くまもりHOMEへ

ホーム > アーカイブ > 2013-12-28

2013-12-28

兵庫県丹波県民局判断で設置されていたクマ捕獲わなは、期限切れで12月27日に撤去

12月13日から兵庫県丹波市の集落に、クマ捕獲わなが設置されていました(既報)が、この度、撤去されました。この件は、今後のクマ行政に、大きな問題を提示したと、私たちは考えます。

 

これまでクマなど出たことがないという集落で、クマのフンが初めて見つかったのは11月20日だそうです。無人になっている神社の社にニホンミツバチが巣を作っていたため、12月1日には、大人の上半身ほどの大きさの社の板が壊され、中の蜂の巣がクマに食べられるという被害が発生しました。クマを目撃した人はいないのですが、その後も、集落の柿の実が、クマに相次いで食べ続けられます。クマに慣れていない集落の皆さんが、不安に陥られたのはわかります。集落のリーダーが、集落の皆さんに、クマを誘因していると思われる木々に残された柿の実の除去をお願いすると共に、クマを捕獲して欲しいと丹波市にお願いされたのもわかります。丹波市の担当者が、柿の実の除去が終わっていないのに、12月13日に市所有のクマ捕獲わなを設置されたのもわかります。丹波県民局は、捕獲された場合、このクマは殺処分と決めておられました。私たちは、この決定には、まったく納得がいきません。

 

絶滅危惧種のツキノワグマに対する保護が大きく後退してしまった現在の「兵庫県のクマ出没対応基準」でさえ、このクマの場合、殺処分とはなりえません。今回の場合、県の出没状況区分は、3の、「繰り返し出没し、精神被害を含めた被害を発生させた場合」にあてはまります。県が決めた対応は、兵庫県のクマは生息推定数が400頭を越えていると考えられるため、「原則殺処分だが、ただし、適切な被害対策を行っていない場合で、過去に学習放獣されていない個体は、学習放獣」です。この集落の場合、適切な被害対策をまだ行っていなかったので、どう考えても、このクマが捕獲された場合は、学習放獣が妥当です。しかるに、丹波市担当者が、捕獲された場合、殺処分すると主張されたため、私たちは地元のリーダーに電話して、急遽翌日の12月14日、柿もぎ支援のため、この集落に駆けつけました。柿をもいで山に持って行ってしまえば、クマは出てこなくなり、殺処分される恐れはなくなります。集落も、クマ不安から解放されます。

 

しかし、集落のリーダーから、知らない人たちに集落に入ってもらいたくないと断られました。そう言われてみれば、そうだろうとも思います。しかし、こんなことで殺処分を認めていたら、絶滅危惧種は守れません。クマの棲む保水力抜群の豊かな森をこの国に残そうと運動している私たちにとっては、もし、捕獲されたら山に放獣すると、丹波県民局に方針転換してもらうしかありません。地元のリーダーも、「殺処分されるとは知らなかったし、行政からも聞いていない。奥山に放獣してやればいい」と言ってくださいました。

 

12月19日、私たちは、丹波県民局に行きましたが、かたくなに殺処分を主張されました。丹波市担当者は、丹波県民局の決定に従うの一点張りです。もし、このクマが罠にかかっていたら、殺処分されるところでした。しかし、有害捕獲わな設置許可期限の2週間を過ぎても、クマは罠にかからなかったばかりか、冬籠りに入ったのか、出てこなくなり、12月27日に罠は撤去され、1件落着しました。

 

しかし、私たちは、大きな問題が残されたと感じます。クマをどうするかの決定権は、県民局にあるのだそうです。丹波県民局担当者はこの部署2年目で、クマの生態に無理もありませんが、それほど詳しい知識は持っておられません。県のクマ出没対応基準と違う決定を下し、外部から指摘されても、かたくなに訂正しようとされませんでした。地元の人たちに説明もせず、地元の声も聞いていません。私たちのように長年クマに関わってきた市民団体の声も、まったく受け入れません。たまたま今回は、捕獲わな設置の段階でマスコミ報道があって、私たちが気づいたため、私たちもそれなりに調査し動きましたが、今回のようなことは例外です。最近のマスコミは、行政発表を書くだけというのがほとんどで、行政は捕獲や殺処分を発表しませんから、兵庫県ではクマは殺されていないと信じ込んでいる県民がほとんどです。

 

ちなみに、今年の兵庫県のクマ統計(11月30日現在)は、以下です。

目撃数は485件(同じクマを何度かカウントしている場合あり)、有害として捕殺11頭、イノシシ罠などに誤捕獲29頭(うち28頭は放獣)

 

それぞれの対応について、県民局が決定権を持っているのはいいとしても、決定や遂行にあたっては、地元住民に説明し、県民に情報公開していただきたいと思います。兵庫県では、クマに長年携わっておられる森林動物研究センターの職員もおられるのですから、相談してみるなど、謙虚で柔軟な対応を望みます。今回の丹波県民局の対応は、誠に残念で問題でした。

 

 

 

 

 

 

(速報8)12月27日阿仁熊牧場へ18頭目のヒグマを移送、残り1頭に

とりあえず、ウメコは阿仁へ

 

(以下、2013年12月28日  読売新聞より)

 

移送用のおりに入って、新しい飼育舎に到着した18頭目のヒグマ(27日、北秋田市の阿仁熊牧場で)

北秋田市の「阿仁熊牧場」に27日、廃業した鹿角市の「秋田八幡平クマ牧場」から雌のヒグマ1頭が移送され、これで計18頭が新しい飼育舎に収容された。

移送は16~25日の予定だったが、警戒心が強く、搬送用のおりに入らない雄が1頭まだ残っており、県などは引き続き移送を試みている。

秋田八幡平クマ牧場では昨年4月、ヒグマ6頭が脱走し、女性従業員2人が襲われて死亡した。ヒグマの処分が検討され、県が阿仁熊牧場に約3億3000万円を補助して運動場や飼育舎などを新設し、雌12頭、雄7頭の移送が決まった。

両牧場間は約120キロあり、トラックで片道約3時間。ヒグマのおりはクレーンで飼育舎に運ばれた。

県などによると、ヒグマは1頭ずつ、基本的に縦2・4メートル、横3・0メートルのコンクリートの部屋に入れて環境に慣れさせている。落ち着いた様子で、食欲なども大きな変化はないという。

神戸市の深い3面張り川のえん堤内に閉じ込められて1年たつ1頭のイノシシのこと

12月25日の新聞報道によると、今年4月、神戸市中央区の宇治川のえん堤に、ウリ坊(イノシシの子供)が1頭迷い込み(流れ込み?)、高さ6メートルのコンクリート塀に囲まれたまま、約1年近くも抜け出せないでいるということです。50キログラムぐらいにまで、成長している感じでした。

イノシシ

見かねた住民たちが、餌をやるなどして、このイノシシの命をどうにかつないでいるものの、山に返してあげたいなどの市民の相談に対して、行政側が全く動いていないという記事でした。何のための行政なのか、信じられません。

 

近隣の他の市では、同様のことが起こると、住民の通報を受けた行政がすぐに駆けつけて、イノシシを山に逃がしてやっています。つい先日も、行政が、高い岸から川に落ちて這い上がれなくなっているイノシシを救出して、住民から拍手をもらっていました。

川を、動物が落ちたら最後、二度と這い上がれないような何メートルもの高さのある垂直3面張りの排水路に変えてしまい、町中に張り巡らせた人間の責任は、本当に重いと思います。(子供や動物など、弱者への配慮が全くない)

 

このイノシシを助けてやってほしいという声が、さっそく、12月25日夜から、くま森に入り始めました。行政にとって、このイノシシを救出し、山に逃がすことなど簡単なことです。1年近くもなるのに、なぜ動いてやらないのか、理解に苦しむくま森は、26日、行政に電話で、すぐに救出して山に逃がしてあげてほしいとお願いしました。その時の答えは、人間として、本当に理解に苦しむものでした。

 

くま森が救出しよう。クレーン車やユニック、捕獲檻、軽トラック・・・準備物が次々と浮かびます。しかし、高さ6メートルのコンクリート塀と言われても、実物を見ないと、救出計画が立てられません。インターネットのグーグルストリートビューで確認してみましたが、やはり現地に行かないと、はっきりとした河川敷の構造がわかりません。明日の朝、現地に取りあえず行ってみることにしました。

 

元イノシシの生息地であった神戸市の裏山は、宅地開発の歯止めがかからなくなっており、現在、人間の住宅地が山の半分くらい上まで上がっています。生息地を奪われたイノシシは住宅地内を徘徊し、あちこちに掛けられたイノシシ捕獲用くくり罠や箱罠にかかって、毎年大量に殺されています。銃猟禁止地域なので、罠にかかったイノシシは、たたき殺すか刺し殺すかされています。以前、猟友会の方が詳しく教えてくださったことを思い出しました。

 

この1歳の迷いイノシシにとって、山に逃がしてあげることが幸せにつながるのかどうか・・・逃がしてあげた次の日に、罠にかかってたたき殺されることも十分予測されます。どちらがこのイノシシのためになるのか。大切なのは人間の命だけではなく、全ての命だと考えている私たちにとっては、悩ましい限りです。

 

12月27日、朝、行政に、昨年度神戸市で捕殺されたイノシシの数を聞いてみました。640頭!でした。

 

現地に到着し、入念に構造を調べ、付近の人たちの聞き取りを行いました。遊水地の底から地上の道路まで、コンクリートの広い坂道がついており、坂道を上りつめたところの鉄の扉さえ開けてもらえれば、クレーンやユニックなど不要で、救出は簡単にできます。

s-DSC_0002

近隣の方たちが、集まってこられました。多くの市民が、このイノシシを不憫に思い、温かく見守っておられることがわかりました。

私たちは、きれいな水は?、餌は?、嵐の日の逃げ場は?もし川が増水したら生き残れるか?危害を加える人間はいないか?いろんな観点から、生息地を調べていきました。

イノシシが迷い込んでいるところは、大雨の時、川の水が市街地にあふれださないように作られた遊水地でした。外からでは遊水地の構造がわかりにくいため、施設管理部署を訪れ、図面を見せてもらって、遊水地の構造を確認しました。

s-IMG_2572

写真右の坂道が、地上への道で、イノシシはこの先端までよく来ているそうです。坂を登りつめたところにある鉄の扉を開けると、すぐに地上に出られます。

<わたしたちの出した結論>

豊かな自然の中で、親子で生きているイノシシのことを思うと、確かに哀れなイノシシではあります。しかし、予想に反して、命を永らえることができる最低限の生息環境チェックは、全て合格点でした。

人間のことしか考えなくなった環境省は、今、今後10年で、シカ生息推定数の半分である160万頭、イノシシ生息推定数の約半分である39万頭の大量捕殺を行うと宣言しています。

捕獲罠でいっぱいの山に逃がされて罠にかかりたたき殺されるより、ここで、多くの市民に愛されて生を全うした方が、このイノシシにとっては幸せではないかと思われました。

行政関係者のみなさんに、遊水地からイノシシを救出して山に逃がしてやってほしいという、昨日の申し出を取り下げることを伝えました。

近隣の神戸市民の皆さん、哀れな1頭のイノシシを、今後とも愛し育ててやってください。よろしくお願いします。このイノシシを大事に見守ることによって、人間社会にもきっとすばらしい幸せがもたらされます。ただ、このイノシシは、春からここにいるということで、今の状況で、厳しい冬の寒さが乗り切れるのかどうかの証明ができません。皆さんに見守っていただくしかないと思います。

行政にもいろんな方がおられます。親身になって私たちの思いを受け止めてくださった、人間性を失っておられないみなさんに、心から感謝申し上げます。

(完)

フィード

Return to page top