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兵庫県知事あてのクマ狩猟再開中止の要望書⑨

兵庫県知事 井戸 敏三 様

平成28年8月18日

要望書 兵庫県のツキノワグマ狩猟再開は中止すべき

―推定940頭は過大算出という専門家の指摘があるのに、逃げ場も隠れ場も失ったクマを山中で狩猟とは、生態系保全と人道に反しますー

 

日本熊森協会 会長 森山まり子

  • 専門家から、算出法に疑問、過大推定と指摘の940頭を根拠に狩猟再開は非科学的です

階層ベイズモデルMCMC法を用いて県内のクマ生息数は940頭であると算出したのは、兵庫県森林動物研究センターの県職員の研究員だけで、奥山は調べていないと公言しています。彼の推定法は捕獲が増えることは生息数が増加しているという前提に立っており、2010年山の実りが大凶作の際捕獲された101頭という過去に例のない捕獲数を異常値として処理していない、隣接している京都や岡山、鳥取間のクマの移動を考慮していない等、算出法に問題があり、過大推定だと統計学の専門家から批判を受けています。彼のデータだけで政策を決定するのは、非科学的で危険です。そもそも、森林内に生息する野生動物の数を正確に推定するのは困難です。クマの生息数を人間の勝手な計算で、800頭に一定させようという考えは、自然が全く分かっておらず、多様な生き物が複雑に関係しあっている生態系のバランスを一層崩壊させます。

 

  • 兵庫県の奥山は今大荒廃して鳥獣の棲める環境ではなく、クマは絶滅の危機にあります

今、人里にクマたちが出てきて、地元の方々は大変困っておられます。一見、クマが爆発増加したように見えますが、実はクマは山に棲めなくなっており、生息域を拡大したのではなく、生息分布がドーナツ型に拡大しただけです。兵庫県のクマ生息地では、延々と続くスギの放置人工林が広がり、内部が砂漠化しています。私たちが活動を始めた20年前から改善されていません。一方、わずかに残された自然林はナラ枯れやシカの食害などで、内部では下層植生や昆虫が消えて近年急激に劣化、クマは安心して棲めるすみかも食料も失いました。クマの逃げ場も隠れ場もない山でクマを狩猟するのは、この上なくアンフェアであり、生態系保全の観点からも、人道的見地からも認められません。国の「800頭」が安定個体群というのは、森が残っていたらという前提です。野生動物は、生息地を失うことによって絶滅します。兵庫ではクマの棲む森が失われたままであり、仮に数が増えたとしても、クマは絶滅の危機にあります。

 

  • 兵庫が西日本初で狩猟を再開すれば、他府県のクマ保護にまで悪い影響を与えます

兵庫県は、クマが人里に出て来てどうしても困る場合は、有害獣として捕殺できるようになっており、平成26年に30頭、平成27年に18頭のツキノワグマが捕殺されています。今後も追い払いや誘引物除去、有害捕殺でクマに対応すべきです。ツキノワグマは西日本全域で絶滅が危惧され、今も狩猟が禁止されており(滋賀県では自粛)、狩猟再開を決めたのは兵庫県だけです。せっかく貝原前知事や天皇皇后両陛下のご理解で当時の子供たちが勝ち取った兵庫県クマ狩猟禁止を反故にすべきではありません。、兵庫県がすべきことは、被害防除とクマの生息地であった死んだ奥山の再生に全力をあげることです。今回の狩猟再開を止めてください。

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