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2014-02-10
クマの捕殺緩和ありきは問題 「岐阜県ツキノワグマ保護管理計画第2期案」パブリックコメント募集中③
- 2014-02-10 (月)
- くまもりNEWS
<山にクマが何頭いたっていいではないか 熊森の提言>
2月8日、岐阜県支部の定例会で、長年岐阜県で哺乳動物を調査してこられた講師を招き、岐阜県のクマについての勉強会が持たれました。
その席上、講師の先生が、岐阜でもクマを初め多くの動物たちが、里の食べ物の味をしめたのか、奥山を捨てて里に下りてきていると問題提示されました。
だからといって、里に出てきた野生動物を殺すことばかり考えるのではなく、もう一度野生動物たちが奥山に帰れるように、●人間が奥山から撤退し、野生動物たちが奥山で餌を取れるような●自然林を復元・再生し、大型野生動物と●人との棲み分けを復活させる方向へ持って行くべきだと熊森は提言します。
その結果、奥山に、クマが何頭いたっていいではありませんか。増えたり減ったりするでしょうが、それが自然です。各生物間のバランスを自然界の力によって取りもどせるようにもどしていけば、人間は労力もお金も節約できます。
ちなみに、講師の先生に、最近岐阜県のクマが増えていると思われるかお尋ねしたところ、「増えも減りもしていないように思う。それより、20年前には岐阜県のどこにでもいたウサギやイタチなどの小動物がさっぱり見かけられなくなってしまったのはどういうことか」と、心配されていました。
(その他、岐阜県ツキノワグマ保護管理計画第2期案から)
●人身被害・・・平成19年度以降はほとんどない。
ただし、放獣作業中の作業員の事故が3件発生したため、今後は放獣を十分な安全確保がない限り推奨しない。
→ <熊森から>奥山放獣は、今後も必要。事故が起きないように、作業に従事する職員の研修を深めてもらい、今後も積極的に実行していただきたい。
今後、イノシシやシカの罠狩猟者が増えて、ツキノワグマの錯誤捕獲が増加する可能性あり。
→ <熊森から>箱罠は、上部を開けてクマスルー檻に改良することを義務付ける。くくり罠に誤捕獲された動物は放すことが難しいので、くくり罠は今後、使用禁止にすること。
●有害捕獲・・・市町村の判断で実施。
→ <熊森から>市町村に任せると、結果的に猟友会に任せたことになることが多いので、県の判断とすること。
●有害捕獲されたクマの年齢構成は0~19歳と幅広く、個体群維持について、緊急の危険性は認められない。
→ <熊森から> 各1頭という少ない例では、とてもこのような判断は出せない。
(全体的な結論として)
捕殺上限の撤廃など、全体として狩猟・有害駆除の捕殺緩和案になっているが、岐阜では人身事故、農林業被害とも、平成19年以降、大きな問題は起きていないのであるから、捕殺緩和を行うべきではない。
私たちの税金は、動物補殺ではなく、生息地の復元・再生と被害防除に使ってもらい、どの動物の命も大切にしていただきたい。
この大地は人間だけのものではなく、全生物のものである。彼らには、人間に影響されずに生きる権利がある。
自然界のことはお互い人間にはわからないことだらけなので、今後も偏りなく、いろいろな団体や個人と情報交換する場を持っていただきたい。
本部 1月20日 雪の中の痕跡調査
冬の間、クマは冬籠りをしており、活動していません。しかし、最近、冬籠り前の食い込みがしっかりできていなかったのか、雪の中を歩いているクマがいたそうです。顧問の先生に、雪山の調査は危険だからしないようにと言われたのですが、若さを頼りに2人で出かけて行きました。
足にはいているのは、スノーシューです。
地面は白一色でした。冬は、落葉広葉樹が葉を落としているので、山の様子がとてもよくわかります。
動物の足跡やフン尿の跡などの痕跡が見れましたが、クマ棚や爪痕などはなかなか見つかりません。
1m以上の積雪がありました。沢沿いでは、積雪の下が川ということもあると聞いていたので、慎重に慎重に歩を進めました。斜面を登るのにも、普段以上に時間がかかります。
途中でカヤを見つけたので、もしやと思い握ってみました。するとまったく痛くありません!握って痛くないのはハイイヌガヤ。葉がやわらかくてシカの大好物です。兵庫県ではほとんど見かけなくなったと思っていたら、こんなところにありました!
そっくりでも、握ると葉が固くて手がチクチクするのは、チャボガヤです。こちらはシカも食べないようで、兵庫県では、下層植生としてチャボガヤが群落になっている所があります。
目的地は標高800mくらいでしたが、その辺りまで行くとブナ・ミズナラ帯になります。GPSで記録しながら進みました。なだらかな森が広がっておりとても美しかったです。
やっとブナの木に、クマの痕跡を発見しました!新しい爪跡です。このあたりにクマが来たことがわかりました。
林道は積雪が少ないのか、不思議とスノーシューなしでも歩けました。動物も、林道の方が歩きやすいのでしょう。林道の動物の足跡は、林内よりも多いと感じました。雪の林道を歩くだけで、いろいろな足跡に出会え、とても勉強になります。
足跡の明瞭さで、その足跡がどれくらい前につけられたものなのかわかります。
このシカの足跡は、つい今しがたついたくらい新しいなと思って、顔をあげると、案の定、目の前に立派なオスジカが1頭いて、逃げて行きました。この日出会った唯一の動物です。
尾根付近の景色は本当に素晴らしく、1m以上の雪が積もっている上を歩くと不思議な感覚があります。
厳しい場所が多かったのですが、何とかクリアーして進みました。しかし、帰るルートが見つからなくなり、適当に歩いていくとかなりの急斜面を降りなければならなくなり、そこを回避するために沢を渡ったり、人工林内を進んだりと、だいぶんじたばたしてしまいました。やっと林道に出れたときは、生きて山を出ることができたことを2人で喜び合いました。
雪山は、歩く前にコースをきちんと設定しておかないと、死の危険があると痛感しました。また、スノーシューがないと絶対に無理です。スノーシューをはいていても、足が埋まってしまって抜けなくなることもありました。途中で、もし、このスノーシューをなくしたら、足が埋まってしまってもう二度と歩けないと思うと、こわくなりました。
この日は一日中天候も良く、とても気持ち良く調査をすることができました。雪山の静寂さなど、貴重な体験ができました。しかし、これだけの大変な思いをして雪山に登っても、動物のくらしはほとんどわかりませんでした。みんな、どこで何をしているのだろう。