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2021-11-24

大発見!シカは捕食者やハンターがいなくても増え過ぎることなく自ら個体数を調整 馬毛シカ例

2021年11月21日(日)環境法律家連盟JELFの公開WEBシンポ「馬毛島の今」が開催されました。

冒頭、熊森の顧問でもある池田直樹弁護士が、環境法律家連盟会長としてあいさつされました。

このシンポジウムの中で、北海道大学大学院文学研究院助教の立澤史郎博士が、一定面積以上の自然があれば、シカは自ら個体数を調整しながら自然と共生して生き続けていくという世界で2例目の非常に興味深い研究を発表されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大な滑走路が造られ、自然が大破壊されてしまった現在の馬毛島

 

 

馬毛島(まげしま)は、種子島西方12㎞の東シナ海上にあり、面積は8.20km2最高地点の標高は71.7m、現在は、鹿児島県西之表(にしのおもて)市に属する無人島で、1986年に鹿児島県設鳥獣保護区となっています。

 

この島に生息する哺乳類はマゲシカとジネズミだけで、マゲシカの捕食者はいません。マゲシカは「奈良のシカ」よりも古くから文献に記録があり、地元種子島では大変親しまれてきた動物で、不思議なことにすぐ近くの種子島のシカとも違う固有の遺伝子を有しています。そのため、環境省が「地域個体群」としてレッドリストにあげているシカです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マゲシカ(毎日新聞写真より)

 

これほど小さな面積に数百頭のシカの群れが1000年以上にわたって維持されてきたことが確かな場所は、世界でも例がないそうです。

滑走路が造られる前の馬毛島の豊かな自然

 

立澤博士は、このマゲシカ個体群がどのようにして、増えすぎもせず減りすぎもせず個体群を維持してきたのかに興味を持ち、1987年以降30年以上にわたって調査を続けて来られました。

 

その結果、シカが増え過ぎると、妊娠率が落ちたり、オスの子供を中心に大量餓死が起きたりして(餓死とはかわいそうですが、これが自然)、増えたシカが島の植物を食べつくしてしまう前に、自ら個体数を減らして、シカの個体群も島の豊かな自然も持続させてきたことが分かったそうです。

 

これは、生態学上のすごい!大発見です。

 

これまで、ワイルドライフマネジメント派の研究者は、人間が適当に野生動物を殺してやらなければ、彼等は増え過ぎて自然を食い尽くし絶滅する。彼らが絶滅しないように、個体数管理を人間がしてやらねばならないと言って、駆除やハンティングを奨励してきました。しかし、立澤博士の研究で、このような自然観は間違いであったことが分かります。

 

人間なんかいなくても、自然界は持続可能だったんだ

人間よ、おごるなと思い知らされました。

 

こんなことがわかったのも、無人島馬毛島が鹿児島県にあり、そこにマゲシカが棲んでくれていたからで、馬毛島の自然もマゲシカも、この上もなく学術的に貴重です。立澤博士は、馬毛島でなければ研究できない生態学上の貴重な課題がまだまだ多くあると言われています。しかし、人々から島の土地の99.6%を買い集めたタストン・エアポート(馬毛島開発から商号変更)から、この20年間立ち入りを禁止され、研究できない状況に追い込まれておられます。

 

島の所有者は、最初この島を開発してレジャーランドにしてもうけようとしたようですが、うまくいかず断念。次々と用途計画が変更されました。2011年6月、防衛省との間で、アメリカ軍のFCLPの移転先として検討とすることが発表されました。この後、所有者は島を軍事基地として国に高く売りつけようと、林地開発の許可を大きく超えて大規模な伐採・整地・盛り土をおこない(違反行為)、島を十字に横切る「滑走路」を建設しました。島の自然は大破壊され、マゲシカの生息数は半減しました。

 

2019年12月3日に当時の河野太郎防衛相が記者会見で、防衛省と馬毛島の所有者との間で、約160億円の売買契約の合意に至ったことを発表。その後、馬毛島の基地化計画がどんどん進められていきました。2020年8月には、同島のほぼ全域を自衛隊やアメリカ軍の総合基地として開発する以下の計画が公表されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

島の9割を占める赤線内が、

戦闘機が爆音をとどろかせる基地に。

残り1割は、マゲシカの生息不適地。

 

マゲシカはどうなっちゃうの

 

今の基地計画では、誰が見ても、マゲシカの生存はもはや不可能です。

こんなの、日本が批准している生物多様性条約に違反です。

マゲシカは防衛省によって絶滅させられそうになっています。

 

ちなみに、ネットで最新情報を検索すると、防衛省は、環境影響評価(アセス)手続き中にもかかわらず、基地整備に使うコンクリートを作るプラント工事の入札を公告しました。いよいよ工事が始まるのです。多くの漁民や市長は、馬毛島の基地化に反対しています。(南日本新聞社2021年11月21日記事)

 

早く止めないと基地が造られてしまう。

マゲシカが絶滅させられてしまう。

全国民の、全世界の大問題にしていかねばならないと熊森は思います。

 

みなさんはどう思われますか。

 

 

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