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2019-12

江戸時代の実話集「北越雪譜」より        熊人を助(くまひとをたすく)

新潟県には、クマに関するすばらしい実話集が残されています。
口語訳 藤田恵 熊森顧問

 

江戸時代の実話集「北越雪譜」より

熊人を助(くまひとをたすく)

 

人が熊に助けられた話は多くの本などに出ていますが、実際に体験した人の話は珍しいので記録しておくことにしました。妻有の庄で八二歳の老人から私が聞いた内容です。

 

━━ 私は二〇歳の二月に、薪を雪車(そり)に満載して山から帰る途中で、薪の一束が雪車から転げ落ち、谷を埋うずめている積雪の割れ目に挟まってしまいました。その薪を引き上げようとしましたが重くて動きません。そこで、腹這いになって両腕を延ばし、大声と共に引き上げようとした時、足は踏ん張りがなかったため自分の身体がひっくり返って、雪の裂隙より遥か下の谷底へ落ちてしまいました。雪の上を滑り落ちたため、幸い怪我はしていませんでした。

しばらくは夢のようでしたが、ようやく正気になり、上を見ると雪の屏風を建てたようになっていて、今にも雪崩てくるのではないかと恐ろしくて生きた心地はしませんでした。非常に暗いので、せめては明るい方へ行きたいと、雪に埋まった狭い谷間を伝ってやっと空が見える所に来ました。谷底の雪の中は寒さが烈しく手足も凍えて一足歩くのもやっとのことで、こんなことでは凍え死んでしまうと自分の心を励まして、道があるかも知れないと百歩(はんちょう・約六〇㍍)ほど行きました。そこは滝がある所で四方を見ると、谷間の行き止まりで、瓶に落ちた鼠と同じく、どうすることも出来ず呆然とし、どうしたらよいのかという方策も思い付きませんでした。ふと傍らを見るとやっと潜ぐれるほどの岩窟があり、中には雪も無く入って見ると少し温かいのでした。この時にやっと気が付いて腰をさぐってみましたが、握飯の弁当を落としてしまっていたのです。

このままでは飢え死んでしまう、しかし雪を食べても五日や一〇日は命を保つことはできる。そのうちには雪車歌(そりうた)の声さえ聞こえて来れば、村の者であるから大声をあげて呼んだならば助けてくれるに決まっている。それにつけても、お伊勢様(伊勢神宮)と善光寺様にお頼みする以外にない。懸命に念仏唱え大神宮を祈っていましたが、日も暮れてかかったのでここを寝床にしようと、暗がりをさぐり探り這いながら入って見ると次第に温かくなるのでした。続けて探っていると手先に障ったのは、正しく熊だったのです。

びっくりして胸も裂けるような思いでしたが逃げる道もなく、これが命の瀬戸際と、死のうが生きようが神仏にまかす以外になしと覚悟を決め、熊どの私は薪を取りに来て谷へ落ちただけなのです、帰るには道がなく、生きて居るには食べ物もなくどうせ死んでしまう命なのです。引き裂いて殺したいならば殺して下さい。もしお情けがあるのなら助けて下さい。恐る恐る熊を撫でると、熊は起き上がった様子でした。しばらくして私の後ろへ廻り私の尻を押したので、熊の居た跡へ坐るととても暖かく、まるで巨燵にあたっているように全身が暖かくなり寒さも忘れました。熊に丁寧にお礼を言い、これからも助けて下さいと、色々と悲願を伝えたところ、熊は手をあげて私の口へ柔く何回も押し当てました。熊は蟻を喰う事を思い出して舐めてみると、甘くて少し苦みがありました。私は心も爽やかになり、熊は鼻息を鳴らして寝入りました。私はやっと助けてもらったと安心して、熊と脊中をならべて寝ることになり、なかなか眠れませんでしたが、いつの間にか寝入っていました。

翌朝、穴を出てあちこち見ましたが、やはり山に登る藤蔓もありません。熊が滝壺で水を飲んでいるので、初めてよく見ると犬七匹分ほどの大きな熊でした。耳を澄ましても雪車歌は聞こえず滝の音ばかりで、その日も虚しく暮れて、また穴の中で一夜を明かしました。熊の掌で飢えをしのいで幾日たっても雪車歌は聞こえず、こんな心細い事はありませんでした。

熊は次第に馴れ可愛くなり、飼い犬のようになり、熊も人間の心を理解し畏敬の念があるようでした。

ある日、窟の入り口で虱を取っていた時、熊が私の袖を咥えて引きながら、雪を踏み固めて道を造ってくれました。その道を進むと人の足跡がある所に来ることが出来ました。熊はすぐ走り去って行方は分かりませんでした。熊が走り去った方を拝み、全ての神仏の御蔭だと拝みながら嬉しくて足も軽やかにその日の火が点る頃に自宅へ帰りました。この時、近所の人々が集まって念仏を唱えていました。

最初は両親をはじめ一同は幽霊ではないかと、びっくりしていました。幽霊ではないと分かると、幽霊と騒いで笑いが広がり、両親もご満悦でした。薪を取りに出て四十九日目の弔いが、酒宴となりました。

私に詳しく話したのは九右エ門という百姓でした。その夜に灯火の下で書き残しましたが、もう昔の話になってしまいました。

 

 

熊森から

 

みなさんに本当のクマの姿を知ってほしい

人間に追い詰められて殺されることを知りパニックに陥っているクマの姿ばかり放映するのではなく、やさしくて、かしこくて、人間から受けた恩を一生忘れない、本当のすばらしいクマの姿をマスコミは伝えてほしい。

クマはこの国できちんと棲み分け共存を守って、奥山で生きてきました。この掟を破ったのは人間の方です。戦後、人間が奥山にどっと入ってきて、奥山をクマが棲めない所にしてしまいました。

 

クマが人を襲ったという人々に誤解を与える間違った言葉を放送禁止用語に入れてほしい。私たちがマスコミ界にこのことを訴え続けて27年になります。いまだ全く聞き入れられていません。我が国がクマを保全するも絶滅させるも、マスコミの報道姿勢次第だと感じています。

 

 

当協会宮澤正義顧問は長野市のご自宅の500坪の庭で、10頭のツキノワグマと20年間、家族として暮らされました。犬を特別賢く我慢強くしたらクマになる。

 

庭で息子さんと木登りをして遊ぶクマ(写真提供宮澤正義先生)

 

 

 

 

 

 

 

近くの川までクマさんと散歩(写真提供宮澤正義先生)

熊森が、森林環境税・譲与税のパンフレットを全国市町村に配布しました

来年は全国で広葉樹林化の実践を広げていきましょう

2019年は、森林環境税・森林環境譲与税が成立し、森林環境譲与税が各自治体への交付がスタートした年でした。

 

日本熊森協会は、法律の成立前に、国会でロビー活動をし、日本の森林の最大の問題である放置人工林を、森林環境税を使って、天然林に再生してほしいと訴え、広葉樹林化とそのための体制整備を求める国会の附帯決議がつきました。詳しくはこちらのブログで

 

森林環境譲与税について、自治体に使い道の聞き取り調査をしていますが、森林環境譲与税の意義や広葉樹林化を推進するという附帯決議を知らない自治体がほとんどで、使い道が決まっていない自治体、何に使っていいかわからな自治体も多いのが実情です。

「これでは、水源の森再生は進まない」と危機感を持ち、森林環境譲与税の意義や天然林化を進める重要性を伝えるパンフレットを作成し、12月に全国の自治体に配布しました。

 

一部自治体の職員の方たちからは、

「追加でもっとパンフレットを送ってほしい」

「森林環境譲与税で広葉樹林化を進めていいなんて知らなかった」

との喜びの声が届いています。

来年は、全国で森林環境譲与税を使った広葉樹林化の実践例が次々と現れるように、ぜひ、パンフレットをご活用ください。

全国自治体に配ったパンフレット

パンフレットの詳細はこちらから

 

議員さんやお住いの自治体へ持って行きたいのでこのパンフレットをたくさんほしいという方は、熊森本部までご相談ください。

 

 

親子グマ3頭がこもっていた新潟県南魚沼市の診療所が、今回の熊森のクマ保護活動に大感謝③

12月27日、室谷会長ら熊森一行は、今回保護した3頭の親子グマが冬ごもりしようとしていた診療所の現場を視察に行きました。

理事長以下診療所のみなさんは、今年、南魚沼市で発生したクマによる人身事故を痛ましく思う一方、今回の熊森のクマ保護活動に大感謝してくださっています。理事長の奥様である黒岩秩子様が、わたしたちを上越新幹線の浦佐の駅まで車で迎えに来てくださいました。

 

親子グマがこもっていた場所

親子グマは、診療所の縁の下にあたる場所に並べられたエアコンの奥にこもっていたということです。

ここは雪や雨露をしのげる上、白いビニールで囲われていますから、屋外ですが、外から中が見えません。

母グマがここを冬ごもり場所に選定したことに、納得しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

親子グマがこもっていた場所を案内してくださっている黒岩秩子様

 

母グマはエアコンのずっと奥の、外からは見えない空間に、段ボールやごみ袋を使って、巧みに冬ごもり穴を造り、親子で寝ていたそうです。

 

 

 

 

 

 

 

現場の遠景 クマは、川の上流に見える山から河川敷を伝って縁の下まで歩いて来たと思われる。

 

この後、レストランで食事をしていると、黒岩理事長やご家族のみなさん、従業員の方々が続々とやってこられて、よくぞこの親子グマを助けてくださいましたと、みなさんから次々とお礼を言われました。(下の写真には、集まって下さった方々の半分が写っています)

写真左から、黒岩秩子様、森山熊森名誉会長、黒岩卓夫理事長、室谷熊森会長

 

この親子熊を保護して以来、本部は、様々な法的対応に追われ続けています。

つくづく感じることは、日本では今、野生鳥獣を殺すことにはいとも簡単に許可が下りますが、たった3頭の生命を救うことがこんなに大変なのかということです。現在の野生鳥獣の法制度が、野生鳥獣の生命を救うことを前提に組み立てられていないことを痛感しています。

 

黒岩さんが経営されている保育園の子供たちも、今回、クマさんが保護されたことを皆大喜びしているということです。南魚沼市民の方々の中にも、今回の親子グマの救命を喜んでくださっている方が結構おられるとのことでした。南魚沼市としては、この親子グマを殺処分することはもはやできないと思います。

 

以下は、医療法人社団萌気会二日町診療所黒岩巌志院長が、2019年12月15日発行の会報「もえぎVOL331」の巻頭言に書かれた「クマの親子来訪~実況報告~」という文章です。

ぜひ読んでみてください。

 

記事全文はこちらからお読みください。

 

来春、この親子グマを山に無事放獣するまでには、まだまだ、越えねばならないハードルがいろいろと横たわっているようです。

 

午後から、熊森一行は、南魚沼市役所を訪れ、行政担当者らと今後のことについていろいろと協議しました。(12月18日に続いて2回目の協議でした。)

 

来年度もまだまだ協議が続くようです。兵庫県本部からその度に新潟まで出向くのは、完全民間の市民団体としては、度重なると、経済的にも時間的にも体力的にも、かなり苦しくなってきます。

 

しかし、何としても南魚沼市との初めの約束通り、来春にはこのクマたちを山へ返してあげたいです。

 

これからも、たくさんの方の優しさと叡知を集めてがんばります。みなさま、来年もぜひ、殺さない共存策をめざして活動し続けている自然保護団体熊森を応援してください。

新潟県南魚沼市の診療所で冬籠り?射殺される寸前の母子グマを熊森が現地に急行し救出!②

兵庫県西宮市本部から南魚沼市への道のりは、思ったよりも大変でした。

山々はもう雪をかぶっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南魚沼をめざして、ひたすら走る

 

職員が向かっているので、それまで動かず待ってほしいという電話を、熊森本部から、診療所、南魚沼市役所に入れてもらいましたが、返答は得られていません。

処分される前に、現地に着かなければならない。気が焦ります。

 

10:30やっと現場の診療所に到着。(西宮市を深夜に出発して、10時間半かかったことになります)

母グマに麻酔がかけられた後でした。

さっそく行政と交渉開始です。

熊森が来春までこの3頭を預かる代わりに、来春、南魚沼の山に放獣が交換条件です。

 

交渉は難航しましたが、やっと話がついて、熊森が春まで預かることになりました。

とにかく、山から出てきたクマを殺さない流れを熊森が作るしかないと必死でした。

 

有害動物と書かれた有害捕獲檻に、猟師が親子グマを投げ込みました。

(有害動物というレッテルを貼られてしまうと、殺すという結論以外は見えてこなくなります。クマが有害動物なのではありません。今の地球上で、一番環境を壊し続けているのは人間です。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麻酔がかかったままの母グマに子グマ2頭が抱きついている。

 

とにかく、新潟県内の安全な場所に保護し、本部から持参したドングリと水を与えると、まず母グマから、その後は子グマも母グマをまねて、狂ったように食べ始めました。

慌てて本部に、ドングリをすぐ段ボール4箱、新潟に送ってくれるよう追加を依頼しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

毛布を敷く。水とドングリは、いつでも食べられるようにセット。

 

この3頭の命を何としても守る!そんな気持ちでいっぱいでした。

 

今年、南魚沼市では、人身事故が多発しており、多くのクマを有害駆除してきました。こんな中、助けられるクマは助けてやりましょうよという熊森の呼びかけに答えてくださった南魚沼市担当者のやさしさに深く感謝します。

 

夜、この日のニュースをネットで確認してショックを受けました。

「診療所に立てこもっていた親子グマを無事捕獲しました。

けが人はありませんでした。」

これだけで終わっていました。

捕獲されたこの親子グマがこの後どうなったのか、記者たちの関心がここにないのはどういうことなのだろう。熊森が現場で交渉しているのを見ていたはずなのに。一般の方は、捕獲された親子グマが、その後どうなったか知りたいと思うでしょう。

 

ニュースをいろいろと探して、やっと、この後のことを書いた記事を見つけました。「愛護団体がこのクマを引き取りました」でおしまい。

ほめてもらうためにしたことではありませんが、このような報道には割り切れないものがありました。クマが山から出て来ざるを得ない背景、共存するためには、生息地を保証し、捕殺に頼らない棲み分けの道を探ることが必要なこと、クマの習性をよく知り、適切な対応をとることで多くの人身事故を防ぐことができること。事件として大騒ぎするだけでなく、メディアの方に共存のために伝えていただきたいことはたくさんあります。

 

有害駆除用の檻では狭すぎるため、兵庫県で熊森が保管している広い檻を運んできて、クマたちを移し替えることになり、次の日からいろいろと準備が始まりました。急なことだったので、手配にいろいろと時間がかかりました。

兵庫から新潟へ檻を運んだ4トンユニック

12月15日の檻移し替え実行日には、秋田県からクマの扱いに慣れている方やいざという時のために麻酔を打てるクマに慣れている獣医さん等、各地から、必要な技術を持った方々が、新潟県に集結しました。檻移しの失敗は絶対に許されません。綿密に打ち合わせましたが、やはり緊張します。

 

母グマが異変を察知して、子グマを抱えて放そうとしません。人間の方に行こうとした子グマに、だめ!と言わんばかりにかみつきました。母の子を守ろうとするすさまじい愛情に、一同、改めて胸を打たれ、涙が出そうになりました。母グマの警戒心は強く、檻の移し替えは難航しました。

熊森は、冬ごもりしようとしているクマに麻酔銃を撃った例をこれまで知りません。

今回、もう何度かこの母グマは麻酔銃を撃たれているので、次に再び麻酔銃を撃つと死ぬかもしれません。いろいろと悩みましたが、とにかく広い檻に移し替えねばならないので、獣医さんの判断で、眠らない程度の一番弱い麻酔を吹き矢で母グマにかけました。

 

こうしてやっとのことで、無事3頭の檻移しが終わりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後、通気口だけ開けて、扉を閉め、部屋を暗くしました。

 

専門家に見てもらったところ、この親子グマは、どうやら冬ごもりに入りそうです。

与えたドングリも食べる量は減ってきました。クマを自動撮影カメラで観察してみると人がいないときは、ずっと寝ている様子で冬ごもりに入ろうとしています。

野生グマがそうであるように、親子グマの人に対する警戒心はとても強く(野生で生きるために不可欠なことです)、人が近くにいるだけでクマたちは安心して冬ごもりに入れないようです。異変がないか、毎日そっと担当者が覗く態勢は整えましたが、それ以外はそっとしておくことになりました。水とドングリはいつでも食べられるようにしてあります。

 

この親子の救命を応援してくださった皆さん、救命に携わってくださった皆さん、この度は本当にありがとうございました。たくさんの方のご協力がなければ、実現できませんでした。

 

今年は、全国でクマの大量捕殺が起こっており、捕殺されたクマは5000頭を超えると予測されています。5000分の3の命です。でも、この親子グマを助けたことにより、出てきたらすぐ捕殺ではなく、救える命を救い、共存をめざす流れをつくることにつなげたいと思います。

地元に対し、どうしたら人身事故を防げるかという広報をしたり、クマのひそみ場となっている場所の草を刈ったり、カキの実を狙ってクマが来ている場合は、カキもぎをしてそのカキを山に運ぶなど、市民団体として地元にできることを、今後も会をあげてやっていきたいと思います。

 

来春、この親子グマを無事山に返しましたといういいニュースを、みなさんにお伝えしたいです。(完)

 

 

新潟県南魚沼市の診療所で冬籠り?射殺される寸前の母子グマを熊森が現地に急行し救出!①

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上の写真はANNテレビニュース12月9日午前より

 

以下、熊森ブログ

 

生物多様性条約を批准している日本が、今年、前代未聞、5000頭にものぼるクマを有害捕殺しています。

無責任ではないでしょうか。

 

生態系保全上からも、倫理上からも、何とか捕殺の暴走を止めるべきだ。
熊森は、環境省、都道府県、市町村に声を挙げ続けてきました。

しかし、どこも動こうとしません。

悲しいかな、これが、日本の実態です。

無数の捕殺罠が国内に出回るようになった今、捕殺ほど楽なクマ問題の解決法はありません。

みんな楽な方へ楽な方へと動いているのです。

 

熊森がいくら必死になって声を挙げても、捕殺は止まらない。

まだまだ熊森協会が小さ過ぎる。無念。早く100万人にしなくては。

忸怩たる思いに打ちのめされそうになっていた時、新潟県をはじめとする熊森会員たちから、12月8日、南魚沼市の診療所で母子グマがこもっているというニュースが流れている。このままだと殺処分されるから何とか助けてやってほしいというメールが本部に入りました。

 

日曜日だったため、本部が気づいたのは夜です。

警察、市役所、診療所、どこに連絡をしても関係者と連絡がつきません。

 

5000頭分の1頭になるかもしれないが、なんとか里に出て来たクマを殺さない流れを作りたい。

こうなったら、もう、熊森がやるしかない。

熊森本部はすぐに決意し、車のタイヤをスタッドレスタイヤに付け替えるなど、夜中までかかってあわただしく新潟行きを準備しました。とにかく、殺される前に現地に着かねばなりません。

猟友会の動きはいつも早朝です。午前6時到着をめざしました。

 

「命を懸けて、必ず助けてきます!」

午前0時、新潟に向かう職員の腹はもう決まっていました。

「気を付けてね、頼むよ」

スタッフ2人と段ボールに入れたドングリなど様々な準備物を載せた熊森車が、闇に消えていきました。

 

熊森から

こんなことを仕事にしたいと思う若者はいないかな。

いたら、今、職員を募集しているので、ぜひ応募してください。

当協会は、自らが動く完全民間の実践自然保護団体です。

12月5日、熊森顧問の片山大介参議院議員が国会で、クマ大量捕殺問題について質問しました

環境省の発表によりますと、2019年は10月末時点で、ヒグマ460頭、ツキノワグマ4289頭、計4749頭もの捕殺数になっています。これは、現時点で過去最多数を記録しています。

参議院環境委員会で質問する片山大介議員

この問題に対し、当会顧問を務める、片山大介参議院議員が、12月5日の参議院環境委員会で、小泉進次郎環境大臣に質問しました。

以下、参議院インターネット審議中継より熊森が文字起こししたものです。

 

片山議員:次はクマの話題なんですけれども、今年度はクマの捕殺数がものすごい増えているんですよね。で、過去最多は平成18年度の4679頭だったんだけれども、これがもう大幅に上回るペースで、10月末の時点で4750頭あまりで、来年3月の年度末には初めて5000頭を超えるんじゃないかと言われているんですよね。それで、なんで多いのかというのを聞くと、罠の数がすごく増えてきているというんですよね。まあシカとイノシシの罠が増えて来ているからそちらの方の罠に引っかかる、それを錯誤捕獲といいます。まずね、原則で確認したいのが鳥獣保護管理法ではシカやイノシシを捕獲する目的で仕掛けた罠にクマが掛かった場合は、これは、野に放す、すなわち放獣をしないといけないという理解でよろしいんですか。

 

小泉環境大臣:そのとおりです。

 

片山議員:そうすると、シカやイノシシの頭数がすごく増えてきているのはわかるんですが、クマがそこまで増えてきているのかなというのはありますし、それから、クマは、地域によっては絶滅の恐れのある地域個体群に指定されている、2年に1度しか子を産まないとも聞いているんですよね。人命第一なのはもちろんなんですけれども、クマの捕殺がこれだけ増えている、過去にないほど増えているということであれば、基本的に捕獲の許可は都道府県の自治事務だと言うんだけれども、やはり鳥獣保護管理法の所管している環境省として、実態がどうなっているか、過剰な捕獲が行われていないのかというのを調べてもいいのではないかと思うんだけれども、これはどのようにお考えですか。

 

小泉環境大臣:環境省では、クマをはじめとする鳥獣の保護や管理に関して、都道府県が鳥獣保護管理法に基づき、特定鳥獣保護管理計画を作成するための指針となるよう、ガイドラインを作成しています。クマ類に関するガイドラインの見直しは、来年度に予定しているところであります。その見直し作業において、クマの適切な保護管理のために必要な、生息状況や出没状況、そして捕獲状況等についても調査をしていく予定です。尚、先生がおっしゃった通り、今、クマの捕殺数においては、過去最多、今の時点でもそうですので、まさにそういった変化というのは見られるというふうに考えております。

 

片山議員:今年は、山の木の実りも少ないとか、いろいろなことがあって人里に降りてくるというのもあると思います。それが、人への被害とかもあるのかもしれないですけれども、少し、野生鳥獣についてもきちんと管理をするというか、絶滅の恐れのある個体群もあるというので、そこはきちんとやっていただきたいなと言うのはありますけれども。最後にそれだけ聞いて終わります。

 

小泉環境大臣:先程、錯誤捕獲というお言葉が有りましたが、まさにそれはシカやイノシシの罠にクマが誤って入ってしまったという、そういった場合についてでありますが、これは原則、安全に配慮しつつ放してください、放獣を行うように都道府県に対しては指導しています。ただ、人身被害防止の観点から有害鳥獣として捕殺をされている場合もあるというように聞いておりますので、いずれにしてもしっかりと調査をしていきたいと思います。

 

片山議員:ぜひ頑張っていただきたいと思います。ありがとうございました。

 

熊森から

今回、小泉環境大臣によって、錯誤捕獲されたクマは放獣すべきというのが国の方針であることが確認されました。心強い限りです。

シカやイノシシを捕獲する名目で設置許可を得た罠に、誤って他の動物がかかってしまったら、その場で逃がさねばならないのは当然ですから、錯誤捕獲されたクマは原則、安全に配慮しつつ放獣するよう都道府県に対しては指導していますとの小泉環境大臣の答弁は真っ当です。

た、出された問題から逃げるのではなく、しっかりと調査をしていくという答弁は頼もしい限りです。熊森が声を挙げたことで、環境省の調査が開始されるのであれば、こんなうれしいことはありません。

 

×しかし、現実には、北海道や東京都など、クマの放獣体制がいまだにない都道府県がいくつもあります。実際に環境省が具体的にどのようにこのような都道府県を指導されてきたのか、熊森としては知りたいところです。

 

×更に、今年どうしてこれだけクマが大量に捕殺されているのかというと、ひとつには、誤捕獲されたクマが大量に捕殺されているからです。環境省の方針に反して勝手に誤捕獲グマをどんどん殺処分している府県の実態をぜひ調査して発表してください。

 

また、誤捕獲されたクマを捕殺していると言われないように、兵庫県のようにクマの生息推定数の3倍ものクマ捕獲罠を常時設置して、米糠でクマを誘引し、巧みに大量捕殺を進めている県もあります。こちらにも厳しい指導が必要です。

 

罠を使ってのクマ狩猟は禁止されています。理由は、罠を用いるとクマを獲りすぎてしまうからです。

×しかるに一方で、有害駆除名目で大量のクマ捕獲罠を常設している実態を放置していては、何をしていることかです。今年のような乱獲や過剰捕獲を防げません。

 

環境省は今後、誤捕獲グマ殺処分問題と、クマ捕獲罠大量設置問題に取り組んでいただきたいです。

今年度のようなクマの行き過ぎた捕殺が今後起きないように、早急に対策をお願いします。

 

日本の水源の森を守ってきたクマを害獣視して、数を低減させることばかりに躍起になっている都道府県を放置すれば、生物多様性条約締約国としての責任が果たせません。ここで一つ環境省に、がんばってもらいたいです。

「私たちが取るべき道は、クマと人の棲み分け」室谷会長が、北海道新聞のクマ特集記事に!

12月4日、北海道新聞の特集「水曜討論」に日本熊森協会の室谷悠子会長のインタビュー記事が大きく掲載されました!

環境省HPのクマ類捕獲数の速報値によると、今年は全国でツキノワグマ4289頭、ヒグマ460頭もの過去最多数のクマが捕殺されています。

駆除されたクマの多くは、人々の生活を危ぶめるような危険性のない無実のクマもたくさんいます。クマとの棲み分けがいかに大切か、熊森は今年も多くのメディアに伝えてきましたが実際に報道してくださった方はごく一部です。この記事を書いてくださった内山記者には感謝申し上げます。

ぜひ皆さんも読んでみてください。

北海道新聞 水曜討論「ヒグマとどう共存するか」 ※有料記事になります。

北海道新聞、12月4日掲載の水曜討論「ヒグマとどう共生するか」

 

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