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2018-04-12

秋田県が今春、クマ推定生息数を2300頭と増加訂正した件について

秋田県はこれまでクマ推定生息数を約1000頭としてきましたが、昨年度1429頭に増加させ、この3月、更に、 2320頭に増加訂正しました。

昨年800頭以上もクマを有害捕殺したのに、なぜ、推定生息数が900頭以上も増えるのかミステリーです。熊森本部が秋田県庁担当者に問い合わせた所、いつものようにていねいに対応していただき、2300頭に至った資料も送ってくださいました。担当者の皆さん、お忙しい中、ありがとうございました。

 

秋田県:これまでは、クマを目撃しやすい4月~5月に猟師が山の中で目撃したクマ数を基に計算していた。その結果、推定生息数は1000頭前後で推移していた。しかし、その時期は、親子グマはまだ冬ごもり穴から出ていないので、過小生息数ではないかという指摘があり、2017年の夏、カメラトラップ調査(注:誘引物を高所に仕掛け、寄ってきたクマが立ち上がった時、首のツキノワが確認できるよう自動撮影して個体識別する)という新たな手法を用いてクマの推定生息数を推定した。クマ数が増加したのではなく、調査手法が変わったため、推定生息数が増えた。

 

以下、詳細

2017年に、クマが高密度に生息している森吉山や太平山を中心とした、1521㎢の開放的な空間で、2期に分けてカメラトラップ調査を行った。

①1期は8月~9月 117台のカメラを設置。208頭のクマを撮影(重複あり)。71頭のクマを識別。推定生息数143~219頭。

②2期は9月~10月 119台のカメラを設置。537頭のクマを撮影(重複あり)。150頭のクマを識別。推定生息数408~620頭。

 

第2期の調査で識別された150頭のクマ数から推定される生息密度(頭/㎢)をもとに、地域別の目撃数からクマ生息密度の濃淡を出し、県内生息数を計算してみたら、2600頭という数字になった。

2017年度は、クマの捕殺が824頭であったので、2018年度の推定生息数は、

2600-824+544(生まれた子グマの数)=2320頭

 

 

<熊森から>

 

・秋田県のクマ推定生息数の出し方のいいところは、兵庫県のように山から出てきたクマ数(目撃数・捕獲数)で生息数を推定するのではなく、山の中にいるクマを数えて推定しているところです。山中にどれくらいのクマがいるかが大事なのです。

 

・また、クマを捕獲して恐怖に陥れたあと全身麻酔をかけてマイクロチップを入れたり、発信器を付けたりして、クマに耐えがたい負担をかける調査が一般的な中、カメラで撮影するだけというクマへの負担を最小限に抑えた調査方法を採用されたことも、熊森は評価します。

 

 

・ただ、調査区域が閉鎖的空間でクマが流入・流出がないことを前提として計算されていますが、実際はクマは森の中を広い範囲に自由に歩き回っていますから、どこまで正確な数かは誰にもわかりません。1期と2期を比較してみても、推定数にはかなりの違いがあります。

なぜ、推定数の大きい2期の結果だけを採用されたのか不明です。1期と2期の平均数を使わないと、過大な推定数なってしまいます。

また、生まれた子熊の数が544頭というのもどこから来たのかわかりませんでした。子熊も成獣も、野生ではかなりの自然死があるわけで、それも考慮されねばなりません。

 

・熊森は、クマが何頭いるかは、そんなに大切ではないと考えています。山になら何頭いたっていいのです。大事なことは、なぜ去年、大量のクマが山から出てきたのか。その原因を究明するため山中の餌量を調査することと、予期せぬ自然界の異変が起きても、山から出てきたからと殺してしまうのではなく、被害防除対策を徹底させ、場合によっては食料の分かち合いを実施することです。(熊森が知る限りでは、秋田県は初めに駆除ありきで、山中餌量調査と被害防除を、全くやっていません)

 

 

秋田県が生息推定数を2320頭にかさ上げしたことによって、駆除数の上限が上がったり、安易な駆除が横行したりすることがないようにだけは願いたいです。クマたち野生動物も、この国に生きる権利があります。

 

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