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9月2日 各地で、ナラ枯れ猛威 (山形県編) 

広がるナラ枯れブナ枯れに胸痛む

(以下は、熊森山形県支部長のブログからの転載です)

初夏の頃の長期予報が「冷夏」だったはずですが、どうしたわけか猛暑の夏でした。お元気で夏を乗り切られましたか? 昨年の「梅雨明けなし」の夏から一転、今夏は夜も気温がなかなか下がらないために、果樹農家の皆さんはさまざまご苦労をされているようでした。

8月4日、担当した夏季集中講座の一環で、山形大学の学生たちと長井葉山に登りました。ここ5年ほどナラ枯れが広がっていましたが、7月下旬になって、新たに枯れ始めたナラの木の葉っぱが赤茶けて葉山の東斜面にさらに拡大しました。毎年4倍ぐらいに拡大してゆくと言われていた通りの拡大スピードです。さらに、ナラより少し上で多くなるブナの樹幹が遠目にみても茶色っぽい色に変色しているのは、ウエツキブナハムシによる「ブナ枯れ」です。目にしみるような緑であるべき山肌のこのような様子を見ると、胸が締め付けられる思いがします。

長井葉山山麓のナラ枯れ

長井葉山山麓のナラ枯れ

森に起こっているこれらの異変の原因は、直接的には昆虫によるもの、あるいは昆虫が媒介する菌類によるものですが、これまで目立たなかったこのような現象がここ数年続いている背景はいったい何なのでしょうか。ある人は温暖化だと言い、ある人は酸性雨だと言います。また別の人は農薬散布が絡んでいるとも言います。原因がはたして一つであるのかどうかもわかりません。このまま進めばあと何年かしたらこのあたりの森は立ち直れないほどのダメージを受けるのでしょうか。

「ナラ枯れ」に関しては、これまで県が進めてきた 薬剤注入がほとんど効果を示さないことだけは明らかです。一方で、日本熊森協会の顧問の宮下先生が、佐渡の森で炭を撒いたところに効果が見られたとの報告が先日ありました。それは果たして全ての地域で有効な方法であるのか私にはわかりませんが、試してみる価値があるのではないかと考えています。

森の現状を見て心が痛む一方で、どこか楽観的な自分もいます。その根拠は自然林に見られる種の多様性への信頼です。ナラが枯れ、ブナの葉っぱが食害を受けても、100%やられるわけではありません。また、森にはブナやナラ以外の様々な樹木が生育しています。そうした多様性が、森の全滅の防波堤になることもあるのではないかと考えているのです。あまりに楽観的すぎるでしょうか。

ウエツキブナハムシにより食べられ始めたばかりのブナの葉

ウエツキブナハムシにより食べられ始めたばかりのブナの葉

森の変化のサイクルは少なくとも数百年を単位とするものです。それにひきかえ、私たち人間のサイクルはせいぜい数十年。例えてみれば、針の穴から巨大な象を覗いているようなものかもしれないのです。あわてて目先だけの対処をすれば、かえって事態の悪化を招くということもあるかもしれません。

そのように考える一方で、森の野生動物たちにとってみればやはり厳しい状況であるとは言えるでしょう。山形では春先にクマの目撃情報が相次ぎ、これは2006年の大量捕殺の年の再現かとも懸念されたのですが、夏に入って目撃も捕獲(捕殺)もほとんど増えてはいません。しかしながら、これから秋にかけて、クマたちは多くの食べ物を必要とします。やはり秋のことが気がかりでなりません。

今年は「生物多様性年」ということで、秋に日本で国際会議が開催される予定です。これをきっかけに多くの国民が種の多様性の重要性に気づき、私たちがその多様性を維持してゆくためのきっかけになることを願っています。

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