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2013-02-22

これでは国民洗脳番組です   2月14日  NHKクローズアップ現代「ハンターが絶滅する!?見直される狩猟文化」

気の毒にも、NHKは、国策の代弁報道をする義務を背負わされているのでしょうか。

 

残念ながら、こと自然に関しては、「クローズアップ現代」は、これまでも環境省の国策を是として、国民を洗脳し、環境省の思う方向に国民を誘導する報道を繰り返してきました。一般の方々がこういう番組を見て、報道内容をそっくりそのまま信じてしまわれるのではないかと思うととても怖いです。放映終了後、ただちに、NHKに抗議の電話を入れましたが、苦情担当者の方が、本気で聞いてくださったようには思えませんでした。

 

「クローズアップ現代」の大きな問題点

①環境省の一方的な見解だけを報道し、反対意見を一切報道しない。

②いろいろな説があってよく分からないことを、こうだと断定報道する。

 

国谷アナウンサー

「かつて日本でも、山里では貴重なタンパク源として、山の命を山の幸としてごく当たり前に食べ、日本独特の狩猟文化がはぐくまれていました」

 

→熊森から

上の、かつてというのは、いつのことをさしているのでしょうか。以前から熊森は、環境省自然環境局野生生物課鳥獣保護業務室が推進している、「日本人は狩猟民族である。若者よハンターになれ」という環境省のキャンペーンに、疑問を呈してきました。以前、日本人が狩猟民族であったという証拠を示してほしいと環境省に問うと、当時環境省のHPにアップされていたこの関連ページが突然閉められてしまったのを記憶しています。

(現在の環境省キャンペーン目指せハンター 狩猟の魅力 まるわかりフォーラム

 

確かに、縄文時代は、狩猟採集文化であったと思いますが、基本的にはその後、稲作漁撈文化に変わっていったのではないのでしょうか。

東北の一部に、マタギと呼ばれる人たちがいましたが、全人口から見ると、パーセンテージにもあがらない、ごく例外的な少人数だったと思われます。

江戸時代、狩猟が許されていたのは、将軍や天皇家などの特権階級だけではないのでしょうか。山奥の人たちが、銃を持っていたといっても、おどし銃として持っていた場合も多く、ごく当たり前に狩猟していた割合がどれくらいあったのか、今となっては調べようがありません。

独特の狩猟文化がはぐくまれていたといわれていますが、文化というのは、日本人の多くが行っていた場合に使う言葉だと思います。 歴史を振り返ると、676年の天武天皇の「肉食禁止令」から始まって、明治になるまでの1200年間、肉食や殺生や、狩猟に対する禁令が出っぱなしに出続けています。禁令を破る人がいたからでしょうが、いつの世でも、決まりを守らない人はいます。しかし、日本人の特質として、多くの人は、決まりに従ったと思われます。

昔の記録は少なく、今となっては当協会も確かめようがないのですが、少なくとも、狩猟が日本に入ってきたのは、明治時代です。

 

明治になって、一般国民が狩猟して良いことになると、エゾシカやカモシカなどが乱獲されて一気に絶滅しかけました。そこで、国は慌てて、これらの狩猟を禁止しました。この時代ぐらいになってくると、記録も多くなってきます。といって、明治になって、狩猟が日本文化と言われるほど国民一般に広がったわけではありません。田口洋美氏の研究では、日露戦争時(明治37年)の国内狩猟者は、統計では20万人、実質では、30~40万人ということです。

環境省の「若者よ、ハンターになれ」キャンペーンは、ある意図の元に、日本人は元々狩猟民族であると国民に思わせようとしているものであるとしか、考えられません。

一歩下がって、日本は狩猟文化の国であったという研究者を紹介するとしても、しかし、違うという研究者たちも多くいるのですから、同時に紹介すべきでしょう。アナウンサーに断定表現を使わせるべきではないと思います。

 

 

国谷アナウンサー

「人間と自然とのバランスが崩れた大きな要因となっているのが、ハンターの減少です」

 

→熊森から

またまた、アナウンサーに断定させていますが、この問題については、熊森は何度も何度も環境省に反論を申し入れてきました。環境省は上のことを印象付けるために、「狩猟免許所持者数の推移グラフ」の出し方を、いつも1970年からに操作して、国民に提示します。どんどんとハンターが減っていくから、シカがどんどんと増えていくと誘導しようとしているとしか思えません。

<猟免許所持者数の推移グラフ>

年齢別狩猟免許所持者数の推移実際のハンター数の推移と、鹿の捕獲数の推移を見

てみましょう。

 

 

 

 

 <猟免許所持者数の推移グラフ>  1946年から2000年までのグラフで、中央が1970年です。

01touroku

<シカの捕獲数の推移>  1923年から2004年までのグラフです。

シカ捕獲数の推移 環境省グラフを熊森編集 特定鳥獣保護管理計画作成のためのガイドライン(ニホンジカ編)H23

この2つのグラフから、ハンター数の減少とシカ捕獲数(生息数)の激増とは、無関係であることがわかります。以前、ハンター数が今より少なかった時、シカもとても少なかったのです。今たまたま、ハンター数の減少と、シカの激増時期が、重なっただけです。

このような、グラフのごまかし提示によって、国が若者に、「使命感を持ってハンターになれ」と呼びかけるのは、恥ずべきことです。乗ってしまう人も出てきます。その人が若い女性であれば、国策推進のための看板として使われます。

 

ハンターが減ったから、シカが増えたという説を紹介してもいいのですが、同時に、そうではないという説も紹介しないと、国民に思考力を付ける教養番組になりません。報道と洗脳は違うのです。

 

例えば、他の説として、今、シカが激増しているのは、戦後の林野庁が行った拡大造林が原因だという説があります。わが国では、どんどんと奥山のブナやミズナラなどの巨木を伐採して、国を挙げて、1958年ぐらい~1990年ぐらいまで、スギ・ヒノキ・カラマツの苗木を植えに植えていきました。その結果、苗木が小さい頃は、奥山が草原だらけになり、シカの食料が激増してシカが増え始め、自然界のバランスが崩れ出した。その後、スギ・ヒノキ・カラマツが大きく繁るようになると、下草が消え、シカは食料を失って山を出始めた・・・などの説があります。この説は、100年前に絶滅したオオカミが現在のシカ激増の原因だという説よりも、年代的には今起きている事象とぴったり合います。

 

いろんな説を検証して提示し、真実を求める国民が、真理を追究できるような番組を作ってこそ、放送料金を取れるNHKになれると思います。

 

今回は苦言を呈しましたが、クローズアップ現代が、番組制作姿勢を大転換して、国家権力から独立した中立の番組を作るようになってくだされば、こんなうれしいことはありません。

 

 

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