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2012-10
10月2日 日経夕刊記事に、1990年代前半の兵庫県クマ推定生息数は350頭程度とのミス?記述
日本経済新聞「クマ出没 ご用心」の記事に、上記見出し記述がありました。あり得ない数字であるため、新聞社に電話をして、この記事を書いた記者と電話でお話させていただきたい旨、伝えました。ところが、社の規定により、記者の名前を知らせたり、電話をつないだりはできないことになっている、ということでした。最近このような新聞社が増えています。これでは、記事のミスを直せませんし、記者も成長できないのではないでしょうか。マスコミ界に、反省を促したいと思います。
兵庫県森林動物研究センターに電話して、係官に確認したところ、1990年代前半の兵庫県のクマ推定生息数は、75頭~85頭であり、兵庫県職員が350頭と答えるはずがないし、そんな数は聞いたこともない、ということでした。
どうしたら日経新聞社に訂正していただけるのでしょうか。新聞記事の社会に対する影響は限りなく大です。
いつも思うのですが、最近の新聞は以前と違って、ほとんどが、行政発表の垂れ流しばかりです。(だからどの新聞を読んでも、内容はほとんど同じ。全く読みごたえがありません)
行政はこう言っているが、○○はこう言っているというような、多角的な記事がないのです。これでは読者が、どちらの言い分が正しいのだろうかと考えたり判断したりすることができなくなって、1億2千何百万人、権力を持った者の総ロボット化に進むのではないでしょうか。
今、ネット上で蔓延している、匿名による誹謗、中傷、虚偽、捏造などは、人として許されるものではありませんが、きちんと名乗った議論は、絶対に、社会には必要です。
兵庫県にいったい何頭のクマがいるのか マルコフ連鎖モンテカルロ法は使えるのか 兵庫県、クマ推定生息数を一挙に下方修正
兵庫県にいったい何頭のクマが棲んでいるのか。人間の国勢調査のようなことができればわかると思います。しかし、クマには不可能です。
兵庫大学の研究者が、2011年に、神戸市で開かれたシンポジウムで、クマ目撃数とクマ捕獲数を2大因子(パラメーター)として、階層ベイズモデルを構築し、マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いて、県内クマ推定生息数を算出したと発表されました。
その結果は、90%信頼限界では、300頭~1650頭で、中央値は650頭ということでした。
兵庫県で1992年は60頭絶滅寸前と言われていたクマが、650頭に増えている?!
650頭、この数が独り歩きをし始めました。
初めてこの発表を聞いたとき、そんなことは絶対にありえないと私たちは確信を持って言えました。なぜなら、私たちはクマ生息地を歩き続けて痕跡を見続けてきたからです。10倍以上にクマが増えたなら、爪痕、フンなど、いくら鈍感な人でも、絶対にクマの異常増加に気づきます。
むずかしい数式を使って、何日もコンピューターを操作しながら計算した結果だから間違いないと、行政の方はこの数を採用されましたが、最先端の科学的技法を使って出した結論より、人間の感じることの方が正確なんだなあと、この時、つくづく思いました。しかし、大学の先生が発表すると、肩書社会の日本では、マスコミをはじめ一般国民も、ほとんど全員がそちらを信じてしまいます。しかも、この研究発表では、クマの年間増加率が、平均22.3%となっており、年によっては30%にも達しています。クマの年間増加率が、草食動物であるシカより高い!そんなこと絶対にありえません。
行政の方に、この推定生息数はありえないというと、反論するならデータを出せ、論文を見せろと怒られました。現代人はみんな、科学病、数字病にかかってしまっているのではないでしょうか。複雑な計算などしなくても、わたしたちが活動を始めた20年前から、クマが10倍に増えているかどうかぐらい、山に入って観察していれば、子供でもすぐわかることです。
私たち熊森本部は、2011年、毎月クマ部会を持ち、1年かけて大変な労力をさいて、この発表がどれほど現実離れしているかを証明しようと試みました。何人もの研究好きの会員が、参加して下さいました。
有名国立大学で数学を教えておられる博士会員にも力になって頂きました。難しい部分を省略して簡単にまとめると、先生は、世の中には3つの嘘があると言われます。1つは普通の嘘、2つめは真っ赤な嘘、 3つめは統計の嘘だそうです。 統計もモンテカルロ法などは、コンピューターを使って、パラメーターをいくつもいれて 何回もシミュレーションして、頼まれた側(お金をくれた側)に都合のいい結果がでるようにするのが、研究者間での常識になっているということでした。先生によると、どういう結果を出せばいいのか、初めに結果ありきという時に使うものなのだそうです。
兵庫県のツキノワグマは、生息地は荒廃する一方なのに、生息数は激増していることになって、絶滅危惧種Aランクだったものが、絶滅危惧種Bランクに落とされ、2012年からは、有害捕獲原則殺処分に変更され、これまでの日本一の兵庫県のクマ保護体制は、一挙にくつがえされてしまいました。これまで私たちがすべてを投げ打って、クマたちの棲む豊かな森を兵庫県に残そうと、20年間も苦労して命を懸けて作り上げてきた保護体制だったのに、本当に無念です。
2012年初め、この新方針に対して、協議会や審議会がもたれました。ここで、委員たちの中から、クマがシカより増加率が高いなどあり得るのかなど、推定生息数の出し方に、疑問が相次ぎました。すると、しばらくして、兵庫県は、推定生息数や年平均増加率を、一挙に下方修正されました。これは、勇気のいることで、私たちは高く評価します。しかし、これまでのクマ異常増加説は一体なんだったのか。下方修正されたなら、有害捕獲原則殺処分などの対応はなぜ変更されないのかなど、疑問はいくつも残ります。
以下、兵庫県内クマ推定生息数の上限値に関するグラフ(兵庫県資料をもとに日本熊森協会作成)です。
2011年県発表
クマ推定増加率22.3%
推定生息数313頭~1651頭
中央値650頭
2012年県訂正発表
クマ推定増加率11.5%
推定生息数300頭~751頭
中央値506頭
( 熊森より)修正グラフを見て、私たちが驚いたのは、1994年からさかのぼって、数字がいじられていたことです。当時は今のようなデータは取っていませんでしたから、当時の推定生息数の上限値など今更出せるはずはありません。これは、クマの年増加率が、シカより高くなり過ぎないようにするための操作ではないかと、考えられます。
もし、1994年当時の推定生息数を、当時、㈱野生動物保護管理事務所が調査発表した75頭~85頭の推定数を使うなら、このグラフは、以下のようになります。もちろんこのグラフは、上限値ですから、一般に使う中央値はぐんと下がってしまいます。
(結論)
このようなわけのわからないことになったのは、研究者のみなさんが悪いわけではなく、いかに、最先端の科学技術を使っても、自然界や野生鳥獣の生息数など推定できないかという現実の表れだと思います。生息数もわからないのにどうやって、ワイルドライフをマネジメントなどできるのでしょうか。日本の野生鳥獣対応は、根本的に発想転換して、もう一度(日本に野生動物の保護管理思想が導入された)1999年以前に戻して、やり直さねばならないと考えます。
米田一彦氏もご著書で、私たちのこの結論と同じことを、当時、環境庁案に賛成した反省を込めて、書かれていました。
<追伸>
2011年2月に神戸市で開催されたシンポジウムで、若い研究者のみなさんが、クマに関していろいろと発表されました。当協会員も当日、多数会場に行っており、みんな呆れてしまいました。感想を一言で言うと、「乱暴」「暴論」の一言でした。もっと自然というものを、ていねいに愛情を持って見ていただきたいと思いました。
推定生息数以外は、私たちがその場ですぐに反論できることも多く、会場でいくつか指摘もさせていただきました。あの会場に出席されておられた一般市民の方々が、誤った知識を持たれたままにならないよう、私たちのわかる範囲でしかできませんが、そのうち反論させていただこうと考えています。
私たち熊森協会は、兵庫県立大学の若い研究者のみなさんに、立派に育っていただきたいといつも願っています。
人間にはわからないクマ推定生息数 わからなくてもいいではないか ヘアートラップ法の欺瞞
野生鳥獣の保護管理(ワイルドライフマネジメント)に取り組む研究者や業者にとって、保護管理をおこなう地域内に対象となる野生鳥獣が何頭存在するのかを、できるだけ正確に把握しておくことが、まず最初に必要なことです。
し かし、一般の方は意外に思われるでしょうが、これだけ科学技術が進歩した21世紀においても、広大な森の中にひそんで生活している野生鳥獣の生息数を推定 することは不可能なのです。そこで、時には対象野生動物の命を奪うことさえいとわない、科学の名を借りた暴力的な調査方法すら考案されます。しか し、そこまでしても、はっきりした推定生息数は出せません。
生息数などわからなくても、人間の所に出て来なければいいではないかと、私たちは考えます。他方、保護管理を仕事としたい人にとっては、そうはいきません。それでは、仕事が無くなってしまうからです。
クマの推定生息数を出すために最近よく使われる調査方法のひとつにに、ヘアートラップ法があります。DNA鑑定まで取り入れた科学的な調査方法として脚光を浴び、いくつもの行政で予算が組まれて、専門家なる人たちがその予算を使い、実施しています。
山 の中で、数メートル四方を有刺鉄線で囲み、真ん中の高い所に、ハチミツやリンゴなどクマの好物をぶら下げておきます。それを狙ってやってきたクマが、有刺 鉄線をくぐり抜けるときに、有刺鉄線にそのクマの毛をひっかけます。その毛を採集して、DNA鑑定を行い、何種類のクマがそこにやってきたのか割り出しま す。そこまではよいとして、これで得られたクマの頭数に、クマが生息すると思われる山林の面積を、掛けるのです。しかし、ちょっと考えてみるだけで、こんな方法で生息数など出せるはずがな いと思われます。
山の状態や動物の生息状況など、自然界は均一ではないからです。
しかもクマの好物をぶら下げて、クマたちを呼びこんでおりますから、集めておいて面積をかけたら、実際より大変多くクマがいることになってしまうのではないでしょうか。
今 年の夏持たれた日本奥山学会の研究発表会で、こんなわたしたちの疑問に、ヘアートラップ法に取り組まれた大学の先生が、みごと答えてくださいました。発表主旨は、「ヘアートラップ法では、クマの推定生息数など絶対に出ない」というものです。この発表を聞いて、DNA鑑定などという、一見神の宣託のような、 一般人が見ることもコメントすることも不可能な世界が、私たちの想像以上にあいまいなものだということがわかりました。
日本で初めてヘアートラップ法を採用し、予算化した行政に、1年後お邪魔したことがあります。「県内に、クマが何頭いたかわかりましたか」とたずねると、「あんな方法でわかりっこないよ。だまされた」と、吐き捨てるように言われたのを覚えています。
行政のみなさんは、大学教授とか専門家とかの肩書きに、本当に弱いんだなあという印象を、ヘアートラップ法だけではなく、あらゆることで、ふだんから感じま す。こんなことになるのは、日本の行政は大変優秀ですが、なぜか3年ごとにコロコロと部署替えをするシステムを採用している為、いつも担当者が素人だから だと思います。言葉は悪いですが、仕事をしたい人お金を欲しい人に、簡単にだまされてしまうのです。
私たちのように、利権 などとは全く無関係に、長年活動を続けている市民団体の声を行政が聞いて、参考にしてくだされば、もっといい世の中になるのではないかと思われます。第 一、私たちの税金を無駄遣いしなくてすみます。ヘアートラップ法を採用されている行政のみなさんに、今年の日本奥山学会での発表DVDをお送りして見ていただければ、こんなことに予算を組むのはやめようと思われると、予測されます。いかがでしょうか。
推定生息数が出たとして、 次に、保護管理派の人たちがすることは、「その地域に対象動物が何頭生息しているのが適正か」という数字をはじき出すことです。ここまで来ると、人間には絶対にわからない領域のはずです。「空が真っ黒になるほどリョコウバトが飛んでいても、大地かと見間違うほどバイソンが地平線まで広がっていても、それは豊かなアメリカの自然だった」という例から 考えてみてもわかることです。
最後に、保護管理派の人たちがおこなうことは、現状は、「多すぎると殺し、少なすぎると増やし、一定数に保つ研究であり、仕事」です。野生鳥獣をなぜ一定数に保たねばならないのか。目的からして疑問です。何度も言いますが、人間の所に出て来なければよいだ けではないのでしょうか。1999年に、当時の環境庁が、保護管理派の言いなりになって、信じて、野生鳥獣の保護管理を我が国に取り入れたところから、全てが変になっていったと感じます。人間に出来もしないことを、しかも、大量の野生鳥獣殺しを伴うことを、始め出したからです。
三井寺(滋賀県大津市)、ヒノキ人工林を広葉樹に切り替え、動物と共存へ
三井寺の森、広葉樹へ“転生”見直し
「動植物と共存を」
以下、京都新聞より
湖国屈指の名刹(めいさつ)、三井寺(園城寺、大津市)が境内の広大な森林のあり方を抜本的に見直す指針作りに乗り出す。戦後の林業政 策を受けてヒノキなどの人工林が大半を占めていた現状から、土地本来の特性に合った広葉樹などへの切り替えを積極的に検討する。「動植物と共存できる多様 性に富む森林に転換したい」という。
精進料理にも使われるミョウガなどの若芽が無残に食い荒らされている-。長等山一帯に甲子園球場約30個分の境内を持つ三井寺では近年、金堂(本堂)周辺の麓までシカやイノシシが現れ、被害が目立っている。
そんな現状を前に、僧侶たちは自問する。「果たして動物が悪いのか。経済性優先でヒノキやスギを植え、動物のエサ場となる自然な山の姿を奪ったのは人間で はないか」(福家俊彦執事長)。そんな反省に立ち、「長等山三井寺森林景観保全・再生ガイドライン」の作成を決めた。NPO法人森林再生支援センター(京 都市)に助言を求め、景観や防災面も考えた森づくりを長期的に検討し、推進する。
同センターによると三井寺境内は現在、約7割がヒノキ 林、約2割がシイ林。ただ、地形や土壌を考えると、ヒノキに実際適した場所は2割に満たないという。同センターの高田研一常務理事(61)は「適した場所 に適した樹木を植える『適地適木』の原則で、サクラやモミジなど多様な木への切り替えを検討したい」と話す。
林業が衰退し、森林の荒廃が 全国的な問題になる中、京都市では東山の森林再生を官民で進める「京都伝統文化の森推進協議会」が5年前に発足し、植樹や間伐を進めている。三井寺でも植 樹などを市民参加で進め、寺や森に親しんでもらう仕組みづくりを視野に入れる。高田常務理事は「有名社寺が多く、人と自然の調和を追求しやすい京滋から森 づくりの百年の計を示す」と理想を描く。(三好吉彦)
■三井寺 天台寺門宗総本山。7世紀創建。天智、天武、持統の3天皇の産湯に用いられた霊泉があり、三井寺と呼ばれる。金堂(本堂)や黄不動尊など国宝10件所蔵。近江八景の三井の晩鐘も有名。
【 2012年10月01日 09時31分 】
(熊森から)
くまもりは三井寺に大拍手を送ります。
福家執事長さんの言葉に、人間本来の声を聞いた思いがします。
人間が動物たちの森を一方的に壊しておいて、生きられなくなって動物たちが山から食料を求めて出て来たら、罠をかけて大量に殺してしまう。平成の日本では、このようなことが今、当たり前のように全国で行われています。森を復元してやりもせず、出て来た動物たちを殺すだけなら、そのうち動物たちは絶滅するだろうし、第一、誰が考えても、こんなの人間としておかしいと、私たちは思ってきました。
仏教界が、日本の森と動物を救うために立ち上がってくだされば、若い人たちがお寺に行くようになると思います。他のお寺にもぜひ波及してほしいです。