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北海道紋別市デントコーン畑で射殺された400キロヒグマ、殺しても問題は解決しない

少し前のことになりますが、ずっと胸に引っかかっている報道があります。

 

今年9月26日に北海道紋別市のデントコーン畑の中で射殺されたヒグマが、メタボヒグマとして遺体をクレーンで持ち上げられている写真付きの報道が10月10日にありました。

 

確かにこのヒグマはデントコーンを食べて太ったのですが、この様なことになる状況を作ったのは人間です。しかも、このヒグマは一番大切なたった一つしかない命を人間に奪われてしまったのです。

報道姿勢としては、ヒグマの死を悼む気持ち、人間側の反省にあふれる報道がなされるべきです。

にもかかわらず、報道が、このヒグマをさらし者や笑い者にしていると感じた人たちが、私以外にも何人かいたようで、駆除許可を出した行政や、マスコミの人権感覚(動物権感覚)に抗議すべきだという声が、熊森本部にもいくつか届きました。

 

たまたま紋別の山をこの春視察して、山にいくら餌があっても、デントコーン畑に住み着いてしまうヒグマたちの話を専門家にいろいろと教わった後だったので、このニュースには、特に思うことがありました。

 

本州の畑と違って、北海道の畑は地平線が見えるほど広大です。山にいくら実りがあっても、山の中を餌を探して歩くよりは、デントコーン畑に棲みついてデントコーンを食べ続けた方が楽です。かしこいヒグマは、デントコーン畑に棲みつくようになります。もちろん人間は困ります。

 

問題は、そのようなことをすれば人間に怒られるぞ殺されるぞということを、ヒグマにどう教えるかです。教える責任が人間にはあります。このようなことをしたヒグマを殺してしまえば、他のヒグマたちに伝わりません。また来年は、別のヒグマが同じことをして殺されるのです。いつまでも、いつまでも、ヒグマの命が無駄に奪われ続けるのです。

 

ヒグマの生息地でデントコーン畑を作るなら、農業者も行政も、畑でデントコーンを食べ続けたら人間にひどい目にあわされるから、山のものを食べておこうと、紋別のヒグマたちが学習できるようにもっていかなければなりません。それには、殺してしまってはだめなのです。殺してしまうのは人間の無責任です。

 

最近ヒグマやツキノワグマが人間を怖がらなくなったと言われますが、原因の一つは、銃の性能の向上にあるようです。山にいるヒグマやツキノワグマは、何百メートルも先から撃たれることが多いと聞きました。その場合、視力の弱いクマたちは、人間にやられたという因果関係がわからないので、なんだかわからないが突然けがをした、突然殺されたと思うということです。一つの案として、銃の性能を昔のように落として、自分を狙ったのは人間だとはっきり分かるようにすることによって、再びヒグマが人間を恐れるようになるのではないでしょうか。

 

他にも、デントコーン畑にびっしりデントコーンを植えるのではなくて、列状に植えて、ヒグマが入り込んだらすぐに人間に見つかるようにしておくとか、いろんな手が考えられると思います。殺してしまうのではなくて、人間の知恵でもって、デントコーン畑にヒグマが入らないようにすることが、人間に求められます。それなくして、ヒグマを殺し続けるだけなら、私たちは人間であることを返上したくなってしまいます。ヒグマとの共存など、口先だけの嘘になってしまいます。

 

 

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