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2013-12-11
大量捕殺推進一辺倒の環境省素案に、言葉を失う パブリックコメント② 熊森解説
- 2013-12-11 (水)
- くまもりNEWS
<鳥獣の保護及び狩猟の適正化につき講ずべき措置についての素案>への熊森解説
(素案全体について)
増加したシカによる農作物被害や森林被害が拡大し、地域によっては大変な問題になっているという現状認識は、熊森も同じです。
●しかし、物事にはすべて原因があります。問題を解決するには、原因を特定し、その原因に対して対策を取らねばなりません。ただし、自然界のことは、実際には、人間に原因がわからないことだらけなのです。
●素案では、ハンターの減少が、シカ増加の唯一の原因になっています。よって、この素案は、対策として、いかにハンターを増やし、いかにシカを大量に捕殺するか、そのこと一色になっています。
●熊森は、これまで何度も指摘してきたように、シカ問題は、シカが数的バランスを崩した結果であって、ハンター減少が原因ではないととらえています。
狩猟者数の変化 (黒色折れ線グラフ)と シカ捕殺数 (水色)
日本に狩猟が入ってきたのは明治からです。以前、今より狩猟者が少なかったとき、シカ捕殺数も少なかったのです。しかも、ハンター減少が原因なら、狩猟鳥獣のすべてが増加するはずです。よって、シカ捕殺推進一辺倒の素案にパブリックコメントをと言われても、根本から考えが違うとしかコメントのしようがありません。
こんなことになるのは、素案作りにかかわった検討小委員会の委員選びに問題があります。原因はハンター減少だという論者ばかり委員に集めて、検討会を持てば、幅広い意見は出ません。
本来、検討会や審議会は、多様な意見の者たちを集め、激論を戦わして真理に迫るべきなのですが、実際は、国が、国の森林政策の失敗や人間側の責任に触れない意見を言う、狭い範囲の人たちだけを集めており、大きな問題です。
しかも、この素案は、国民に、
・明治になるまでの1200年間、殺生禁止令が出ていた
・明治時代の初めに3000万人だった人口が、爆発増加し、現在4倍に増えた
・車社会が発達し、道路が奥山まで伸びて、人間は、かつて野生鳥獣の国であった国土まですべて自分のものにしてしまった
・戦後の林野庁の森林政策であった拡大造林策が行き過ぎて、日本の山は動物が棲めないまでに荒廃した
等の社会的背景や、シカは本来、豊かな自然生態系を我々に提供してくれる益獣であることなどを、全く知らせていません。それどころか、戦後、人間が行ってきた森林の大破壊には一切ふれず、森林劣化は全てシカが原因だと、シカに責任転嫁しています。
その上、シカの殺処分を「管理」「個体数調整」と表現し、大量に捕殺することは、「積極的な管理」などと表現し、読んだ一般国民に、国が何をしようとしているのか具体的なイメージが浮かばない書き方になっています。
●熊森が考えるシカ増加原因説
① 地球温暖化による冬季積雪量減少
②人間による シカ捕食者の消滅
③ 拡大造林による一時的な奥山草原化とその後の放置による奥山荒廃
④ シカの山奥移動を可能にした奥山開発や道路網の整備
⑤ 平地での過度の駆除による奥山追い上げ
⑥ 耕作地の放棄や林道壁面緑化による餌場提供
原因の一つ一つに対策を練っていくべきです。
・このような
このような人間活動によるさまざまな原因説が考えられますが、素案には、人間活動の反省や責任が全く書かれていません。
●自然界の生物数をコントロールできるのは自然の力だけなのに、殺処分の強化により、人間が自然界の生物数をコントロールできるかのように書かれています。一定以上の広い土地を野生鳥獣に返してやり、野生鳥獣が自然界のバランスを取り戻せるようにすれば、その中で、何頭いてもいいのです。
●野生動物の命のすばらしさや生命尊重が完全に抜け落ちています。
●非捕殺対応が、全く議論されていません。
●今、シカは、どこにいても、個体数調整という名で人間に殺されます。
シカたちはどこにいればいいのか、いてもいい場所をシカたちに示してやるべきです。