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兵庫県野生動物殺害計画案 を共存計画案に  熊森コメントの解説 その④

(1)全般

●管理計画案とはいったい何をするためのものなのでしょうか。

 

今やすっかり自然から離れ、武器や科学技術の力で地球を支配する最強無敵の動物となったわたしたち人間は、昔ながらに自然と共に暮らすことしかできない野生動物たちに対して、安心して棲める棲みかとかれらの生存を支えるに十分な餌場が年間を通して保障されているかどうか、思いやる義務があると思います。彼らが存在してくれているからこそ森が残り、私たちは酸素、水、水を使っての農作物や魚などの食料を手にすることができるのです。

 

しかるに、兵庫県の管理計画案にはそのような観点はなく、一方的に野生動物を害獣視して、いかに野生動物が人間に被害を与えているか、(たとえ被害を出すようになった原因が人間側にあったとしても反省などせず)、いかに野生動物たちの殺処分を進めていくかという、人間側の視点からだけ見た人間勝手な論理が延々と書かれています。

 

行政が認める野生動物の唯一の権利は、絶滅しないことだけのようです。野生動物たちは、絶滅しない程度に個体数調整の名で、毎年毎年大量に当たり前のごとく殺し続けられているのです。野生動物の被害に悩まされている郡部の方は、このような管理計画案に満足なのでしょうか。

 

当協会に連絡してこられる郡部の方たちは、「動物たちの餌と知りながら、実のなる木をみんな伐って、山にスギやヒノキだけを植えて放置したのは私たちだ。動物たちが餌を求めて人里に出て来るようになったのは、山にえさがないから。今は獣害に苦しむようになったが、罰があたったんや。自分たちのしたことに責任をとって死にたい」と言われます。

 

地元にこのような考えの方が何%ぐらいおられるのか、アンケートを取って調べてみたいです。このような考えは人間としてまっとうだと思いますが、地元ではなかなか声を上げにくいそうです。なぜなら、地元には声の大きいボスのような人がいて、「動物なんか1頭もいらん、みんな殺してしまえ」と叫んでおられることが多いからだそうです。

 

ではみなさん、わたしたちが声を上げましょう!

 

兵庫県森林動物研究センターの研究員は、このような地元高齢者たちの真摯な反省の言葉に耳を傾けず、野生動物たちが山から出て来るようになったのは、山でえさが不足しているからではない、野生動物たちの生息数が爆発増加したから(爆発増加説)、生息域を拡大してきたから(生息域拡大説)、人間の食べ物のおいしさに味をしめたから(味しめ説)、人間を恐れなくなりなめだしたから(人なめ説)、ハンターが減って殺す数が減ったから(ハンター減少説)などと、戦後の森林政策に失敗した行政が聞けばお礼を言いたくなるような原因説を次々とねつ造し、行政はこのようなねつ造説をマスコミに垂れ流し、マスコミは検証もせず行政広報のみを報道し続けています。

 

わたしたちが、野生動物が生息域を拡大したのではなく、奥山が荒廃したので生息域を人里に移動させただけ、ハンター絶滅説が喧伝されているが銃猟ハンターが減っただけで、罠猟ハンターの増加を加味すれば、ハンターは減っていない(今や鉄格子でできた箱罠が大量生産されるようになったため、罠にかかったまま動物を炎天下に放置しておくだけで動物は弱り、銃がなくてもクマにいたるまでどんな動物も簡単に殺せる時代です)などと声を張り上げて現実を訴えても、マスコミがとりあげてくれることはほとんどありません。

 

こんなことでは、国民は何が何だか真実がわからなくなって、悪いのは野生動物だと勘違いするようになり、全員で間違った方向に進み出さないかとわたしたちは心配です。

 

わたしたち熊森は自然保護団体ですから、生物の多様性を守ろうとします。生物の多様性を守らなければ、人間は生き残れなくなるという自然界の仕組みを知っています。しかも、本能的に野生動物たちに同じく生きとし生けるものとしての共感も持っています。

よって、このような動物たちの大量捕殺を進めるだけの管理計画案を読んでいると、ぞっとしてきます。去年までは、クマだけはまだ保護動物だったのですが、今年から、クマも管理動物(=殺害対象動物)にされてしまいました。

 

ここで国民が声を上げないと、大変なことになっていくと思います。

 

地元で獣害にあって困っている人のことを考えていないと熊森を批判する人がいますが、それは誤解です。会員のみなさんは、野生動物の立場にだって立てる人達ですから、まして地元で困っている人たちのことは、普通の人以上に胸を痛めています。ただ、野生動物による被害問題を野生動物を殺さない方法で解決しようと言っているだけです。本来の野生動物たちの生息地だった自然を人間が破壊してきた事実を隠し、一番にしなければならない生息地復元の具体策も提示せず、まず初めに殺処分ありきの管理計画案は、本当に問題です。

 

行政の方たちは、個人的に話してみるとほとんどみなさんいい方です。最初、今の部署に来られて管理計画案を読まれた時、私たちと同じように、恐ろしくなった方も多かったのではないでしょうか。しかし、戦争中を思い出していただければわかるように、ほとんどの人間は恐ろしいことにもすぐに慣れてしまい、どんなひどいことであっても周りにつられてマヒしていく動物ですから、今や野生動物を殺すのは仕方がない、当たり前だと思うようになっていかれているのかもしれません。

 

このような流れをこの国に作ったのは、管理派の研究者たちです。かれらは食料に困っていない現在の飽食日本で、人間がスポーツやレジャーとして楽しみのために動物を殺すことを推進し、ジビエ料理と称して食べて楽しんだり、シカやイノシシ肉を犬猫のえさとして売り出せばもうかるなどという考えを盛んに広めています。殺生を嫌い、生き物を大切に思ってきた日本人のなかでは非常に珍しい考えの人たちだと思います。生き物を殺すことに抵抗がないようです。

しかし、かれらは優秀なので、行政や国民をどんどん洗脳していきます。私たちは、そのような方向に人類が進むと人類は早晩滅びることになるだろうと考えています。

どうしたらいいのでしょうか。私たちが勇気を出して「おかしい!」と、声をあげるしかありません。野生動物管理計画案がおかしいと思う人は、みなさん声を上げてください。

 

(2)<クマ管理計画>

●保護計画にもどすべき。

クマは広大な奥山生息地を失っており、生息地が復元されるまでの間、むやみに有害捕殺したり狩猟を楽しむ対象にしてはならず、保護対象とすべきである。

(平成28年度、兵庫県クマ目撃数976件、有害駆除数29頭、誤捕獲放獣数130、人身事故発生3件)

 

 

●狩猟を禁止すべき。

・昨年度、兵庫県が狩猟再開の根拠に使ったベイズ推定法によるクマ爆発増加説が過大推定であったことは、昨年度のクマ猟期(11/15~12/15)中の狩猟結果が4頭であったことからも明らかである。

 

・環境省は、今後、クマと人間は生息ゾーンを決め、棲み分けて共存していくように指導している。

クマのコア生息地となるべき山中にハンターが入り込んで狩猟を実施すれば、クマはどこにいれば安全かわからなくなり、棲み分けが進まなくなる。

クマのコア生息地となる山中での狩猟、有害駆除は当然、厳禁すべきである。

 

・昨年度、兵庫県が狩猟再開の根拠に使った環境省基準の安定個体群800頭は成獣800頭であるのに、兵庫県は幼獣を含めた生息総数800頭を用いて狩猟を再開した。

幼獣数を差し引くと、たとえ兵庫県のベイズ推定法による爆発増加説を採用したとしても、成獣は700頭ぐらいしかいない。狩猟再開根拠は完全に破たんしている。

日本福祉大学の山上俊彦教授が、標識・再捕獲法で兵庫県のクマの総個体数を推定したところ、年間生存率8割で想定すると301頭、年間生存率9割で想定すると534頭となったということであり、狩猟再開対象には全くなりえない。

 

しかも、数年前までは、兵庫県には円山川をはさんで東西に2個体群のツキノワグマが存在するとずっと言われてきたのに(単純計算では400頭+400頭)、DNA鑑定の結果、この2群は現在混ざり合っており1群とカウントすると突然去年あたりから言われるようになった。(兵庫県の今年のクマ推定生息数は、ベイズ推定を使って推定すると897頭とのこと)

管理派研究者たちから、人間の目では見ることのできない超ミクロの世界の話を延々と聞かされても、DNA等研究していないわたしたち一般国民は煙に巻かれた感じで、何が何だかわからない。かれらの手なのだろうが、わたしたちにとっては、豊かな自然を守り残し、多くの野生鳥獣たちと共存しようとしているだけなので、(以前から、円山川の上流地域ではクマたちは簡単に東西を行き来していたであろう)そんな研究よりも、一刻も早く行政に生息地を復元していただくことが大切なのである。

 

 

●誤捕獲対策:イノシシ罠にクマを呼び込まないよう、箱罠にクマ脱出口を付け、米ぬかの使用を禁止すること

平成28年度のシカ・イノシシの有害捕獲用箱罠へのクマの誤捕獲数は、125頭という異常な多さであった。

兵庫県が国の指導通り誤捕獲グマを全頭放獣していることは評価する。

しかし、クマ放獣には全身麻酔が必要なため、クマが弱ってしまう。また、放獣するための人間側の労力や危険性もあり、早急な対策が必要である。

兵庫県はクマの脱出口を箱罠に義務付けて、誤捕獲を減らす努力をすべきである。

クマの誤捕獲が多発しているのは、米ぬかをイノシシの有害捕獲用箱罠に使用していることに大きな原因がある。

米糠の発酵臭は、クマを強力に誘引するため、集落近くにクマを呼び寄せ、目撃数や捕獲数を増大させることにつながっている。

集落住民を危険にさらさないためにも、米糠の使用を禁止すべきである。

 

・集落ゾーンより200メートル山側までにクマ捕殺罠を掛けるべきではない。

現在、奥山で棲めなくなったクマが、集落の裏山に移動している不安定な状況がある。

そのような場所は、下層植生が消えた奥山より姿を隠しやすく、臆病なクマがひそむのに適している。

クマの臭覚の良さは犬どろこではないため、このような場所にハチミツ罠をかけることを認めれば、遠くにいるクマまでを次々と集落近くに誘引してしまい、事故や被害を多発させたり、クマを大量捕獲することにつながる。

これまで通り、山中でクマの捕獲罠をかけることは禁止すべきである。

今回の管理計画案で、最も撤回しなければならない危険な項目である。

 

・奥山人工林・自然林の内部荒廃状況を発表すべき

クマ問題を語るにあたって、奥山人工林や奥山自然林の荒廃状況(ナラ枯れ、ブナのシイナ現象、下層植生と昆虫の消失など)が一切報告されていない。

堅果類の豊凶調査だけでは不足であり、クマたち本来のすみか、えさ場がどうなっているのか調査発表すべきである。ナラ枯れによってミズナラがほとんど枯れてなくなって場所では、ミズナラのドングリの豊凶などどうでもいいことなのである。もはやミズナラの木がないのだから。

 

(3)<サル管理計画案>

名実とも保護計画にすべき

兵庫県における野生ザルは、大河内3群、豊岡1群、美方2群、篠山5群で、推定生息数が539頭である。(他に民間の餌付け群が2群466頭存在)

特に、豊岡市と香美町に存在しているサルは、10~30 頭の群れが各1~2群生息しているだけで、地域的な絶滅が危惧されると管理計画にも記載されている。

豊岡城崎A群29頭、美方A群15頭、美方B群9頭が危機的状況になっているのは、管理という名で群れのサルを人間が殺害し続けてきたからであり、県の責任は重い。

1群のオトナメスが10~15頭となるように、人間が管理の名で1頭刻みで捕殺する事や、群れが分裂した場合、新しく生じた群れを全頭捕殺して壊滅させることを計画しているが、残酷なだけでなく人間が自然生態系に干渉し過ぎており、このようなことはやめるべきである。

兵庫県が進んだサルの被害防除対策を推進していることは、評価できる。

 

(4)<シカ管理計画案>

シカの生息地を確保して明記すべき

今や、シカは、どこにいても管理の名の元、むやみに撃ち殺される存在である。生息地を指定すべきである。シカも豊かな自然の形成に大きな存在意義があるはず。存在益も発表すべき。

 

●有害駆除個体の死体の回収を義務付けるべき

有害駆除されたシカの死体が大量に山に捨てられており、クマをはじめいろいろな動物たちが食べに来て、生態系のバランスを狂わせている。駆除時に死体を回収すべきである。

 

(5)<イノシシ管理計画案>

 

●名実とも保護計画にすべき

兵庫県では高く売れるため(1頭30万円?)、狩猟や有害駆除でやみくもにイノシシをとり続けてきた経緯がある。

年間捕獲数2万頭に対して、残り推定生息数が1万5千頭になっているのに、いまだに獲れるだけ獲るという管理対象になっているのはおかしい。

 

●六甲山系のイノシシを害獣視しないこと

六甲山の南斜面は国立公園内にもかかわらず山の中腹まで宅地開発が進んでおり、イノシシは人間による北側の三田大開発なども加わって、広大な生息地を失っている。その経緯も書かず、人間の所に出てきたからと、余りにも一方的に害獣視する記述はやめるべきである。生ゴミを出さないなど人間側の努力で問題を解決していくべきである。

 

(6)<外来動物根絶殺害計画案>

外来種根絶殺害は殺しても殺してもすぐに元の生息数に戻ってしまうだけで無用の殺生になっている。

外来動物のためにも、費用対効果のためにも、今後、予算は被害防止対策に使うべきである。

いったん広大な野で繁殖した外来動物は生態系から取り除くことが不可能なため、外来動物を野に放すことは一般に考えられている以上に取り返しのつかない問題となる。

と言っても、現在、日本にいる野生動物のうち、かなり昔に外国から入ってきて現在、日本の生態系に組み込まれて落ち着いている元外来種は大変多い。アメリカザリガニなど今更生態系から取り除こうとすると、そちらの方がかえって生態系を痛めることになるものが多い。

特定外来種以外は現在も多くの外来動物が輸入されている実態があるが、今後のことも考えて、国は原則として外来動物の輸入を全面的に禁止すべきである。

ドイツでは、国内で繁殖して50年以上たった野生動物は在来種扱いにするそうである。大変合理的だと思う。日本も、アライグマ、ハクビシン、ヌートリアなどは、もはや在来種にして新生態系が確立するのを待つしかないだろう。外来種捕獲罠には、タヌキなどの在来種もたくさんかかって殺されている。外来種根絶殺害現場の深い闇を、勇気ある人に暴いてもらいたい。国民が知らないだけで、もれてくることを聞いているだけでも、大変なことになっているのがわかる。

 

以上、その③と一部重なってしまったところもありましたが、長文を読んでくださってありがとうございました。兵庫県管理計画案への意見応募をよろしくお願いします。

 

 

 

 

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