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2014-10
10月15日 豊能グマ、藁入れ後、1週間目のご報告
- 2014-10-15 (水)
- くまもりNEWS | 豊能町誤捕獲クマ「とよ」
大阪府豊能町で誤捕獲され、狭い檻に入れられたまま4か月になるオスグマ。推定4才。
クマは、まだ、生きていますか?元気でしょうか?
各地から、安否を問う電話やメールが、くまもり本部には入ってきます。みなさん、心配して下さってほんとうにありがとうございます。
本部も一生懸命お世話をしていますので、一応、見た目は元気です。
10月15日撮影
狭い運搬用檻ではありますが、少しでもクマがストレスを発散できるよう、本部ではいろいろな工夫をこらしてお世話をしています。
8月19日に、今年初めて獲れたドングリを、少量与えることができました。それ以降は、会員の皆さんがドングリをたくさん送ってくれるようになりましたので、今では、大量のドングリを与えています。
最近は気温が下がってきました。先週は、水洗いによる獣舎の掃除後、濡れた鉄板の上で寝るのは寒かろうと、床の水分をよくふき取ってから、藁を入れてやっています。
1週間後の10月15日に行ってみると、何と、クマは、藁を床の半分に押しやり、寝床にしていました。残りの半分の床には、ドングリの殻などが大量に散乱しており、こちらは、食事場所として利用しているもようです。また、檻手前の右隅っこには、1週間分と思える糞が藁に浸み込んでいました。クマは、この狭い檻の中で、少しでも快適に暮らせるようにと、いろいろと工夫しているようです。(かしこ~い)
主食はドングリ、そしてクルミやリンゴなどのデザートを与えました。一番、よく食べていたのは、クルミでした。太郎や花子と比べると、体の周りの脂肪のつき方がかなり弱く、冬籠りに備えた身体になっていません。
このクマは、放せるものなら、1日も早く山に放してやりたいです。もし、どうしてもそれがかなわないのなら、殺処分ではなく、くまもりがきちんとした獣舎の建設を開始してそこで保護飼育をしたいと考えています。ありがたいことに、獣舎の土地提供を申し出てくださった方が現れました。どちらにしても、早く行動に移したいのですが、どれも交渉相手のあるものなので思うようなスピードでは進みません。わたしたちはクマの健康状態を考えてやきもきしていますが、しかしもうタイムリミットです。はっきりした方向が決まり次第、ブログで発表したいと思っています。
リニアの終着駅は、奈落の底 雑誌「日本の科学者」10月号が、リニア着工の危険性を特集
- 2014-10-21 (火)
- くまもりNEWS
日本科学者会議編の「日本の科学者」10月号が熊森本部に送られてきました。本の泉社出版(571円+税)
ぜひ、ひとりでも多くのみなさんに、読んで頂きたいと思います。 (ネット注文可)この本に登場する全ての科学者が、リニア中央新幹線の危険性を訴えています。とても読みごたえがあり、やっぱりなー、リニア中央新幹線の着工は、日本国始まって以来の巨大な国土破壊事業であり、人類は、こんな速い乗り物を造ってはいけないのだと再確認できました。勇気がわいてきます。
改めて、リニア着工推進のニュースしか報道しないメディアの罪の深さを感じました。「リニア、夢の超特急」とだけ書かれると、ほとんどの一般国民は洗脳されてしまい思考停止に陥りますが、「リニア、悪夢の超特急」と書かれると、みんなが考え始めると思います。
川村晃生先生の巻頭言は、格調高いもので、「リニアの終着駅は、奈落の底」という言葉で締めくくられています。現代文明や必要以上のスピードが、人間の身体と心を侵食し、人間を根底から変えていく不幸せな未来が描かれています。読んでいて、日本人がこれからやろうとしている狂気の事業を思い、ぞっとするほど恐ろしくなってきました。
また、松島信幸氏の、「南アルプスを、リニア新幹線が貫くと」という文も、熊森会員必読です。リニアを推進しようとしている経済(金儲け)のことしか頭にない政財界の皆さんに、人間として母なる地球に、やっていいことと絶対にやってはいけないことがあることに気付いていただきたいものです。
神戸市の保育園の先生たちを、岡山県若杉天然林にご案内 2年目
9月20日、今年も、神戸市の保育園の先生方の研修としての原生林ツアーのガイドを、くまもりスタッフがさせていただきました。
集合場所は、神戸市の湊川神社前です。
この日の参加者は42名。去年参加して下さった方もおられますが、多くは初参加の若い先生方ということでした。
熊森本部スタッフ5名もバスに乗り込んで、ガイドをつとめさせていただきました。さっそく、バスレクが始まります。バスレクといっても、バス内レクリエーションではなく、バス内レクチャーです。
「今日は、ほんとうの森を、先生方に見ていただきます。」と、森山会長が、まず、あいさつをしました。
参加者にマイクを回すと、「ほんとうの森ってどんな森か一度見ておきたい。保育に生かしたい」などという声が多く聞かれました。先生方が期待して参加してくださっていることがわかり、ガイドにも思わず力が入りました。奥山、里山、原生林、天然林、人工林など、説明しているうちに、兵庫県たつの公園に到着です。
①ここでは、森造りの名人、ツキノワグマを目の前で見ていただきました。いつものことながら、クマの兄と妹は、音も声も立てずに、1頭ずつひっそりと暮らしていました。
たつの公園クマ舎の前で
平成元年生まれのこの2頭は、子供の時にこの檻に入れられましたから、もう26才になります。先生方は、クマたちの説明を聞いた後、立ち去り難い雰囲気で、不憫そうにクマたちを黙ってじっと眺めておられました。参加されたみなさんは、生き物たちを思いやれるやさしい方ばかりだと感じました。
クマたちがこんな平和的な動物だとは知らなかったと、ショックを受けておられる方もいました。いかに、ふだん、偏ったマスコミ報道によって、間違ったクマのイメージを国民が植え付けられているかということの表れだと思います。クマは、祖先たちが共存してきたことからもわかるように、人間側が決まりさえ守れば、人間と十分共存できる動物です。
獣舎拡張後は、なぜか、2頭の間の鉄格子が鉄板に変わり、お互いの顔が見られなくなっています。後日、たつの公園の管理部署に、元の鉄格子に戻していただくよう、お願いの電話をかけておきました。同じ感想を持たれた方は、たつの市にみんなで電話をして下さい。
バスは、やがて、奥地の人工林地帯に突入です。頂上までスギで埋められた山々が続きます。
②兵庫県宍粟市千種町で、下車していただきました。このあたりの山300ヘクタールは、自然の針広混交林に見えますが、実は、スギの人工林にしたまま除伐などの手入れができなかった人工林の失敗作です。その結果、人工林のスギの木々の間に、土地の本来の木である落葉広葉樹が育っているのです。この山を皆伐から守った人たちの話が披露されました。何度聞いても、胸がいっぱいになります。
対岸の山は、失敗した官行造林地 針広混交林の良い山に戻りつつある
この場所で、ミズナラの木に少しだけ付いたドングリを見ていただきました。今年は、ブナの実りはゼロで、ミズナラの実りも少ししかありません。ここのミズキは、去年と違って実っていませんでした。
少ししか実のついていないミズナラ
③岡山県に入ったところで、下車し、人工林に入っていただきました。
これまで延々と見てきた緑の美しい山並みの中が、このように砂漠化していたことを知って、一同大ショック。
④昼食後、いよいよ、若杉天然林に入ります。ここの入り口は、神戸市の六甲山の頂上と同じ標高です。これより上は、冷温帯の落葉広葉樹林帯となります。
今年は、第2分岐点まで行って帰ってくるゆっくりコースと、若杉峠まで登って帰ってくる健脚コースの2コースを用意させていただきました。
熊森スタッフの森林生態学初級ガイドで、天然林内を進みます。
何と言っても、ほんとうの森の第一の特徴は、湧き出す水の量の多さです。どこからこれだけの水が湧き出してくるのだろう。いつ見ても手品のようです。
生き物や生き物の痕跡を探していただいたところ、さすが保育園の先生方だけあって、熊森スタッフが気づかないものまで、いろいろと見つけてくださいました。
健脚コースの方は、若杉峠まで登って、対岸に広がる鳥取県の山々を見渡すことができました。
若杉峠より、鳥取県の山々を見渡す
近畿地方に残された貴重な原生林が、若杉原生林も含め、なぜか猛スピードで年々劣化していっていることを、この日、伝えさせていただきました。以前と比べると、生き物の姿が激減しています。地元の方々は、谷川の水量も激減したと言われていました。悲しくかつ恐ろしいことです。
森の生き物たちとこの国で共存することなど何一つ考えず、人間の目先の利益や便利さばかり追究して、ほんとうの森を破壊し続けてきた明治維新後の物質科学文明の終焉が近づいていると感じます。
ある保育士さんが、園児に、「赤ずきんちゃん」などの西洋の童話を読んで聞かせると、子供たちは、オオカミを怖がるようになると言われていました。幼児期に、どんなお話を読んでもらうかによって、無意識のうちに、他の生き物たちを排除しようとする文化に染まるか、、他の生き物たちとなかよく共存しようとする文化に染まるか、決まるような気がしてきました。前者は自然破壊に進み、人類を絶滅させます。後者は自然と共生する方向に進み、持続可能な文明を形成します。保育園の先生が子供たちに読んでやる童話は、是非、自然と共生する、日本昔話「金太郎」や「桃太郎」であってほしいものです。
参加者のみなさんが、一生懸命メモを取りながら熱心に勉強されているのを見て、全国の保育士さんたちに、熊森がガイドする原生林ツアーに是非参加してもらいたいと強く思いました。
今回の原生林ツアーを企画して下さった先生方と、参加してくださった先生方に、心よりお礼申し上げます。