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2月12日 同じ兵庫の山、同じ兵庫のクマを見ているのに、どうしてここまで出した結論が正反対なのか   ―― 日本熊森協会と兵庫県森林動物研究センターとの第1回意見交換会 ――

都道府県の野生動物問題について、電話でたずねたり何かをお願いしたりしようと思ったら、たいてい、そこの都道府県庁に電話をして、担当部署につないでもらいます。クマを駆除したり、奥山に放獣しなければならないなどの実際的な業務が生じたら、行政から委託されたハンターや委託業者が現地に飛んでいきます。兵庫県も、以前はそうでした。

 

し かし、兵庫県では、2007年から、県庁から遠く離れた旧青垣町(人工林率81%)に建設された、兵庫県立「兵庫県森林動物研究センター」が、その業務を担 当することになりました。「兵庫県森林動物研究センター」では、研究員として兵庫県立大学の先生たち数名が研究にあたられ、現地に飛び出していく専門員としては訓練を受けた兵庫県庁職員数名があたられて、オール公務員で、兵庫県の野生動物問題に対処するという新体制ができあがったのです。

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ところが、困った問題が生じてきました。当協会も、、徹底した現場第一主義で山を歩き回って調べつづけているすばらしい何名かの研究者に指導していただきながら、自然保護活動を進めてきたのですが、同じ兵庫の山、同じ兵庫のクマを見ているのに、出した結論が、熊森とセンターでは、ことごとく正反対なのです。これは、いったいどういうことなのか。

 

2 月12日は、「兵庫県森林動物研究センター」の相談日だったようですが、ご無理をお願いして、研究員の先生方や専門員の方に午後の3時間をとって、一体なぜこんな違いが生じるのか、当協会側の研究者にも同席していただいて、初めての意見交換会を持っていただきました。

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私たちも、正直に誠実いっぱいに、これまで生きてきた人間です。お互い、自然観や動物観の違いはあるでしょうが、じっくり話し合えば、誤解がとけたり、なにか少しは接点が見つかったりするのではないかと期待して意見交換会にのぞみました。

 

中心話題

(1)クマが山から出てくるようになったわけ

(センター)クマの生息数増加、生息地拡大、人慣れ、味しめ、人間による里山の放置、ハンターの減少 ⇔ (熊森)山の食料不足

 

(2)兵庫県のクマ数の増減

(センター)大幅増、そのうち狩猟再開も視野に ⇔ (熊森) クマの生息を示す痕跡がどんどんと減ってきており、絶滅に向かう恐れ。多くいるように見えるが、山の奥にはいないドーナツ化現象。

 

(3)兵庫の森の状況

(センター)ますます良好に ⇔ (熊森)どんどんと劣化が進む

 

意見交換会の結果

意見交換会を持てて、とてもよかったと思います。私たちがわかったことは、「同じ兵庫の山、同じ兵庫のクマを見ているのに、この違いは何なのか」という長年の疑問に対して、「お互いが、違うエリアの山、違うエリアのクマを見ている」ということです。

 

私たちは、自然保護団体として、主に、本来のクマ生息地であったブナ・ミズナラの山々を見続けてきました。戦後の観光開発や広大な原生林を伐採してのスギの人工林化によって、動物たちは棲みかを失っただけではなく、わずかに残された原生林も、なぜか、近年どんどんと急速に劣化していっており、クマたちが棲めなくなっていっています。クマたちが食料を求めて、山から出て行くと、原則殺処分の有害捕殺が待っています。

 

ところが、センター側は行政ですから、主に、地元住民から獣害を何とかしてほしいと訴えのあった集落周辺の山やクマを見ています。

 

立場が違うということは、こんなに見えているものが違うのかということが、よくわ かりました。

 

お互いに相手の顔を見てじっくり話し合うということは、人間にとって欠かすことのできない大切なことだと改めて思いました。意見交換し合ったことを、これから、熊森内部でじっくり検討していこうと思います。

 

お忙しい中、お時間を取ってくださったセンターのみなさんに、心よりお礼申し上げます。

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