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兵庫県クマ狩猟枠140頭の計算が、完全破たん  なのに狩猟再開?!

10月11日の兵庫県井戸知事記者会見の後、熊森は知事と兵庫県担当部署に、以下のような公開質問状を出していました。

 

以下の2つの質問にお答えください。

①坂田宏志氏のツキノワグマの個体群動態の推定(兵庫県2015 年)によると、

2015年の個体数は、人為的死亡個体数を引く前の段階で中央値940.0(90%信頼限界では691.1~1,212頭)、2015年末の段階で中央値919.0頭(90%信頼限界で670.1~1,191頭)で、2014年から個体数が増加していると推定された。と書かれています。

ならば、2015年の有害捕獲後のクマ数は919頭ですから、2016年の事業としては119人しか狩猟者を募集できないはずです。

 

②さらに、兵庫県は環境省の安定生息数800頭に、こだわっているようですが、環境省は、成獣が800頭いれば安定としています。これに従うと、919頭の推定数のうち、幼獣数を引き去らねばなりません。兵庫県の主張通りいくなら、残りの成獣数から800頭を引いた数が、狩猟すべき数とならねばなりません。狩猟者募集はゼロ人になるはずです。

 

しかし、いつまで待っても、お返事は来ませんでした。県庁担当者に直接問い合わせると、何と、

 

答え①:2016年度当初のクマ推定数を940頭とすることにした。

答え②:環境省は成獣800頭としているが、兵庫県は独自に成獣+幼獣=800頭を安定個体群とした。

よって、問題ないという答えでした。

 

(熊森から)

もはや、狩猟枠140頭は完全破たんしていることが証明されました。

 

2015年末が919頭なら、2016年度の事業としては、当然、2016年当初の919頭を使用すべきです。ミスであったと思われます。答えは全くこじつけで、説明になっていません。

 

兵庫県はこれまで環境省規定を前面に持ち出して、140頭の狩猟枠を決めたと言ってきたのに、ミスを指摘されると、突然、兵庫独自に策定したなどとごまかす。第一、兵庫県が、環境省のガイドラインを守らないのであれば、その理由を示さねばならない。理由もなく守らないのなら、環境省を侮辱し、環境省の存在を否定したことになります。

 

 

熊森の公開質問状にはお返事がきませんでしたが、日本福祉大学山上

俊彦先生が出された質問には、兵庫県から回答が来たそうです。どのよ

うに質問され、どのような答えが来たのか、見せていただきました。

以下、山上先生質問状

兵庫県知事は10月11日の記者会見にて「平成28年度ツキノワグマ狩猟
禁止の制限的な解除」を発表されています。しかし、その内容には以
下のような事実誤認があるため兵庫県は狩猟を行う条件を満たしてい
ないと考えられます。従って狩猟解禁は撤回されるのが妥当と考えま
す。

1.推定生息数が絶滅する恐れが当面ないレベル(800頭)を上回る
940頭まで回復してきたとした点
兵庫県は環境省の「特定鳥獣保護管理計画作成のためのガイドライン
(クマ類編)」に準拠して保護計画を作成したものと考えられます。
https://www.env.go.jp/nature/choju/plan/plan3-2c/
このうち、特別編(後編)
https://www.env.go.jp/nature/choju/plan/plan3-2c/chpt2b.pdf
において、個体群水準が定義されています。p.58です。ここで個体数
は成獣数と定義されています。成獣の定義ですが、特別編(前篇)
https://www.env.go.jp/nature/choju/plan/plan3-2c/chpt2a.pdf
において定義されています。p.38です。ここでは野崎氏の定義を用い
て、4歳以下を幼獣・亜成獣、長野県の定義を用いて4 歳以上が繁殖齢
個体としています。
兵庫県には東中国地域個体群と近畿北部地域個体群が存在し、円山川
で分断されています。環境省の基準は「個体群」かつ「成獣」の個体
数を判断基準としているので、兵庫県全体の頭数を基準に補殺や狩猟
の意思決定を行うことはそもそも出来ません。940頭は個体群の頭数
ではなく、異なる個体群の一部の数を足したものであり、幼獣も含ん
でいます。

2.承認者数は1人1頭で、140頭までで140人に許可するとした点
兵庫県のツキノワグマ生息数は森林動物センターの「ツキノワグマの
個体群動態の推定(兵庫県2015年)」に拠っています。
http://www.wmi-hyogo.jp/upload/database/DA00000481.pdf
2015年の生息数940頭は有害補殺前の頭数です。(p.15)有害駆除等を
控除すると生息後は919頭です。(p.16)
919頭では狩猟の上限は119頭です。
次に、幼獣の数です。鳥獣対策課長は農政環境常任委員会にて兵庫県
のクマは妊娠率が高いので年平均20%増加すると回答されていると聞
きました。
兵庫県公表数値では、個体数は、
2011年477頭
2012年571頭
2013年688頭、
2014年813頭、
2015年940頭ですから、
幼獣数は少なくとも、
940-813=127頭、生存率が0.933(p.14)とされているので、このうち
生存しているのが
127×0.933=118頭で1歳
813-688=125頭のうち生存しているのは
125×0.933×0.933=108頭が2歳
919から控除すると
919-108-118=693頭となります。
亜成獣は
571-477=94頭で、
94×0.933×0.933×0.933×0.933=71頭が4歳、
688-571=117頭で
117×0.933×0.933×0.933=95頭が3歳です。
つまり、幼獣と亜成獣を控除すると成獣は多くて、
940-71-95-108-118=548頭となります。
成獣数は環境省の基準を下回ります。
以上から兵庫県は個体群の生息数ではない数を見て800頭を超えてい
るとし、その数には幼獣も含まれていることから生息数が安定的に推
移するための環境省の基準を満たしていない。このことから、ツキノ
ワグマの狩猟を解禁することはできません。また、生息数から駆除さ
れた個体数を控除せずに狩猟許可人数を算出していることは県民、国
民に対して間違った報告をしたことになります。


{兵庫県庁からの回答}
 本県の「ツキノワグマ保護計画」は、環境省のガイドラインに準拠
したものではなく、ガイドラインを参考に本県独自に策定したもので、
狩猟禁止を解除するレベルの800頭は成獣・幼獣の区分がない生息数
そのものとしています。
 また、捕獲上限の140頭については、県環境審議会委員の「捕獲数
の制限設定を設けるべき」との意見を踏まえ、800頭を下回らないよ
う、平成27年度当初の推定生息数940頭を基準に設定しています。
 
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