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石川県七尾市で目撃されたツキノワグマについて

石川県では、以前、能登半島にはクマはいないと言われていましたが、昨年度、能登半島にある七尾市では5件のクマの目撃情報が寄せられているそうです。

514日の地元新聞によると、今年5月にも、七尾市では山間部で3件の目撃があり、ドラム缶型クマ捕獲檻3基を設置することになったということで、捕獲檻の写真が大きく載っていました。

 

熊森は心配になってきて、捕獲されたクマがどうなるのか、七尾市や中能登農林事務所などの地元行政にさっそく電話で尋ねてみました。石川県では、いったん捕獲されたクマには殺処分以外の選択肢はないという答えでした。

お隣の福井県では、居ては困る所に出て来たクマは捕獲後、本来の生息地にさかんに放獣してやっています。クマという動物が、日本の国土で、人間と共存できる動物であることを理解し、無用の殺生は避けるという、生き物に優しい対応をされているのです。

放獣しないと言われている石川県でも、昨年度、研究用の学術捕獲では、3頭を放獣しています。

 

今回の七尾市のクマは、本来のクマ生息地から移動してきたと思われます。山間部におとなしくいるだけなので、捕獲しても殺さずに、元の生息地に返してやっていただけないものか。14日、熊森と、行政各部署との交渉が、夜まで続きました。

七 尾市行政としては、クマなど見たこともないということで、対応に戸惑っている感じでした。行政ですから、万一、住民に何かあれば大変だと思うのは当然で しょう。七尾市民のなかには、マスコミによって、クマは凶暴という間違ったイメージを植え付けられている方もあり、早く捕まえてほしいと思う人がいるのは当然でしょう。そ れぞれの立場の方々の気持がわかるだけに、熊森としても考え込んでしまいました。

 

熊 森は、野生動物の個を守るのか、個体群を守るのか、種を守るのかなどと、追究して来る人もいます。しかし、そんなことは分けて考えられるものではなく、や はり、生物の多様性を守るためには、無用の殺生をしないことが必要で、一頭一頭の命の大切さ、尊厳を訴えていくことが、共存の基本であると考えます。

今回、石川県の地元行政の方たちと長時間話し合って、人間として共感できるところが実にたくさんありました。また、石川県のクマ対応の実態についても、今まで以上に見えてきました。新聞情報の、不正確で読者に誤解を与える部分も問題でした。

こ ういう食い違いは、お互いに、よく話し合わずに一方的に判断して進めることによって、生じています。人間と人間、じっくり話し合えば、ほとんどのことは、 理解しあえるのではないかと、改めて、人間という動物に信頼感を持てた石川県行政の方々との話し合いでした。長い時間、根気よくいろいろと本音を話してくだ さった行政のみなさんに、感謝します。

 

<七尾市で目撃されたツキノワグマについてわかったこと>

5 月11日(土)に、市民がクマを目撃し、警察に通報した。土曜日であり、行政がお休みのため、警察情報を元に、新聞記者が行政に取材せずに記事を書いたの で、事実と違っている部分が何カ所かある。記事中のドラム缶型クマ捕獲檻の写真は、以前、万一に備えて七尾市が何台か購入した時の古い写真で、今回目撃さ れたクマを捕獲するために設置したものではない。

今回目撃されたクマは、山中におり、捕獲罠は、かけていない。中能登農林事務所としては、行政が休みの日に緊急事態があれば、捕獲許可を出せないので、今回目撃されたクマとは関係なく、3頭の捕獲許可を申請していただければあらかじめ捕獲許可を出しておきますと七尾市に伝えてある。捕殺のための捕獲が必要な緊急事態かどうかは、石川県では長年の経験がある猟友会の捕獲隊長が判断する。今回目撃されたクマは、おそらく緊急事態と判断されないだろう。捕獲許可をもらっていても、必要がなければ、一頭も捕獲しないでその年を終えることもある。石川県は、クマの※個体数調整を導入しているので、捕獲されたクマは、捕獲上限数に達していない限りは、捕殺する。(以上)

 

個体数調整 の問題については、別の機会に書きたいと思います。

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