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どうする環境省 クマ指定管理鳥獣化パブコメ結果 賛成9 反対440

環境省はクマを指定管理鳥獣にすることをどう思うかの1行だけを提示して、国民の意見を聞きたいとしてパブリックコメントを募集しました。締め切りは3月13日でした。
環境省は3月28日、パブリックコメントの結果とそれに対する回答を発表しました。

以下が、その発表です。

(1)クマ指定管理鳥獣化パブコメ結果

(2)パブコメに対する環境省回答

 

忙しい中、パブリックコメントに応募されたすべての皆さんに敬意を表します。

膨大な数のコメントをまとめてくださった環境省職員の皆さんに感謝申し上げます。

熊森としては、パブコメ結果と環境省回答を見て今後どうしていけばいいのか、多くの国民の皆さんと大いに議論したいです。

自分の考えをしっかり述べることのできる国民が増えることが、いま日本に本当に必要です。

みなさん、ご意見をお寄せください。

 

 

祝 4月1日宮城県が再エネを森林以外に誘導する全国初の条例を施行

森林保全へ再生可能エネ課税 全国初、宮城県条例施行

 

以下共同通信2024年3月31日記事より

 

森林を大規模開発する再生可能エネルギー事業者から営業利益の2割相当の税を徴収する全国初の宮城県条例が1日、施行された。税負担を課すことで再エネ開発を森林以外へ誘導し、環境保全と再エネ促進の両立を図る。狙い通り適正な立地が進めば「税収ゼロ」となることも想定する異例の新税だ。
国は脱炭素社会の実現に向け再エネ推進の旗を振るが、乱開発や景観悪化などで地元住民の反発を招く事例も目立つ。新税には既に複数の県から問い合わせが寄せられており、効果があれば全国に広がる可能性もある。
課税対象は0.5ヘクタール超の森林を開発する太陽光と風力、バイオマスの発電施設。エネルギー種別ごとに異なる税率を適用し、太陽光の場合は出力1キロワット当たり最低620円、風力は同2470円で、国の固定価格買い取り制度(FIT)の売電価格に応じて税率を変える。
正式名称は「再生可能エネルギー地域共生促進税」で、使い道を特定しない法定外普通税。県は条例施行後5年以内に検証して内容を見直す。

 

宮城県が導入する再生可能エネルギー新税のイメージ

熊森から

宮城県村井嘉浩知事の宮城の森を守ろうとする強い姿勢と決断力に、大拍手を送ります。

この条例でどのような効果が出るか、注目していきたいです。

うまくいくようなら他の都道府県知事の皆さんも、是非続いてください。

3月15日 杉本和巳議員が、衆議院第3回環境委員会で再エネ事業について質問

3月15 日、令和6年衆議院第3回環境委員会で杉本和巳議員(比例東海ブロック、維新・教育無償化を実現する会)が、再生可能エネルギー事業について質問されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

質問中の杉本和巳議員

 

 

(要旨)文責熊森

杉本和巳議員 次に再生可能エネルギーについてです。

 

陸上風車:北海道で留萌から稚内にずっと日本海側を車で走っていくとですね、28基の風車が幌延のあたりにずらーっと並んでるんですね。極めて壮観ですね。素晴らしいなと思って、私はずっと風力風力と思っていたんですけれども、熊森協会さんに聞くとですね、風車は生態系上、そのヒグマはもうあるかもしれないし、キタキツネもそうかもしれないですし、あるいは水源としての水の流れ方とか、そういったものに非常にマイナスになるということです。

 

洋上風車:先日、再生可能エネルギー海域利用法というEEZまで洋上風力発電を中心としてその範囲を広げるということが閣議決定されたというふうに伺っていますが、こういったものが生態系並びにその他自然環境に与えるマイナス面、バードストライクだけに限らず、ほかの動物にもそれから自然全体についてどんなマイナス面があるか総論として伺っておきたいというふうに思います。

 

メガソーラー:太陽光発電についても伊豆半島の伊東の(メガソーラー)を視察しましたけれども、山の頂上とか中腹に太陽光パネルが設置されて、それによって木材が伐採されて、その木材が台風みたいなのが来たときに流れて、川を縦に伝って海に流れて海洋というか、漁場を赤潮の発生原因になったりして影響が出ているみたいなことを地元の陳情で伺ったことがあります。

 

この3つについて、環境影響評価として、生態系並びに自然環境にどんな影響があるのか、御担当の政府参考人から御答弁いただければと思います。

 

環境省鑓水総合環境政策統括官

お答えいたします。

陸上風力につきましては、近年の導入拡大に伴いまして、森林開発に伴う動植物の生息地の喪失やバードストライクの発生による鳥類への影響等、動植物や生態系への影響に対する懸念が大きくなっている状況だと認識してございます。

洋上風力につきましては、バードストライクに加えまして、海生生物や藻場への影響等が懸念されるところでございます。

太陽光発電事業につきましては、森林伐採に伴う土砂の流出やのり面の崩壊が発生する事例があると認識してございます。

 

このため、事業者が環境への適正で配慮がなされた事業を進めるように、環境省といたしまして、①環境影響評価評価制度に基づきまして、必要な確認を行っているところでございます。

それらの影響について事業者が適切に調査予測評価を行うこと。またそれらの影響を回避低減する措置を求めているところでございます。

そうした中で②環境大臣意見におきまして、例えば事業実施区域の見直しを求める場合もございます。

 

杉本和巳議員

再生可能エネルギーというのは全て善みたいに思ってしまいますが、光と影の部分がやはりあって、その影の部分も我々はしっかりチェックしていかないと環境立国として向かっていけないし、ネットゼロ(=正味ゼロ)に向かわないと思いますので、ちょっと御感想で結構なんですが、風力並びに太陽光についてのマイナス面についての御意見を伺えればと思います。

 

伊藤環境大臣

委員御指摘のように再生エネルギーのみならず、全てのエネルギー発生においては必ず光と影がございます。それで③環境省としてはこの2050年、カーボンニュートラルを目指して再生可能エネルギーの最大限の導入が不可欠と考えております。

 

他方、今参考人からも答弁がありましたように、大規模な森林開発を伴う再生可能エネルギーの事業計画が増加し、動植物への影響や生態系の損失に対する懸念は大きくなってきていると思います。

 

このため、環境への適正な配慮がなされた事業を推進することが大変重要であり、環境省としては環境影響評価制度において、環境影響や環境保全措置を確認していくことがより重要になってきていると考えております。引き続き④環境配慮が確保された再生可能エネルギーの導入が図られるよう、環境影響評価制度の運用等にしっかり取り組んでまいりたい、そのように考えています。

 

熊森から

①日本の環境影響評価評価制度は、業者の費用負担で業者が行うものですから、どうしても影響は軽微などとして業者に甘くなりがちの結論となります。

②環境大臣意見は、自然環境を守るために真摯にご意見を書かれていると感じますが、問題は事業を変更したり中止したりする権限がないことです。

③自然の中で巨大再生可能エネルギー開発を行えば、どうしても著しい自然破壊が生じます。環境配慮が確保された再生可能エネルギーなどあり得ません。再エネ事業は、都市部やビルの屋上などすでに自然が破壊されてしまっている場所で行われるべきです。

3月15日 林佑美議員が参議院予算委員会でクマの生息地である奥山の生活環境について質問

3月15 日、令和6年衆議院第3回環境委員会で林佑美衆議院議員(和歌山県、維新・教育無償化を実現する会)が、クマ生息地の生活環境の改善について質問されました。

 

質問中の林佑美議員
要旨 (文責熊森)
林佑美(ゆみ)議員 
クマによる人身被害の防止についてお伺いいたします。近年、クマの市街地などへの出没、人身被害が春や秋に多く発生しており、とりわけ昨年秋はクマの大量出没が起こり、今年度クマによる人身被害の件数は2月末の集計で全国で計197件となり、統計を始めた平成18年以降で最多となっております。
こうした人身被害の増加を受けて、先月大臣からも談話が出され、クマを指定管理鳥獣に指定する手続きも進んでいると承知しております。
しかし、他方でツキノワグマは九州では絶滅、四国ではあと20頭弱、紀伊半島、中国山地、近畿など西日本を中心に1990年代から2000年代に各地で絶滅危惧種になっております。

 

この原因は、拡大造林政策によるスギ・ヒノキの植林、奥山の大規模開発による生息地の自然林の減少です。九州、四国、紀伊半島では、人工林率が6割を超えております。大臣もよく発言されておられますように、クマはシカやイノシシと比較して、生息数も少なく、繁殖力も弱く、環境変化にも弱い動物です。

 

クマは春夏秋の山の植物を食べており、食べる植物の種類は200種類を超えると言われております。秋はドングリ類を大量に食べ脂肪をつけ、冬眠に入ります。奥山に豊かな自然林があることがクマの生存条件です。昨年は東北や北海道で大量出没が起こりました。

 

山の実りの凶作が原因とされておりますが、異常な熱波による記録的猛暑となったためか、山に食料が何もないという例を見ない状況が発生した模様です。気候変動などの環境破壊により、豊かな森が残っていた東北や北海道でも森がクマを養えるだけの豊かさを失ってきていると感じております。

 

秋田県は近年、クマの捕殺の強化を進めてきましたが、昨年生息推定数の半数を優に超える2400頭超のクマを捕捉しております。捕殺をいくら繰り返してもクマが出てくる根本原因を解決しなければ被害は減りません。また、大量捕殺を繰り返していくと、地域的にクマが絶滅するところも出てくるでしょう。

 

そこで質問なのですが、被害を減らしていくにはクマが人里に出なくてもいい環境をつくるという根本的な対策が一番大切であり、林業不振により放置された人工林を自然林に戻す取り組みや、去年のような温暖化の影響が考えられる山の実りの大凶作の年であっても、クマが山の中に餌を確保できることを考えた、実のなる樹種の植樹などが必要となってくると考えますが、クマの生息地である奥山の生息環境について、環境省はどのように考えられておられますでしょうか。

 

朝日健太郎 環境大臣政務官

お答えいたします。環境省では、クマ類の保護や管理に関しまして都道府県の対策の指針となるような①ガイドラインを策定しております。また、昨年秋の、委員からありましたとおり、深刻な被害状況を受けまして、②専門家による検討会を設置をいたしまして、本年2月8日に被害防止に向けた総合的な対策の方針を取りまとめていただきました。

 

この内容ですけれども、クマ類の地域個体群の保全、そして人間との軋轢の軽減の両立を図るため、人間とクマ類の③棲み分けを図ることとしております。こうした考えに基づきまして、奥山などにおいてクマ類の保護を図るための保護優先地域や人身被害の防止を図るための人の生活圏、それらの間の緩衝地帯を設置設定し、それぞれの地域に応じて適切に管理を行うゾーニング管理を進めているところであります。

 

環境省では、奥山地域を含めまして、④国立公園や鳥獣保護区などの保護区域の指定などによりまして、生息環境の保全を図ってまいります。引き続き、農林水産省などの関係省庁と連携をいたしまして、クマ類の生息環境の保全を図って参りたいと考えております。

 

林議員

ありがとうございました。日本最大の大型野生動物であるクマの棲める森は、多種多様な生き物が絡み合う生態系の営みの中でつくられた水源の森でもあります。人工林が多く占める森林環境を少しでも改善して、クマの生息できる環境を奥山につくっていくことが、人や動物のみならず、地球の環境にも資すると考えております。

 

ぜひ環境省が先頭に豊かな森林環境をつくっていただきたいと思います。

 

熊森から

林議員、ご質問ありがとうございました。戦後の拡大造林政策による奥山人工林化が行き過ぎ、クマなど奥山の動物たちが生きられなくなっているという指摘を私たちが開始してから32年目です。人工林は行き過ぎていないとして、私たちはずいぶん批判されてきました。やっと国会でこの問題が出るようになったことに感無量です。
今の日本の行政は、経済第一で、野生動物たちの食料を思いやるような優しさは皆無に近い状態です。一般国民は胸を痛めているので、環境省や農水省が市町村など地方行政を指導して、野生動物たちの餌場となる森再生事業を進めていただきたいです。

 

熊森から環境省と国民のみなさんへ

①環境省のガイドラインが守られていないという現実があります。
熊森はこれまで各地の奥地集落を訪れ、地元の方や猟師の皆さんと話し込んだり、自分たちで調べたりして得た見聞を元に、何度も環境省に、「錯誤捕獲された野生動物は放獣すること」などのガイドラインを多くの都道府県が守っていないという現実を訴えてきました。
しかし、1999年の地方分権法によって野生動物の捕獲に関しては、国は都道府県に権限を委譲しているからとして、これまでこの件に対して環境省は都道府県を指導してくださっていません。権限を委譲したと言っても、国の定めた範囲内での権限移譲のはずですから、環境省は都道府県を支援するとともに、国のガイドラインを守るように強力に指導すべきだと思います。
第一、くくり罠のような残虐罠を山の中に無数に設置してシカやイノシシの問題を解決しようという発想自体が、人間の倫理観からも生態系保全上からも間違っていると思います。

 

②検討会委員に自然保護団体や動物たちの心がわかる動物愛護団体を加えるべきです。
研究者ばかり集めて検討しても、斬新な発想が生まれにくいと思います。クマ関係の検討会には、ツキノワグマ研究の第一人者である宮沢正義先生(今年97才)や、ヒグマ研究の第一人者である門崎允昭先生(今年86才)らに長年指導していただき、自らも徹底した現地調査やクマの生息地保全、被害対策の実践を行ってきた日本熊森協会も検討委員会に入れていただきたいです。国の今後を決めるにあたって正しい歴史を学ぶことが大切なのと同様、自然保護にとってもわが国の野生動物たちとの共存の正しい歴史を知る識者から学ぶことが大切です。

 

③祖先がしていたように、原則、奥山をクマの生息地として棲み分けるべきです。
現在、スキー場やキャンプ場など、奥山にも人間活動の場が多く広がっており、そのような場所を人間ゾーンとしてゾーニングしている現状では、クマたちはどこにおればいいのか居場所がないという現実があります。

 

④国立公園内での風力発電など再エネ事業を禁止してください。
巨大風力発電計画が奥山尾根筋で目白押しです。環境省が国立公園を守ってくださるのはありがたいことです。ならば、山の命ともいえる山の最も大切な場所である尾根筋を平らに削ってしまい、尾根筋に至る道路建設のためにと森林を大伐採して国立公園を破壊してしまう再エネ事業を環境省は禁止すべきです。
環境省には、本当にがんばってもらいたい。
環境省がんばれ!
私たちは環境省の応援隊です。

3月12日 森田俊和議員、衆議院環境委員会でクマ問題について森の視点から質問

3月12日、令和6年衆議院第2回環境委員会で森田俊和衆議院議員(埼玉県、立憲)がクマと森について質問されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(要旨)文責熊森

森田俊和衆議院議員 熊について森の視点から質問させていただきます。

山で生息してきた動物たちが、里地里山やもうちょっと住宅が密集しているようなところにまで下りてきてしまって、ひどい場合には人身事故にもつながるというのは非常に不幸なことです。私は、対症療法的なところよりも、少し根本的なところをお尋ねをしてみたいなと思います。その根本原因の一つとして言われているのが、山が、森が痩せてしまっているということです。

日本の国土の三分の二が森林であり、そのうちの四割以上が杉、ヒノキの人工林だと言われております。熊の食べ物は人間が森に入って食べるものとそんなに変わらないと思うんです。春になればフキが出てきたりとか、若い芽、葉っぱが出てきて食べたり、あるいは、夏になれば、いろいろな虫を食べたりとか、秋になれば、ドングリとかいろいろな木の実だと思いますけれども、いずれにしても、杉、ヒノキだと、熊やほかの動物たちが食べるものがどうしてもないという状況になっていると思います。

また、山深いところと人が住んでいる場所の間にも、きちんとした自然の植生に近い森を用意するということも必要なんじゃないかなと思います。

 

伊藤環境大臣 委員御指摘のように、奥山というのは大事ですね。

環境省としては、奥山等において熊類の保護を図るための①保護優先地域、あるいは、人身被害等の防止を図るための人の生活圏、それらの間の緩衝地域を設定し、それぞれの地域に応じて適切に管理を行うゾーニング管理、これを引き続き進めていくという方針でございます。

 

舞立大臣政務官 令和三年の六月に閣議決定しました森林・林業基本計画におきまして、多様で健全な森づくりを推進することとしておりまして、森林整備事業において針広混交林や広葉樹林の造成への支援を行うとともに、例えば、②森林環境譲与税を活用して、住民の要請に応じた針広混交林や広葉樹林の育成も図っているところでございます。

 

 

環境省回答に対する熊森見解

①奥山を本当にクマ保護優先地域にするのなら、奥山でのシカ・イノシシ捕獲用のくくり罠設置を禁止すべきである。
シカ・イノシシ用の罠といっても、くくり罠にはクマ、カモシカ、キツネ、タヌキなどいろいろな動物が皆かかる。錯誤捕獲は罠設置者の責任で放獣すると決められているが、放獣は大変なので、実際にはほとんどが殺処分されるか放置されて死に至っている。罰則無し。
兵庫県の場合はクマに関しては放獣されているが、指や足首が欠損したものが一定数見られる。以前、くくり罠は足を失うなど、どの動物にとっても残虐過ぎるので、熊森がくくり罠禁止を強く環境省に要望したことがある。
その時、環境省は、今、くくり罠を禁止することはできないが、罠の直径を12センチ真円に規制するので成獣グマは掛かりにくくなる。これで様子を見てほしいとの回答をされた。しかし、すぐに、長野県から、短径が12センチであれば長径は何センチでもいいとの規制緩和が始まって、多くの県で現在、弁当箱型と言われる規制緩和されたくくり罠が使用されている。その結果、錯誤捕獲されるクマが多数生まれている。国にはこの実態を何度も訴えているが、環境省からの改善策はいまだなし。
第一、奥山は野生動物優先地域であるから、いかなる動物に対しても、罠を掛けるべきではない。どうしてもシカを排除しなければならない場所があるなら、罠ではなく、祖先がしていたように、柵かシシ垣で排除すべきである。

 

②国は市町村に、樹種転換を指導する必要がある。熊森の強い訴えで、森林環境譲与税を使っての針広混交林化や広葉樹林化は、確かに可能になった。問題は、市町村職員に山のことがわかる者がいなくなり、そのような事業に取り組もうとするところがほとんどないことである。ある市を訪問したらそこの担当職員たちに至っては、子供の時からずっとあったスギ・ヒノキの人工林を、自然の山だと皆勘違いされており、針広混交林化や広葉樹林化に向けての意識が全くなかった。行政は私たちのように長年各地で森再生に携わってきた民間の自然保護団体と協力して、具体的な施策を進めていただければと願う。

 

 

その他 冷温帯の下層植生は、シカに食べられると再生できない。奥山にシカを誘導する結果となっている奥山観光道路を閉じるべきである。

 

3月12日 篠原孝議員、衆議院環境委員会でクマの指定管理鳥獣化について質問

3月12日、令和6年衆議院第2回環境委員会で篠原孝衆議院議員(比例北陸信越ブロック、立憲)がクマ指定管理鳥獣化に関する質問をされました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

質問中の篠原 孝議員

 

(要旨)文責熊森

 

篠原委員 次に、熊問題です。 環境省は中央環境審議会の下に東京農業大学の山崎晃司先生を座長に検討会を三回開いて、それを受けて検討して、四月中にはクマを指定管理鳥獣にしていくという方針だそうですが、その後どのように扱っていかれるおつもりか。

 

伊藤信太郎環境大臣 環境省では、昨年の熊類による深刻な被害状況を受けて、専門家による科学的な検討を経て、①ゾーニング管理、広域的な管理、順応的な管理の三つの管理を推進しながら、熊類の地域個体群の維持を前提としつつ、人の生活圏への出没防止によって、人と熊類の空間的なすみ分けを図ることとしました。

環境省では、クマ指定管理鳥獣化に対するパブリックコメントを二月十三日から開始しておりまして、国民の皆様の御意見を伺った上で、絶滅のおそれのある四国の個体群を除き熊類を指定管理鳥獣に指定する手続を完了したいと考えております。

熊類を指定管理鳥獣にすることで、②熊類の生態等の調査やモニタリング、人の生活圏への出没防止のための環境管理や必要な捕獲、人材育成等、都道府県の状況に応じた効果的な対策を講じることが可能となります。

他方で、熊類は、今御指摘がありましたが、既に指定管理鳥獣に指定されているニホンジカ、イノシシとは繁殖力、個体数の水準、被害の状況が異なることから、③捕獲に偏らない総合的な対策が必要とも指摘されているところでございます。

 

篠原委員 熊は、生態系上も非常に大事な動物です。長野県の山は、だんだんだんだん栄養分がなくなってきています。シベリアの森林が何であんなに豊かかというと、アムール川にダムが一つもないからです。サケやマスや、百種類ぐらいの魚が(海から川へ産卵のために)上っていく。それをまず熊が食べる。(産卵を終えたサケやマスは)死んでいく。(山の中は)サケの死体だらけなんですが、あっという間に鳥や獣に食べられてなくなる。④この海の養分が森に戻る循環がなくなっているんですよ。だから、熊はやたらに殺しちゃいけないんですよ。生態系の循環を担っているんですよ。ちゃんといてもらわなくちゃいけない。
このところの兼ね合いが難しいんです。何が大事かというと、私は人材が圧倒的に不足していると思うんです。田舎の市町村はお金がないですから、県が、⑤県庁にきちんとした熊の専門家を置くべきです。環境省も、都道府県に出向して熊の専門家を養成してください。

 

伊藤環境大臣 委員御指摘のとおり、専門的な知見を有する人材の確保、育成が不可欠でございます。

 

篠原委員 環境省だけでは無理だと思います。全省庁を挙げてやらなくちゃいけないです。

 

朝日健太郎環境大臣政務官 令和二年(2020年)十月にクマ被害対策等に関する関係省庁連絡会議(農林水産省、林野庁、警察庁及び環境省)を設置しております。

 

篠原委員 農林水産省は、生産ばかりになるからいけない。環境保全というのを、今度、食料・農業・農村基本法の中にも入れ込んでいくべきだ。みどりの食料システム戦略とか。熊も緑を守っている、大事な役割を担っているんですよ。ネイチャーポジティブとか、⑥片仮名の名前をいっぱい使って環境行政をやるのは僕は反対だ。聞く人は分からないですよ、何のことか。「鳥獣保護法」の獣という言葉は「野生動物保護法」という名に変えていただきたい。獣だと、けだもの、駆除すべきものとなる。テディーベアがあるし、熊は愛きょうがあるので、世界中で愛されている。熊だって愛護しなくちゃいけませんよ。 熊を敵対視しているから熊森協会から批判されるわけですよ。(名前は大切で)、我が長野県は、恥ずかしながら、林務部森林づくり推進課⑦鳥獣対策室です。(こういう行政の部署名がいけない)

 

熊森の見解

①環境省のゾーニング管理で被害を出していないクマを守れるかもしれないと熊森も最初期待したのですが、実態は集落ゾーンに誘引物が入った箱罠を大量に仕掛け、山にいるクマをおびき出して無実のクマを大量に捕殺しています。ゾーニング管理というなら誘引物入り罠を仕掛けないことが前提でなければなりません。

②山から出てきた目の前のクマばかり見ていてはダメ。根本原因は山。根本対策は餌のある山を再生させること。

③根本的に対応が違うのなら、別の名前にすべきでしょう。クマを指定管理鳥獣に入れてしまったら、そのうち初心が忘れられてニホンジカ、イノシシと同じく捕殺強化だけになってしまう恐れがあります。

④この指摘はとても重要です。サケが産卵時に川をさかのぼってくるのは自然そのもので、海の養分を山に戻すという大切な役割を果たしていました。本州にもサケがのぼってくる川をもう一度取り戻して、森の動物たちがサケを食べられるようにしてやりたいです。直接にはクマの為ではありますが、森が豊かになり、人間の為にもなるのです。

⑤専門家と呼ばれる人なら誰でもいいのではなく、クマの心が読み取れて、捕殺に頼らない対応ができる専門家でなければなりません。

⑥まったくもって同感です。文章に英語を多用するのは本当にやめていただきたい。ここは日本国なのです。

⑦鳥獣対策などというものは、人間至上主義そのもの。人もクマも大切です。

 

篠原議員、伊藤環境大臣は永らく環境部会に属してこられた方で、これまでの日本の環境行政にお詳しく、大いに期待したいところです。
ただし、議員や環境大臣と言っても皆さんお忙しく、現場を自力で調査し続ける時間などありません。野生動物問題を考えるにあたって、現状では肩書きのある研究者や彼らの見解をそのまま流すメディアに情報を依存するしかないかもしれません。
熊森のような利権やしがらみゼロの自然保護団体の声にも大いに耳を傾けていただきたいです。

串田誠一議員、参議院予算委員会でクマ指定管理鳥獣化について質問

3月6日、参議院予算委員会で串田誠一参議院議員(比例関東ブロック、動物愛護議連、維新)が、クマを指定管理鳥獣とする環境省案について質問されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

質問中の串田誠一議員

 

串田誠一議員の質問:

次にクマについてお聞きをしたいと思います。

(クマを)指定管理鳥獣に4月にするという報道がございます。被害が連日昨年は報道をされたということでありましたが、昨年のクマの捕殺数は、ついこの前発表されました9030頭が昨年捕殺された。その前は3000頭だったのが、いきなりすごい数が捕殺されたわけでございます。

九州は絶滅している、四国ももう数十頭しかいない。そして繁殖力が大変弱いというのがクマの特徴でございます。

日本オオカミも同じような経路を辿って1905年に絶滅をしてしまいました。

(略)今年見なくなったなあというようなときに、実は絶滅していたというようなことが起こりうる可能性もあります。環境委員会でこの問題があったときに、環境大臣、大変その慎重な対応されていて私も色々熟慮されているのだろうなあと思っているんですけど、クマを捕殺をするのではなくて、里(人)に入らないよう強化していく必要があるんじゃないかと思うんですけど、環境大臣のご意見をお聞きしたいと思います。

 

伊藤信太郎環境大臣(宮城県、衆議院議員)の答弁:

環境省では昨年秋のクマ類による深刻な被害状況を受けて、専門家による検討委員会を設置いたしました。そしてまた科学的観点からの検討を経て本年の2月8日に被害防止に向けた総合的な対策の方針のとりまとめをしていただきました。

この方針の中ではゾーニング管理、広域的な管理、順応的な管理の3つの管理、これを推進しながら、クマ類の地域個体群の維持、これを前提としつつ、人の生活圏への出没防止によって、人とクマの空間的な棲み分けを図ることとしました。

また絶滅の恐れのある四国の個体群を除いたうえでクマ類を指定管理鳥獣に指定するとの方向性を整理いただいたとこでございます。

環境省ではこの方針を受けて必要な関係省令の改正を行うために4月中に指定の手続きを完了させる予定でございます。

クマ類を指定管理鳥獣にして、またこの関係省庁や都道府県等と連携しながら捕獲に偏らない総合的な対策を講じてまいります。

具体的にはクマ類の生態等の調査やモニタリング、人の生活圏への出没防止のための環境管理、また人材育成等の各地域の状況に応じた効果的な対策を講じてまいりたいと思います。

 

串田議員:

エサがなくなる原因としては、太陽光パネルが森に、高速道路などを走っていると山肌にずっと太陽光パネルがあったりとか、あとは人工林とか、下が真っ暗になってしまっていて、木の実が育たないとか、そういうような人間がクマが食べられないような状況になって、そして出没したら捕殺をしていくというのは、これは反省しなければいけない面もたくさんあると思うんです。私が心配しているのは、太陽光パネルや人工林は、たとえば農水だとか、太陽光パネルは経産だとか、そういう他省庁にまたがった意味で総合的に検討をしていかなくてはならないと思うんですけども、環境大臣としてこうだというだけではなかなかできないと思うんですが、これについての連携は十分になされるんでしょうか。

 

伊藤環境大臣:

お答え申し上げます。ご指摘のように、太陽光パネル、あるいは木の種類の偏在、そういったことが今回の人的被害の原因の1つになっているとも考えられます。

したがって先ほど申し上げたように捕獲に偏らない総合的な対策を講じることが重要だという風に考えております。

環境省が設置した見解でもクマ類の地域個体群の維持、これを前提としつつ、人の生活圏への出没防止によってクマ類と人の空間的な棲み分けを図るという方向を示しているところでございます。

捕獲以外の対策としては、クマ類の個体数等の適切なモニタリング、これをやっぱりエビデンスとしてしっかり押さえる必要があります。それから人の生活圏への出没を防止するために、また例えば果樹ですね、放任果樹にクマが寄って来る、誘因物の管理の徹底、それから農地への進入を防止するための電気柵の設置、それから専門的な知見を有する人材育成など、それぞれ地域によって多少事情が違いますので、その地域の実情に応じて、都道府県等によって実施していただくことが重要だと思っております。

環境省としては関係省庁、農林水産省も含めてですね、関係省庁や都道府県等とも連携して、人の生活圏の出没を防止をはじめとした被害防止策を推進し、国民の皆様の安全・安心の確保をしっかり守っていくという支援を進めてまいりたいと思います。

 

熊森から

人の生活圏へのクマ出没防止のためにまず一番に必要なのは、クマ類の個体数等の適切なモニタリングではなく、実り豊かな山の再生であり、農水省と組んで、まずこの根本問題の解決から手掛けていただくことを、熊森は環境省にお願いします。

 

串田議員の質問によって、伊藤環境大臣から「関係省庁や都道府県等と連携しながら捕獲に偏らない総合的な対策を講じてまいります。」という答弁を引き出せたことは、良かったです。

しかし、現実には、ほとんどの地域で捕殺一辺倒の対応となっているわけで、今後、環境省の強力な指導が望まれます。

 

2023年度 東北・北海道クマ捕殺数

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※クマの正確な生息数推定が不可能なため、北海道ヒグマの場合も、95%限界の生息推定数は6600~19300頭と幅が大きく、中央値は11700頭となっている。この数字がどこまで正確か不明。他県の中央値についても同様。

 

クマを指定管理鳥獣に指定などしなくても、東北地方では現行の管理計画だけでも、推定生息数の50%ものクマ捕殺ができている県が2県あり、そのうちの1県では今年度になってからも、保護対策をとらず、雪の中をさまよっている子グマを次々と駆除しています。

 

令和6年2月 16 日に 北海道東北地方知事会が環境省に提出した要望書を見ても、クマをシカ・イノシシのように指定管理鳥獣にして、捕獲報奨金の引き上げなどを要求されていますが、昨年度の捕殺一辺倒となったクマ対応や、生息数を激減させてしまったことに対する反省など全くみられません。

 

やはり、環境省が専門家による検討委員会を設置するおり、自分たちの主張に沿った有識者だけを集めるのではなく、28年の歴史を持つ日本熊森協会のような民間団体を委員に入れる必要があると思います。(完)

 

みなさんへ 国民の力で熊森をもっともっと大きくしていただき、熊森が環境省の検討委員会に入れるように後押ししてください。野生動物たちとの真の共存をめざしたい方は、どうかご入会願います。

クマ問題の解決にクマ生息推定数の精査追究事業は不要

クマは以前、奥山から出て来ることがなく、会いたくても会えない動物でした。
しかし、最近は、里や、時には市街地にまで出て来るようになり、農作物被害を出したり、時には人身事故も起こします。
被害にあわれた方、被害にあう恐れがある方にとっては、耐え難い事態だと思います。

 

この問題を解決するために、環境省はクマ指定管理鳥獣化を検討する会を3回実施。
この会の委員に任命された研究者たちが、クマ指定管理鳥獣化で国から交付金が出るようになれば、まずすることとして、毎年のクマの個体数推定事業を実施し、クマが各都道府県に何頭生息しているのか、これまで以上により正確性を高めたいと言われていました。
すばらしい肩書を持つ研究者のみなさんがそう言うと、国会議員も含め、一般の国民は、クマ問題の解決のためには、まずクマが何頭いるのかより正確な生息数確定が必要なんだと思ってしまうでしょう。

 

しかし、クマ問題に取り組んで32年の私たちに言わせると、四国のようにあと十数頭などと絶滅を迎えた場合は別ですが、一般的に、そのような事業は研究者の仕事づくりや論文発表のために必要なだけで、クマ問題の解決のためには、全く不要です。そんなことに私たちの税金を使わないでいただきたいのです。

 

理由1 今問題なのはクマの数ではなく、クマがどこにいるかなのです。

食料が豊富な奥山にのみクマが暮らしているとします。このような以前の状態に戻せば、クマが何頭いても誰も困る人はいません。クマも人も、我が国では長い間、棲み分けを守っていました。戦後、棲み分けラインを超えてどっと奥山に入り、皆伐や開発を行い、うまくいっていた棲み分けを壊したのは私たち人間です。
図①参照。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クマ数は多いが、クマ被害は起きない。

 

クマがハチミツに目がないことを利用して、現在日本では、ハチミツを入れた罠でクマを誘引し、捕殺し続けています。しかし、クマ数を極限まで減らしたとしても、クマが集落のそばにいる限り、被害はなくなりません。

図2参照

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クマ数は少ないが、被害が起きる。

 

問題は、クマの数ではなく、クマがどこにいるかなのです。

熊森の説明を聞けば、小学生でもわかってくれると思います。
環境省やマスコミさん、熊森にも発言の機会を与えてください!

 

理由2 クマ数を正確に数える方法がない

専門外の人には意外でしょうが、実は、クマの生息数を正確に数える方法がないのです。
アフリカの草原の動物なら、上から写真を撮れば何頭いるかすぐ数えられるのですが、クマは普段深い森の中にいて木々に隠れているし、人が山に入ると人を察知してそっと逃げてしまう。木々の葉が落ちる冬には冬ごもりしています。何頭いるのか数えようがないのです。

 

そこで多くのクマの研究者たちがクマの生息数を推定しようとして、悪戦苦闘。膨大な予算を獲得し、クマに不自然なことを次々として、論文発表をしてきました。発信機装着、ヘア-トラップ、カメラトラップなどなど。いずれもクマの生活をかき乱すものばかりです。

 

下の写真は、捕獲されて首に発信機をつけられていたヒグマです。首が締め付けられ、首の周りの毛が擦り切れています。この写真を撮られた北海道のカメラマンによると、山で偶然出会ったヒグマを見ていたら、頭を下にも上にも動かしづらくしていて、クマは耐え難い苦しみを味わっているようだったとのことです。
本来、研究というのは、対象動物に負担をかけずにするのが生物倫理というものです。ダーウィンは、木の陰に隠れてそっと野生動物の生態を研究していたと言われています。

 

 

 

発信機を付けられたヒグマ 稗田一俊氏撮影

 

このヒグマには、両耳にもタグが付けられていたそうです。
兵庫県では、子グマに発信機を付けた研究者がいて、大きくなる時に首が絞められて山で死んでいました。猟師が研究者に向かって、「かわいそうなことをするな!」と、目をむいて怒っていたのを覚えています。

 

ちなみに、現在、クマの生息数推定はどこまで進んでいるのでしょうか。最新発表となる2020年度分が以下です。

 

●北海道のヒグマの場合

95%信頼区間:6,600頭~19,300頭。中央値:11,700頭。

 

●秋田県のツキノワグマの場合
95%信頼区間 :2,800~6,000 頭。中央値 :4,400 頭。

他府県も同様につき、省略。

 

 

95%信頼区間の幅が大きすぎますね。最先端の科学技術をもってしても、クマの生息数の推定がどんなに難しいかお判りいただけたかと思います。

 

秋田県は昨年度、生息数中央値の50%以上にあたる2,300頭のクマを捕殺しました。捕殺数の方は、正確に近いと思われます。秋田県は、さらに捕殺を進めるそうです。みなさんはどう思われますか。環境省指導では、クマが多くいる県でも、絶滅させないように15%以上は捕殺しないこととなっています。

 

私たちは、より正確な生息推定数の把握やさらなる捕殺に税金を使うのではなく、食料豊富な山を再生したり、当面の被害を防ぐために電気柵を張ったりして被害防除に励む方が、クマ問題の解決に効果があると思います。

水源の森を造り守ってきてくれたクマたちに、畏敬の念を失ってはならないと思います。(完)

以前の山を知らない若い人たちに、今のクマ問題の根本原因は山にあることを知ってもらいたい

以下は、2024年3月2日の河北新報投書欄です。

投稿されたのは、奥羽山脈のふもとで自然農をされている船形山のブナを守る会の創設者である小関俊夫さんです。
長期に亘り奥羽山脈の山を見続けてきた小関さんは、人間活動によって、現在の山が、クマにとってどれだけ生きづらい環境に変えられてしまったのかをよく知っておられます。

今のクマ問題を正しく解決するには、過去数十年間にわたる山の変化がわかっていなければなりません。

クマ問題に取り組む若い人たちには、歴史的なこともぜひ勉強していただきたいです。

 

■クマとの共生 方策考えて 小関 俊夫 75歳(大崎市・農業)

 

クマによる人的被害防止のため、捕獲に国の支援が受けられる鳥獣保護法上の指定管理鳥獣にクマが追加されます。山の神だったクマが邪魔者にされました。

 

クマが里に出没するようになったのは、昭和50年代に始まった林野庁による拡大造林施業でブナ林が伐採され、クマのすみかを奪ってからです。それにリゾート開発が拍車をかけました。クマは安住の地・ブナ林を追われたのです。

 

登山仲間によると、最近、山でクマに出合うことが少なくなってきた、クマの生態に異変が起きているのではないかということです。人とクマのすみ分けを図るゾーニング管理が言われていますが、人がクマの領域を侵していることを念頭に議論してほしいです。

 

ブナの伐採は止まりましたが、自然再生エネルギーの名の下に、宮城、山形両県にまたがる船形連峰にも風力発電事業が計画され、森や山が破壊される恐れがあります。また、低周波音や騒音によるクマの健康被害も懸念されます。開発事業の前に、クマへの畏敬の念が大切なのではないでしょうか。

 

昨年はクマの大好きなブナの実が大凶作でした。クマは妊娠しても食物不足だと冬眠中に流産するそうです。今年はクマの個体数は減少するでしょう。クマの指定管理鳥獣追加の前に、人とクマが共生できる方策が必要だと思います。

 

母を探して走り回るくくり罠で左前足切断の子グマ、みなし子グマたちを作らず保護する社会に

今年1月9日のTVニュースによると、ある町のショッピングセンター入り口付近に、子グマが猛ダッシュで走り込んできました。本来なら、母グマと一緒に冬眠しているはずの時期にです。

なんだか走り方が変です。前足の左手首がないのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショッピングセンター入り口付近に、3本足で猛ダッシュで走り込んできた子グマ

 

入り口を通り過ぎて、ショッピングセンター前の隅っこに行ったので、人々がその辺にあったいすなどを使って包囲し、逃げないようにしました。2時間後、警察と猟友会がやってきて鉄製の箱罠に移し、山に返したということです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

箱罠に捕獲された子グマ。左前足手首がちぎれている

 

 

この子グマに関するマスコミの報道論調には驚かされました。

報道文中の太字は、とんでもないと思われる言葉です。

 

 

<以下、報道文>

1月9日、昼下がりのショッピングセンターに体長およそ50センチの子グマ1頭が出没し、店内が一時騒然としました。

この後始まる大捕物、その一部始終をカメラが捉えていました。

冬眠しないこの子グマは、来店客が行き交う入り口に2時間居座りました。

子グマはその後捕獲され、客などにけが人はいませんでした。

市では子グマは山に返す方針ということです。

 

 

熊森から

 

地元の方の話では、クマが出た!というと、記者のみなさんは大喜びで飛んでくるとのことです。怖いもの見たさ故か、クマニュースは視聴率アップ間違いなしになるからだそうです。

その辺の犬と同じくらいの大きさのやせてガリガリの小さな子グマに人身事故を起こす危険性など全くないことを、熊森は多くの人に伝えたいです。

冬眠しないのではなく、こんなガリガリでは、冬眠できません。(食い込みができていないと冬眠中に死ぬ)
第一、母グマがいないので、大地が雪で覆われる前に、どこでどうやって冬眠しておけばいいのか、この子グマにはわからないでしょう。

 

居座ったのではなく、周りを囲われて動けなくされていたのです。

けがをした人はいませんでしたと言うけれど、けがというなら、子グマの前足首切断という大けがにはなぜふれないのでしょうか。

 

山に返すと言われても、何の餌もない真冬の山で、この子グマは100%生きていけません。

 

この子グマ、どこにいるのか。

熊森は、緊急保護の必要性があると判断し、警察と行政に次々と電話しました。

警察:県に聞いてください。

県庁:市に任せているので市に聞いてください。

市:保健所が対応したので、保健所に聞いてください。

保健所:猟友会に任せているので猟友会に聞いてください。人混みがすごかったので、子グマの前足首がないかどうかは、見ませんでした。

 

行政と違って、電話番号が公開されていない猟友会の方には連絡のしようがありません。個人情報だからと行政も教えてくれません。

 

私たちが保護することを申し出ましたが、飼育許可は降ろせないと言われました。

私たちは胸がつぶれそうになり、どこに放されたかわからないこの子グマのことを思って、何日間も苦しみました。

 

後日、地元の方に聞くと、この子グマは、河川敷を母グマともう一頭の兄弟と3頭で歩いている時に、河川敷に設置されていたくくり罠に左前足がかかってしまったんだそうです。なんとか、罠を外そうとこの子は必死にもがいていたが、何をしてもワイヤーは外れません。早くこの場を立ち去らないと、人間に見つかったら皆殺されると判断したのでしょう。母グマは子グマを助けようと必死でしたが、やがて不可能と悟ったのか、もう1頭の子グマを連れて去っていったようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地元では、シカやイノシシ無制限捕獲用の無差別くくり罠が、至る所に仕掛けられている。
強力バネでワイヤーが足を締め付けるため、様々な野生動物たちが足を失っていく。
日本は先進国です。こんな残酷な罠は、使用禁止にすべきです。

 

残された子グマは、自分の前足の手首を引きちぎり、狂ったように母を探し求めて走り回わっていたということです。ショッピングセンターに何かの物を狙って来たわけではなく、自分を置いていかないでほしいと必死で母を探していたんだろうということでした。

 

昨年、人身事故が相次いだこともあって(過去最多年の1.3倍)、食料を求めて山から出て来て有害獣のレッテルが張られた大量のクマたちは、ハチミツ入り罠に次々と誘導されて駆除されました。(2023年度のクマ捕殺総数は前代未聞の9028頭)その結果、冬が来てもどうしていいかわからず、各地で孤児グマたちが雪の中をさまよっていました。いずれ死ぬだけですが、誰も助けようとしない日本社会です。こんな人間社会でいいのでしょうか。

 

我が国がクマに無慈悲でクマを憎む社会に変化したのは、権威のある人たちやマスコミが、臨界距離内(一般的に12m)で人間に出会ってしまったクマが、人間が怖くて人間から逃げたいあまりに起こす人身事故を、クマが人を襲ったと一斉表現して、まるで一方的にクマが意図して人間に傷害事件を起こすかのような誤情報を出し続けているからだと思います。クマは本来、大変平和的な動物です。

 

日本は水道の蛇口をひねるといつでも水が出て来ます。しかも飲める水です。こんなめぐまれた国は、世界にまたとありません。
これは祖先が奥山水源の森を、森づくりの名人クマたち以下全ての森の生き物たちの聖域として、手つかずで残していたからです。平成になるまで、クマが奥山から出て来ることなどまずなかったのです。

この奥山生態系の仕組みを、熊森は全ての国民に伝えたいです。

 

その奥山を、わたしたち人間が、拡大造林、さらに今、地球温暖化、再生可能エネルギーなどで破壊し続けたから、クマたちは山から出てこざるを得なくなったのです。

人間活動の被害者であるクマたちをさらに殺し尽くそうとしている私たち人間、どうかしています。
人間の倫理観や道徳観はどうなってしまったのでしょうか。

 

野生動物対応の権限は都道府県にありますから、軌道修正するには、各都道府県庁に一般都道府県民が改善を求めて声を上げていくしかありません。

 

私たちは、この県の地元の皆さんのためにも、クマ問題の真の解決に向けて声を上げ行動しようという熱い方々が現れるのを心待ちにしています。(完)

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