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2014-11-15
今年度駆除されたツキノワグマの数がダントツの福島県の場合 9月末までに340頭駆除
- 2014-11-15 (土)
- くまもりNEWS
熊森本部や熊森支部では、無茶なクマ駆除が行われていないかと、駆除される全国のクマ数やその他のクマ状況を絶えず追っています。(シカやイノシシにも、少しずつ目を向けて行っています)駆除しなくてもいいと思われるクマまで駆除されそうになっているのを察知すると、現地に駆け付けます。
福島県では、今年9月末までに、すでに340頭ものツキノワグマが駆除されています。他県と比べてダントツ1位です。クマの棲む会津地方の地元会員たちからも、多くのクマが駆除されている。何とかしてやれないのかという訴えが入ってきています。
<福島のクマに詳しい行政の方に電話できいてみました。>
くまもり:福島県でクマが大量に駆除されているようですが、一体何が起きているのでしょうか。
行政:福島でクマが生息するのは、ほとんどが会津地方です。9月までは駆除が多かったのですが、10月になって少しおさまってきました。
くまもり:福島では、どうしてこんなに今年、大量に駆除されるのですか。
行政:今年、ブナがゼロ。ミズナラ、コナラも実りが良くありません。ナラ枯れがひどくて、クマ生息地の森の10%は、ナラ枯れ被害を受けています。クリタマバチによるクリの被害も多いです。マイマイガが大量発生したところもあります。去年山の実りが良かったので、今年は子連れのクマが多く、民家近くに春から出てきています。人身事故も7件発生しています。
くまもり:山が荒れていたり山の実りが悪いのは、福島だけに限った問題ではありません。どうして福島の駆除数がこんなに多いのかと疑問に思うのですが。
行政:会津には、昔からクマと共存してきた人たちが多くいます。その人たちは、クマを見ても騒ぎません。しかし、震災後、クマのいなかった浜通りから多くの人達が会津に避難してきており、その人たちのなかには、必要以上にクマを怖がって、見かけたらすぐ駆除して欲しがる人たちがいます。
くまもり:もう400頭ぐらいは、今年、駆除されたんでしょう。今年のクマ狩猟は、禁止または自粛とかされますか?
行政:しません。銃の返還も多く、銃の狩猟者が減っていますから。罠の狩猟者は横ばいです。その上、クマ、イノシシ…みんなセシウムが基準を超えており、狩猟しても流通させられません。イノシシだけは、捕獲すると1頭に付き行政から8000円もらえますから、積極的に獲ろうという人がいますが、クマにはそのようなお金が出ません。よって、獲り過ぎるようなことにはならないと思います。
くまもり:セシウムに汚染されており、食べられない。流通もさせられない。ならば、何のために狩猟するのですか。レジャーやスポーツとして狩猟するのですか。
行政:そうですね。あと、伝統を守るということもあります。よって、今年も、自由に狩猟してもらいます。
くまもり:もう400頭ぐらい大量駆除したのですから、今年はせめて狩猟自粛をお願いしたいです。
注:大変丁寧に行政の方が対応して下さいました。感謝です。
<以下、福島県ツキノワグマ保護管理計画原稿版より抜粋>
クマは、我が国の陸上野生生物の中で最大のものであり、安定した生息のためには広大で豊かな自然環境が必要です。しかし、クマ類(ツキノワグマ、ヒグマ)の生息密度は比較的低く、高いところでも1平方キロメートル当たり0.15頭から最大0.50頭程度と、カモシカやシカに比べ一桁から二桁少なく、出産は2年から3年おきに1回で、平均産仔数は1.7頭程度と繁殖率の低い野生動物です(特定鳥獣保護管理計画作成のためのガイドライン、環境省2009年)。このため、ある地域においてクマの捕獲が集中してしまうと、そこに生息する個体群への影響が大きく、その維持が危ぶまれています。
クマは全国的に生息数の減少が懸念されており、環境省が公表した「レッドリスト」(2012年)においては、九州では絶滅、紀伊半島や中国・四国地方の個体群が絶滅のおそれがある地域個体群に指定されています。県内では普通に見られるものの、全国的な生息数の状況を踏まえ、「レッドデータブックふくしまⅡ」(福島県 2003年)のカテゴリーにおいて、クマは「注意種※2」に指定しています。
また、国際的に見ても、クマはIUCN(国際自然保護連合)によって危急種※3に指定され、ワシントン条約で「アジアクロクマ」として国際取引が規制されるなど、国際的にも注視されている種です。
このように国内だけでなく世界的にも希少となっているクマですが、一方では、農林水産業被害や、人身に被害を及ぼす場合があり、時には人命に関わる深刻な被害を発生させることもあり、このことによって有害捕獲の対象とされています。