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2017-11-18

哀れ、秋田県のクマ、前代未聞の大量捕殺697頭 (10月末現在)

秋田県における去年からのクマ大量捕殺が、今年、ますますエスカレートしました。

秋田県のクマはこれまで、生息推定数がずっと1000頭で一定していると発表されてきました。

そんな秋田県で、昨年度、476頭のクマが有害捕殺されるという驚くべき事態が発生しました。

生態系保全上、1割以上の野生動物を獲ってはならないとされていますから、約50%のクマを捕殺したということは、熊森にとってはショッキングな出来事でした。

昨年度、ネマガリダケの採集中に、同じ場所で4名がクマによる人身事故で相次いで亡くなるという、いまだかってなかった痛ましい事件が発生し、クマは怖い、出てきたら駆除しておくべきだという県民感情が芽生えたのだろうと予測されます。

 

今年の秋田県の山の実りは、ブナ皆無、ミズナラ凶作、コナラ凶作という悲惨な状況です。

2016年度も、秋田県のブナは皆無でしたが、ミズナラ・コナラは豊作でした。よって、それなりに子が生まれたもようです。

誕生した若グマたちは、今年2017年度、冬籠り前の食い込みができずに、里に次々と出てきたもようです。

行政のみなさんに問い合わせると、去年もクマが次々と人里に出て来たが、今年はその比ではなく、信じられないようなすごい数でしたということです。

連日、地元住民からの「クマを駆除してほしい」という依頼が、殺到し続けた年だったということです。

 

熊森として思い切った予算措置を取って何かできないかと、いろいろと考えてきたのですが、支部もないし、地元とのつながりも薄く、残念ながら前代未聞のこの大変な事態に対して、手も足も出せませんでした。以前秋田で講演させていただいたとき、高齢者の方々がたくさん聞きに来てくださいました。終わってから、「あんたより、わたしらのほうがずっとクマに深い愛情を持っているよ。昔から一緒に暮らしてきたんだ」と言われ、感動しました。あの方々は、今年、声を挙げられなかったのでしょうか。

 

本日、11月16日は、秋田は、初雪になる模様です。午後5時の気温はマイナス1度です。

まだまだリンゴやお米を狙って、人里をうろついているクマが居るそうです。

これから、食料を求め、雪の中をさ迷い歩いて次々と死んでいくのでしょうか。

これは、どうしようもない自然現象なのでしょうか。

人間には一切責任がないのでしょうか。

 

秋田の人工林率は50%という高率です。多くが間伐もされず放置されたままです。

林業用や観光用として、奥山に縦横に道路が敷設され、人間がクマたちの棲息地に入り込んでいます。

今年のような凶作年、川魚が食べられたら、何とかクマもしのげるのではないかと思いますが、人間活動により渓流魚は全国的にどこも激減です。

 

山の実りの凶作年、多くのクマたちが餓死するのは、自然かもしれません。

しかし、10月末までの捕殺数が697頭とは・・・もう少し、駆除を減らすことはできなかったのでしょうか。

秋田県のいろいろな方に電話をして聞いてみました。

秋田のみなさんは、どなたも非常に誠実にお答えくださったと感じます。

結論として、まだ、人間にはクマのことなどほとんど何もわかっていないということです。

 

マタギの方:秋田県には1000頭どころか、もっと多くのクマがいる。猟師が減ったので増えすぎているんだ。もうすぐクマ狩猟が始まるが、今年のような山の実りの凶作年、クマは諦めてさっさと冬籠りに入ってしまう。秋田の雪はまだだが、多くのクマはもう冬眠したと思うので、狩猟してもあまり獲れないと思う。クマが人間の所に出て来るようになった大きな理由は、中山間地から人が消えたこと。クマにとっては生息地が2倍になったと思うな。ブナ、ミズナラ、コナラの実りがゼロでも、クマはクリ、クルミ、クロモジの実、サルナシ、マタタビ、ヤマブドウ・・・なんでも食べっから、何か食べてんだと思うな。関西なら、里にはクヌギやアベマキ、常緑樹などいろいろなドングリがあるが、秋田は平地がミズナラ帯だから、ブナ、ミズナラ、コナラ以外のドングリはないよ。

 

地元の人:昔は里山が緩衝帯になっていて、野生動物は出てこなかった。今はスギを植えて放置しているから、内部がうす暗い。集落の裏が、クマの格好のひそみ場になっており、簡単に集落に出て来れるようになっている。自然保護団体にしてもらいたいのは、間伐。思い切ってバッサリ伐って、中が見えるようにスカスカにしてほしい。この前の朝、道路でクマにあったが、丸々と太っており、人間の前を平気で歩いて行った。人間が怖くないのかなと思った。

 

自然観察指導員の人:子供たちを山に連れて行こうとしても、「クマ出没注意」の看板を見て、「クマが居るなら、こわいからイヤ」と、山に入るのを拒むようになった。私自身は、何回もクマに会っているし、クマは危険な動物ではないと知っているんだが・・・秋田の人達のクマに対する見解が変化したと思う。

 

行政の人:11月というのに、どうしてまだクマが殺されているのかというと、秋田の人は果樹園の木の実とか全部取らずに、野鳥のために少し残しておいてやる習慣があり、その実を狙ってクマが出てきている。熊森さんに、クマには電気柵が有効と教えてもらって実験してみたら、効果があったので、来年からはこういう物も導入してみようかと思う。住民が駆除してほしいというのは、農作物被害もあるが、それよりも、みんな人身事故を恐れて言っている。今年秋田県でクマによる人身事故が25件あった。偉い先生方に、どうして今年、こんなに大量にクマが山から出て来るのか相談してみたが、クマの生態はまだまだ人間にはわからないことでいっぱいと言われた。行政は人間を守らねばならないので、近くに幼稚園や学校があるとなると、罠をかけて駆除するしかない。

 

(熊森から)

聞けるものなら、クマたちの言い分も聞いてみたいです。

熊森本部のある関西と東北では、山も人々の暮らしも状況がかなり違います。

今年のような異常年、目の前の問題としてどうすれば人間とクマが共存できるのか、秋田の地元の方で名案のある方は、どうか熊森本部にご連絡ください。

熊森がわかっているのは、「人間が人間のことしか考えなくなったら、人間は滅びる」という自然界の掟です。

 

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