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カテゴリー「アーカイブ」の記事一覧
熊森は奥山水源の森の保全・再生活動に取り組んでいる実践自然保護団体です
マスコミのみなさん、この国を救うために、どうか勇気を出して日本熊森協会を取材してください。
どうして近年、クマがこんなに山から多数出て来るのか、自然界のことは、地域差も大きく、調べても調べても人間にはわからないことだらけなのですが、私たちは長年クマ生息地の山を歩き続けて調べてきた稀な者として、記者さんたちが知っておかねばならないことを、全て語ります。当協会の顧問研究者は、北海道を除く全国のクマ生息地を歩いて動植物を調査し続けて63年になります。
目撃数が増えたなどの現象を見て、クマ数が増えたと思う人たちもいます。地域によって様々ですが、しかし、クマ本来の生息地である奥山が人間活動によって荒廃し続け餌がなくなっている場所で、クマ数が増えたりするのでしょうか。山形県の深山ガイドに聞くと、今年、本来のクマ生息地はクマの姿どころか糞さえないと言われていました。彼は、クマが増えているというマスコミ報道について、あり得ないと思うと言われています。マスコミはこんな声も取り上げてほしいです。
熊森は全国を飛び回っている会長以下、全理事が無報酬で活動しています。
だから、利権ゼロの会です。
これだけでもすごい会だと思われませんか。
私たちは、真実を語ります。
また、国から1円ももらわずに27年間、会員の会費と寄付だけで会を運営してきた完全民間団体でもあります。
だから、自分たちの徹底した現地調査に基づいて、国の政策に対してもなんの遠慮もなく、正義感と良心だけで、こうしたらどうでしょうかと提案できるのです。研究費や活動費欲しさに、国に迎合したり、真実を語らなかったりしたことなど、一度もありません。きちんとした政策提言型団体です。
1992年1月のことです。私たちは、残り60頭絶滅寸前と言われた兵庫県のツキノワグマの絶滅原因を調べていて、日本の奥山が戦後の拡大造林政策や奥山開発によって動物が棲めないまでに内部が大荒廃していることに気づき、大きな衝撃を受けました。
奧山に延々と続く人工林。地元の方たちが緑の砂漠と呼ぶ光景。
山の外観は緑ですが、内部は荒廃して茶色一色の死の世界。
この人工林内に野生動物の餌は皆無で野生動物は棲めない。
31年前、私たちはこの国の人と全生物を守るために立ち上がったのです。
一番初めに兵庫県庁の林務課に行って「スギやヒノキの植林にストップをかけてください!いくらなんでも植え過ぎており、大変な弊害が出ています」と訴えました。係官は、「何を馬鹿なことを言い出すんだ、兵庫県はこれからますますスギやヒノキを植えていきます」と、怒りをあらわにされました。
<行き過ぎた拡大造林政策の弊害>
1、平成になると人工林の苗木も大きく成長し、人工林内は餌が全くない所になる。すると、生きられなくなった野生動物が餌を求めて山から次々出て来るようになり、地元は悲鳴。クマは有害獣として多数駆除されていくようになる。
兵庫県豊岡市1998年
2、林業不振により多くの人工林が放置され益々荒廃、山の保水力は年々低下。各地で湧水が激減。
谷川で泳ぐのが夏休みの子供の遊びだったのに、もう泳げる所なんかどこにもないと地元の高齢者
兵庫県宍粟市
3、大雨の度に放置人工林が崩れ出し、災害が多発する国になっていく。
2004年兵庫県朝来町 山崩れで放置人工林のスギが流出し、橋げたに引っかかって洪水に。
兵庫県の人工林分布 人工林率42%
赤色部分がスギやヒノキの人工林。多くは放置されて内部は大荒廃している。
南部の緑の●はゴルフ場 クリックで地図拡大。
現状を放置していたら山はどんどん荒れて、年々保水力が低下していきます。かつて森を破壊し過ぎて水源を失い滅びた多くの文明と同じ道を、日本がたどっています。
森の再生には長い年月がかかるので、一刻も早く森林政策の方向転換が必要です。
私たちは兵庫県庁に行って怒られただけでしたが、めげませんでした。奥山荒廃問題にはこの国の運命がかかっています。がんばって声を上げようと決意しました。
私たちが国の拡大造林政策に問題ありと正直に言うと、国や行政からにらまれ、マスコミは国や行政の顔色を見て私たちを取材しようとしなくなりました。
後年、林野庁の偉い方に私的にお会いした時、私たちは開口一番「奥山水源の森が大荒廃しています!」と訴えました。その方は、「戦後の森林政策、大失敗しちゃいました。どこもかしこも、奥山を大荒廃させちゃいました。もうどうしたらいいのかわかんないのです」と、正直に言われました。
私たちは、「すぐに国策の方向転換をしましょう」と呼びかけました。水源の森を失った文明は過去すべて滅びているからです。しかし、この方は、「私たちは組織の人間なので、この事実は、口が裂けても国民には言えません」と答えられました。
仕方なく、私たちは自分たちで団体を作り、地元の皆さんと連携して、まず自分たちで汗まみれ泥まみれになって、各地でボランティアとして、奥山の人工林伐採跡地に実のなる木を植え始めました。場所によっては命がけの危険な活動ですが、みんな使命感でいっぱいなので、未だ無事故です。
2002年兵庫県但東町 実のなる木の植樹会
国には、一刻も早く食料いっぱいの奥山広葉樹林再生運動に国を挙げて取り組んでいただき、野生動物たちが以前のように奥山に帰れるようにして、祖先がしてきた棲み分け共存を復活させなければならないと訴え続けました。
兵庫県がある中国山地のかつての棲み分けラインは標高800m。
これより奥は野生動物たちの聖域として、日本文明を支える水源の森として、人間が入れない入らずの森でした。
奥山は巨木の原生林で、この原生林があった時、クマたちが里に出て来ることなどなかったそうです。この棲み分けラインを戦後、一方的に破ったのは人間の方です。
私たちは片っ端から国会議員を訪ね、奥山全域、尾根筋、山の上3分の1、急斜面、沢筋の5か所は祖先がしていたように天然林に戻すよう、法整備をお願いしました。
この5か所は、天然林のまま残さねばならないと祖先が言い伝えてきた場所に重なります。
熊森に賛同して強力に支援してくださったのが、当時、国会議員だった赤松正雄議員や鳩山邦夫議員、石井登志郎議員(現西宮市市長)らでした。
2010年、奥山天然林再生のための法整備に向けて、64名のすばらしい超党派の国会議員たちによる議連が誕生
しかし、3か月後に、東北大震災と福島原発事故が発生し、議連は解散に
法整備のチャンスを失う
国産林業が不振の上、もう植えられるところは植え尽くしたこともあって、新たなスギ・ヒノキの植林にはブレーキがかかるようになりました。しかし、荒廃した放置人工林は今もそのままです。(林業は大切な産業なので、林業に向いた場所はしっかりと林業用の整備を行い、他は森林環境譲与税などを使い、早急に天然林化すべしと、熊森は何度も国会に訴えに行きました)
まさか・・・残された天然林内まで大劣化し始める
この後、とんでもないことが起き始めたのです。地球温暖化が原因と思われるのですが、残された天然林までもが猛烈に劣化しだしました。下草が消え、昆虫が消え、虫媒花は実らなくなり、野生動物たちの餌はますますなくなってきました。
地球温暖化で、天然林の内部まで大荒廃 餌が何もない森に
兵庫県豊岡市のクマ生息地 熊森協会自動撮影カメラによる撮影
さらに現在は、国内外の投資家たちが、再生可能エネルギー事業推進と称して日本の水源の森を大破壊しだしました。熊森は、森林伐採を伴う再生可能エネルギー事業にストップをかけようと、日々、奔走しています。国民のみなさんも、子や孫のため、全生物のため、声を上げてほしいです。
再エネ事業が広大なクマの生息地を大破壊
宮城県仙台市
これ以上水源の森が壊されないように、至急、法規制をかけねばなりません。壊し過ぎた森をもう一度天然林に再生していかねばなりません。森の動物たちのためでもありますが、人間のためでもあるのです。森を残し全生物と共存しなければ、人間も生き残れないのです。
国民の皆さんが、熊森協会をイギリスのナショナル・トラスト(会員数425万人)のように大きな団体にしてくだされば、国会議員が協力してくれるようになるので、日本でもイギリスのように自然を守る法律を次々と成立させていくことができるようになります。
水源の森を守るには、会員数が必要です。みなさん、ぜひ熊森協会の会員にご登録ください。
電話1本で会員になれます。0798-22-4190
まとめ
熊森協会は、奥山水源の森の保全・再生団体です。
私たちがシンボルにしているクマの棲む森は、最高の保水力を誇り、あらゆる生き物たちが生きられる完璧に豊かな森です。私たち人間は棲み分けを復活させるために、荒廃させた奥山を野生動物たちの餌場として再生しなければならなかったのに、全くそういうことをしてきませんでした。もし地球温暖化が人間活動の結果だとしたら、今年の山の天然林の実りなしも全てが自然現象なのではなく人間の責任も問われます。クマを殺しておけばいいではなく、どうしたら共存できるのかみんなで考えねばなりません。やさしい解決法が一番優れている。
当団体への誤解もあるかもしれませんが、皆さん、ぜひ当団体の本質を知っていただけるとうれしいです。
詳しくは1冊100円の小冊子「クマともりとひと」をお読みください。
真実を求める人たちの口コミによって、現在57万冊発行。
文責:森山まり子
まだの方急いでください 環境省シカ・イノシシガイドライン改定に対する意見提出、1月12日まで
今春、環境省は、シカやイノシシ、クマ、サルなどの大型野生動物を今後どのように保護管理していくかについて、ガイドラインの改定を行おうとしています。現在、それに向けて、パブリックコメント(意見募集)を募集しています。
全国都道府県保護管理計画は、環境省が策定するガイドラインに基づいて作られますから、今回のガイドラインの改定は大変重要です。
しかし、今回の改訂内容は、これまでと同様で、捕殺することにより野生動物の数をいかに低減させるか一辺倒であり、生態系保全上も人道的にも非常に問題です。このような内容を策定したのは、3年ごとに入れ替わる環境省の担当官ではなく、委員を務める学識経験者たちです。
中央環境審議会自然環境部会 鳥獣の保護及び管理のあり方検討小委員会名簿
(ワイルドライフ・マネジメント派だけで委員を独占しており、これでは改革が期待できません。小泉環境大臣は、委員会にぜひ熊森を入れるべきです。)
我が国は1999年に全国の自然保護団体の猛反対に耳を貸さず、ワイルドライフマネジメント派の大学教授らが提案した西洋思考のワイルドライフ・マネジメント(個体数調整)を導入しました。それ以来、この20年間に膨大な数の野生動物を捕殺してきましたが、殺生を嫌うという日本人の美徳を壊した罪は計り知れなく大きいと思います。また、いつまでたっても捕殺数が減らず大量殺害が続いており、残酷過ぎます。
ワイルドライフ・マネジメントは完全に破たんしているので、生息地を保障する祖先の棲み分け共存法に転換すべきです。そもそも人間が野生動物の生息数を人間が考えた適正数にコントロールしてやるなどという発想自体が全く自然を理解しておらずクレイジーな自然観です。野生動物にも地元の人たちにも、昔の棲み分け共存の方が良かったと思います。棲み分けさえできれば、野生動物など何頭いてもいいのです。
熊森は、大型野生動物の生息数を極限にまで減らして野生動物と人との軋轢をなくすのではなく、棲み分け共存を復活させるための環境づくりを進め、野生動物たちを殺さずに、野生動物たちの命の尊厳を守る計画にしてほしいと願っています。
個体数調整の名の元、殺処分対象となっている野生動物たちには、声をあげる力がありません。声をあげられる私たちが、環境省に声を届けましょう。
野生動物対応として、膨大な予算と人員を要するワイルドライフマネジメントではなく、野生動物たちの生息地を保障する祖先の棲み分け共存法を採用すべしという声をだけでも届けてほしいです。
◆以下、環境省のパブリックコメント募集要項
1、意見募集している内容
(1)第二種特定鳥獣管理計画作成のためのガイドライン(ニホンジカ編)改定案(添付資料1)
ガイドライン策定者
岩城 光 千葉県環境生活部自然保護課
梶 光一 東京農工大学農学部 教授
小泉 透 独立行政法人森林総合研究所 研究コーディネータ
坂田 宏志 株式会社 野生鳥獣対策連携センター 取締役
濱崎 伸一郎 株式会社 野生動物保護管理事務所 代表取締役WMO
平田 滋樹 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
中央農業研究センター 上級研究員
山根 正伸 神奈川県自然環境保全センター 研究連携課 主任専門員
(2)第二種特定鳥獣管理計画作成のためのガイドライン(イノシシ編)改定案(添付資料2)
ガイドライン策定に関わった専門家一覧(50 音順、敬称略)
浅田 正彦 合同会社 AMAC 代表
小寺 祐二 宇都宮大学 雑草と里山の科学教育研究センター准教授
坂田 宏志 株式会社 野生鳥獣対策連携センター 代表取締役
平田 滋樹 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
中央農業研究センター 上級研究員
藤井 猛 広島県農林水産局農業技術課 事業調整員
横山 真弓 兵庫県立大学自然・環境科学研究所 教授
クリックすると、内容を見れます。
クマは、このあとになるそうです。
2、意見のお送り方法、お送り先
○ 郵送の場合
〒100-8975 東京都千代田区霞が関1丁目2番2号
環境省自然環境局野生生物課鳥獣保護管理室 宛て
○ FAX の場合
FAX 番号:03-3581-7090
○ 電子メールの場合
電子メールアドレス:shizen-choju@env.go.jp
3、期日
令和2年12月14日(月)~令和3年1月12日(火)17:00まで
※郵送の場合は同日消印有効
※詳細は、意見募集要項 環境省HP(クリック)より
パブリックコメントを書かれる方は、以下の熊森の意見・提案をご参考にしてください。
<熊森のコメント>
1、錯誤捕獲を減らすために以下のことを徹底してほしい(p32② クマ類、カモシカ及びその他哺乳類の錯誤捕獲)
①例えば標高800m以上の奥山には捕獲罠を一切設置しないなど、野生動物のコア生息域に罠を設置することを厳禁する。
②シカ・イノシシ罠にクマなどが錯誤捕獲されないように、糠などのツキノワグマを強力に誘因する誘因物を使用しない、くくり罠の輪の直径は真円12cm以下を徹底させるなど、様々な処置を施すこと。もし、錯誤捕獲が発生した場合は、放獣を徹底させるとともに、今後、その場所に罠を設置しないようにすること。
2、シカの生息地を確保すべき。(p41-42上段「(9)生息地の保護及び整備に関する事項)
シカは本来、草原や湿原の動物だったが、戦後、ほとんどの生息地を宅地や農地に転用され、生息地を失ってしまった。四国や九州、西日本などは山全体が放置人工林に覆われ、今や林内に下層植生がない。この様な状態では、シカは残された僅かな自然林の下草か里の農作物に依存しなければ生きられなくなっている。放置された人工林を伐採して草原や湿原を再生したり、使われなくなったゴルフ場やスキー場をシカの保護区とするなど、安心して棲める生息地を人間の責任でシカたちに保障してやるべきである。
3、被害防除対策主軸の保護管理計画にすべき(p42-43「(10) 被害防除対策に関する事項)
シカの被害が深刻な地区は年間100頭から200頭のシカを捕殺している。このような場所で考えてみると、シカの有害駆除にかかる費用は、シカの有害駆除費の相場である15000円/1頭で計算すると、年間:150万~300万円である。
しかし、シカ防除のために1kmのワイヤーメッシュ柵を作るのに、工事費1000万円くらいが相場。ワイヤーメッシュは対応年数が10~15年ほどといわれているので、長期で見てみると、以下のようになる。
(10~15年のスパンの場合)
有害捕殺費:1500万~4500万円
金網柵設置保全費:1000万~1200万円(この期間の補修代などを考慮)
兵庫県シカ管理計画(資料編 平成29年3月)では、ワイヤーメッシュ柵設置による集落、田畑全体を囲う被害防除対策後の評価を各地区の農会にアンケートした結果、実に80%以上の地区で被害減少の高評価を得ている。
尚、シカの捕獲数もそうした地域では年間数頭にとどまっている。捕獲ではなく被害防除対策に重点を置く方が、長期的にみると個体数調整よりもローコストで確実に被害減少できる結果が出ている。
野生動物を殺さずに被害防除で野生動物に対応するやり方は、そもそもわが国が明治になるまで1200年間貫いてきた「殺生禁止令」の中で発案された「シシ垣」のアイデアである。野生動物との棲み分け・共存・被害対策は、野生動物を殺すことによって人間が決めた適正頭数に低減させ続ける西洋流のワイルドライフ・マネジメントを導入するのではなく、私たちの祖先が野生動物たちに生息地を保障して棲み分けてうまく共存してきた非捕殺対応こそを踏襲すべきである。以上。
山から出て来るクマの緊急避難対策 どんぐりを運ぶと、クマが山の中にとどまります その2
去年に引き続き、今年もまた日本は、5000頭以上のツキノワグマを大量殺処分しました。熊森は、兵庫県本部から上京して環境省を訪れ、殺さない対応策をとるよう都道府県を指導してほしいと頼みに行ったのですが、クマ対応はもう都道府県におろしてあるとして、全く取り合ってもらえませんでした。
これまでも環境省鳥獣保護管理室のクマ担当者たちに、かつてクマが生息してきた山がどうなっているのか、一度でいいから案内させてほしいとお願いしてきましたが、現地を見に行くのは自分たちの仕事ではないとして、応じていただけていません。現場を見ないと、山で何が起きているのか、絶対にわからないと思うのですが。
クマの殺処分を伝える今年のテレビニュースは、「これで安心ですね」という言葉で終わります。
こうして多くの国民が、子供たちに至るまで、これで安心なんだとクマ殺処分を肯定的にとらえるようになっていきます。
なぜ、次々とクマが山から出て来るようになったんだろうか、なぜ、市街地にまで出て来るようになったんだろうかと、以前の私たちのように疑問に思って調べてみる人はいないんでしょうか。
2020年は、私たち日本人がツキノワグマ絶滅の引き金を引いた年として、この国の歴史に残る年になることでしょう。
市街地にまで出て来たクマ(石川テレビより)
以下は、支部からの報告です。
今年も、山の実りが大凶作でした。
クマが連日山から出てくるようになり、人身事故が多発しました。
クマは見つかり次第、県の方針で殺されていきました。
人身事故が起きないように、また、クマが山から出てきて殺されないように、私たちは、山にドングリを運びました。
山に重いドングリをトンレベルで運び上げるのは過酷な重労働で、女性陣の中には腰を痛める人も出ました。
しかし、ドングリを一生懸命集めて送料まで負担して送ってくださった人たちのことも思い、支部員一同、確実にクマに届けるという使命感に燃えて、猟期が始まる11月15日まで続行しました。
ドングリを集めて送ってくださったみなさん、本当にありがとうございました。
実際のドングリ運びについて書きます。
まず、クマの目撃情報や現地の地理情報などを多く集め、分析して、クマが間違いなくいるあたりの山を慎重に探し出します。
ドングリを運ぶ山は、人間によって完全に自然生態系が破壊された人工林内か、すでに人間によって自然生態系の撹乱が終わった二次林です。自然生態系が残された原生林に運ぶことは絶対にしませんので、ご安心ください。
山に入ると案の定、クマの糞でいっぱいでした。
どれも、ギンナンを食べた糞ばかりでした。
口の中がかぶれないのだろうか。
肝心のおいしい種の中は、全く消化されていないが、少しでも養分は吸収できたのだろうか。
本部が以前、山の実りなしという大凶作年、兵庫県でもギンナンの糞がいっぱい見られたといっていたので、この糞も、空腹で苦し紛れに食べたのだろうか。
ギンナンの黄色い糞
人間の与えたドングリなんて、人間のにおいがついているから、絶対にクマは食べないと、実験もせずに言う方がおられますが、きれいに食べて殻だけになっていきます。
ドングリを運び続けているうち、あたり一面にあったクマのギンナン糞がドングリの糞に次々と置き換わっていくようになりました。
ドングリを食べたクマの糞
本部によると、飼育中の元野生グマ10歳オスは、秋の食い込み期になると、一日中ドングリを食べ続ける王になり、大きな塊の糞を一日約10個するそうです。
何カ所かに自動撮影カメラをかけて、チェックしてみました。映っていたクマたちに、次々と名前を付けていきました。
焼け石に水かもしれませんが、この近辺ではクマが山から出て来なくなりました。こうして、捕殺されるクマも、人身事故も、減らすことができました。
元版は動画です。(ドングリを食べに来たクマ)
みんなとても素直な顔をしています。
熊森本部から
どんぐり運びは餌付けだからやめろという人がいます。
餌付けって何だろう?
辞書で調べてみました。
餌付け=野生動物をならして、人の与えるえさを食べるようにすること。
熊森が大々的にどんぐり運びをしたのは、山の実り全てゼロというありえない異変が起き、冬ごもり前の食い込み用木の実を求めて山から出て来たクマたちに前代未聞の大量殺処分がなされた2004年です。
ところが、次の年は、なぜか山の実りは大豊作でした。
すると、クマは一斉に山から出てこなくなり、目撃数も激減しました。
熊森のどんぐり運びが、餌付けになどならないことが確認されました。
第一、クマにドングリを与えて、クマがドングリを食べるようになることに、問題があるとは思えません。
大量捕殺年にドングリを運ぶ一方で、熊森は本来の仕事であるクマ止め林づくりや奥山広葉樹林化に励んでいます。
熊森が運んだドングリをクマたちが食べています その1
地球温暖化や酸性雨(酸性雪)などの人間活動の影響を受けて、昨年に引き続き、多くの地域で、今年も山の実りゼロの異変が続いています。
たとえば、ブナの生育条件は、年平均気温が6度~12.5度まで。気温が上がると正常種子は実りません。ブナは大凶作で、実りはゼロです。
また、どんぐり類が枯死するナラ枯れの大発生など、信じられない事態が起きています。
奥山をフィールドに活動する私たちには、クマたちの本来の生息地である冷温帯の森が急速に劣化していると感じます。
飢えに苦しむクマたちが、日本海側の里や市街地に出て行き、連日殺処分されており、人身事故も多発しています。私たちは日々胸を痛めています。
緊急対策として、里の実りを山へ
環境危機による食糧不足により、人里周辺のカキ、クリ、どんぐり、オニグルミなどを食べに来ているクマは、エサが得られれば山へ戻ります。私たちは、近づかないでそっとしておいてやってほしいと思っています。絶滅防止のために、捕殺を控えるべきだと呼びかけています。
しかし、過疎化と高齢化で動物との棲み分けのための対策ができておらず、クマと人の突然の至近距離での接触を避けることが難しい地域が多いことも事実です。
このような場合、人身事故を防ぎ、クマの乱獲を止めるためには、クマたちを山にとどめることが必要です。そのためには、里の実りを、山中に運ぶことを緊急対策としてせざるを得ないと考えています。
下の動画は、山からクマが出てこないように、熊森が地元の方たちとクマの通り道にドングリや集落でもいだ柿などを運び、自動撮影カメラをかけてチェックしたものです。クマが、里の味を覚えると批判される方もいますが、柿は山にもあり、すでに昔から、クマは凶作年には、食用の木の実としてずっと認識しています。
ドングリを運んだ日時 昼 2020年10月26日14時35分
クマがやってきた日時 夜 2020年10月26日20時48分 暗くなってから、1頭のクマがやってきました。
熊森スタッフがカメラを回収したのは、10月27日の10時30分です。この間、約20時間の記録が取れました。
2020年10月27日5時23分まで、実にこのクマは8時間半にわたって休まずに食べ続けていました。
クマは暗闇の中で、ドングリを食べ続け、明るくなる前に立ち去りました。クマは夜行性の動物ではありません。なぜ、暗いうちにドングリを食べるのかと言えば、それは人を避けて行動しているからでしょう。クマは、人を恐れ、できれば接触を避けたいと思っていることがわかります。
熊森が、大阪府豊能町で保護飼育している元野生のツキノワグマの「とよ」と同じ格好で食べています。
「とよ」との違いは、「とよ」は明るい昼に食べますが、このクマは、暗闇の中で食べていることです。
クマが立ち去ると、直ちに複数のタヌキが現れ、このドングリを食べ始めました。
このようなボランティア活動を続ける熊森に対して、焼け石に水と笑う人や反対する人もいます。しかし、何もしなければこのクマは里に下り、飢えに苦しんで夜、里の柿の実をこっそり食べに行き、大量に仕掛けられた罠に掛かって殺されるか、朝帰りが遅れて人間に見つかり、大勢の人たちに追い掛け回されて射殺されることになるでしょう。その過程で時には人身事故を起こしてしまうかもしれません。そちらの方がいいのでしょうか。多くの皆さんに考えていただきたいです。
山に実りが無い場合の緊急対策として、自治体や地域のみなさんにドングリ運び柿運びの実践を検討していただきたいです。
(注)山やクマに詳しくない方がどんぐりを運ぶのは危険です。私たちは、一般の方に山にどんぐりを持って行くことを推奨しているわけではありません。クマの出てきている地域で通り道を考え、人との接触が起こらない場所に置く必要があり、森やクマに詳しい集落の方や猟友会と一緒に行うことが望ましいです。
元野生グマ「とよ」の飼育からわかる秋のクマのどんぐり食
「とよ」は、大阪府豊能町で推定5歳でイノシシ用の箱罠にかかり、殺処分が決まったため(鳥獣保護法によれば錯誤捕獲で放獣しなければならないのですが)、やむを得ず熊森が、高代寺の協力のもと保護飼育することになりました。
とよを飼ってみてわかったことですが、成獣グマは50キロのドングリを約一週間で平らげます。200キロ運ぶと、1頭のクマを1か月間山に留められます。
秋は、クリやどんぐりなどの堅果を好む
10月13日に、「とよ」にドングリの山を与え、中央にリンゴと柿を1個づつ置いてみました。
「とよ」は、掃除後、運動場に出されると、ドングリの山に飛んできて、リンゴと柿を前足で払いのけ、ドングリと栗だけを抱きかかえるようにして、ずうっと食べ続けていました。(観察時間4時間)
冬ごもり前のこの時期、クマが本当に食べたいのは、皮下脂肪を蓄えるために欠かせない栗やドングリなどの堅果類の実りなのです。
ドングリの山の上に覆いかぶさるようにしてドングリを食べ続ける「とよ」
時たま、プールに行って水をゴクゴク飲み、また、ドングリのところに戻って食べ続けていました。
プールの水を飲む「とよ」、冬ごもりに向けてだいぶん皮下脂肪がついてきました。
人と心を通わせられる穏やかな生きものです
クマとの共存策を考えるには、殺されたクマを解剖して研究しているだけではだめで、生きたクマを飼ってよく観察することが必要です。クマを飼うと、いろんなことがわかってきます。人間と深く心が通じ合えるすばらしい動物です。
野生で大人になったクマは人を恐れています。しかし、愛情いっぱいに飼育すると、クマはやがて人間を信頼するようになり、よくなつきます。そして、表情が明るくなり、幸せそうな顔付きになります。それを見た人々の頬はゆるみ、みんなが笑顔になってゆきます。
高代寺(大阪府)の「とよ」10歳 2020.10.13撮影
クマとの共存のために動き出そう
クマは、今、まるで凶悪犯罪者のように報道されていますが、大きな誤解です。大変な間違いです。
飼ってみると、人間よりずっと平和的で飼育者を思いやるやさしい動物であることがわかります。
祖先がしてきたように、人と棲み分け生息できる環境を取り戻してやれば、クマは日本の国土で人間と十分共存できる動物です。
戦後、広大な奥山生息地を破壊した私たち人間が、責任を取って、奥山を復元しませんか。
情けはクマのためならず。
私たちの大切な水源の森を未来永劫に守ることでもあるのです。
山の実りが皆無になってしまった今、当面、山裾に、クマの餌場として、クマ止め林(凶作年のえさとなるような柿やクリ、平地で実るクヌギなどのドングリ種の林)を造っていきませんか。
目の前の問題解決を図るため、里でもいだ柿やドングリを、山に運んでやりませんか。
学校が子供たちにドングリ集めを広めてくだされば、すばらしい情操教育、環境教育になります。
今秋の緊急対策として、里のドングリを集めてくださっているすべての皆さんに、心から感謝申し上げます。(完)
大型台風19号により東日本の21河川24か所が決壊し多くの住宅が水没 地球温暖化対策を問う
台風19号に思う
大型で非常に強い台風19号は、2019年10月12日午後7時前に静岡県の伊豆半島に上陸し、東海、関東、東北と進み、強風と大雨による大きな被害をもたらしました。被害にあわれたみなさんに、お見舞い申し上げます。
東京都心では瞬間的に40メートルを超える暴風を15年ぶりに観測しています。
神奈川の箱根では12日に降った雨の量が900ミリを超えて全国の観測史上1位を記録しました。
その結果、10月13日のニュースによると、21河川で24か所の堤防が決壊し、決壊まで行かなくても多くの場所で越水が見られたもようです。
水没した住宅地が次々とテレビニュースに映し出され、居住者はご無事だっただろうか、犬や猫たちは逃げおおせたのだろうかと、胸が痛みました。
いずれ水は引くでしょうが、その後の泥まみれの家の片づけを思うと気が遠くなりそうです。
テレビニュースのインタビューを見ていると、戸建て住宅の皆さんは高齢者が多く、とてもこの人たちの力だけでは片づけられないのではないかと思いました。国や地方自治体による大きな支援が必要です。
徳島新聞号外より
長野市在住の宮澤正義くまもり顧問のおうちは大丈夫でした。
地下鉄やリニア
このような洪水が、地下鉄や大深度地下を走るリニア中央新幹線に流れ込めば、一体どうなることか。復旧はもう不可能でしょう。
熊森は改めて、リニア中央新幹線の建設をやめるべきだと訴えたいです。こんなに災害の多い日本でリニア中央新幹線の建設推進をそそのかした黒幕は、日本経済の衰退を願う外国勢力ではないかと疑ってしまいます。(国民のみなさん、祖先から受け継いだすばらしい国土の横っ腹に、地下水脈を次々とぶちきって長い長い深穴をあけることに反対の声を挙げませんか)
ダムの緊急放流
それにしても、関東甲信越地方の河川上流にあるダムでは12日夜から13日未明にかけて大雨の真っ最中に次々と緊急放流を実施したということで、西日本豪雨の時のダムの緊急放流問題が生かされていないなあと思いました。緊急放流はダムが洪水調節機能を喪失する事態で、そんなことをすれば下流域で水位が急上昇するのは当然です。台風19号は来る前から、記録的な豪雨をもたらすと予測されていたのですから、ダムは空にして備えていたらよかったのにと思いますが、実際ダム放流の責任者になってみれば、その決断にはなかなか難しいものがあったのだろうと察します。
地球温暖化
こんな大型台風が、これから何度も日本列島を襲うようになるのでしょうか。たまりません。マスコミは、現象ばかりを報道しますが、近年、大型台風が頻発するようになった原因があるのなら、それも合わせて報道すべきです。今回の19号台風がかくも大型台風に成長したのは、日本近海27度という海水面の温度(台風発生場所は30度)
の高さも原因の一つだと言われています。地球温暖化を止めないとますます台風がエスカレートしていくのでしょうか。
CO2よりシベリア東部のメタンガス噴出による温暖化
地球温暖化に詳しい人に聞くと、今や地球温暖化の脅威はCO2ではなく、解け出した永久凍土から出てくるようになったメタンガスだそうです。メタンガスの温室効果はCO2の100倍と言われています。シベリア東部の海岸線ではメタンハイグレードが不安定化しメタンガスが噴出しているそうです。さらにエアコンなどに広く使われている代替フロンの温室効果はCO2の数百~数万倍と言われています。
マスコミのみなさんへ
日本のマスコミのみなさんには、野生動物大量捕殺問題を初め、全ての問題に対して、現象だけを国民に伝えるのではなく、原因と対策まで伝えていただきたいです。
もう一つ、もういい加減に人間至上主義から脱してほしいです。こういう災害時に、他の生き物たちがどうなったのかの報道が全くありません。人間のことばかり見てきたから、人間は地球環境を破壊できたのです。人間至上主義は人間を滅ぼす。
便利さよりも地球環境保全
今の暮らしは、以前と比べて格段に楽で便利になりましたが、その暮らしが、近い将来、地球の気温50度、海水温40度、植物は光合成が出来ず、食物連鎖は断ち切られ、海の中に住む生物もほぼ全てが消え生物の95%が死に絶えたという2億5000万年前の地球環境の再来をもたらすという説もあります。地球環境保全はプラスチックが海や海の生物を広域に汚染してしまっていることなども入れて、もう手遅れと個人的には感じています。しかし、マスコミが本当のことを伝えるようになれば、戦争中、「欲しがりません、勝つまでは」をやり抜いた我ら日本人は、経済はほどほどにして地球環境を子や孫に残そうと、欲望を押さえ始めると思います。地球人の良きお手本になれると思います。
国民は、リニア中央新幹線と南アルプスの森と動植物の生存、どっちを取るのか 第15回口頭弁論
熊森は、毎回上京して、ストップ・リニア訴訟の口頭弁論を傍聴し続けています。
<7月19日第15回口頭弁論>
(1)原告適格についての陳述(関島弁護士)
ストップ・リニア訴訟では、800名ほどが原告として登録しているが、行政訴訟で、原告として認められるためには、リニア建設によって直接的な不利益を被ること示す必要がある。
しかし、被告である国交省とと参考人であるJR東海は、詳細の工事計画(ルートや建造物、残土置き場の地図)を提出しないため、いまだ原告適格を定めることができない。リニアがどこを走るのか、2500分の1の縮尺の地図を次回、提出するよう求める。
(2)環境影響評価アセスメントについての陳述(横山弁護士)
いまだにJR東海が、どこにどのような建造物を造るのか、残土はどこにどう置くのか、確定できていないものが多々ある。国は一体JR東海が行ったリニア環境アセスのどこを見て妥当と認可したのか。
(3)口頭弁論後、衆議院第2議員会館でシンポジウム
県民の水源である南アルプスを守るため、JR東海との議論を重ねている静岡県から
リニア新幹線を考える静岡県民ネットワーク共同代表の林克氏
南アルプスとリニアを考える市民ネットワーク共同代表の松谷清氏が報告
静岡県は、JR東海の無謀で不誠実な計画に対抗し、2014年より中央新幹線環境保全連絡会議を設置。
難波静岡県副知事が国土交通省出身ということもあり、JR東海が行っている環境影響評価の問題点を指摘し、徹底した評価と対策を求めている。
大井川の流量減少問題で、静岡県と流域の8市2町11の利水団体が2018年に「大井川利水関係協議会」を発足させ、川勝平太静岡県知事に大井川の流量確保と水質保全対策の徹底をJR東海に働きかけるよう要望書を提出。
これが、静岡県がリニア問題に力を入れるきっかけになった。
ストップ・リニア訴訟の橋本事務局長のことば
リニア工事により各地で水枯れが起きている。JR東海は、南アルプスに生息する希少生物は“移植する”から大丈夫といっている。
リニア問題は、南アルプスを守ることを目的として活動を進めていくことが重要である。
熊森から
南アルプスは、太平洋側で唯一まとまって残された最後の原生林であるため、クマをはじめ多種多様な生物たちが生息しており、わたしたち人類の生存と全産業を支える水源の森です。
リニア大深度トンネル工事による谷川の水涸れ状況の報告を聞いて、私たちは子供たちに南アルプスとリニアのどちらを残すのか、もう決断しなければならない時だと思いました。
日本熊森協会としては、南アルプスの貴重な野生動物であるクマが、森の乾燥化によって南アルプスで生きられなくなった場合、JR東海はどこに移住させてくれるのか、公開質問状を出して、言質をしっかりととっておきたいと思います。
日本に、野生動植物を移住させられる生物空白地帯など、どこにもないのは明らかですが。
今回のシンポジウムに韓国からの留学生が出席。リニア問題のドキュメンタリーを制作するとのこと。「私は日本の自然が大好きです。それがリニアによって失われるのがとても悲しい。」と言っていました。
札幌南区の住宅地に出没を繰り返していたヒグマの射殺に思う ヒグマに街・人間恐怖体験が必要
8月に入って札幌南区の住宅街に入り込み、家庭菜園のトウモロコシなどを食べ歩いていたヒグマが、14日早朝、山林に戻ったところを、行政から射殺依頼を受けていた猟友会員たちによって射殺されました。
研究者の鑑定によると、体長1・4メートル、体重128キロで、推定年齢8歳程度のメスのヒグマだったそうです。
熊森から
全てケースバイケースなので、一概に言えませんが、このケースでは、もっと早めに、勇気ある人たちが防護マスクを着けて、車でこのヒグマに近づき、窓からトウガラシスプレーをヒグマにめがけて噴射し、車で逃げ去ることを繰り返せばよかったのではないでしょうか。噴射実験に立ち会ったことのある者としては、あれは強烈です。二度と味わいたくありません。ヒグマも、そう思うのではないでしょうか。
街に出て行ったら人間にとても嫌なことをされる殺されるかもしれないという人間忌避感人間恐怖感を、ヒグマに抱かせるしか、このヒグマの命を救う方法はなかったのではないかというのが、熊森の感想です。(山奥の集落では、仲良く共存もありでしょうが)
くまもり顧問の門崎允昭博士に伝えると、同じことを感じたねと言われました。捕獲して奥地放獣では、クマは賢いので、すぐまたおいしいものがある住宅地に戻ってくると思われます。
遠軽で、オオカミ犬を使って、ヒグマが山から出て来ないように追い戻しておられる岩井氏も、ヒグマが出てきたら、心を鬼にして、殺されるのではないかと恐怖を感じるほど目をむいてオオカミ犬と一緒にヒグマを追いかけまわすと言われていました。岩井氏は、これによって、ヒグマは教育できると言われています。
今回、連日のテレビ報道を見ていて、熊森が感じたのは、最初はおっかなびっくりで出てきたヒグマでしたが、パトカーやマスコミ、市民や猟友会員、多くの人間に会ううち、このヒグマは、人間に認められていると誤解し始めたのではないかということです。
現場で見ていたある方が、このヒグマは人間と友達になりたいと思っているのではないかと感じたと言われていました。勇気を出して人間の所に出てきたら、みんなが見に来て、怖くもなんともない大きな音を立てて見物に集まってくる。人間は脅したつもりでも、このヒグマにとっては人間の脅威を感じなかったのだと思います。まして、命を奪われることになるなど、想像もできなかったのだと思われます。
ヒグマのような大型動物が街に出ていると、ヒグマにはその気はないでしょうが、やはり突発的に人身事故が起きる可能性があります。次回、このようなことが起きた場合は、街全体住民全体マスコミも含めてみんなで心を鬼にして、町に出ていったら人間に殺されるかもしれないと感じるような恐怖感を、ヒグマに与えてみてほしいです。それが、ヒグマへの教育になります。
それにしても、札幌市内で銃によるクマの駆除は2013年以来6年ぶりとのことで、以前の札幌市なら、また、他の町なら今でも、すぐに射殺してしまっていたケースです。。
札幌市担当者は随分と長く見守ってくださったと思います。担当課は、その名も、札幌市環境局環境都市推進部環境共生担当課 で、共生をめざそうという心意気が見てとれます。
電話番号:011-211-2879 ファクス番号:011-218-5108
日本の行政担当者は、普通3年ごとに部署替えがあり、なぜか行政内に専門家が育たないようなしくみになっています。よって、判断は外部の専門家と呼ばれる学者にゆだねられます。
今回も、このヒグマの殺処分を決定したのは、研究者ではないでしょうか。新聞報道によると、ーーークマの生態に詳しい道立総合研究機構環境科学研究センター(札幌)の間野勉自然環境部長は「市の基本計画に基づき、駆除という適切な選択肢を取ったと考えている」とコメントした。---と、ありますから。
クマも他の野生動物もみんな、畏敬の念をもって私たち人間が接するべき相手であり、愛すべき生き物同士です。私たちは研究者の皆さんに何度かお願いしているのですが、クマの研究者を名乗るには、駆除や解剖や遺伝子研究だけではなく、私たちのようにクマを飼って触れ合ってほしいということです。人間と深く心が通じ合うやさしい動物ですから、飼えば、何とか殺処分せずに生かそうという気持ちが起こってくるはずです。
今回札幌市役所には、このヒグマを殺さないようにという声と、早く殺してほしいという声が、数にして半々で届いたということです。
北海道新聞によると、12日朝に自宅前でクマを目撃した無職鈴森仁さん(70)は「(クマが)かわいそうという気持ちもある。こうなる前に山に帰ってほしかった。行政はクマと共生するいい方法を打ち出してほしい」と訴えた。とあります。
また一方では、「駆除されてほっとした」という声もありました。実感かもしれませんが、これには、ちょっと残念です。短絡的というか、あなたはほっとしたかもしれませんが、相手は一つしかない命を失ったのです。全生物との共生を、学校でももっと教えていくべきでしょう。
今回のことで、本部からも札幌市役所担当者に電話してみました。バカにせずに丁寧に聞いていただけたと感じました。次回は、何とか殺さず、生命尊重第一で問題解決していただきますよう、お願いしておきました。
札幌の町にヒグマが近寄ってきたという報道は誤りで、札幌は、元々、ヒグマの生息地に、後から人間が入って行って住まわせてもらっている街です。(完)
政治も司法も不在の長崎県石木ダム 反対派住民「強制執行で古里奪わないで」と県庁に乗り込む
以下、長崎新聞7月18日より
川棚町に石木ダム建設を計画する県と佐世保市に、反対住民らが工事差し止めを求めた訴訟の第12回口頭弁論が7月17日、長崎地裁佐世保支部(平井健一郎裁判長)であり、水没予定地の住民ら原告7人が当事者尋問に出廷し「力づくで古里を奪わないでほしい」と訴えた。
長崎県収用委員会は今年5月、反対地権者13世帯の宅地を含む未買収地の明け渡しを求める裁決をし、家屋の撤去や住民の排除などの行政代執行が現実味を帯びる重大局面に入った。明け渡し期限は、家屋などの物件がない土地が9月19日、物件がある土地が11月18日。
住民の岩本宏之さんは「崖っぷちに立たされ、眠れない夜もある」、
石丸勇さんは「大変な人権侵害だ」と怒りをあらわにした。
岩下すみ子さんは「地域の人たちとのつながりを長い年月をかけて築き上げてきた。失いたくない」と声を詰まらせた。
石丸穂澄さんと松本好央さんは、イベントや会員制交流サイト(SNS)などを通じて、事業への疑問や反対の声に対する共感が全国で広がっていると主張した。
水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之共同代表と市民団体「石木川まもり隊」の松本美智恵代表も出廷。
嶋津共同代表は、石木ダムの治水効果は川棚川下流域にしか及ばず、上流域には氾濫のリスクが残っているとし「費用対効果が小さい」と強調。松本代表は人口減少による水需要の低下などを指摘し「誰のための公共事業か。県と佐世保市は現実を直視してほしい」とダム以外の利水対策を検討するよう求めた。
以下、長崎新聞7月31日記事より
石木ダム建設事業に反対する地権者や市民団体などの約200人が7月30日、約6時間にわたり長崎県庁内で抗議活動を実施し、庁内は一時騒然となった。家屋を含む土地の明け渡しを地権者に求める県収用委員会の裁決が出た中で、地権者らの不満が爆発した形となった。
県庁の担当者らに詰め寄る地権者ら(長崎新聞より)
熊森から
ダムは百害あって一利なし。
川は流れていてこそ価値があるのです。ダムでせき止めると、水は腐り、ダム湖にはヘドロがたまり、大自然破壊となります。
多くの生き物が死に絶えます。
このようなムダなダムを、なぜ我が国は造り続けるのか。
日本熊森協会顧問の京都大学今本博健先生が書かれた「ダムが国を滅ぼす」を読まれたら、答えは一目瞭然です。
ただただ、建設利権だけなのです。
建設会社と口利き政治家(報酬相場は、ダム建設事業費の5%)を潤すことだけのために、愛する故郷を失わねばならない。
50年間ダム建設に反対し続けてきた地元住民のみなさんの無念ぶりはいかばかりかと思いやると、胸が苦しくなります。
土建業の公共事業で経済を発展させようという戦後の経済政策から、もういい加減に脱却しないと、国が破滅してしまいます。
建設会社のみなさんは、これからはダム建設ではなく、放置人工林の広葉樹林化・天然林化を公共事業にする時代です。
乗り遅れないようにして下さい。これだと、誰も泣かすことなくもうけられます。精神衛生にもいいですよ。
7月30日、反対し続けてきた地元住民のみなさんは長崎県庁を訪れ、強制収用の取り下げを求める中村法道知事宛ての要請書を提出しようとしたようですが、知事は出張中で不在。副知事は「公務中」を理由に姿を見せなかったそうです。
長崎県側のコメントは、「大騒ぎになってしまい非常に残念」というものだったそうです。
なんだこれ???ふるさとを奪わないでほしいと全身全霊、体を震わせて訴えている地元住民に対する県側の思いやりのなさ、まるで他人事には、唖然とします。完全に、政治も司法も人権も不在です。私たち国民はこのような状況を認めてはならないと思います。やがて我身にも、この生きづらさが襲ってきます。
熊森は自然保護団体としてはもちろんですが、人間としても、おかしいことにおかしいと勇気をもって声を上げ続けてきた地元住民のみなさんに、心から連帯の拍手を送ります。
ダムは100%、自然破壊以外の何物でもありません。
わたしたち国民は、建設会社と口利き政治家の嘘にだまされないように、もっと勉強しなければなりません。
権力の暴力である強制収用は、今も昔も、絶対にあってはならぬものです。
<石木ダム問題について書いた2019年3月30日のブログを、もう一度以下に再掲させてください。>
たとえ、どんなに意味のあるダム工事計画であったとしても、50年間も住民が立ち退きたくないと断り続けているのですから、完全に行政の負けです。
行政が最後まで残っている13家族を説得できなかったのです。
そんなところにダムを造る権利は国にも県にも市にも誰人にもありません。
もはや基本的人権を認めるかどうかの問題です。
いくら自分がいいと思っても、相手が絶対嫌だということは、してはならないのです。
これは、人間社会に於ける最低限のルールだと思います。
私たちも長崎県知事に、石木ダム建設地を強制収用しないようお願いしましょう。
食べもの通信7月号!
食べもの通信社が発行している「食べもの通信2019年7月号」2ページ~4ページに、日本熊森協会の森山まり子名誉会長インタビュー記事が掲載されました。
どのようなものをどのようにして食べればいいのかというオーソドックスな内容を、1970年から追求し続けてきた「食べもの通信」。
ネット情報が氾濫している今、年間購読料8000円を出してこのような雑誌を購読されている方はどれくらいおられるのだろうか。
疑問に思い読者数をたずねてみると、意外に多い。
なぜだろうと、思わず中身を読んでしまいました。
単なる料理本ではなく、生産者や消費者の話、医学情報や環境問題と内容はバラエティに富んでいます。
「クマに奥山の森を返す活動を続けて26年」なんて内容が、トップの特集記事になるぐらいですから、編集者の興味関心はかなり柔軟で幅広いと言わざるを得ません。
日本という歴史のある国で、祖先が長年かかって作り上げてきた食文化は貴重です。
しかし、何をどう食べるかは個人的な問題ですから、少しでも強制力が働くと、相手を傷つけてしまう恐れがあります。
編集部の方に、どんな方がこの雑誌を購読されているのですかとたずねると、お姑さんが購読されて、そっとこの雑誌をお嫁さんに見せたりされていますという一例を教えてくださいました。なるほど、こうすれば角が立ちにくいですね。
いろいろな方がいろいろな目的で購読し続け、50年間にわたり愛されてきた「食べ物通信」。
日本熊森協会の「くまもり通信」も、かくありたいと思いました。
森山名誉会長の2019年5月時のインタビュー、ぜひ多くの方に読んでいただきたいです。
これはおもしろい、読み応え十分、一気に読破 林将之著「葉っぱはなぜこんな形なのか?」
図鑑分野でベストセラーとなった「葉で見分ける樹木」など、樹木図鑑を次々と世に出される一方、今や講演など各方面で大活躍されている日本熊森協会顧問でもある林将之先生(1976年山口県生まれ)が、上記名の初エッセイ集を5月に講談社から出されました。
「葉で見分ける樹木」図鑑は大変優れもので、熊森本部スタッフたちも山行き時に必携となっていますが、今回の、「葉っぱはなぜこんな形なのか?」の内容に関しては、中身が予測できず、日本熊森協会本部に送られてきたものを、とりあえず読んでみることにしました。
表紙の葉っぱの絵の中に、クマとシカの小さな絵が入っています。なぜかな?読んでみてのお楽しみ。
感想の前に、まずこの本で、林将之先生が24歳の2000年に「このきなんのき」という樹木鑑定サイトを主管して立ち上げておられることを知りましたのでご紹介しておきたいと思います。樹木の写真を送って名前を尋ねると、先生をはじめ、いろいろな市民ボランティアがかかわって、無料ですぐに名前を教えてもらえるのです。すばらしい市民サービスですね。
さっそくサイト内をのぞいてみました。大変利用しやすくなっています。こんなサイトを作ってくださっていたのか。林先生らしいなあと思いました。みなさんも大いに利用してください。
さて、この本の感想ですが、私たち熊森はこれまで最高の研究者についてもらって、ずいぶんいろんな樹木について勉強してきましたが、この樹木の葉っぱが、なぜ不分裂葉、なぜ分裂葉、なぜ全縁、なぜ鋸歯縁、なぜ単葉、なぜ羽状複葉など1回も考えてみたことがありませんでしたので、大変新鮮でおもしろかったです。
知識偏重の世の中ですが、先生が言われるように、自然界はわからないことだらけだけれど、まず、固定観念なしに自分で考えてみるという姿勢が、とても大切だと思うようになりました。先生は、本書に書いたことは筆者の知識を基にした主観であり、科学的な根拠をしっかり確かめた訳ではないと断られています。もちろん集めた葉っぱの枚数は10万枚に上るということで、膨大なデータがバックにあってのこと。単なる無責任な思い付きではありません。
どうしてこの本が楽しいのかというと、指導教官の顔色や所属学会の評判、他人の指摘やバッシングなど気にしてカチカチにならざるを得ない学問の世界の中で、林先生がそのようなことを一切気にせずに全く自由に考え自由に発言されているからだと思います。先生の中に強さや自信があってのことでしょうが、本来学問はこのように自由に意見交換されるべきものだろうと改めて思いました。論文ではなくエッセイなら思い付きでいいのだと思いました。一読者として、先生と一緒になって考えながら読み進められました。もちろん、読み終わってから、樹木の葉っぱを見る目が変わってきたのは言うまでもありません。世界がまた新しく大きくなりました。
林先生ありがとうございましたと終わりたいところですが、実はこの本、題名からはわかりませんが、約5分の2のページが、クマ、シカ、オオカミの問題や自然と人間の関係について述べられているのです。先生の知見がどんどん広く大きくなっていっておられるのを感じます。ここでも先生は、この本は、論文でもなければ知識を紹介する本でもなく、僕の考えを紹介するエッセイと断って、これまた林先生の自由闊達な所見が述べられているのです。ふーん、そのような考え方もあるのかと、妙に感心したり影響を受けたりしてしまいます。自然界のことは、神のみぞ知るの世界なので、神でない私たち人間としては、全く普通の一市民として、正直に思うまま自由な議論を気楽に出し合えばいいのだと林先生の初エッセイ集から教わりました。林先生のさわやかで正直な人間性が伝わってくるエッセイ集でもありました。今回の出版を心からお祝い申し上げます。
今後、日本熊森協会としては、林先生の講演会を企画していきたいですし、その時には、この楽しくしかも考えさせられる本をたくさん仕入れて、おすすめ本として販売しようと思いました。