ホーム > アーカイブ > 2011
2011
野生動物に手を付ける学術研究はやめるべき
日本熊森協会を結成してから14年。善意の方々から「日本の森や動物をめぐる状況は、少しは良くなってきましたか」ときかれるのがつらい。良くなるどころか年々悪化していく。今、人類の向かっている方向が、自然を守る方向と正反対であるからだ。わたしたち熊森の活動は、状況悪化のスピードを、かすかにほんの少し遅らせているだけにすぎないというのが実感である。
そんな中、当初からずっと感じていたことがある。野生動物に手を付ける学術研究が、野生動物の絶滅に拍車をかけるということだ。人間の、知りたいというあくなき欲望は、とどまるところを知らない。しかし、研究対象が野生動物であった場合、研究には一定の歯止めがかけられるべきである。すなわち、研究対象物に手をかけてはならないということである。捕獲して麻酔薬を注入し、論文のデータ用にと1本であっても歯を抜き、発信器を付けて苦しめ、追いかけ回すなどの負担をかけてはならない。相手は人間と同じように、命も感情もある生き物である。そっと見守り、彼らの生息環境を改善してやるしか、絶滅を止める方法はないと考える。
人体実験なら許されないことでも、相手が野生動物なら許されるという最近の若い研究者たちの発想の裏には、野生動物達への蔑視がある。このような考えがある限り、共存になど成功しないだろう。
2007年成立「鳥獣被害防止特措法」の広葉樹林育成条文への予算は毎年ゼロだった
「鳥獣被害防止特措法」第十八条
国及び地方公共団体は、人と鳥獣の共存に配慮し、鳥獣の良好な生息環境の整備及び保全に資するため、地域の特性に応じ、間伐の推進、広葉樹林の育成その他の必要な措置を講ずるもとのする。
上の一条は当時、国家としてまるで日本の野生鳥獣のホロコーストやジェノサイドをめざすつもりかというような狂気の法案「有害鳥獣特措法」(元の法案名)に対して、「この法案はあまりにも非人間的である。鳥獣による農作物被害問題の解決は人間が壊した彼らの生息地を復元してやるという根治療法が入らなければ解決しない」として、当協会の主張に理解を示してくださる国会議員の皆さんの協力を得て、やっとのことで入れてもらったものです。
この度、農林水産省、林野庁に、「これまでいったいこの条文に依る森の再生に予算がどれくらい使われたのか」確認すると、ゼロであることが分かりました。ゼロ?!なんとか条文に人間としての良心を一部入れ込むことが出来たとしてほっとしていた私たちですが、これでは全く意味がなかったわけです。これが、人事権を握られている為、表向きは政治家に頭を下げて従っているように見える日本の官僚の抵抗方法ですね。国民が選んだ政治家の決めたことに従う気などなしという事は、国民を尊重などしていないという事です。
教訓:法律の条文と実施するとは違う。条文通り施行されているかどうか、どこまでもチエックし続けなければならない。
兵庫県トラスト地の人工林部分の強度間伐開始
- 2011-08-14 (日)
- _奥山保全再生 | 公益財団法人奥山保全トラスト
8月10日、兵庫県戸倉トラスト地120ヘクタールの入り口にあるクリの木に、青い実が沢山ついていました。
このトラスト地はほとんどが天然林ですが、山の下の方に10ヘクタールほどスギ人工林の部分があります。公的補助金で森林組合に間伐をしてもらおうと、行政に願い出ておりましたが、いったんは受け付けてもらえたものの、結果的にはできないと断られました。
うれしいことに、今年、本部職員に林業経験者が入ったので、人工林を天然林にもどすための6割間伐がチェンソーを使って少しずつ進みだしました。
当協会の会員の中には、森林組合に勤務されているなどで他にもチェンソーを使える方々がおられます。これから皆さん方にも手伝ってもらって、熊森の力で、トラスト地の人工林部分の広葉樹林化を進め、全トラスト地を動物たちの生息地にもどしてしまおうと思います。
みなさん応援して下さい。
第16回本部原生林ツアー無事終了 岡山県支部も同日実施
本部がある兵庫県西宮市から一番近い原生林は、岡山県西粟倉村の若杉天然林です。熊森は1997年の結成当初から、毎年夏休みにバスをチャーターし、子供たちにも参加を呼びかけて、欠かさずこの原生林を訪れてきました。今年は8月7日(日)、計53名のみなさんが、ご参加くださいました。同日同じ場所で岡山県支部による原生林ツアーも実施されており、一瞬の出会いがありました。大好評のうちに無事終了。参加くださったみなさん、ありがとうございました。
道中、たつの動物園のクマ獣舎によって森づくりの名人、オスメス2頭の兄妹のクマさんにご対面。暑い日でしたが、クマさんが奥から出てきてくれました。熊森の要望を取り入れていただき、クマ舎が広くきれいに改造されていました。
道中、ヒノキの放置人工林の中に入り、林業や人工林にくわしいスタッフから、現状を説明していただきました。沢の水が干上がっていました。
86ヘクタールある若杉天然林の入り口です。
保水力抜群の天然林の中はしっとりと湿っており、谷川にはこんこんと水が流れ続けていました。昔はこんな森が奥地にいっぱいあったそうです。
若杉天然林の中で説明を聞く参加者の皆さんです。
今回参加できなかった方は、来年ぜひご参加ください!
参加者アンケートから:
最高だった。
いなか出身なのに、知らないことがいっぱいだった。
とても幸せな一日だった。
バスや森の中での若いスタッフたちの説明が、とてもよかった。
原生林を守ることに参加したい。
はつらつとした若いリーダーたちが、皆良く勉強しているのがわかり感動した。
9月11日兵庫の森・動物・人を守るつどい in 姫路 (初)
- 2011-08-12 (金)
- お知らせ(参加者募集) | 企画・イベント
定員に達したため、応募を締め切らせていただきました。
兵庫県播磨地域、揖保川、加古川、市川、千種川流域にお住いのみなさん、お誘いあわせの上、ご参集ください!
兵庫県では2010年秋、山の実りの異常な大凶作によって生きられなくなり、里におりてきた70頭ものクマたちが殺されました。
県のレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されているクマの大量捕殺は大問題です。
兵庫の奥山は動物たちを養えないまでに大荒廃しています。
大切な情報が隠され続けているこの国で、森と野生動物・人に何が起こっているのか正しく知り、解決に向けて私たち市民に何ができるのかを共に考えましょう。
熊森はじめての姫路市での大きなつどいを、成功させましょう。
集まることが大きな力に!
(ここをクリックすることで、左上チラシのPDFをダウンロードできます)
兵庫の森・動物・人を守るつどい in 姫路
[主催] 日本熊森協会明姫地区
後援 姫路市
[日時] 2011年 9月11日(日) 13:30~16:30 (受付13:00~)
定刻5分前には、ご着席完了願います。
[場所] 姫路市民会館 第六会議室(姫路市総社本町112番地 079-284-2800)
姫路市民会館ホームページ
車でお越しの方は、市民会館には駐車できませんので公共有料駐車場をご利用ください。
[主な内容]
・日本熊森協会 森山まり子 会長 挨拶
〈国会〉
・特別ゲスト 衆議院議員 赤松正雄 氏
厚生労働副大臣、衆議院国土交通委員長、同総務委員長などを歴任。
奥山水源の森保全・再生議員連盟副会長。日本熊森協会顧問。
〈兵庫県〉
・動物の棲める森を再生し、クマと共存
講演 幸福重信 氏 「いのちの森の再生にかける」
兵庫県宍粟市原不動滝観光リンゴ園 専務理事
くまもりNews「動物の棲める森を復元し続けているクマ生息地の幸福さん(2011年3月24日)」
・兵庫県の森・動物・人をめぐる現状報告・意見交換会
(2010年 兵庫県クマ70頭大量捕殺など)
◆お申込み:ご参加頂ける方は、会場設営の都合上、9月8日(木)までにお申込フォーム、メールか電話または、FAXにて必ず日本熊森協会本部事務局まで、事前申し込みをお願い致します。
一般財団法人 日本熊森協会 担当:清野
〒662-0042 兵庫県西宮市分銅町1-4 TEL: 0798-22-4190
WEB: http://Kumamori.org Email: contact@kumamori.org FAX: 0798-22-4196
かつてクマたちの国だった紀伊半島最奥地の植林地を調査
かつては修験道の山で、普通の人は入れなかった紀伊半島最奥地の山々を地元の林業家の方に案内してもらいながら調査しました。よくぞこんな奥地にまでと信じられないほど、スギの人工林で埋まっていました。しかし、植えてはみたものの、林業不振で林業撤退者が続出。このあたりでもかつて30軒あった林家ですが、今では1軒になってしまったそうです。しかも、その残された林家の方も、経営は苦しく、親から林業を継いだことを後悔しているということでした。民主党が国会で成立させた「森林・林業再生プラン」について感想を聞くと、こんな急峻な山奥で大型林業機械なんて入れられないし、路網整備も山崩れの元だし・・・ここらでは無理という事でした。日本ではこのような急峻な山がほとんどなのですが。国はどう考えているのでしょうか。熊森は、林業家のためにも、このような最奥地は、野生鳥獣たちに早急に返してやるしかないと考えます。
100年スギの人工林です。手も入れてきたし、木は良く育っています。しかし、搬出コストを考えると赤字になるので、伐り出せないそうです。「こんなことになるなんて・・・」案内して下さった林家の方は落胆しておられました。
民間のスギの植林地や国による分収造林地が山奥の奥まで続いています。林業家としてがんばって間伐して手を入れて来られたそうですが、林業地としてもうあきらめておられる感じでした。
何カ所か、スギの木の皮がはがされていました。クマなのだそうです。このあたりのクマは、皮をはがした後をかじるのではなく、爪で無数にひっかくことがわかりました。地域によるクマ文化の違いです。この木はもう材としてはだめだそうです。(搬出できない場所なので、どうせ売れないのですが)このように皮はぎのある地域では、クマは林業家の敵です。ここでも、くくりわなにかけて、猟友会に撃ってもらっている林業関係者たちがいるそうです。2年ほど前、この県の林業家の皆さんにお会いした時、今でも、林業を守るため、クマをわなにかけて次々と獲っていると教えてくれました。県の有害駆除数発表は毎年ゼロですと言うと、誰も届けませんからという答えでした。この国では、野生動物保護のためのチエック機能がないので、紀伊半島のクマは絶滅危惧種であっても、殺され続けているのが現状です。本来、環境省が調査し、指導すべきなのですが、日本の環境省は、わたしたちが何度訴えても、違法捕殺を調べようとしません。国民はこの現状を知るべきです。
針葉樹でほとんどが埋め尽くされた山の中には、動物たちの食料がありません。しかし、山林所有の境界線上にだけ、境界が分かるように、ブナやミズナラの巨木が残されていました。その1本であるトチノキに、最近クマが登った跡がついていました。実もない時期です。花でも食べに来たのでしょうか。人間に追い詰められたクマたちが、ここにはまだ風前の灯状態で間違いなく残っている。胸が騒ぎます。熊森としては、このあたり一帯の罠を撤去し、植林地を強度間伐で自然林に戻したいという強い衝動に駆られました。野生動物たちが山から出て来て農作物被害を起こすと怒り狂っておられる方々に、奥地のこの現状を、一度見て頂きたいです。戦後人間が行った森林破壊を見て、それでも一方的に動物たちを責められますか。
国や行政は、動物たちを殺すことしかしない。もうがまんならない。国の対策は間違っている。県民が声を挙げよう。和歌山県で、熊森協会の支部結成が進み出しました。
平井憲夫氏の文を600部配布した女性
- 2011-08-07 (日)
- 東北大震災・福島原発
広島原爆記念日の8月6日、広島県の68才の女性から、連絡が入りました。くまもりから回ってきた平井憲夫氏の文を、原発のあるすべての県の知事と市長村長に送付し、残りはお嫁さんに手伝ってもらって、手渡しなどで600部配布しましたということでした。600部には驚きました。今まで報告を受けた中で最高部数です。コピーでは高くつくので、印刷されたそうです。福島県でも600部配った人を知っていると言われていました。
年金生活なので、財布の中をにらみながらの活動ですと笑っておられました。どうしてそこまでときくと、1歳2か月の時、原爆投下地点から2キロの場所で被爆しましたということでした。死線をさまよう症状がでたそうですが、その時は、放射能にやられたという事が誰もわからず、親たちも疫痢に感染したと言われて信じたそうです。当時は、義援金などないので、自力で生きるか死ぬかしかなかったそうです。平和祈念式典での菅総理の脱原発あいさつを心から喜んでおられました。
いまだに原発必要論者がいるそうですが、全国民が想像力たくましく、被ばく者になりきってみることが必要だと思いました。
8月20日(土) 第4回「森と生きるキャンパスフォーラム2011in立命館」(京都)のお知らせ
- 2011-08-05 (金)
- お知らせ(参加者募集) | 京都府 | 企画・イベント
8月20日(土) に立命館大学、及び、森びとプロジェクト委員会主催の、第4回「森と生きるキャンパスフォーラム2011」が立命館大学朱雀キャンパス「大講義室」にて開催されます。午前中は建勲神社鎮守の森のナラ枯れと防除方法を現地で見学し、午後はキャンパスで質疑・討論会。共に参加費無料です。現地視察をした上で意見を交わし合える貴重な機会ですので、ご家族ご友人をお誘い合わせの上、是非ご参加ください。熊森本部も参加します。
スケジュールは以下の通りです。
チラシ
10:00 建勲神社鎮守の森観察会(定員100名・要申込)
12:00 昼食・移動
13:00 開会あいさつ・来賓あいさつ
13:15 質疑・討論
テーマ:みんなの知恵でナラ枯れ防止!
■座長
岸井成格氏 (森びとプロジェクト委員会理事長)
■アドバイザー
青木淳一氏 (横浜国立大名誉教授)
小川眞氏 (大阪工業大学客員教授)
小林正秀氏 (京都府立大学特別講師)
京都市代表
■アシスタント
高橋佳夫氏 (森びとプロジェクト委員会副理事長)
16:50 フォーラム宣言(案)採択
17:00 閉会あいさつ
17:30 懇親会(希望者・会費制)
森びとプロジェクト委員会 連絡先
電話 03-5692-4900
メール info@moribito.info
「ふまないで、小さなアリにも大事な命」的思想と、 さらなる鳥獣大量捕殺法案
2007年に国会で成立した「鳥獣被害防止対策特措法」は、野生鳥獣によって増大する農作物被害を軽減させるため、野生鳥獣の大量捕殺に多額の予算(国民の税金)を使うことを決めたものです。この法案が成立して、どれくらい多くの野生鳥獣が殺されたことかはかりしれないものがあります。今回、さらにもっと大量に鳥獣を殺せるように予算を増やすことを求める法案が、自民党の鶴保庸介参議院議員らの議連から提出されようとしています。
幼稚園生のとき、「ふまないで、小さなアリにも大事な命」ということばを先生が教えてくださったことを思い出しました。これこそ、日本文明であり、祖先の心だと思います。野生鳥獣の大量捕殺を促進せよと叫んでいる人たちは、なぜ野生鳥獣が山から出てきているのか、考えられたことはあるのでしょうか。原因は全て人間が戦後に行った自然破壊なのです。この人たちは、補殺した動物たちを、「有効利用」という名目で、どんどん食べようと呼びかけられていますが、私たちの祖先が聞けばひっくり返るのではないでしょうか。
熊本の平野虎丸さんのブログによると、8月1日の熊本日日新聞の社説は、鳥獣大量捕殺を求めるものだったそうです。
8月1日 熊本日日新聞 「増える有害獣 捕獲の担い手確保が必要だ」
この社説を読んで悲しくなると同時に、自分たちが鳥獣の生息地を奪ったことへの反省もなく、鳥獣を殺すことと食べることしか考えない思考形態に、恐ろしさを感じました。日本人はどうなっていくのだろうか。今も、「ふまないで、小さなアリにも大事な命」が、日本文明のはずです。水道の蛇口をひねると水が出てくるこの国の豊かさは、他生物への尊厳思想によるものです。
原発推進は、やはり利権だったのだ 記者のみなさんに、奥山保全・復元問題もあばいてほしい
- 2011-08-02 (火)
- 東北大震災・福島原発
共同通信記者の調べで、以下のことが明らかになったそうです。
● 自民、個人献金72%は電力業界から(7月23日新聞)
● 電力労組民主に1億円超 労使一体で原発推進(8月1日新聞)
どうせこういうことだろうとは思っていましたが、やっぱりそうだったのですね。わたしたち一般国民には、捜査能力がないのでもどかしかったのですが、日本にも真実を国民に伝えようと命がけで使命に取り組む記者たちが現れたもようです。共同通信の記者の皆さんに、大拍手です。
私たちが取り組んでいる、大型野生鳥獣保護、外来生物根絶殺害問題、奥山保全・復元などの問題も、利権をねらって腐敗した産・官・学・政の隠ぺい策と、その正義感故に声を上げようとする者たちへの弾圧策で、一向に問題解決が進みません。これらの分野にも、記者さんたちの調査が入って、真実をあばいてほしいと強く願います。本当のことが明らかになってくれば、害獣扱いをされて殺し続けられている鳥獣たちが、涙を流して喜ぶことでしょう。