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2014-04
「温暖化影響か 白神山地にブナの実食べる虫大発生」の新聞報道について
- 2014-04-02 (水)
- くまもりNEWS
3月に横浜で、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の総会が開催されました。
この関連イベントで講演されたマタギの方が、世界自然遺産の白神山地で「象徴ともいえるブナの森に、地球温暖化の影響が表れている。気温が高くなったせいか、虫が大発生し、ブナの実が熟す前に食べられてしまう。」として、地球温暖化対策の強化を訴えられたそうで、新聞で大きく取り上げられました。
ブナの実を食べる虫というのは、ブナヒメシンクイ(蛾の一種)のことだと思われます。ブナの実を拾って食べようとしたら、よく、1ミリメートルぐらいの穴が1個あいています。(以下写真)
これは、ブナヒメシンクイの幼虫がブナの実を食べて、出て行ったあとです。
この報道内容が事実であるならば、大変タイムリーな発表です。しかし、私たちは、ブナヒメシンクイが大発生しているということを聞いたことがなかったので、さっそく、詳しい研究者に問いあわせてみました。以下、その回答です。
●ブナに付く虫は、300種類ほどあり、そのほとんどが、クワガタムシ、カミキリムシ、ブナハバチ、ブナハムシなど葉を食べます。
実を食べる虫は少なくて、代表的なものは、ブナヒメシンクイです。この虫の成虫は、春の開花時に、ブナの雌花に産卵し、やがて卵が孵ると、6月ぐらいから、幼虫はブナの実を食べ始め、やがて、ブナの実を落としてしまいます。
しかし、この虫は、終齢幼虫後、地面に潜ってサナギになります。その時、地面の中にいる菌の菌糸が体に付いてキノコに成長していくため、やがてこの虫は死んでしまいます。この虫は、地球温暖化によって大発生するタイプの虫ではありません。自然の力で、この虫の生息数はコントロールされているので、心配する必要はありません。
地球温暖化でブナが影響を受けるのは、中の実が実らず、シイナと称される殻だけの実が増えることです。この原因は、ブナが、光周性の植物であるため、日照時間は同じでも、気温だけが上がってしまうと、うまく実が作れなくなるためです。ブナは、年平均気温が、6℃~12.5℃の間で生育する植物で、白神では、標高80メートル~1200メートルがブナ帯です。
<熊森から>
地球温暖化に関しても、地球は今、温暖化しているという研究者がいる一方で、地球は今、寒冷化しているのだという研究者がいます。地球温暖化の原因は、空気中の二酸化炭素濃度が高まったことだという研究者がいれば、それは都市熱が原因であるにすぎないという研究者もいます。
過剰と思えるまでに情報が氾濫している時代ではありますが、自然界のことは複雑過ぎるので、全くもって、どれが真実なのか、判断に困ることが多々あります。どちらにしても、白神のブナの実が、クマたちを初めとする動物たちの口に入らなくなってきているのなら、困ったことです。実際はどうなのか、調べられた方は、教えてください。