くまもりNews
住民たちが10日間ほど 見守っているうちに、見かけなくなった若グマ
- 2017-05-03 (水)
- _クマ保全
この時期、親離れしたばかりの子グマが、各地で人里に現れては騒がれています。
4月中旬、クマ生息地の住民から、道路横で衰弱した子グマが1頭寝ている。まるでぬいぐるみのようなクマだという情報が本部に入りました。
3日間ほど見守っているが、母熊が現れる気配はないということで、地元の方々もこの子グマを思いやって心配そうでした。
うーん。あの愛情深い母グマが、今年生まれの子グマを見捨てるはずがありません。
母グマが病死した?母グマがイノシシなどの罠にかかってしまった?母グマが密猟された?
子グマだけでは生き残れないので、保護飼育することになるのだろうか?
くまもりとしてはどう対処すべきか悩みながら、とりあえず現地に向かいました。
地元の人に教えてもらったところに行くと、小さなクマが1頭、フキノトウを無心に食べていました。
クマが食べたとみられるフキノトウのあと
あたりはフンでいっぱいです。(専門家にこのフンを送った所、後日、根っこなど地下のものが入っているので、アナグマのフンではないかと言われました。)
繊維質でいっぱいのフン
このクマ、確かに小さいけれど、今年生まれのクマではありません。すでに親離れしたクマなのでしょうか。
地元の人達に、「助けてやって」と、頼まれましたが、自力で生きていけそうです。
ただ、こんな人目のつくところにいたら、誰かが行政に通報して捕獲されてしまう恐れがあります。
心を鬼にして、追い払うことにしました。
山に向かって追い立てていくと、クマはぐんぐん逃げ始めました。
土手をかけあがって逃げるクマ
さらに追い詰めていくと、大きな木の上にするするとのぼって、不安そうに下にいる人間の動向を見ています。
高い木の上から不安そうに下を見下ろしているクマ
地元の人達には、とにかく見かけたら、山の方に追い上げてくださいと伝えて帰りました。
うーん、人間を疑わず人間に親しみを持っているクマ…、こんな時、祖先はどう対処していたのだろうか。
このままだと金太郎の世界になってしまいます。
太郎を育てられた故東山省三先生は、金太郎の話は、昔どこの集落でもあった実話だとわかったと言われていましたが・・・
今の時代、行政がそんなことを許すはずがありません。
後日、地元から再び電話がありました。
このクマ、人間が畑仕事をしている横で、のんびり昼寝して、逃げてくれないというのです。
困りました。とにかく追い払ってもらうしかありません。
そうこうしているうち、雨の日がやってきました。
なぜか、この日を境に、このクマはぷっつり姿を見せなくなったそうです。
フキノトウはもう大きくなってしまい、土手の草は農家にツクシごと刈り取られてしまいました。
山を見ると、柔らかい新芽がいっぱい芽吹いてきていました。
今頃はきっと、おいしい若葉をついばんで山の中を移動していることでしょう。
もう人間の所になど来るんじゃないぞ。生き延びろよ。
思わず抱きしめたくなるほどかわいかった若グマの写真に、心の中で叫びました。
教訓
①地元の人達の心に、生き物に共感するやさしい文化が残っているから、これまでクマは絶滅を免れてきた。
②クマは、季節ごとに刻々と変化する食べ物を追って、移動していく。