くまもりNews
8月3日、宇都宮大学会場前で、熊森栃木県会員たちと環境省イベントに抗議活動
- 2013-08-24 (土)
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「すごいアウトドア」として、一般人にハンターになろうと呼びかける、「狩猟の魅力まるわかりフォーラム」に対して、会場前で抗議活動を行いました。
栃木県の会員たちも駆けつけてくれました。会場前で、
「野生動物の命を奪うことが、すごいアウトドアだなんて、わたしたちは認めない。シカ・イノシシによる被害問題は深刻だが、解決に向けて、環境省は、防除柵設置や、動物たちが帰れる森づくりに税金を使ってほしい。人間中心の現代社会だが、環境省だけは、自然や野生生物の側に立つべきだ」
と、みんなでチラシを配ったり、声を張り上げたり、総勢10名で、抗議活動を行いました。会員の皆さんは、本当に勇気を出してよくがんばってくださったと思います。
このイベントは、200席会場に275人が詰めかけるという盛況ぶりでした。さすが、市民団体と違って、環境省(=国)の力はすごいです。
狩猟学の専門家と、銃と射撃の月刊誌のライターの方が、「狩猟のイロハ」という題で、対談されました。
この後、ワークショップがあって、参加者は、銃を持たせてもらったり、罠の実演を見たり、野生鳥獣肉を食べたりしていました。
この時、このフォーラム開催とは関係のない問題なのですが、長野県など一部の県に引き続いて、山梨県が、環境省が決めたくくり罠の12センチ規制を緩和しようとしていることを思い出して、くくり罠の実演をしておられた栃木県の猟友会の方に、「シカやイノシシを獲るには、くくり罠の12センチ規制を緩和する必要がありますか」と尋ねると、「必要ないよ。12センチで十分獲れるよ」と、即答されました。
わたしたちは狩猟を全面否定しているわけではありませんが、レジャーやスポーツとして野生動物を殺すことには絶対に反対です。
人間がシカやイノシシを殺し続けない限り、かれらは増え続けるという理論が、このフォーラムの根底にあるわけですが、この理論が正しいかどうか、学問的には、誰にも証明されていません。
人間が、戦後、捕食者としてのヤマイヌを殺し尽くしたり、犬をつないで飼うように決めたことには、問題はなかったのでしょうか。
戦後、人間が、野生鳥獣の生息地であった広大な奥山に入り込んで開発したり、奥山原生林を東北六県分の面積皆伐して、いったん広大な草原にし、その後、1000万ヘクタールの山林(全国山林面積の42%)を針葉樹だけの人工林にして放置し、広大な奥山を荒廃させてしまったこと、化石燃料を燃やし続けて大気を汚染し、酸性雨や地球温暖化を招いて、今も自然生態系のバランスを狂わせている等々、人間側の反省点も多いはずです。
しかし、このフォーラムには、自然破壊や、第一次産業を軽視して、環境破壊、生態系破壊をし続けてきた人間側の反省は全くなく、「シカ、イノシシの数が増えた、みんなで殺してくれ」というだけで、人間として悲しくなりました。
しかも現在、狩猟対象となっている多くの野生鳥獣は、激減しています。環境省は、ハンターになった人たちに、カワウ・シカ・イノシシだけを獲れと指示するのでしょうか。
もっともっと大きな観点から、戦後、人間が自然界にしてきたことを総点検し、クマ・サル・シカ・イノシシ等大型野生動物問題の解決に向けて、第一次産業の重視も含め、国民的議論を呼び起こすべきだと思います。
野生鳥獣被害に困るようになったから、野生鳥獣を殺しておけという考え方は、あまりにも一方的です。
フォ―ラムに参加して、このような考え方では、野生鳥獣と共存する国など、とても望めないと思いました。
7月28日 大人気の太郎と花子
- 2013-08-19 (月)
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夏盛りの7月28日は、初参加の大学生2名を含む12名でお世話に行きました。
お土産は旬の桃。思わず「ぜい沢やなー」と声が上がります。
どうしても、自然の野山を駆けることの出来ない太郎や花子に対しての
不憫な思いが先立つのでしょう。
せめておいしいものぐらい食べさせてあげたいという会員の思いが強いので
ついつい、2頭の好む高級果物の差し入れが多くなります。
まずはいつも通り獣舎内をきれいにお掃除します。
プールのお掃除は結構大変です。底まで丁寧に大学生の方達が、心を込めて洗ってくれました。
今年は猛暑です。太郎と花子も立派な毛並みなのでさぞ暑いことでしょうが、プールの掃除も汗が止まりません。
毎回、ボランティアリーダーのOさんが一升のご飯を炊いて持ってきてくださってます。
このごはんに鯖の水煮缶を混ぜて食べるのが太郎と花子の好物で大切な主食です。
ご飯が済んだらデザートにたくさんの果物を食べます。よく熟しておいしそうなものから食べているようです。
猛暑です。お水やスイカも、必要です。がんばってチーちゃんも、一緒に今年の夏も元気で乗り越えてね。
初参加の大学生の方たちの感想は、「動物園の飼育員並みのこんな体験が出来てすごく良かった」ということでした。
来る8月25日も、新しく大学生の方々が4名参加してくださる予定です。(H)
今年も参加者一同大感動 第18回本部原生林ツアー
- 2013-08-19 (月)
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1997年のくまもり結成当初から続く原生林ツアー。18回目の今年は8月4日(日)、なんと1才から70代まで、岡山から自家用車での参加を含めて総勢61名の方が参加してくださいました。場所は西宮のくまもり本部から車で3時間ほどの所にある、岡山県西粟倉村(にしあわくらそん)の若杉天然林です。こんなに遠くまで行かないと、もう、原生的な豊かな森は見れません。みなさん豊かな森ってどんな森なんだろうと期待に胸を膨らませて出発しました。
クマさんは豊かな森のシンボル。ということで、まずは、たつの市の公園で飼育されている2頭のクマさん兄妹を訪れました。このクマ獣舎は、2年前にくまもりの要望を取り入れていただき、改造されて広くなったもの。2頭とも名前がついておらずみんなでクマさ~んと呼んでいると、クマさんが奥から出てきてくれました。夏の暑い日でしたので思いっきり水をかけてあげたいと思いました。
道中車窓から人工林を眺めていただき、私たちが豊かな山だと思っていたところが実は人工林であることを説明。そしてバスを降りて人工林を見学し、人工林が野生動物や土砂災害などいかに大きな影響を与えるかを説明しました。「森林・林業再生プラン」の影響で山のあちこちに林道が造られ、山にたくさん傷がつけられているようで心が痛みました。人工林の中には下草がまったく生えておらず、ほとんど生き物の気配を感じることができませんでした。この様子をしっかり頭に入れておいて、若杉天然林と比べてもらいます。
いよいよ若杉原生林に到着し、班ごとにごはんを食べていると突然の大雨。みなさんとりあえずバスに避難していただきましたが、昼食を済ませるとすぐに雨もあがり、原生林ツアーを続行することができました。
いよいよ若杉天然林へ。広さはわずか86ヘクタールですが、ブナやミズナラなど199種類もの樹木が生い茂る原生的な森。
今回も参加してくれた子供たちがまっさきに虫を見つけていました。
沢水の温度は16度でした。年間を通してほぼ一定の温度で、夏は冷たく、冬あたたかく感じられるのが、湧水の特徴です。
天然林の中はしっとりと湿っており、谷川にはこんこんと水が流れ続けていました。
巨木が倒れたあとにできるギャップ、そのギャップに生えてくる更新稚樹、すべてがこの多様性豊かな森をつくるのに必要不可欠です。
今年参加できなかった方は、来年是非ご参加ください!
参加者の感想
・人工林がいかに自然のサイクルを壊しているかという説明で今まで知らなかったことを知り、とても勉強になりました。
・緑いっぱい、さわやかな風、たえまなく聞こえる沢の水音、目を閉じて耳をすますとどんどん身体のこわばりがほどけていくのを感じました。
・天然林の頂上で自然林と人工林の明らかに違う森の姿を見て人間の都合で壊してしまった自然がどれだけのものか知ることができました。
・本部の森再生活動に参加しているのですが若杉原生林のように美しい森に再生できるように頑張りたいと思いました。
・これから日本の事を考えていって欲しい若い方の参加に意味あるな~と思いました。
・スタッフの方々の熱心さ、親切さに感動しました。
8月3日午前 栃木県会員らと宇都宮大学で「狩猟学」聴講
- 2013-08-18 (日)
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いよいよ、環境省主催「狩猟の魅力まるわかりフォーラム」(於 宇都宮大学)の開催日です。
午前中は、「狩猟学」の講義がありました。
講義は各90分間で、講義されたのは次の2名の方です。
9:00~10:30
宇都宮大学農学部付属里山科学センター特任助教 小寺祐二博士
10:40~12:10
東京農工大学大学院共生科学技術研究院 教授 梶光一博士
この2名の方は、2012年1月に東京農工大で開催された、
文部科学省特別研究費(連携融合事業)国際シンポジウム
「大型野生動物の管理システムの構築:クマ、シカ、イノシシとの共存を目指して」
主催:東京農工大、
共催:Norwegian University of Life Sciences・宇都宮大学・兵庫県立大学・兵庫県森林動物研究センター・岐阜大学応用生物科学部附属野生動物管理学研究センター・酪農学園大学、
後援:環境省・農
において、それぞれ、
「イノシシの管理の現状と課題」(小寺氏)、
「ニホンジカの管理の現状と課題」(梶氏)
と題する講演をされた方です。
ちなみにこの時、「クマ類の管理の現状と課題」の題で講演されたのは、兵庫県立大学 准教授 横山真弓博士です。
いずれも、YouTubeから当日の動画が閲覧可能です。
梶教授は、2010年11月に、環境省鳥獣保護業務室からの働きかけにより開かれた「狩猟と環境を考える円卓会議」(狩猟団体、自然保護団体、地方紙団体等の有識者から構成)の座長を務められた方で、2011年6月の第5回検討会後、最終提言をまとめられました。こちらの内容も、インターネットから閲覧が可能です。
祝・「びわこ水源の森・巨木トラスト基金」が、トラスト必要額960万円を超えました
- 2013-08-16 (金)
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「びわこ水源の森・巨木トラスト基金」を応援してくださっている皆さまへ
いつもご支援ありがとうございます。
さて、先月7月2日より開始したトチノキ巨木林保全のための資金集めですが、おかげさまで、基金がトラスト必要額960万円を超えました!
驚く速さで基金が集まり、スタッフ一同感激しております。本当に、皆様のご支援・ご協力には心からお礼申し上げます。
なお、8月15日で〒振替口座は閉じられました。以降のご入金はできません。
今後の詳細等につきましては、また追って専用ホームページ上でお知らせさせていただきます。
栃木県日光の山を栃木県会員らと視察 8月2日
- 2013-08-15 (木)
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午後から、栃木県会員のみなさんに、車で日光の山を案内していただきました。日光東照宮の横を通って行きました。東照宮は死ぬまでに1回は見ておきたいと思いましたが、今回は目的が違うので、残念ですが、山に直行しました。
山裾で、シカよけネットで囲まれた美しい庭園を見せていただきました。見たこともない可憐な草花がいくつか咲いていました。このネットの中の庭園が、本来の日光の植生を残しているということでした。ネットの外は、シカによって、好きなものを食べつくされてしまい、もはや本来の自然植生ではないそうです。どこでもシカ問題は深刻です。
どんどんと山を上がっていきました。ここはかつてはスキー場でしたが、つぶれたそうです。こんな上まで、人間が山を取ってしまっているとわかりました。
この山は、自然の広葉樹林です。道中スギの人工林が多かったので、ほっとしました。ここは霧が多くて有名なところだそうです。時間がなかったので、森の中までは入れませんでした。
圧巻はO牧場でした。日光国立公園内の標高1,030~1,320mに位置し、関東平野を一望できる場所に、巨大な牧場がありました。もともと栃木県は、北海道に次ぐ酪農県なのだそうです。行けども行けども牧草ばかりで、その広さは362ヘクタール(東京ドーム77倍!)の草地です。豊かな自然が息づく、のどかでおおらかな牧場という紹介でしたが、もちろん、熊森的には、ここには自然はありません。
ここはかつて、クマをはじめとする野生鳥獣たちの生息地だっただろうなと思いました。今、牛はこの広い牧場に1頭もいません。この時、栃木県の隣が福島県であることを知りました。放射線量を調べてみて、牛たちを放牧していないのだそうです。ほっておいたら数百年後、森に戻るのではないかと思いました。持参した線量計で、線量を図ってみました。
帰りにのぞいた人工林の中です。どこもほとんどが放置人工林でした。
駆け足で、日光の山を見せていただきましたが、次回、栃木県に来るときは、栃木県のクマ生息地の山の中に入って調べてみたいです。
わたしたちの声も聴いてほしい 栃木県庁で記者会見 8月2日
環境省担当官によると、「狩猟の魅力まるわかりフォーラム」についておかしいと意見を言ってきたのは熊森だけだということでした。誰かが声を上げねばならないと危機感を感じた熊森は、お昼の12時から午後1時まで、栃木県庁で記者会見をさせていただきました。
「野生鳥獣が田畑に出て来たのはハンターが減ったからと環境省が説明するとき、1970年以降の狩猟者が減りだした後のグラフだけを見せて、世論操作しています」・・・熊森の説明を、新聞記者のみなさんが熱心に聞いてくださり、多くの質問も受けました。
人工林率46%という栃木県の森の状況を、栃木県会員の方に補足説明していただきました。以前と比べると森の中の昆虫がすごく減ったという証言をしてくださいました。
戦後、人間が森の中をどれくらい荒廃させたか見ないで、山から出て来た動物ばかりを見て、殺す対策しかとらないのは、あまりにも悲し過ぎます。いろんな意見の人を集めて、いろんな意見を出し合ってもらい対策を考えていく。国策を誤らないために、環境省にはそんな国づくりをお願いしたいです。
次の日の朝刊では、多くの新聞社が、熊森の意見を紹介してくださいました。ジャーナリストは死んだとか言われるけれど、奥山を歩き続けている市民団体である熊森の見解を紹介してくださる記者さんが、栃木県にはたくさんおられました。まだまだ日本は民主主義国家だと思うと、うれしくなりました。記事にしてくださった記者のみなさん、本当にありがとうございました。
8月3日朝刊掲載新聞
東京新聞、毎日新聞、産経新聞、読売新聞、下野新聞
例外種以外のほとんどの狩猟鳥獣の捕獲数が激減している事実を、どう考えるか
- 2013-08-14 (水)
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わが国の狩猟対象鳥獣は、鳥類29種、獣類20種(うち5種類は外来種)の、計49種である。
今年の3月12日、環境省や有識者が出席して、「狩猟鳥獣のモニタリングのあり方検討会」が持たれた。事務局は、自然環境研究センターである。
その中で配布された資料に、狩猟鳥獣の1923年(大正末期)から現在までの捕獲数(狩猟数+有害捕殺数)の推移グラフがある。それを見て驚いた。例外種と外来種以外は、どれも激減している。
<鳥類29種の場合>
捕獲数が増えているのは、カワウ1種のみで(Aタイプ)、あとはキジに代表されるように、どれも激減している(Bタイプ)。以下、環境省HPから。
(Aタイプ)
カワウ
(Bタイプ)
ゴイサギ、マガモ、カルガモ、コガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ、クロガモ、エゾ ライチョウ、ウズラ、ヤマドリ(コシジロヤマドリを除く。)、キジ、コジュケイ、バン、ヤマシギ、タシギ、キジバト、ヒヨドリ、ニュウナイスズメ、スズ メ、ムクドリ、ミヤマガラス、ハシボソガラス、ハシブトガラス
<獣類20種の場合>
捕獲数が増えているのは、特定外来生物法2004年によって根絶殺害捕殺が始まっている外来種を除くと、イノシシとシカのみで(Aタイプ)、あとはウサギに代表されるように激減している(Bタイプ)か、クマのようにどちらともいえないもの(Cタイプ)である。
(Aタイプ)イノシシ、シカ
(Bタイプ)
タヌキ、キツネ、ノイヌ、ノネコ、テン、イタチ、アナグマ、ハクビシン、リス、ウサギ、
< 熊森の考察>
これらのデータは、いったい何を意味しているのだろうか。
狩猟者が減って、捕獲される狩猟鳥獣が減ったのか、かれらが田畑を荒らさなくなったので、有害捕殺しなくてもよくなったのか、または、例外種を除いて、これら自然界の野生鳥獣の生息数が激減したのか。
いつも見ている狩猟者数の推移グラフを、ここでもう一度見てみよう。
もちろん、地域や種類によっても違うし、生息環境も、森林に生きるもの、草原に生きるものなど、個々の状況は違うだろうが、西日本に住んで山の中を歩き回っているわたしたちに言わせれば、例外種以外は、我が国の野山から野生鳥獣が限りなく激減していっているように思える。
狩猟対象鳥獣以外にも言えることだが、むかし、どこにでもいた鳥獣が見当たらなくなってきている。緑に覆われた国土を見て安心している人がほとんどだが、実際は、野生鳥獣の棲めないひどい自然環境になってきていると言えるのではないか。スポーツやレジャーとしての狩猟など奨励している場合ではないのではないかと思えるのである。
農家がシカ、イノシシなどの大型動物に田畑を荒らされるようになって、所によっては農業ができないほど困っておられるのは、私たちも各地で見聞きしてきた。なぜ多くの鳥獣が激減する中で、これらの大型動物だけが大量捕獲されているのか。誰も説明できない。人間には自然界がわからない。
今、必要なのは、一般的なハンターを増やすことではなく、シカ、イノシシ、加えるなら、クマ、サル、この対策員を養成することではないか。しかも、これらの動物だけを見ているのではなく、彼らの本来の生息地が今どうなっているのか調べ、どうしていけばいいのかまで考えられる専門知識と、生命尊重を最優先にして考えられる倫理感あふれた対策員が必要とされていると思う。
熊森が、阿仁クマ牧場協議会に出席 7月23日
- 2013-08-12 (月)
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この日は、秋田県庁の依頼で、午後1時から5時まで開催された第1回阿仁熊牧場利活用推進協議会専門部会に、熊森も委員として出席させていただきました。この会では自由に意見を述べて良いということで、考えつくだけいろいろと提案させていただきました。
いろいろな立場の者9名が、委員として出席しました。
近年、社会変化に伴って、既存の阿仁熊牧場の入場者が大きく減ってきているそうです。新しくできるヒグマ園で、ヒグマたちがいかに幸せな余生を送れるようにするかが一番考えられねばならないことですが、終生保護飼育するには、安定した経営も必要です。
この両方の問題について、実にたくさんの意見が出て、とてもいい会になったと思います。しかし、この9名の委員は、いずれもすでに自分の仕事を持っており、新しくできるヒグマ園の経営やヒグマ飼育に携われません。いろいろ出たすばらしいアイディアを、誰がどのように採用して実際の場で実践してくださるのか、ヒグマたちに深い愛情を寄せる本気の専任職員の確保が最優先であるというのが、多くの委員たちの一致した意見でした。
<熊森の主な発言>
・とにかくクマたちが幸せに暮らせる場にすること。訪問客がそれを見て癒され、自分も幸せな気分になって帰るようになる。また訪れたいとリピーターになってくれることが大切。
・クマは森づくりの名人。クマだけを知る場にするのではなく、「クマ・豊かな森・水源」をセットにして理解できる、国民教育の場となるような展示を工夫してほしい。そのために使っていただけるなら、残された「八幡平クマ基金」をすべて展示に提供したい。
・質の高い専門性を持ったガイドが、園内を案内するようにしてほしい。
・秋田の自然や森とヒグマ園をセットにして観察体験してもらえるようにし、秋田の子供たちだけではなく、全国の学校に来場を呼びかけて、子供たちが、自然への畏怖や畏敬の念を持ち、自然や全生物との共存を実践してきた日本文化をここで学ぶことができるように仕組んでほしい。
・このヒグマたちのこれまでのくらしや、ここにやってきた経緯を示す掲示板を作り、全生物の生命尊厳思想を広めてほしい。この思想が、人間の生存環境である地球の自然を守ることにつながる。
・秋田の子供たちに、20頭のヒグマ全てに、個性に合わせたふさわしい名前を付けてもらいたい。(クマは知能が大変高く、犬や猫のように自分の名前や人間の簡単な言葉がわかるので、名前があると触れ合いが一層楽しくなる)
(感想)今回の秋田訪問で、いろいろな方々と心に残るお話ができました。
中でも、県庁の職員が、「昨年突然、八幡平までヒグマの世話に行くように言われて、初めのうちはクマが荒れていたので怖かった。しかし、今は落ち着いてきて、臭いでわかるのか、自分たちが行くと、クマたちが覚えていてくれて、喜んで寄って来てくれるようになった。県庁からは往復6時間かかるが、世話に行くのは負担ではなく、楽しみになっている」と、打ち明けてくださったのが、とても心に残りました。八幡平で現在、愛情を持って日々残されたクマたちのお世話をしてくださっているみなさんに、心から感謝です。
阿仁クマ牧場に隣接するヒグマ園の建設工事現場を視察 7月23日
- 2013-08-12 (月)
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7月1日から、ヒグマ園の造成工事が始まっていました。
当初、自然林を囲ってヒグマ園にする予定だったそうですが、施設として自然林が長年持つか等いろいろと検討された結果、自然林をバックに電気柵付き金網で0.6ヘクタールの造成地を囲うことになったそうです。ただし、床はコンクリートではなく、土にして、2か所に池も設置するということです。
ガラス越しにヒグマたちの全身がすぐ目の前で見れたり、床下にあいた穴からヒグマを下からのぞいて見たり、どんぐりを与えて食べるのを観察できるようにしたり、訪れる人とヒグマが触れ合えるような場所も、いろいろと工夫されているようでした。
ヒグマたちがぐちゃぐちゃにしてしまうかもしれないが、運動場内に実験的に木を少し植えてみる予定だそうです。
運動場は、オス・メスを徹底的に分離して、繁殖しないようにするということでした。
20頭全頭に個室を設け、餌やりの時は、取り合いしないように個室で与え、冬ごもりも個室でできるようにする計画だそうです。
阿仁熊牧場には現在約80頭のツキノワグマと1頭のヒグマが飼われています。
2010年秋愛知県豊田市で捕獲された野生の母子グマが、当時、何とか命を助けてやりたいと願う行政の方たちの尽力で、八幡平熊牧場に移送されました。悲しいことに、間もなく母熊はストレスで死亡したそうです。こぐま2頭だけが生き残りました。それが、アイチとトヨコです。
彼らはヒグマに先立って、この阿仁熊牧場に昨年移送されました。久しぶりにアイチとトヨコの元気そうな様子を見てホッとしました。母グマが、天からこの子たちの幸せを願って見守っているように感じました。