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森林組合員が語る日本の森の現状

3月26日に日本熊森協会本部にて阪神南地区・神戸地区の合同定例会があり、講師として森林組合の方が約2時間お話し下さり、参加者一同、大変参考になりました。

以下、当日の内容をまとめたものです。
●<補助金漬けの森林組合>

本来、森林組合は、組合員(山林所有者)からの委託により山林の手入れを引き受け、組合員は搬出した木材の販売利益から組合に作業費として一部を支払うことで成り立つ。しかし、国産林業が成り立たなくなった今、現在は行政からの補助金を頼りに存続しているのが実情。このような事態になっているというのに、森林組合は一般企業なら当たり前の「営業」努力もせず、公務員と同じ体質になっている。

●<過酷な作業現場>

海外から大量に木材が輸入されるようになり、日本でのスギ・ヒノキ材の市場価格が低下。森林組合では、高い人件費を支払うため、作業効率を上げることによって対抗。1日で100本の木を切り倒すようになどのスピードが、森林組合員に求められている。そのため間伐作業現場では事故が絶えず、年間、何件もの労災事故が発生している。

●<森林法の一部を改正する法律案(2011年3月末国会で審議中)に絶望>

改正案は、拡大造林の後の拡大路網(木を伐り出すための道路造り)を全国で一気に進めようとする「森林・林業再生プラン」(林野庁)を推進するためのもの。しかし、急斜面の多い日本の山では、新たに林道を作っても、雨雪によりそこから山がくずれる。常にメンテナンスが必要となる。現在林道がない場所の多くは、急斜面や山の尾根で、林業に適していない所が多い。そんなところに林道を作っても、作業は困難、採算も取れない。現場を知っている人なら容易に理解できるはずだ。「森林・林業再生プラン」で、5~10年後に日本の森林ははもうぼろぼろになってしまうだろう。日本の森林法は、戦後の施行から大幅改定がなされておらず、環境への配慮がない。森林組合で働く多くの人たちは「これで日本の森は、もう終わりだ」と感じている。

●<見習うべきドイツの森林法>
ドイツでは、国内北部に比べて南部の方が標高が高く傾斜がきつい。そのようなところには補助金が増額されるなど、地域に沿った法律になっている。樹木の管理も樹径で行なわれるため、個々の山林に応じた作業ができる(日本は樹齢で管理するので、地域差に対応できない)。また林業従事者の教育も行き届き、自然環境に対する配慮が現場作業員にも徹底している。

●<「水源かん養保安林」の看板>

(看板の内容)「森林は、降った雨や雪などが一度に流れ出るのを防ぐとともに、地下水として貯え、徐々に流出させることにより、雨 が降らないときでも川の水が涸れないようにする働きをもっています。このような森林の働きを特に発揮させるために指定されているのが、水源かん養保安林で す。」

●<「水源かん養保安林」の驚くべき実態>
「水源かん養保安林」の実態が、一面に針葉樹の人工林ということはよくあること。森林組合が、行政から頼まれて、ここの森林整備をしている。

皮肉なことに、ここでは保安林以外の場所が、多様な植物に覆われて豊かな植生を保ち、高い保水力を誇る。

●<森林組合員たちに期待できない>
公務員化してしまった森林組合員たちには、現状に対して声を上げ立ち上がる意志は、もはやない。森林組合は林業はするが、森は守れない。日本の森の危機を多くの国民に伝えたい。自然保護団体に期待したい。

森林・林業再生プラン(林野庁、平成22年2月)
http://www.rinya.maff.go.jp/j/seibi/sinrin_seibi/pdf/4.pdf

森林法の一部を改正する法律案(農林水産省、平成23年3月1日)
http://www.maff.go.jp/j/law/bill/177/index.html

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