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2014-09

⑱「大阪府ツキノワグマ出没対応方針」は動物愛護畜産課が勝手に作ったもので無効

「大阪府ツキノワグマ出没対応方針」は、よく見ると、大阪府が発表した形になっていません。動物愛護畜産課名で発表された文書にしか過ぎないのです。知事認定を受けていないということでしょうか。しかも、環境省野生生物課に問い合わせると、記者発表直前に、メールで突然入ってきた文書であり、国としては、何の相談も受けていないということです。明らかに、この文書は無効です。

 

いろいろとこの方針文書のおかしさについて指摘したい箇所がありますが、とりあえず、誤捕獲部分について、きっちり反論しておきたいと思います。

 

<動物愛護畜産課作成方針における誤捕獲の項目>

誤捕獲が発生した際には、①人身被害の危険性がないと判断し、②周辺住民の合意が得られた場合、速やかに放獣を実施する。この1文だけです。

 

電話で、担当者に聞いてみました。

くまもり:人身被害の危険性がないかどうかの判断基準は何ですか?

動物愛護:まだ決めておりません。

熊森:②周辺住民の合意が得られたかの判断基準は何ですか?

動物愛護:まだ決めておりません。

 

もし、明日、また誤捕獲が発生したら、一体どう対応するのでしょうか。また、次回も捕まえて、何十日間も保管するのでしょうか。そして、大阪府は一切支援・協力しませんが、どこかもらってくれませんかと虫のいい要請を出すのでしょうか。判断基準も決めずに対応方針文書を記者発表するなど、ふざけているとしか言えません。

 

おそらく次回は、人身事故の危険性がゼロとは言えない、周辺住民全員に聞いたわけではないが、放獣に反対する人もいると思われるので、殺処分しておきましたと言って、動物愛護畜産課は誤捕獲グマを殺すでしょう。

 

これでは、住民はいつまでたっても、カヤの外で、成長できません。今回も、誤捕獲グマについて1回の住民説明会も開いておりません。豊能町にも言えることですが、なんとか逃げようとして檻に体当たりし続けているこの誤捕獲グマを、住民に公開していただきたいと思います。子どもたちにも全員に見せてほしいと思います。実物以上の環境教育はありません。そして、このクマをどうするか、住民みんなで考えて頂きたいのです。行政が考えるよりもずっといい名案が出るかもしれません。このクマが誤捕獲された地区は、ネットで調べると、78世帯175人と出ております。全員が集れる数です。

 

ちなみに、兵庫県のツキノワグマ保護管理計画ではどうなっているでしょうか。

記述は簡単です。以下の記述により、100%放獣が実施されています。

錯誤捕獲された個体は放獣する。 

ただし、出没対応基準の3および4に相当する場合は、その基準により対応す る。

(注)3というのは、繰り返し出没し、精神被害を含めた被害を 発生させた場合。

   4というのは、集落内徘徊など人身被害の危険性が高い場合。

 

 

何かが絶対におかしい 生物が消えた沈黙の奥山原生林

今年も、熊森本部は9月20日に、神戸市の保育所の先生たちを、岡山県にある奥山原生林にご案内することになりました。原生林は、日々姿を変えていくので、直前の下見が必要です。当日原生林を案内させていただくスタッフたちが、9月1日に下見に行ってきました。

 

新しくスタッフになったAさんは、山が好きで、若い時にはよく山に登っていたそうです。この時期は虫がすごいからと、たっぷりと虫よけ薬を塗って参加されました。ところが、行ってみると、全く虫がいませんでした。それどころか、生き物の気配がゼロといっていいほど何もありません。完全に沈黙の森になっているのです。

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半日広大な原生林内を歩き回って見つけたのは、イモリ1匹、ヘビ1匹だけでした。なにかおかしい。なにかとんでもないことが起きている。Aさんは、くまもりがブログなどで繰り返し訴えてきた奥山原生林の危機を、共有してくださるようになりました。

 

よく見ると、植物も、昔と違っています。高木の上の方は確認できませんでしたが、秋なのに、目の前の風景に、実りがありません。やっと見つけたのが、ムシカリの赤い実だけでした。ヤマブドウ、サルナシ、マタタビ・・・何の実もありません。樹木の葉の茂りやササの茂りも、明らかに弱くなって、すかすかです。国は、森の異変を、全部シカのせいにしていますが、ほんとうに、シカだけのせいなのでしょうかか。

 

近年、山からクマを初めとする動物たちがどんどんと里へ下りて来るようになったと、地元の方々は悲鳴を上げておられます。有害獣として、人間は彼らを殺すことに躍起になっていますが、くまもりは、彼らは大切なことを人間に訴えに来ているメッセンジャーではないかと思います。

 

クマが生息域を拡大してきた。大阪府にまで、クマが顔出しするようになった。けしからん。このような世論作りばかりが行われていますが、このような発表を繰り返している、権力とつながり肩書もお金もいっぱいつけてもらっている研究者のみなさんは、奥山の大異変を察知しているのでしょうか。もし、あなたが、クマだったら、この奥山原生林の中で、何を食べて生きますか。食べるものがあれば教えてください。

何種類かのネオニコチノイド系農薬が、松枯れ防止で奥山にも撒かれていた

くまもり群馬県支部長が、最近行政は、松枯れ防止薬として、奥山にネオニコチノイドを空中散布していると、本部に教えてくださいました。まさか。ネオニコチノイド系の農薬は、これまでの殺虫剤と違って、植物に来た虫を殺すのではなく、植物の体内に農薬をいったん吸収させ、その植物を食べた虫が死ぬようになっています。この農薬を使うと、これまで大量に使用していた農薬の量が少しで済むようになり、減農薬として脚光を浴びているのです。

 

本当にそんなことをしているのかどうか、兵庫県の行政担当者に電話でたずねてみました。大変誠実に、いろいろと教えてくださいました。こんな公務員なら、税金を出してもいいなと思いました。ちょっと話しただけで、相手が誠実な人かどうかわかりますから、電話というのもふしぎです。

 

結論は、平成20年から、兵庫県も1ヘクタールに30リットルの割合で、松くい虫退治のために、ネオニコチノイドをヘリコプターで空中散布していました。ただし、ネオニコチノイドといっても、カメムシ用とかいろいろな種類があるということで、EUで使用禁止になっている種類のネオニコチノイドは使っていないということでした。また、山にばかり撒いているのではなく、海岸のクロマツを守るために、海岸にも結構撒いているということでした。松くい虫退治の空中散布は効果がないと聞いていますがとたずねると、効果はある程度は出ているということでした。散布地域を初め、農薬の種類など、HPには、詳しいことがすべて掲載されていました。

 

国民に隠す、嘘を言う、ごまかす、これほど国民を愚ろうするものはありません。良きに付け悪しきにつけ、全部国民に知らせると言うのが、民主主義国家の基本です。また、知らせて行かないと、国民は賢くなっていけないのです。しかし、HPの一覧表を見せてもらって、カタカナの薬品名を知ったところで、その薬品がどういう副作用を持っているかなど、わたしたちにはさっぱりわかりません。きっと、研究者にも、専門家にも、人間には誰にもわからないでしょう。

 

奥山原生林から、虫が消えたこと、実りが消えたこと、生き物たちが消えたこと、これらの原因説として、酸性雨、地球温暖化、シカなど、いろいろな原因諸説がささやかれていますが、松くい虫の防除薬として奥山に撒いている農薬も原因の一つではないかと、直観しました。山に農薬をまいて全ての生き物たちを殺してしまうのなら、松枯れを放置してマツだけが消えた方が被害が少ないのではないかと思います。マツが枯れることを止めるために、他の生き物たちを全部死なせる。こちらの方が、問題ははるかに大きいと思います。

 

兵庫県西宮市の夙川沿いに生えているマツは、青々と繁ってとても元気です。松くい虫に強いタイプのマツを植林したからだそうです。ならば、松くい虫対策の農薬という化学物質を撒くのではなく、松くい虫に強いタイプのマツに植え替えた方が早いと思います。ただ、この時代に、マツがどれほど有用で、山に植えておく必要があるのかどうか、疑問です。マツは、森林遷移の先駆者で、自然界の中では、土地が肥えて来ると、自然と消滅していく樹種です。マツが枯れるのも自然と考えて、山や海に、化学物質を撒くのを止めていただきたいと思います。自然は自然のまま手つかずで残しておいてほしいのです。

 

この担当者に、「沈黙の森」の実態を話すと、驚いておられました。疑わしきは使用せずで、すべての農薬の山林散布を中止して欲しいです。

⑯ 今後、大阪府に顔出ししたクマは捕殺 最悪の「大阪府ツキノワグマ出没対応基準」

出没

大阪府は、今回の初マニュアルで、府内全域を人間の場所と決め、クマが出没すれば、追い払い、捕殺、捕獲による取り除きが重要としています。大阪府に追い払い体制などありませんから、結局は、捕獲か捕殺です。捕獲した場合、現在捕獲されている豊能グマもそうですが、放獣しませんから、すべて捕殺するという意味になると考えられます。

 

誤捕獲

誤捕獲グマに関しては、人身被害の危険性がないと判断し、周辺住民の合意が得られた場合、速やかに放獣を実施すると書かれています。100%人身被害の危険性がないと判断できるクマなどいないし、周辺住民が全員放獣に同意することなどあり得ませんから、このような書き方は、放獣しないで捕殺するという意味になります。 熊森としては、言葉だけであっても、次回からは放獣すると書いてあるのだろうと予測していましたから、これには驚きました。

 

これまで読んだ全国のツキノワグマ対応マニュアルと比べて、どこよりも生態系の保全を理解しておらず、一番ひどい内容です。「大阪府ツキノワグマ出没対応基準」に対して、みんなで声をあげていきたいと思います。大阪府は、滋賀県にあるクマの棲む豊かな森をはじめとする自然に、大阪府民が生かされていることが全くわかっていないような気がします。

 

 

⑮ これまでの豊能グマ問題の総括 大阪府はどうしてクマ1頭の命も助けられないのか

野生動物たちとの共存本能を失っていない子供たちはもちろん、ほとんどの大阪府民や国民は、豊能の誤捕獲グマをさっさと山に返してやればすむことなのに、行政は何をもたついているのかとイライラしていると思います。行政が大多数の国民の願いと違うことをしているのは問題です。(ただし、豊能町の町民は、山に返さないでほしいと思っている人も少なくないでしょう。)

 

今回の大阪府行政を見ていて、初めてのクマ捕獲であり、どうしてよいかわからなかっただろうという同情はあるものの、(だから、熊森としてはできる限りの協力をしようと思ったのですが)大変大きな問題を感じました。

 

<大阪府動物愛護畜産課にくまもりが感じた主な問題点>

1、生命尊厳・動物愛護の欠如

・・・今思うと、地域住民のために放獣しなかったというのは言い逃れで、自身の無知と保身ばかり。本当に地域住民の為を思うなら、今回のことで何回も地域勉強会を持ったはずです。初めから、この誤捕獲グマの命を何としても助けてやろうという気などさらさらなかったように思えます。決定権を持っている人間が、囚われているクマを見に来ないから、その状況がわからず、人間的な判断が下せなくなっています。

 

2、クマという動物は危険であるという誤解

・・・勉強不足。(わたしたちみんなの問題でもある)

 

3、クマを放獣するということは人身事故につながるのではないかという誤解

・・・勉強不足(わたしたちみんなの問題でもある)

 

4、野生で大人になったクマでも普通に飼えると思う誤解

・・・勉強不足。(わたしたちみんなの問題でもある)

 

5、近隣行政との協力関係を築く力がなかった

・・・今後は、大阪府と近隣行政の双方に、生態系保全のために協力する姿勢が必要。

 

● 他に気になったのは、行政の秘密性です。

2か月以上も囚われの身となって劣悪な環境に苦しんでいるクマを、大阪府も豊能町も、マスコミに見せないように隠してきました。町民も府民も、一体何が起きてどうなっているのか全くわからないため、野生動物とどう付き合っていくのかという大変重要な問題について、大人も子供も学べる大変いい機会であったにもかかわらず、誰も何も学べませんでした。マスコミ発表は、行政発表のみで、「クマは保護飼育されており、元気です」と出るだけです。元気なわけがないでしょう。

 

人間なら小さな穴だけの豊能のクマが突っ込まれていたドラム缶檻に入れられたら、精神が持たないでしょう。一番残酷な拷問は、狭い所に突っ込んで出さないことです。もし、自分だったらと、ちょっと想像してみればわかるはずです。熊森が登場して大阪府と闘い、やっとのことで13日目にドラム缶から出してやることができました。熊森という組織がなかったなら、間違いなく死ぬまでドラム缶に入れられていました。他者がいつ死んでもおかしくないようなひどい目に遭って苦しんでいるのにいるのに、元気ですという行政発表を垂れ流すだけのマスコミの軽さを恐ろしく思いました。

 

今回のクマ問題だけでなく、他の問題でも、国民は、今この社会で何が起きているのかわからなくされているのではないでしょうか。こうなると、弱者がどんどん切り捨てられていく社会になっていきます。児童虐待がうなぎ上りに増えているそうですが、根は全て同じところにあるような気がします。

自分だけの幸せなどこの世にはあり得ないのです。見ない言わない聞かない、このような国民でいると、結局は自分もいつか不幸になります。

 

<くま森のこれまでの取り組みの反省点>

①命を大切にする社会をめざして、精いっぱい取り組みましたが、今回豊能のクマを山に返してやれませんでした。まだまだ経験不足、力不足を感じました。これからも、誤捕獲グマは山に返すように訴え続けます。一方、劣悪な環境下に置かれているため、このクマの命が心配です。早急に、熊森が引き取って保護飼育できるように動きます。この準備だけでも、簡単なことではありません。

 

②くま森には応援団がバックにたくさんいるのに、そっと山に返すことを狙ったため、その人々を活用できませんでした。HPにも、くわしい情報を流せませんでした。

 

③騒ぐと、このクマが今も生きているからだとして、厄介払いのために大阪府によって早期に殺処分されるのではないかという恐れが常にあり、マスコミへの連絡もできませんでした。現在、熊森は、大阪府に、このクマの引き取りを文書で正式に申し出ました。命の尊厳と共に、誤捕獲グマを殺せない流れを守るためです。引取るためには、何が必要なのか、すべてこれから交渉です。

⑰ 9月5日 豊能グマ、今からでも遅くない、誤捕獲現場で放すべし <現場訪問> 

9月5日、大阪府豊能町の誤捕獲現場を探しに行きました。

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誤捕獲現場を探しまわる熊森スタッフたち

 

田んぼ道を、山へ山へと上がっていくと、棚田地帯に入り、やがてその棚田もなくなり、放棄田が現れます。その奥は、人工林ですが、シカ除け柵が張り巡らされ、それより奥には人間は入れないようになっています。そこの扉を開けて山の中に入っていくと、ついに、豊能グマ誤捕獲現場が見つかりました。こんなところまで来て柵を開け、山中に入っていく町民は、猟友会員以外にはいないと思います。(重要:クマは、一般町民がいる所に来たわけではない)

 

ここで、檻のふたを開け、逃がしてやればよかったんだ!

 

今後、このクマを飼育し続ける大変な労力や出費を思うと、気が遠くなりそうです。

誤捕獲現場を見て、確信を持ちました。今からでもここへ連れてきて放してやるべきです。クマを放すと集落に入って来るかもしれないと大阪府がそんなに怖がるのなら、放す時にクマに発信器を付けて放し、そうならないことを確かめたらいいと思います。

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クマ放獣の専門家たちを呼んで来たら、みんな、ここで放せると言うだろうと、テレビ局に訴える森山会長

 

このあたりはヒノキの人工林地帯ですが、人工林の林縁は、コナラ、シバグリ、アベマキなどの実のなる大きな木がたくさんあり、今年のドングリがびっしりと実っていました。ドングリは豊作です。

あちこちに清水が流れており、たくさんのカエルや虫が跳びまわっていました。

わたしたちが普段調査しているブナ・ミズナラの奥山原生林は、なぜか、最近、一気に、虫もいない沈黙の森に変化しています。

それと比べたら、このあたりの山の林縁の方が、ずっと生き物たちの命あふれる場所です。このクマが豊能町に何日滞在したのか知りませんが、クマが滞在できる自然が残っている町として、豊能町は誇りを持つべきだと思います。

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 クマがやって来るだけの豊かな自然が残されていた、すばらしい町豊能町

豊能町役場に入っていく熊森スタッフたち 2014,7,1

 

 

イノシシ檻にしかけられていた誘引剤は米ぬかでした。わなにかかったクマは、檻から手を出して周りの小枝等を檻内に取り込み、無邪気に遊んでいる感じだったと、猟友会の方が語っておられました。

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この後すぐに麻酔をかけられ、熊森が救出するまでの13日間、真っ暗なドラム缶に突っ込まれた4歳オス豊能誤捕獲グマ 猟友会 提供 (人間ほど凶暴な動物はいませんね)

 

再びこんなクマが出たら、大阪府は次回から、その場で殺すことにしたのです。命の尊厳など全くわからない人たちが作った、とんでもない間違った方針です。

大阪府の担当者が、クマやクマを放獣することに対する知識がないあまり、必要以上に恐怖心を抱いてしまったことには同情しますが、日常茶飯事としてクマを放獣している隣接府県行政に、クマや放獣の勉強に行くなどして、もっと現場で勉強していただきたいです。残念ながら、大阪府担当者には、クマとの共存に向けて勉強しようという姿勢が見られません。

 

 

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