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宮城県加美町荒沢湿原 関西や関東が失った森

奥羽山脈の宮城県と山形県の県境に標高1500mの船形山があります。昔は標高500mぐらいまでには人の手が入っており、クリやナラの森でした。それより上は1400mぐらいまでがブナの巨木の原生林だったそうです。

 

船形山は大部分が国有林です。1965年(昭和40年)頃から林野庁が戦後の拡大造林政策によって、山奥まで林道を張り巡らせて約3分の2のブナ林を皆伐し、跡地に林業用としてスギやカラマツを植えたということです。

しかし、苗木は育たず、放置され、多くがササ原になってしまいました。21世紀に入る頃にやっとブナの伐採が止まりました。

 

この船形山の中腹に、700ヘクタールに及ぶ荒沢湿原があり、ミズバショウの群生地として有名です。ちょうどこの季節、クマたちがミズバショウの花を食べに来るということで、宮城県加美町で5月22日に開催される再エネ問題大集会の出席を兼ねて、前日の5月21日、熊森協会会員向け荒沢湿原ツアーを組みました。

 

案内してくださったのは、役場の方と、宮城県でクマを研究されている大槻雅彦先生です。 ここは全国でも有数の巨大地すべり地で、3~ 4万年前の氷河期後半から地すべりが始まり、それによって複雑で変化に富んだ地形、地質、水系が生じ、多数の池沼と湿地が形成されたそうです。

 

広大なこの地区には 530 種を超える植物、動物相のなかでもトンボ類は 50種以上確認され、宮城県内随一の生息地と言われています。さらに、鳥類も 85種確認されるなど、豊かな森が多種多様な生命を育んでいます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あちこちに池や湿原

 

 

ミズバショウは、花の時期が終わっており、緑の実がなっていました。クマの中には、この実を食べに来るのがいるそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミズバショウの実

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参加者と記念撮影

 

荒沢湿原のまわりの森は下層植生が豊かな天然林で、この上もない美しさでした。関東や関西から参加した会員たちは、見とれてしまいました。関東や関西が失ってしまった森です。少なくとも私は今までこんな森を見たことがありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この森の全てがクマの餌ですと大槻先生

 

関東や関西では人工林の中は茶色一色ですが、驚いたことに、宮城県ではスギの人工林に下草が生えていました。スギにクマ剥ぎの跡はありませんでした。

スギの人工林内にも下草が!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東北の森が羨ましいです。

 

大槻先生がツキノワグマの事をいろいろ教えてくださいました。荒沢湿原周辺では、ホオノキが一番クマ剥ぎの対象になるそうです。

ホオノキのクマ剥ぎについて説明中の大槻先生

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クマは流水を渡りたがらないが、閉鎖的水域では泳いで対岸へ渡るそうです。私たちが訪れた日の朝にも池を泳ぐクマが目撃されたとのことでした。クマは木に登るとき、樹皮を垂直に歩くかのようにすいすい登るが、降りるときは不器用に滑り降りていくそうです。想像しただけで、クマをとても愛らしく思いました。

 

クマたち多種多様な生き物が暮らせる豊かな森や湿原を、20年間のFIT認定期間中使用するだけのメガソーラーや風車で破壊せず、自然のままいつまでも残していきたいと強く思いました。

 

船形山に残されているというブナの原生林というものを一度見てみたいものだと思って訪れましたが、そこに行くには数時間歩かなければならないということで、残念ながら今回は無理でした。でもいつか行ってみたいです。

 

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