではありませんが、自然界に必要な植物や生物です。
●原生林では、野草も虫も野鳥も少なく、餌が少ないのでシカもあまり増えません。
●原生林を伐採することは悪いことばかりではありませんが、すべてなくしてしまうと、そこにひっそりと生きていた「ホイホイさん」のような生き物たちが絶滅します。
●そういう意味で、原生林は無くしてしまえば戻ることはありませんが、原生林の成り立ちが「植えない森」です。
●植えない森ができる過程において、たくさんの生き物たちが関わっていることが大切なので、森づくりを急がないで欲しいと思っているのです。

 

林業のように、木を伐採後すぐに整地をして(農薬などを撒くこともあります)、苗を植え、苗の成長と共に邪魔になる野草や先駆植物を刈っていくならば、野草も昆虫も野鳥も棲む暇がありません。

これが野草や昆虫が絶滅する所以です。

「漁民の森」や「企業の森」づくりは広葉樹を植えていますが、数種類の木材になる木だけを植栽するので、棘類など先駆植物も野草もなくなり、限られた草や虫だけが生き延びることになります。

自然界は人間が計り知れない植物や昆虫が生息しているので、植林しての森づくりは本来あり得ないものであり、行政と共に植林活動をされている皆さんは、木材生産をしているだけです。

 

森は多種多様な植物や生物を生み出しているものであり、シカが悪い、イノシシが悪い、というのは森づくりではありません。
イノシシは野草をひっくり返したりしますが、土を掘り返しているので、よいこともあります。
シカやイノシシが森を守っています。

 

「植えない森づくり」に人間の手は不要です。
人間が生まれる前から森はありました。
人間は森が完成した後に生まれてきたのです。
山に人間が木を植えて手入を続けることこそ森を破壊する行為です。
「日本一花の森」では、森になると消失していく希少な大陸遺存系草原植物を守るために年中草刈などの手入をしています。道づくりも草原植物を守るために必要です。
草刈りをしないと「すぐ森になる」。
それが植えない森です。

 

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