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カテゴリー「_八幡平クマ牧場」の記事一覧

佐竹敬久秋田県知事が、八幡平クマ牧場に残されたクマたちのこの後の処遇に関して、国内外の声を聞くと表明

クマ処分で知事「国内外専門家の意見聞く

「秋田八幡平クマ牧場」に残るクマ27頭の処分について、佐竹知事は11日の記者会見で、「世界中の色んな専門家の意見を踏まえて検討したい」と述べ、学者や動物愛護団体など国内外の専門家の意見を参考にした上で最終的な方向性を決める考えを示した。

 

佐竹知事は会見で、国内では大規模なクマ牧場を閉鎖した前例がないとして、「(クマの扱いの)結末が今後の日本全体、あるいは世界での一つのケー スになる」と述べ、今回の処分が先例になるとの認識を示した。その上で「事例がたくさんあれば、それを踏襲できるが、一定の見識を持った事例を我々が作る となると非常に慎重に運ばなければならない」と述べた。

 

県によると、クマの譲渡先探しを支援している動物愛護のNPO法人「地球生物会議」(東京都)などを通じ、「世界動物保護協会」(本部・ロンドン)など国際的な動物愛護団体や海外の大学教授などの意見を聞き、最終的な処分方法を検討するという。

 

一方、佐竹知事は、牧場の元経営者ら2人が逮捕されたことについて、「今後どうなるかは司法に任されること」とした上で、「引き取り先の問題解決 は、10月まではかかるだろう」と述べ、牧場で飼育にあたる非常勤職員の雇用期間を10月末まで延長し、事実上、県がクマを飼育する考えを改めて示した。

(以上、2012年6月12日  読売新聞より)

秋田県佐竹敬久知事
〒010-8570 秋田市山王四丁目1-1  秋田県庁
TEL:018-860-1111 FAX:018-860-1072
E-mail:info@mail2.pref.akita.jp
当協会も、声を届けようと思います。

6月12日 速報 北秋田市、八幡平クマ牧場のツキノワグマ6頭全頭引取りを正式発表

本日、北秋田市の津谷永光市長さんが記者会見し、阿仁の熊牧場に、八幡平クマ牧場のツキノワグマ6頭全頭を引き取ると発表されました。

 

2010年、愛知県豊田市で有害駆除用の檻にかかり、殺したくないという豊田市の職員さんたちの優しい気持ちから八幡平クマ牧場に送られてきた野生ツキノワグマの親子がいました。母グマは檻に入れると狂乱したようになり、すぐに死亡しましたが、2頭の子グマが残りました。今回の決定で、彼らは生き残れます。母熊は、きっと天国で泣いて喜んでいることでしょう。

 

21頭のヒグマについては今後検討されるということですが、施設的にかなりむずかしいということです。阿仁のクマ牧場では現在1頭のヒグマを飼っていますが、年とっているものの元気です。

 

北秋田市(人口約3万6千人)の津谷永光市長様に感謝のFAXを入れました。

本庁所在地:〒018-3392 秋田県北秋田市花園町19番1号 TEL:0186-62-1111(代表) FAX:0186-63-2586

 

八幡平クマ牧場クマ基金へのご寄付願い ⑮

郵便振替口座番号 00980-1-301781

口座名  八幡平クマ牧場クマ基金

<基金へのご寄付の呼びかけ>
本年4月20日、秋田県鹿角市八幡平クマ牧場で、6頭のクマたちが施設の外に出てしまう事故があり、飼育作業員2名が死亡、クマたちも6頭全て射殺されるという痛ましい事件がありました。この後、牧場に残された29頭のクマたちは、牧場経営者1名と秋田県庁から週3回派遣される3名の職員たちによって、給餌などの世話を受けてきました。6月からは、県職員1名と、臨時採用された3名が、お世話くださることになるそうです。

秋田県は現在、残されたクマたちの引き取り先を一生懸命探してくださっています。ただし、今のところ、冬以降も残されるクマが出た場合、殺処分はやむをえなしの方針です。

当協会は、人間が生き物を飼うからには、最後、寿命を全うするまで飼い続ける責任があると考えています。今回のことは、このことを国民に示すまたとないチャンスです。当協会は、全頭の救命措置を秋田県に強く要望します。生き物の命を大切にする解決法は、全国の子どもたちに夢や希望を与えると同時に、大人や社会への信頼感を育てます。海外に向けては、日本人の責任感や日本文化の高さを示すことになるでしょう。

当協会が5月21日22日の両日、牧場を現地視察した結果、予想外に施設が老朽化していることがわかりました。これから暑い夏を迎えるにあたって、当面、水の供給、給餌、日陰作りなど、残されたクマたちの飼育環境を早急に改善していく必要があります。牧場経営は、すでに破たんしており、経営者には経済的余裕が全くないということです。クマたちの安全面や健康を保つ面から、資金面の援助が必要です。当協会の予算は、本来の奥山保全・再生活動と大型野生動物保全のための予算であり、クマ牧場のクマを救うための予算は組まれておりません。それ故、当協会にも、当然、限界があります。

現時点では、当協会以外に基金立ち上げの動きがないようなので、当協会が八幡平クマ牧場に残されたクマたちのための基金を立ち上げることにしました。会員のみなさんをはじめ、心ある多くの国民のみなさんのご協力をお願いいたします。尚、基金は当協会が責任を持って管理し、会計報告も行います。このような問題はひとりでは解 決できませんが、多くの者が力を合わせることによって、夢が実現されます。まず私たちが寄附金を入れます。志を同じくするみなさんが後に続き、ご協力くださることを願っています。

一般財団法人 日本熊森協会 会長 森山まり子                 (2012.6.4)

全頭救命に向けて、本当によくやってくださっている秋田県を初め、牧場経営者など、関係者すべてを支援する体制を民間としても作っていきたい⑭

今回秋田県に来て古い映画の看板を見て気づいたのですが、1992年当時、兵庫県尼崎市の中学生たちが「ツキノワグマを絶滅させるな」と立ち上がって、当協会発足の原点となる激しいクマの保護運動を展開した背景には、1991年の校内映画上映会で、愛くるしいいたずら子グマを主人公にした秋田県が舞台の映画「イタズ」を見ていたからかもしれません。この映画を見ると、クマが人間と心を通い合わすことのできる素晴らしい動物であることがわかります。もう一度この映画を見てみたくなりました。

<秋田県庁に申し入れる熊森森山会長>

前日、秋田県佐竹知事さんとの会見を急遽申し込みましたが、急なことでかないませんでした。しかし、秋田県生活環境部部長さん、次長さん、課長さんら偉い方々が、50分間対応して下さいました。驚いたのは、ずっと県庁記者クラブの若い記者さんたちが、横で取材されていたことです。このオープンさは、民主主義の基本です。部長さんを初め、みなさんが真剣に私たちの申し入れを聞いてくださいました。何と誠実で良心的な行政なのだろうかと、感激しました。

熊森の申し入れ内容

◎必ず、全頭救命を果たしてほしい。長年クマ保護活動に携わってきた実践自然保護団体として、熊森はできる限りの協力を惜しまない。

●事件後1ヶ月、経営者もクマたちも疲労困憊しきっているため、これ以上の人的クマ的消失がおきないよう、負担軽減、飼育環境や飼育方法の改善をお願いしたい。(すでに、秋田県は連日次々と手を打っていっておられました。すばらしい県職員さん達です)

●今、日本中、世界中が、八幡平クマ牧場に残されたクマたちはどうなるのか、注目している。いったん生き物を飼ったなら、最後まで責任を持って飼うのは、人として当たり前のことだ。秋田県だけで全頭救命が無理なら、環境省(国)にも入ってもらい、飼育した動物に大人が責任をとるところを子どもたちに見せてほしい。その教育効果は計り知れないから、文部科学省も予算を組んで協力してくれるのではないか。

このあと、県庁記者クラブで、記者会見を持っていただきました。

記者さんたちが熱心に質問され、関心の高さがうかがわれました。ありがたかったです。残り28頭のクマたちの引き取り手が、現れなかったらどうなるのか、みなさんとても心配されていました。どうなろうとも、熊森の選択肢に、殺処分はありません。

人間が、金儲けの為に、または楽しむ為に、狭い檻に生涯クマたちを閉じ込めて生の喜びを奪い、利用するだけ利用して、利用できなくなったら安楽死という美名の元、殺処分してしまう。それではまるで、人間が悪魔になってしまっています。こんなことが許されるなら、人間という動物は倫理観を失い、人間社会までだめになってしまうでしょう。純粋な子供たちは、夢や希望を失い、誰もがもう大人のいう事など信用しなくなるでしょう。その弊害は計り知れなく大きく、取り返しのつかないものです。

経済第一主義病、人間至上主義病に冒され、生き物の命を使い捨てて平気な思想が、森を壊し、自然を破壊し、地球環境を復元不可能にまで痛めつけ、人類を破滅へと導いているのです。八幡平クマ牧場のクマたちの全頭救命は、単にクマたちだけの問題ではなく、日本人が西洋の自然観から脱却し、全生物の命を尊重する持続可能な祖先の文明へ立ち戻れるか、国の命運をかけた重要な局面なのです。

わたしたち心ある国民が力を合わせて、秋田県を初め、牧場経営者など、関係者すべてを支援する体制を作っていきたいと思います。

世界に広がるクマサンクチュアリ  リピーターが多く、経営も黒字(ドイツ編)⑬

世界の流れはアニマルライト。動物たちにも幸せに生きる権利がある。幸せに生きている動物たちを見ていると、人間まで幸せな気分になってきます。

海外のある大きな団体が、これまで虐げられて惨めな生活を送っていたクマたちを次々と救い出して、快適な環境で幸せな余生を送ってもらおうと、クマサンクチュアリを各国に造っています。「日本にも造りたいので、ぜひ熊森にも見ておいてもらいたい」と言われ、2005年、青年スタッフ3名が、ドイツのクマサンクチュアリを訪れ、いろいろと学んできました。

<クマサンクチュアリの入り口で>

「日本にもいつかクマサンクチュアリを造りたいので見学に行きたい」と連絡しておいたため、3名は現地スタッフのみなさんから、大歓迎を受けました。黒字経営にする方法など、立ち入ったことも詳しく教えてくださいました。

ここでは、人間が檻の中に入ります。

施設は、6ヘクタールの森を、クマが逃げ出さないように、電気柵や金網で囲ったものです。園内には小川や池もあります。ここで保護飼育されているクマたちの名前や紹介が、写真入りで展示されていました。

この日は、小学生たちが遠足で大勢来ており、クマたちの動きをやぐらから、興味深そうに見おろしていました。教育委員会の指導により、子供たちは小学生の間に1回は必ず、このベアサンクチュアリを遠足で訪れ、動物福祉や生き物達との共存について学びます。森の中のクマたちのゆっくりとした動きは、人々の心を癒します。元来クマは、大変優しくて魅力的な動物です。多くの子どもたちが、次回は両親を誘って再び訪れることになるのだそうです。

クマは、繁殖期や子育て、親別れ直後の兄弟以外は、一人だけでひっそりと生きる動物です。広い園内で、どのクマも、ひとりでそっと孤独にくらしていました。これが、クマ本来の生き方なのです。

ここのクマたちはどれもヒグマ系で、ぬいぐるみとまちがえそうです。食料は、森の中から自分で調達したもの、人間が与えたものの両方でカバーしているそうです。お年寄りたちが、クマたちの動きを見ながらのんびりと、終日ベンチに座っていました。

<金網越しにご対面>

これまで苦難のクマの人生があったのでしょうが、もう大丈夫。ここでは死ぬまで大切に保護飼育してもらえます。

いいな、いいな、こんなクマサンクチュアリが日本にもあれば、クマと人がお互いに畏敬の念を持って接し合えるような関係を再構築していけるような気がします。それはまさに、私たち日本人の祖先が持っていた、全生物と共存する持続可能な文化の再興に他なりません。

以下の絵は、2005年当時、ドイツのクマサンクチュアリを訪れた日本熊森協会の現副理事長と現環境教育部長が描いた、冬ごもり部屋を併設した日本版クマサンクチュアリです。建設費にいくらかかるのか、まだ見積もりを取ったことはありません。

世界に広がるクマサンクチュアリ  The Bear Sanctuary

ブルガリア、ドイツ、カンボジア、カナダ、中国、ベトナム、エクアドル、ギリシア、オランダ、ハンガリー、マレーシア、インド、インドネシア、パキスタン、ルーマニア、アメリカ

観光客を呼ぶクマ牧場 北秋田市阿仁熊牧場の飼育作業効率の良い獣舎設計に学ぶ⑫

鹿角市のお隣にある、北秋田市の阿仁熊牧場をおとずれてみました。ここは、クマが約80頭が飼われていますが、ほとんどすべてがツキノワグマです。周りは自然がいっぱいで、とても美しい所でした。

このクマ牧場は、マタギの里観光協会株式会社という会社が運営していますが、牧場の施設も中にいるクマたちも、北秋田市の所有物で、運営経費の多くも北秋田市から出ているという第3セクター運営でした。どうして、北秋田市がそこまでするのかというと、町村合併前の阿仁町だったころ、マタギの里阿仁町ということで、観光客を集めるために造られた経緯があるからです。

第3セクターで、行政にも入ってもらっているからでしょうか、この牧場は隅々まで人の手が入っており、花壇もあって、清潔できれいでした。

この牧場では、オスとメスを完全に真2つに分けており、繁殖調整がなされていました。この日は、2人いる飼育作業員のうちの1人がお休みだということで、一人の若い男性職員が、餌やりから掃除までをひとりでこなしていました。私たちが行ったときは、彼は、高圧ホー スの水を運動場の上からかけて糞尿の洗い流しをされていました。1日4回こうやってお掃除しているということでした。この牧場は大変計算して管理しやすいように合理的効率的な設 計がなされていました。80頭もいるクマさんのお世話ですが、無理すれば1人でもできるということでした。

餌は、トウモロコシの粉などを上からコンクリートの運動場にまくやり方で、餌やりもとても簡素化されており、野菜や果物なども与えているということでした。

入り口で1袋200円のクマフードを買って、クマたちに与えてみたのですが、どのクマもお腹がいっぱいのようで、大好物なはずなのに、そんなに欲しがりませんでした。ちなみにこのクマフードは、10キロが3000円ということで、高いものです。この牧場の周りの山林にもフキがいっぱい生えていたので、採ってきてクマたちにあげると、どのクマも大喜びで食べていました。男性職員の方が、「へえっ、クマさんはこんなものが好きだったのか。それなら、この牧場の周りにいっぱい生えているよ」とびっくりされていました。青菜は人間同様、クマたちにとっても、おいしいもの、体が求める物なのでしょう。

八幡平クマ牧場の飼育が重労働なのは、獣舎があちこちに分散されており、重い残飯を持って扉を開けたり閉めたりしながら走り回ることにあります。餌や牧場設計を根本的にここのように変えることによって、飼育作業はずいぶん簡素化されるだろうと思いました。

そのためには、施設の造り直しが必要です。いったいどれくらいお金がかかるのだろうか。さっぱり見当もつきませんが、億単位であることは間違いありません。

八幡平クマ牧場に残されたクマたちの飼育員3名を県費で臨時募集⑪ いきものたちの命にやさしい秋田県

5月22日付秋田県北鹿(ほくろく)新聞によると、佐竹敬久秋田県知事は21日、八幡平クマ牧場に残されたクマたちの餌やり作業などを補助する非常勤職員3名を雇用することを決め、とりあえず、6月7月の2か月で210万円の補正予算を組んだと発表されました。内訳は、

3名の臨時職員の人件費2か月分 163.5万円

餌代やガソリン代など2か月分    46.5万円

こうしながら、一方では、1頭でも2頭でも、大切に飼ってくれるところを、冬が来るまで探し続けるということです。6月~10月までの5か月間が勝負です。

このような取り組みに対して、主に県外の人たちからは、生き物たちの命に優しい秋田県を評価する声ががどんどんあがってきているようですが、県内からは、クマなどに税金を投入するな、というお叱りの声も出ているそうで、佐竹知事もやりづらさを感じておられるだろうなと同情します。

本当は、生き物たちの命にやさしい県は、人間社会の弱者に対してもやさしい県となりますから、秋田県民のみなさんにとってもいいことなのですが。

第3セクターで保護飼育する道をさぐる⑩

22日午後、八幡平クマ牧場がある鹿角(かづの)市役所を訪れました。市長さんにお会いして、もし引き取り手がなかったクマたちが残るようなことがあれば、行政にも入ってもらって、お隣の北秋田市が阿仁熊牧場でやられているように、第3セクターでみんなでクマたちを保護飼育するしか、命を救う道がないとお伝えしようと思ったからです。急なことだったので、市長さんにはお会いできませんでしたが、担当者の方に1時間ばかり会っていただくことができました。

鹿角市では、まだ1回もこの問題で会議を持っていないということで、今の段階では、秋田県庁の動きを見ている感じでした。それというのも、八幡平クマ牧場を開設した昭和62年の時点では、今のような動物の飼育に際してのきちんとした法整備が出来ておらず(「動物愛護法」)、鹿角市は当時の経営者から、クマ牧場開設の連絡は受けたが、「水を汚染しないように注意して下さいよ」などと言っただけで、それ以上の権限がなかったといいます。

平成9年に「動物愛護法」が改正され、クマなどの危険動物は、簡単には飼えなくなりました。施設の立ち入り検査などを受けたあと、県知事からの許可が必要です。というわけで、八幡平クマ牧場はいきなり、秋田県の指導を受けることになりました。牧場の設計が、クマの立場に立ってなされていないなど、当時からいろいろと問題はあったと思われますが、すでにクマたちがたくさん飼われていたので、飼育許可取り消しなどの強力な措置は、とれなかったのだろうと思われます。

秋田県佐竹敬久知事は、今回の事件を受けて、現行法では、クマのような特定動物の施設の管理運営、設置基準、飼育基準、施設の閉鎖要件などが甘過ぎるとして、もっと行政指導が強くできるように、国に法改正を求めていくといわれています。まさにその通りだと思います。施設の中に入るのは、物ではなく、私たちと同じように命も心もある生き物たちなのです。しかも、一度飼われたら、動物たちはその檻から生涯出してもらえないのですから、最大限の動物福祉が保障されなければなりません。ちなみに、佐竹敬久知事は、昔の秋田の御殿様の家の出で、県民によると、とても優しい方なのだそうです。

八幡平クマ牧場を、鹿角市ではなく、秋田県と組んで第3セクターにするという手もあります。県関係者によると、それには県民の同意と、秋田県に利益が予測されることが必要なのだそうです。

クマを守ることは森を守ること、森を守ることは水源を守ること ⑨

このツキノワグマの子どもは、2010年愛知県豊田市で有害捕獲罠にかかった母子グマの子どもです。あのとき、豊田市の職員のみなさんが、この母子グマ の命を何とか助けてやろうと決意し、ここまで必死の思いで連れてきたのです。残念ながら、母グマはここにきてしばらくして死んだ ということで、子グマだけが残っていました。豊田市の若い職員のみなさんの「生きよ」という祈り、強い愛情がいっぱいに詰まったクマたちです。オスは「あいち」で、メスは「とよ こ」という名前です。

コンクリートと鉄格子以外何もないところで毎日外を見ているだけなのは、自分には耐えられないだろうなと 思って、近くに落ちていた小枝を入れてやると、死んだような眼をしていた子グマたちが、突然目を輝かせて、小枝をかじって遊び始めました。近くにたくさん 生えていたフキの葉を入れてやると、一瞬にして喜んで食べてしまいました。

ヒグマにも、フキの葉をやってみましたら、ヒグマたちもみんなうれしそうに食べ ていました。ここも、当協会の太郎と花子のファンクラブのように、お客が持ってきた食料を自由にクマたちに与えられるクマ園にしたら、楽しいだろうなと思いました。万一の事故がないように、職員が立ち会わねばなりませんが。

この牧場の周りの山からは、大量の水が湧き出していました。ちなみに、ここには、野生のツキノワグマたちが棲んでいます。

地元の青年に聞くと、何度も山でクマに会っているそうです。においが強烈で、犬の体臭の10倍ぐらいのにおいがするからすぐわかる。よく、ブワッ、ブワッというなき声が山の中からしてくるが、クマだということでした。私たちが知っているクマは、野生でもにおわないし、なき声などめったに聞いたこともありません。秋田のクマと、兵庫のクマはちがうのだろうかと不思議に思いました。

クマを守ることは森を守ること、森を守ることは水源を守ることです。

住民と生き物の命を大切にする秋田県⑧ 

八幡平クマ牧場飼育員死亡事件のあと、秋田県は5月7日から、①地元住民の安全と、②残されたクマたちの給餌作業や牧場の施錠確認の為に、秋田市の秋田県動物管理センターの職員3~4名を、1日おきに現地に派遣し続けてきました。行政としては、本当にすばらしい対応だと思います。県職員のみなさんは、片道3時間往復6時間使って現場に通い続け、黙々と作業に励んでおられました。東北人のねばり強さを感じました。従業員を全員失ってしまった牧場経営者の方は、県や県職員の方々の応援に大変感謝されていました。

21日秋田入り1日目の夜、私たちは経営者の方と夕食を共にし、じっくりと話し込みました。4年前、破たんした牧場に残されたクマを助けようとして自らも破たんしていった4代目経営者の苦悩が痛いほど伝わってきました。国民の一人として、なんとかこのような善意の人を支えねばならないと思いました。明日は、県生活環境部の職員の方と、県から頼まれた獣医さんが来られるということで、私たちは5月22日、再び牧場をおとずれました。

<みんなでクマを見まわる>

NPO法人の方々や獣医さん、県庁の職員の方が、残されたクマたちが他の牧場に引き取ってもらえるように、1頭1頭ずつの特徴を記録した台帳を作ってくださったそうです。大変な作業をしてくださっているのがわかりました。何とか引き取り手が現れますように。

秋田県の会員が、「秋田ではクマは神様だったのです。今でも、クマを大事に思っている人がたくさんいます」と教えてくれました。県知事さん以下、みんな一生懸命になって、残されたクマの命を助けようとしています。秋田のすばらしい文化にふれた思いがしました。

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