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2014-03-08
冬の兵庫県奥山原生的自然林の動植物調査
2月24日、天気の良い日を狙って兵庫県最高峰氷ノ山(1510メートル)の近くにある奥山保全トラストのトラスト地を調査してきました。下の地図の赤線で囲まれたところがトラスト地で、120haの広さがあり、真ん中の谷には沢が流れています。ここは、ブナ・ミズナラの巨木の原生的自然林が残されています。
戸倉スキー場の隣なので、いったんリフトで標高840mまで登り、そこから6時間半かけて、トラスト地の外周の尾根筋(赤線上)を一周してきました。地図上の左の方に縦に走っている黒い線が、鳥取県との県境になります。この線の左側が鳥取県で、右側が兵庫県です。
定番のスノーシューをはいて、いざ出発です。
こちらは動物を撮影するための自動撮影カメラです。今回は昨年12月12日に設置した動物カメラを回収して、新たにこのカメラを設置してくる予定です。
約2か月半の間雪山に設置したカメラに、どんな動物たちが映っているのか楽しみです。
自動撮影カメラを使い始めてから、少しずつ動物たちの動きがわかってきました。自動撮影カメラによる調査研究は、動物を捕獲して全身麻酔を施し、発信機を装着するテレメトリー調査などと比べると、動物に与える負担はほとんどありません。支部のみなさんにもこれから大いに使っていただきたいと思います。
尾根筋は積雪が1m以上のところもあれば、地表が見えるほど雪が融けているところもあります。傾斜や道の幅、日当たりなどで積雪量も変わってくるのでしょう。
このブナの木には、冬でも緑色をした寄生木ヤドリギがたくさんついていました。ヤドリギの種を運んでくるのは鳥なので、ここが鳥の飛行ルートになっていることがわかります。春の訪れを感じさせる程鳥の鳴き声を何度も聞くことができました。
ミズナラの巨木に洞がありました。クマは頭さえ入ると体までスッポリ洞の中に入ることができるそうです。
洞の中はなんとも暖かそうでしたが、クマが冬籠りしたような痕跡はありませんでした。
尾根筋に動物の足跡を見つけることができましたが、前回氷ノ山を調査したときよりは少なかったです。
ずっと奥山を見続けてきた人の話では、20年前までは、雪山は動物たちの足跡でいっぱいだったそうです。そういう時と比べると、現在の奥山はどこも、動物たちが激減しているといえるでしょう。山の変化は、ずっと山を見続けてきた人にしかわからないので、高齢者の証言は、本当に貴重です。
笹の葉が、雪から頭を出していました。ここにはシカが来ていないようです。雪から出ている部分の笹は、春先にいったん冬眠解除した後、わずかな低温でも一気に凍害を起こして枯れてしまうそうです。このチシマザサが元気でいるためには、全身が雪のフトンに覆われていることが必要なのです。
これは何でしょう?ゼリー状の中に粒があります。何かの実が落ちたものでしょうか。
シカの角砥ぎの跡です。傷が浅いので幹が固くなった昨年の秋頃につけられたのではないでしょうか。
こちらは傷が深いので、幹が柔らかかった昨年の春につけられた跡だと思います。
頂上までもうすぐです。雪が深くなってきました。この辺りは背丈の高い笹がたくさん生えているのですが、すべて雪で覆われています。
テンのフンを見つけました。中になにか種のようなものがあります。この時期のテンが何を食べているのか気になったので持って帰って調べることにしました。
10:15に出発して13:30、ついに1216メートルの山頂に到着しました!
頂上からの景色は実にすばらしく、熊森のフィールド担当をさせてもらって本当に良かったなと思う瞬間です。
手前の山の雪で白くなっている部分が広葉樹の自然林で、トラスト地です。遠くに見える黒っぽい山の部分がスギやヒノキの人工林です。このあたりの山は本当に人工林が多くて、宍粟市の人工林率は、今も73%です。人工林率が下がる気配は一向になく、野生鳥獣たちにとっては相変わらず、すみづらい山です。
くたくたになって山から下りてきました。
さて、冬の2か月半の間に、自動撮影カメラにどんな動物がどれくらい映っていたでしょうか。
オスジカ1頭(12月に2回)、ウサギ1頭(1月に1回)、テンらしきもの1頭(1月に1回)。これだけでした。2月はゼロでした。