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国有林野管理経営法改正案、6月4日の農林水産員会での質疑

企業に長期に亘る大規模な国有林を伐採する「樹木採取権」を与えることを可能とする国有林経営管理法改正案について、熊森協会は、伐採した後は天然林に戻すまたは、針広混交林にしてほしいと訴えていました。

最後の審議となった6月4日も、各委員から質疑も白熱した内容でした。

 

小川勝也議員(北海道)

長年地元林業者の生活向上を応援してこられた小川議員としては、この法案で大手企業が国有林内人工林の伐採権をとってしまい、地元が潤わないのではないかと心配されています。国は、地元の中小の企業に伐採権を与えることを考えているという答弁でした。

また、樹木伐採権を取得した企業が、伐採だけして、再造林せずに山を放置して荒らしてしまうのではないかということも心配されており、伐採・再造林に関して、徹底した情報公開、国民参加、意見募集を国に求められました。

 

森ゆうこ議員(新潟県)

日本が、ドイツのような森林産業大国になることを望んでおられる森議員としては、責任感のあるきちんとした企業が樹木伐採権を取得するのかどうか、もし、きちんとした企業が取得したとしても、そのうち樹木伐採権が外資などの怪しげな企業に買収されて誤伐や盗伐が横行しないか心配されており、監督庁としての林野庁のマンパワーの不足をなんとかすべきと訴えられていました。国は、ドローンなどを使ってしっかり監督すると答弁していました。

 

儀間光男議員(沖縄県)

儀間議員は、戦後、国が造った針葉樹の単相育成林1000万ヘクタールの多くが放置され、大荒廃。野生動物たちが生きられなくなって山から出て来ざるを得なくなったことに、ずっと胸を痛めておられました。生態系が維持できる山に戻すべきだ。そのためにはスギ・ヒノキの林業ばかりではなく、広葉樹を植えて広葉樹も利用する多様な林業を構築していってほしいと訴えられました。(人間だけのことではなく、他生物のことまで考えておられる儀間議員の質問は、まるで熊森です)牧元林野庁長官は、1000万ヘクタール造った単相育成林のうち660万ヘクタールは今後もスギ・ヒノキを植えるが、350万ヘクタールは奥山や急傾斜地にあるので、広葉樹林又は針広混交林に戻しますと答弁されました。(林野庁が、26年遅れて、やっと熊森に追い付いてきた!高く評価します。)

 

紙智子議員(北海道)

紙議員も、地元の林業者たちの生活を心配されてきた方です。今回の法改正による樹木伐採権は、水道などのコンセッションと同じで、一部の大企業に国有林の材を売り渡すものではないか。短伐期皆伐の林業は、持続可能な林業にはならないのではないか。一般産業者の年間所得平均は年間400万円だが、林業従事者の年間所得平均はいまだに日給であり、300万円。今回の法改正は国産材の生産量を増やすためというが、林業従事者の所得を増やすための法改正はしないのかと訴えられました。国は、今回の法改正は、川上や川中の事業者のアンケートに基づいて造ったものだと答弁されました。

 

毎日新聞<5月30日の審議より>

改正案は伐採業者に与える「樹木採取権」の期間を「50年以内」とだけ明記。農水省が「10年を基本に運用する」と答弁するなど、法案成立後の運用に委ねられる項目が多い。牧元幸司林野庁長官は30日の参院農水委で、成立後に運用のガイドライン(指針)を策定する方針を示し、「政省令やガイドラインはパブリックコメント(国民の意見公募)を実施する。恣意(しい)的な運用にはならない」と釈明した。国民民主党の徳永エリ氏への答弁。

一連の林業改革は、成長戦略を議論する政府の未来投資会議(議長・安倍晋三首相)が提案。農水省は今回の制度設計にあたり、伐採・加工業者から意見を募るにとどめていた。野党側には「防災や水源保全など国有林に期待する国民の声を反映していない」との批判があり、同省は成立後のパブリックコメントで万全を期すと強調。法案成立に理解を求めた形だ。

また高野光二郎農水政務官は30日の農水委で、伐採業者との契約に伐採後の再造林について盛り込むことに加え、業者が樹木採取権の公募に応じる際に「再造林を行う意思」を書面で提出させると答弁した。牧元長官は「国が責任を持って100%再造林を行う」と繰り返した。

【田中裕之】

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