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2013-05-10
なぞの葉巻は、オトシブミのゆりかごでした
先日の不思議な葉巻の正体がわかりました。オトシブミという昆虫のゆりかごと呼ばれるものでした。下に写真再掲。
この葉巻は、オトシブミのメスが、口と足を使って巧みに葉を巻いて作ったものです。この中に、メスが卵を一つ産み付けており、親虫は同時に葉に菌糸を植え付けて栽培、卵からかえった幼虫はその菌糸を食べて大きくなり、やがてここから出て来て地面にもぐりサナギになります。「おとしぶみ」はその中で幼虫が成長し成虫になるまでの食料兼シェルターだったのです.
オトシブミという名前は、昔、巻物状の手紙を書いて地面に落とし、好きな人に拾わせた「落とし文」に、このゆりかごが似ているところからつけられました。
オトシブミの成虫は数ミリの大きさ。首がとても長いです。
日本には、沖縄を除く全域に生存し、22種いるそうです。ゾウムシに近い仲間で、別に発生しても害はありません。
日本海側から太平洋側に向かって、全国的にどんどん広がっていくナラ枯れ
5月5日の神戸新聞第一面トップ記事 を見て、ぎょっとしました。
2010年の夏は異常な暑さでした。そのせいもあってか、兵庫県北部や中部では、夏にナラ枯れが一気に広がりました。
当時、私たちは何カ所かの山々を夏に調査に回りましたが、山を真っ赤に染めるようにして枯れていく種々の実のなる木を見て、これで野生動物たちがますます山で生きられなくなったと、絶望的な思いに駆られたものです。
今回の兵庫県森林保全室の発表によると、これら実のなる木の枯死は、着実に南下を続けているということです。
2012年度になると、兵庫県のクマ生息地のほぼ全域が、ナラ枯れ地域になってしまっています。阪神間にも飛び火して広がって来ています。その部分の新聞資料を拡大してみると、以下の通りです。
ナラ枯れがやっかいなのは、県も発表されているように、抜本対策がないことです。
国は、5ミリほどのカシノナガキクイムシを木々を枯らす犯人と決めつけています。兵庫県では、粘着シートを木々の幹に巻きつけたところ、カシノナガキクイムシだけではなく、その他の昆虫、爬虫類、鳥などが掛かり、死ぬケースが続出したそうです。
そこで、薬剤散布をしているそうですが、薬剤というのはどれも結局、毒剤です。他の生物まで殺してしまうばかりか、私たちの水源を汚染する行為です。
当協会の群馬県在住宮下正次顧問らによると、ナラ枯れの原因は、カシノナガキクイムシではないということです。カシノナガキクイムシが全く入っていないのに、ナラ枯れしている木をたくさん発見されています。
宮下氏によると、酸性雨によって木々の根の菌根菌がやられてしまい、木々が弱ったため、カシノナガキクイムシが片づけに入っただけなので、カシノナガキクイムシを殺すのではなく、炭を撒いて土壌の酸性度を弱めることをすべきだと言われています。実際、炭撒きしたところ、ナラ枯れで枯れかけていた木々が、青々とよみがえった写真を何枚も見せていただきました。
今は、「森なくして、虫なし、鳥なし、獣なし」です。山で生きられなくなって人里に出て来た生き物たちを害獣と決めつけて殺すだけの対策しか、今の日本はとっておりません。もっと彼ら野生生物たちの悲鳴に耳を傾けてやる姿勢が必要だと思います。
ちなみに他府県を調べてみると、これまでナラ枯れが入っていなかった宮城県や岩手県にも、枯れがどんどん入り始めているということで、これからますます国土が大変なことになっていきそうです。
経済成長を狙う話題がほとんどの今の日本で、兵庫の山が大変なことになってきていると、このように一番目立つ場所を使ってわたしたちに知らせて下さった神戸新聞社に、深く感謝します。