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2016-11

【お詫び】現在、ブログの記事がFBとTwitterに流れなくなっています

これまで熊森ニュース(ブログ)から、FBとTwitterに自動的に記事が流れるように設定していました。

しかし、プラグインソフトが古くなってサポートが切れ、11月2日以降のブログ記事がFBとTwitterに流れなくなっています。

抜けた記事は
http://kumamori.org/news/
よりご覧ください。

 

 

 

熊森顧問 宮下正次氏 ご逝去

群馬県在住の宮下正次氏がご病気で入院されたと聞いて、11月18日に本部からお見舞いに行くと、昨晩亡くなられたとのことで、驚きました。

まだ、72才。早すぎます。最後まで、青年のような方でした。

 

2007年9月くまもり東京シンポジウム会場前にて宮下氏0分20秒より(撮影Green TV Japan)
http://kumamori.org/kumamori_broadcast/greentvkumanosumu/

 

宮下氏は、前橋森林管理署に勤めながら、林野庁の森林政策や独立採算制に内部から異を唱えた方で、その勇気、正義感は並のものではなかったはずです。上司やまわりから随分と圧力を受けたと思われますが、あまりにも突出しており正論だったため、ある意味認められていたそうです。

 

10月末には大好きなブータンに5回目の訪問。ブータンの森林保全に貢献されたことで、王様から金の時計を頂いたそうです。一級の登山家として地球規模で大活躍されていたし、ご自身の作られた「森林の会」の事務局長としても、重責を担っておられました。熊森の顧問として、群馬県支部をはじめ、いくつかの支部や本部を指導してくださいました。

 

ご著書もたくさんあります。今回群馬県に行く新幹線の中で、初めて読んだ時の衝撃が忘れられない「消える森甦る森」を、久し振りに読み直してみました。改めて、宮下さんは、やはりただものではない。歴史に残る偉大な人物だと確信しました。お会いして、この本のことを話題にお話ししようと思ったのに、かないませんでした。

 

まだお読みになっておられない方がおられましたら、是非お読みください。永遠に熊森の課題図書です。宮下顧問のご冥福を、心からお祈りします。

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森の中にあれだけあったササを、シカが食べ尽くせるはずがない

幾つかの山で、原生林の中にびっしり生えていた人間の背丈より高いササが、消えてしまいました。

一般に、シカが下層植生を過採食したことにされています。

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2000年以降、上の写真のような光景を見られた方も多いと思います。

見渡す限りのササが枯れていますが、犯人がシカであるはずがありません。

そもそもササがびっしり生えた原生林が残っていたら、草原の動物シカはササにはばまれて奥まで採食に入れなかったはずです。

 

ササは、数十年に1回の一斉開花や、地球温暖化による休眠解除後の凍害によって、今、一気に特定場所で大量に枯れています。

 

ササには地下茎がありますから、本来は地上部が枯れても、やがてまた復活します。しかし、現在、そのような場所にはシカが入り込んでしまっているので、地下茎から出てきた少しの若葉をシカが食べてしまいます。よって、シカよけ柵の内側しか、ササは復活しません。

 

熊森を指導してくださっている研究者の一人は、大学で習った森林生態学は、もはや成り立たないと言われます。人間活動によって、現在、自然界ではありえない事態が山で進行しており、森が今後どう遷移していくのか、さっぱり予測できないそうです。

 

すべてをシカのせいにしている研究者がいますが、そもそも、シカを山奥へと導いたのは、戦後の拡大造林です。奥地の原生林を大規模皆伐したことや林道開設によって、シカは自由に奥地まで楽々と移動できるようになりました。皆伐跡地には草が生え、シカの豊かな餌場となって、シカ数を増やしました。

 

現在の、シカ問題、クマ問題、森林の下層植生消失問題、困った事態を引き起こしたのは、みんな人間なのです。私たちは、自分たち人間がしでかしたことを棚に上げ、野生動物を悪者に仕立て上げて、殺して食べる事ばかりを、行政やマスコミを使って進めている兵庫県森林動物研究センターの研究員に、問題を感じています。行政の任命責任が問われます。

学生パワーのすごさ 大学生17人、11月に皮むき間伐

大阪のある大学のクラブから、間伐体験をしたいという依頼を受けました。このクラブの大学生たちは、外国に行って家を建てるというユニークな活動をしているそうです。参加者はなんと17人。こんな大勢だと、のこぎり間伐は危険です。皮むき間伐しかできません。

しかし、季節は11月。水の吸い上げがいい6月なら、つるりとスギの皮がむけますが、水の吸い上げが弱まっているこの時期、皮むき間伐などできるのでしょうか。

山主さんに事情を話して、試しに山に行き、人工林のスギ皮をむいてみました。むけない訳ではありませんが、皮が幹にしっかりとくっついているのが多く、皮をはがすのには力がいります。熊森としては、異例の11月の皮むき間伐会を企画しました。

 

集合して、真剣な面持ちで説明を聞く大学生たち

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人工林内に入って、作業開始。ピンクのテープが巻いてあるスギ以外は、かわいそうですが、枯らします。

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人海作戦。どんどん作業が進みます。

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昼食後は、熊森紙芝居。

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お話の中にかわいそうな部分があるからか、みんなしーんとしてしまいました。

戦後の国策であった拡大造林政策によって、水源の森、野生動物、人がどのように大変なことになっていったのか、この機会に学んでもらいました。拡大造林政策のことを知っていた学生は誰もいませんでした。チェンソー間伐も見てもらいながら、皮むき間伐の利点も学んでもらいました。

 

午後、再び皮むきに挑戦

中には、つるりと皮がむけるスギもありました。

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ついにやりました!

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注:本当は、みんなすごくいい顔をしているのですが、肖像権のことを考えて画質を落としています。残念。

 

学生パワーはすごいです。この日、一気に80本の皮むきができました。森に光を入れ、日本の森をよみがえらせる。大学生のみなさん、ありがとう。若いエネルギーをみせてもらいました。

とてもさわやかで感じのいい大学生たちでした。次回は、6月に来てもらえるとうれしいです。

 

 

クマ被害を防ぐため、兵庫県の奥地でクマの棲める森を再生し続ける

クマ問題もシカ問題も、元をただせば、すべて人間が引き起こした森林破壊が原因です。

 

兵庫県のクマの場合、年間の農業被害は少しです。平成25年度の被害面積は約1ヘクタール被害額は120万円程度です。(140頭殺されることになった理由のひとつ)

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 平成27年度 兵庫県ツキノワグマ保護計画(兵庫県)より

 

昔からクマと共存してきた集落では、クマはおとなしい動物であり共存できるとして問題になっていませんが、クマに慣れない集落では精神被害や、人身事故の恐れを思い、クマは害獣視されがちです。

 

クマが集落に出て来るようになったのは、本来のクマの生息地がクマが棲めないスギの人工林にされたこと、残された自然林も大気汚染、地球温暖化、シカの食害などによって内部が大荒廃し、クマが棲めなくなったことです。

 

熊森は、あの手この手でこの20年間、人工林を少しずつ自然林に戻してきました。

11月12日、人工林を除去した跡地に、大阪西ライオンズクラブのみなさんが、熊森と共に恒例の実のなる木の大苗を植樹をしてくださいました。

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元人工林だった斜面に、ヤマザクラやシバグリを植樹

 

植樹後は、シカよけ柵を張ります。

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積雪時期を前に、網を外しやすいように工夫します

 

昨年春、皮むき間伐を施していただいたところです。

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スギの葉が枯れて、林床が明るくなってきている

 

1昨年、斜面の下の平地に実のなる木を植えていただいたところです。

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苗木が大きく育っている

 

兵庫県の樹医さんの話では、斜面と比べて平地は肥沃な大地となるため、植物の成長がいいそうです。国土の平地は、みんな人間が取ってしまっているため、人間のいるところでは植物は毎年良く育つわけです。

 

今年、クマたちが棲む冷温帯のドングリ種は実りがほとんどありません。しかも、兵庫県では、多くの所で、柿も不作年となっています。

 

一方、平地の暖温帯のドングリ種は良く実っています。冬籠り前のクマたちが、暖温帯のドングリを食べに来ることを認めてやってほしいものです。

 

大阪西ライオンズクラブのみなさん、今年も実のなる木の植樹をありがとうございました。

 

国は、ハンターを増やしてクマ・サル・シカ・イノシシを殺すこと、ジビエ料理を広めることばかりに固執していますが、人間としておかしくありませんか。奥山だけでも人工林を除去して、動物の棲める自然林を再生していただきたいものです。私たちは24年間、お願いし続けています。

11月17日のテレビ朝日報道ステーションによると、群馬県赤谷では、日本で唯一、林野庁による人工林の自然林化が始まったそうです。

獣害問題に対して、生息地復元で解決していただけるよう、国民が、もっともっと行政に声をあげていく必要がありそうです。

兵庫県クマ狩猟第1日目 兵庫県は、狩猟を駆除と表現したのか?! 本当なら、熊森怒り爆発

(追記)11月16日兵庫県担当者に確認したところ、県としては140頭駆除するなど言っていないのに、このようにマスコミに報道されて戸惑っているということでした。NHKに熊森が電話して、言葉の訂正をお願いしました。

 

以下、NHKオンラインより (11月15日NHKホット関西ニュース18:10~)

くまもりより 上をクリック後、特集レポート動画を視聴して下さい。

 

 兵庫県クマ猟解禁 初日は1頭を捕獲

クマ猟解禁 初日は1頭を捕獲

全国でクマに人が襲われる被害が相次ぐなか、兵庫県は、15日、ツキノワグマの狩猟を20年ぶりに解禁しました。
初日の15日は、1頭が捕獲されたということで、県は、1か月間で最大140頭のクマを駆除したいとしています。
ことしは、秋田県の山林で4人がクマに襲われて死亡するなど、クマの被害が増えていて、兵庫県内でも2人が大けがをしました。

 

人里近くでの目撃も相次ぎ、兵庫県は人的被害を防ぎたいとして、保護のため禁止してきたツキノワグマの狩猟を20年ぶりに解禁しました。

 

15日は、シカやイノシシなどの狩猟解禁日でもあり、クマが多く目撃されている県北部の豊岡市の山林にもハンターたちが次々と入り、周囲の音や猟犬の鳴き声などを頼りに、獲物を探しました。

 

兵庫県によりますと、初日の15日は、県西部の佐用町で1頭のクマが捕獲されたということです。

ツキノワグマの狩猟期間は1か月間で、兵庫県は、推定で県内に940頭生息するツキノワグマを、最大で140頭駆除したいとしています。

クマ猟を申請したハンター1人につき、1頭の捕獲を認めていますが、ハンターの間には、ツキノワグマに遭遇した際の対応に不安を訴える声も多く、兵庫県は、今後、駆除がどの程度進むか、状況を見守ることにしています。

 

(熊森より)

明日、県庁担当者に問い合わせます。狩猟を駆除と表現していたとしたら、県民だましもはなはだしい。許せないことです。狩猟と駆除は全く別物です。

 

狩猟というのは、山の中にいるクマを、スポーツやレジャーとして撃ち殺すもので、殺したクマの遺体はハンターの所有物になります。

 

駆除は、有害駆除と言って、人間の所に出て来たクマが被害を引き起こしたため、やむなくごめんなさいと言って殺処分するもので、殺したクマの遺体は、兵庫県では兵庫県森林動物研究センターが取り上げます。ハンターの物にはなりません。

 

明日、本日のニュースの、「駆除」は、兵庫県行政の言葉か、報道者の言葉か、確かめます。

 

第一、兵庫県のこれまでの説明では、今年度すでに12頭のクマが有害捕殺されていますから、狩猟で獲る上限は、128頭のはずです。本当に140と言われたのかも、明日確かめます。

 

本当に兵庫県が人的被害を防ぎたいのなら、狩猟を再開するのではなく、奥地のスギの放置人工林を伐採して、野生動物たちが棲める広葉樹林森を復元・再生すべきでしょう。野生動物が人里に出て来なくてもいいように、人間が破壊してきた奥山を、彼らに返してやればいいのです。

県内で残念ながら2件の人身事故が起きましたが、人間が音の出すものを持って歩いていたら、事故は起きていなかったと思われます。行政としては、そういう情報を、もっと地元の方々に伝えてあげて欲しいです。

佐藤八重治氏の講演によりますと、人身事故を起こしたクマの多くは、人間に痛い目に遭わされたことのある手負いグマだったということです。今回の狩猟再開で、手負いグマが何頭も誕生する恐れが十分にあります。

 

以下は、熊森本部に入ったメールですが、この方の言われる通りだと思います。

 

●私も熊を射殺する兵庫県知事の決定に反対です。熊は臆病な動物でその熊が人里に出没しているということは、山に熊の餌が不足しているからであります。
熊を全て殺さない限り、人への被害は抑えることが出来ないのではないでしょうか。山に熊の餌が不足しているのは人がお金になる針葉樹を植林し過ぎた結果であり、 熊に罪はないと考えます。

生態系を維持する為にも動物との共生を考えるべきではないでしょうか。山に熊の餌になる木を増やし、人は鈴を着けて行動する。
個体数の少ない熊を殺すなんてとんでもないことであると思います。どうか熊森協会のさらなる活動で、動物と人が共生していける社会が出来ることを祈ります。
それが人類が生き残れる条件でもあると私には思えます。

 

<猟友会員の方々からも、熊森本部に声>

 

「兵庫県は、なぜクマ狩猟を再開するのかさっぱりわからない。猟師仲間でも、反対している者が多い。兵庫県森林動物研究センターの研究員が論文発表をしたいがために、わしら猟師を利用して、データ集めをしようとしていると思う。何とか狩猟をやめさせたいのだが、仲間には声をあげることに慣れていない者が多い」

 

「兵庫県内の○○という熊肉販売店から、クマを獲ったらすぐに連絡してくれというお願いが、猟師たちに入っている。狩猟したクマが、どういうルートで動いていくのか調べたらどうか。店での販売価格は、100グラム2千円ぐらいだ」

 

「県は、クマを獲ったらすぐに森林動物研究センターに電話するようにといっている。指定場所に運んで待ってたら調査員が行くといわれても、そんなんめんどくさいやないか。電話せん奴、いっぱい出ると思うな。」

 

 

兵庫県クマ狩猟再開問題 テレビニュース熊森出演情報

<放映済>

・11月9日(水)サンテレビ 21:30~  特集

<11月11日(土) クマ狩猟再開反対署名第2弾(10月分)提出>

・11月12日(土)NHK朝のニュース  署名第2弾(10月分)提出

・11月14日(月)読売テレビニュースten  関西全域17:00~「真相究明ゲキ追コーナー」狩猟解禁前日

・11月15日(火)関西テレビ ニュースワンダー 17:00~ 関西テレビ ニュースワンダー 狩猟解禁日

・11月15日(火)NHKテレビニュースほっと関西  くまもり&とよ君登場予定狩 狩猟解禁日

・11月 19日(土)テレビ朝日 兵庫県クマ狩猟再開問題 特集 スーパーJチャンネル

 

<今後の予定>

・11月 25日(金)関西テレビ兵庫県クマ狩猟再開問題 特集  17:00~

 

11月15日 兵庫県クマ狩猟再開日 トラスト地での狩猟禁止

兵庫県は、今日から1か月間、クマ狩猟再開を強行します。

来年は3か月にすることでしょう。井戸県政の汚点です。残念です。

兵庫県のクマ狩猟再開理論も、140頭枠も、もう完全に破たんしています。

何とか止めようと、熊森はできる事はすべてやってきました。

もっと大きな会にならないと止められません。無念です。

今日は、夜明けと同時に、山では一斉に銃声がパンパン破裂するのでしょう。

銃に撃たれたら動物たちも痛いんだよ。クマも痛いと声を上げて泣くんだよ。こういうことがわからない人が、いるのでしょうか。

20年前に大変な努力によってクマ狩猟禁止を勝ち取った尼崎市の子どもたちへの裏切りです。

 

私たちはほんのささやかな抵抗しかできませんが、トラスト地では、狩猟をお断りします。(宍粟市内、豊岡市内)

県にも届けてあります。

山主が断れば、その山で狩猟はできないそうですから、自分の山を野生動物の血で汚したくない人は、ぜひ当協会のように、意思表示をされるといいと思います。

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大学の先生が、行政の方が、殺生を楽しめと教えしや。

完全に狂っている。

今こそ、奥山自然林復元!

 

平野虎丸顧問のブログから

過剰スギ植林のおかげで自然がなくなり、野生動物たちは害獣と呼ばれ、害獣食が大人気、というニュースまで出来上がります。
害獣を殺して埋めるだけではもったいないので食べてしまうことが森のためにも人間の為にもなる、という話のようですが、動物たちは害獣ではなく、人間に森を奪われ棲みかを追われた被害獣です。
人間こそが害獣です。もはや、地球にとって、人間は動物以下の存在になっています。
害獣を食べて森のために良いことをしていると思い込んでいる人たちは、森を破壊している林野庁とマスコミに洗脳されているだけです。

テレビ局に兵庫県のクマ生息地の山々を初案内

11月9日、丸1日とって、あるテレビ局の方が、兵庫県のクマ生息地を取材してくださいました。

これまで熊森は、「とにかく、山に入って下さい。誰の言っていることが本当か、山の中を見たら、すぐにわかります」と、知事さんやマスコミ関係者にお願いし続けて来ました。しかし、みなさん忙しくて、応じていただけませんでした。

今回、ついに来てくださった。本当に感激でした。本部スタッフ3名で一生懸命ご案内しました。

 

クマ生息町の山は、延々と人工林が続きます。

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集落近くのぬかるみ道で、真新しいクマの糞や足跡を発見

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この足跡を残したクマは、きっとまだその辺にいることでしょう。

大きい声を出して、人間が来ていることを知らせながら歩みます。

住民に、クマが爆発的に増えていると思うかたずねてみました。

「山にはおらんから、増えてないやろな」という答えでした。

いよいよ、山奥に入って行きます。

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急斜面で、カメラさんは本当に気の毒でした。ケガをされないかひやひやしました。

一見いい自然林なのに、なぜ動物が棲めなくなったのか説明しながら進みます。

標高1000メートル近くになって、やっとブナ・ミズナラの原生的な森に、少し、下層植生が現れ出しました。雪が降ってきました。

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左は原生的な森、右は動物の餌が全くない放置人工林。林内が対照的です。

原生的な森のブナの幹をみんなで見て歩きました。どのブナの木にも、古いクマの爪痕がいっぱいついています。この爪痕は、材が柔らかい春の時期に、花や若葉を食べにきたクマたちが木に登った跡と思われます。

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ブナの木にびっしりついた古いクマの爪痕

かつて、このあたりはクマの恒常的な生息地であったことがわかります。最近のクマの爪痕が少しくらいあるかもしれないと思って探しましたが、全く見つかりませんでした。

 

ミズナラに一つぐらいは熊棚が出来ていないかと思って探しましたが、これも残念ながら全く見つかりませんでした。

クマの糞も一つも見つかりませんでした。今は、もうほとんどが、下の集落周辺に移動してしまっているのがわかっていただけたと思います。

 

かつてこのあたりは、人間の背丈より高いササにびっしり覆われた場所でした。臆病者のクマたちが何頭か姿を隠しながら棲んでいたと思われます。

多くの研究者たちは、下層植生が消えたのは全てシカとして、シカを犯人にしていますが、いくらなんでもあれだけ生えていた大量のササを、シカが食べきれるわけがありません。

ある研究者の観察では、まず初めに、地球温暖化で雪の上にササが出るような年があったり、数十年に一度のササの一斉開花があったりで、地上部のササが枯れました。ササは地下茎がありますから、いったん地上部が枯れても、また地下から芽を出してきます。その芽を今度はシカが食べてしまうので、ササが復元できなくなってしまいました。もし原生林内を囲うと、その中だけには、ササが生えてきます。

シカも関係していますが、全てシカが下層植生を枯らしたようにいうのは、まちがいです。地球温暖化で枯れたのなら、大元の原因を作ったのは人間です。

 

このあと、下の別の集落に移動しました。クマたちと共存している地元の人たちの姿がありました。

テレビ局の方は、人身事故があった現場も取材されていました。

 

帰りの車の中で、突然、東京のテレビ局の方から携帯に電話が入りました。近々、兵庫に行くので、山を案内してほしいということでした。

今回のクマ狩猟再開は、兵庫県森林動物研究センター研究員の、「兵庫の森は絶好調、歴史始まって以来の豊さを誇る森」ということが前提となっています。

もう少し早くマスコミのみなさんが熊森に注目してくださって、現地を見にきていただき、前提が全く間違っていることを報道してもらっていれば、狩猟再開はくつがえせたのではないかと思いました。兵庫の奥山は、人工林も自然林も、林内は大荒廃しています。

 

 

 

 

 

 

 

兵庫県クマ狩猟枠140頭の計算が、完全破たん  なのに狩猟再開?!

10月11日の兵庫県井戸知事記者会見の後、熊森は知事と兵庫県担当部署に、以下のような公開質問状を出していました。

 

以下の2つの質問にお答えください。

①坂田宏志氏のツキノワグマの個体群動態の推定(兵庫県2015 年)によると、

2015年の個体数は、人為的死亡個体数を引く前の段階で中央値940.0(90%信頼限界では691.1~1,212頭)、2015年末の段階で中央値919.0頭(90%信頼限界で670.1~1,191頭)で、2014年から個体数が増加していると推定された。と書かれています。

ならば、2015年の有害捕獲後のクマ数は919頭ですから、2016年の事業としては119人しか狩猟者を募集できないはずです。

 

②さらに、兵庫県は環境省の安定生息数800頭に、こだわっているようですが、環境省は、成獣が800頭いれば安定としています。これに従うと、919頭の推定数のうち、幼獣数を引き去らねばなりません。兵庫県の主張通りいくなら、残りの成獣数から800頭を引いた数が、狩猟すべき数とならねばなりません。狩猟者募集はゼロ人になるはずです。

 

しかし、いつまで待っても、お返事は来ませんでした。県庁担当者に直接問い合わせると、何と、

 

答え①:2016年度当初のクマ推定数を940頭とすることにした。

答え②:環境省は成獣800頭としているが、兵庫県は独自に成獣+幼獣=800頭を安定個体群とした。

よって、問題ないという答えでした。

 

(熊森から)

もはや、狩猟枠140頭は完全破たんしていることが証明されました。

 

2015年末が919頭なら、2016年度の事業としては、当然、2016年当初の919頭を使用すべきです。ミスであったと思われます。答えは全くこじつけで、説明になっていません。

 

兵庫県はこれまで環境省規定を前面に持ち出して、140頭の狩猟枠を決めたと言ってきたのに、ミスを指摘されると、突然、兵庫独自に策定したなどとごまかす。第一、兵庫県が、環境省のガイドラインを守らないのであれば、その理由を示さねばならない。理由もなく守らないのなら、環境省を侮辱し、環境省の存在を否定したことになります。

 

 

熊森の公開質問状にはお返事がきませんでしたが、日本福祉大学山上

俊彦先生が出された質問には、兵庫県から回答が来たそうです。どのよ

うに質問され、どのような答えが来たのか、見せていただきました。

以下、山上先生質問状

兵庫県知事は10月11日の記者会見にて「平成28年度ツキノワグマ狩猟
禁止の制限的な解除」を発表されています。しかし、その内容には以
下のような事実誤認があるため兵庫県は狩猟を行う条件を満たしてい
ないと考えられます。従って狩猟解禁は撤回されるのが妥当と考えま
す。

1.推定生息数が絶滅する恐れが当面ないレベル(800頭)を上回る
940頭まで回復してきたとした点
兵庫県は環境省の「特定鳥獣保護管理計画作成のためのガイドライン
(クマ類編)」に準拠して保護計画を作成したものと考えられます。
https://www.env.go.jp/nature/choju/plan/plan3-2c/
このうち、特別編(後編)
https://www.env.go.jp/nature/choju/plan/plan3-2c/chpt2b.pdf
において、個体群水準が定義されています。p.58です。ここで個体数
は成獣数と定義されています。成獣の定義ですが、特別編(前篇)
https://www.env.go.jp/nature/choju/plan/plan3-2c/chpt2a.pdf
において定義されています。p.38です。ここでは野崎氏の定義を用い
て、4歳以下を幼獣・亜成獣、長野県の定義を用いて4 歳以上が繁殖齢
個体としています。
兵庫県には東中国地域個体群と近畿北部地域個体群が存在し、円山川
で分断されています。環境省の基準は「個体群」かつ「成獣」の個体
数を判断基準としているので、兵庫県全体の頭数を基準に補殺や狩猟
の意思決定を行うことはそもそも出来ません。940頭は個体群の頭数
ではなく、異なる個体群の一部の数を足したものであり、幼獣も含ん
でいます。

2.承認者数は1人1頭で、140頭までで140人に許可するとした点
兵庫県のツキノワグマ生息数は森林動物センターの「ツキノワグマの
個体群動態の推定(兵庫県2015年)」に拠っています。
http://www.wmi-hyogo.jp/upload/database/DA00000481.pdf
2015年の生息数940頭は有害補殺前の頭数です。(p.15)有害駆除等を
控除すると生息後は919頭です。(p.16)
919頭では狩猟の上限は119頭です。
次に、幼獣の数です。鳥獣対策課長は農政環境常任委員会にて兵庫県
のクマは妊娠率が高いので年平均20%増加すると回答されていると聞
きました。
兵庫県公表数値では、個体数は、
2011年477頭
2012年571頭
2013年688頭、
2014年813頭、
2015年940頭ですから、
幼獣数は少なくとも、
940-813=127頭、生存率が0.933(p.14)とされているので、このうち
生存しているのが
127×0.933=118頭で1歳
813-688=125頭のうち生存しているのは
125×0.933×0.933=108頭が2歳
919から控除すると
919-108-118=693頭となります。
亜成獣は
571-477=94頭で、
94×0.933×0.933×0.933×0.933=71頭が4歳、
688-571=117頭で
117×0.933×0.933×0.933=95頭が3歳です。
つまり、幼獣と亜成獣を控除すると成獣は多くて、
940-71-95-108-118=548頭となります。
成獣数は環境省の基準を下回ります。
以上から兵庫県は個体群の生息数ではない数を見て800頭を超えてい
るとし、その数には幼獣も含まれていることから生息数が安定的に推
移するための環境省の基準を満たしていない。このことから、ツキノ
ワグマの狩猟を解禁することはできません。また、生息数から駆除さ
れた個体数を控除せずに狩猟許可人数を算出していることは県民、国
民に対して間違った報告をしたことになります。


{兵庫県庁からの回答}
 本県の「ツキノワグマ保護計画」は、環境省のガイドラインに準拠
したものではなく、ガイドラインを参考に本県独自に策定したもので、
狩猟禁止を解除するレベルの800頭は成獣・幼獣の区分がない生息数
そのものとしています。
 また、捕獲上限の140頭については、県環境審議会委員の「捕獲数
の制限設定を設けるべき」との意見を踏まえ、800頭を下回らないよ
う、平成27年度当初の推定生息数940頭を基準に設定しています。
 
フィード

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