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2015-05

5月10日 「とよ」のクマ舎にヨシズはり

最近は、真夏のように暑い日があります。季節的には少し早いような気もしますが、この日、「とよ」のクマ舎にヨシズを張ってやりました。

クマさんを見ようと次々と家族連れなどが山の上まで登ってこられます。みなさんクマに大変好意的で、よくぞこのクマを殺処分から救ってやってくださったとお礼を言われ、喜んでくださいます。

大阪府民にとって、クマの生存が身近に感じられる場所になってきたことがわかりました。

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 訪問された方々に、クマの生態などについて説明する森山会長(白トレーナー)

 

食料庫をのぞくと、私たちがふだん買えないような高価な果物がずらりと並んでいます。「とよ」に食べさせてやってほしいと、匿名で府民がお寺に送ってこられるのだそうです。ありがたいことです。

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食料庫の一部

クマに何を食べさせてやっているのですかと、よく聞かれます。

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今のところ、動物園などで使っている乾燥クマフードに果物や野菜をそえて与えています。クヌギのドングリは食べますが、マテバシイのドングリは食べません。

何を与えるのがいいか、現在試行錯誤中です。

餌を入れる引き出しは、大阪市にあるステンレス鋼材を取り扱っている豫洲短 板産業株式会社が4つも作って寄付してくださいました。ステンレス製のどっしりとした素敵な容器です。大切に使わせていただきます。

 

さて、肝心のとよは、どうしているでしょうか。

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 なにかにとりつかれたように常動行動を繰り返しているとよ

 

相変わらず、東の端を、行ったり来たり、常動行動を繰り返しています。次々と人が訪れて、神経が休まらないのでしょうか。3日前にプールまでの道のりに敷いてやった芝生が 土だけになっており、芝生はもう見る影もありません。

プールは大好きです。飛び込んで気持ちよさそうにしていたり、プールの水を飲んだりしています。

しばらく一般公開を取りやめた方がいいのではないかという考えが、また浮かんできました。

クマ舎には自動撮影カメラをかけていますが、人が来ていないときは、ゆっくりと獣舎の地面に座って、寝室の餌箱から持ち出した果物などを食べています。

 

この日持たれた、お寺と熊森の「とよ飼育会議」で、いつもとよを見て下さっているお寺の方のお話から、この1か月間、とよなりにいろいろと学習していることがわかりました。最初の頃は、早朝であっても、登山客が訪れると、寝室から飛び出して行って威嚇していたようですが、最近は、人が来ても朝のうちは知らん顔で、遅い時は昼前まで寝室で寝ているそうです。人が来てもいちいち飛び出していかなくても大丈夫ということがわかってきたのだろうと思います。

獣舎に近づいてきた人に走って行って、フッという音を出して威嚇することも、ずいぶん減ってきたそうです。もう少し様子をみてみることにしました。

とよは、お寺のみなさんに大変大事にしてもらい、愛情をこめてかわいがってもらっていることが、この日の会議でも再確認できました。とよ、よかったね。

 

寝室に入っている時のとよは、とても落ち着いてリラックスしています。ここは自分の家で安全な所だと思うようです。寝室のわずかな隙間から覗いてみると、左足で右足裏をかゆそうにかいていました。足裏の傷が、治りかけてきたのかもしれません。目と目があいましたが、とよはゆったりとしたままでした。

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この日は、プールの水を全部抜いてプールをきれいに洗い、新しい水を入れてやりました。

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とよ、元気でね。また来るね。

 

 

 

 

 

植物の命はどこにあるのだろう・・・クヌギ傍芽のふしぎ

19年前に、我が家の庭に一粒の大きなクヌギのドングリを埋めました。

それが今では大木になってたくさんの実をつけてくれます。

しかし、都会の狭い庭にこんな大きな木は無理だと思うようになりました。

残念ですが、今年の3月末に伐採してもらいました。枝は1本も残っていません。

ところが、4月末に樹皮に何か丸い粒が出てきたのを発見しました。

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下は、伐採から50日目、5月9日の伐採クヌギの写真です。

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完全に伐られた木から、新芽がたくさん出てきています。傍芽(ぼうが)です。

クヌギは死んでいなかったのです。

植物の命はどこにあるのだろう。本当に不思議です。

今年、実はなるのでしょうか。みなさんはどう思われますか。

観察を続けていきます。

5月8日 本部・山梨県支部・神奈川県支部 リニア山梨実験線による水涸れ視察

5月8日、南アルプスの森と動物を守るための本部視察班は、朝6時に長野県の宿を出発して、山梨県に向かいました。この日の視察には、山梨県支部長と会員、神奈川県支部長も、現地で参加してくださいます。

山梨リニア実験線トンネル工事で起きた山梨の山の水涸れ状況をみて、JR東海と国に、南アルプスのトンネル工事を避けてもらうように申し出るのが狙いです。

 

午前9時前に、富士山の見えるところまで来ました。車中で歓声が上がります。本当にきれいです。毎日この山を眺めて暮らしておられる山梨県民のみなさんは幸せだなと思いました。

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この日は、地元の方々に案内していただいて、リニアトンネル工事によって水脈が切られ水が涸れた川を、何か所も見せていただきました。一部、ご紹介します。

どこを掘ればどこの川が干上がるか、地下水脈は大変複雑で、専門家でも予測不可能なのだそうです。掘ってみなければどうなるかわからないということでした。涸れた川は、どこも悲惨でした。

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 山の中

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 果樹畑

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山梨 リニア実験線

川が涸れた川がある反面、とんでもないところから水が噴き出しています。

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その水は、3面張りの深い側溝を通して、下流に流されていました。下流に流したからいいというものではありません。

 

大地は私たちの体と同じように生きています。母なる大地の体をずたずたに切り裂いて、コンクリートで固めていく。

昔の人達は、きっとそんなことをしたら、罰が当たるぞと言ったと思います。罰は当たらないのでしょうか。

 

今回、山梨日日新聞に今年折り込まれたリニア推進広告のひとつを見せていただき、びっくりしました。全紙4枚がくっついたリニア広告は、新聞ページ8枚分もあり巨大です。リニア工事を推進する側の物量作戦は破格の大きさです。どこからこんな金が出るのでしょうか。

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今回、県を上げてリニア工事推進をうたっている山梨県において、票が減るだけになるかもしれないのに、リニアが引き起こすであろうさまざまな問題について取り組んでおられる市議会議員さんたちが一部おられることがわかり、感動しました。

 

「夢の超特急、死ぬまでに1回は乗ってみたいな」だけでなく、冷静になって、リニアがもたらす取り返しのつかない負の部分も、しっかり検討していく国民でありたいと思います。水涸れ現場を案内下さった地元の皆さん、お忙しい中ご親切にしていただき、本当にありがとうございました。

 

5月7日本部 ついに あこがれの南アルプス視察 

南アルプスの森と動物を守るための熊森本部視察班6名は、5月7日早朝、兵庫県を車で出発し、リニア新幹線のトンネル貫通工事が予定されている南アルプス山脈(赤石山脈)に向かいました。

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11時過ぎ、ついに、南アルプス山脈が見えるところまで来ました。これが椋鳩十の「ツキノワグマ」の舞台となった赤石山脈か。

 

トンネル掘削工事が予定されている村へ向かいます。

小さくて美しい村でした。

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このあたりは中央構造線上にあるため、あちこちで山崩れが見られます。もし工事が実施されれば、村内道路を1日1700台のダンプカーがトンネル残土を10年間運び続けることになるそうです。町の環境は台無しになる上、水脈が切られれば、村民の生活を支えてきた川が干上がってしまうかもしれません。村人にとっては大変な脅威です。リニアが走っても、村には何のメリットもないということですから、トンネル工事を望む村民など、だれもいないのではないでしょうか。

 

中央アルプスや北アルプスには多くの人々が訪れますが、南アルプスを訪れる人は、その10分の1程度だそうです。その分、自然が残されています。

地元の女性にインタビューしてみました。山菜採りに山に入るとクマにも出会うが、クマがいつも先にさっと逃げていくそうです。クマがいて当たり前なので会うとうれしいと言われていました。

 

標高1000メートル以上まで車で上がってみました。ミズナラの新緑がとてもきれいです。ミズナラがたくさん残っていることにホッとしました。

本当に美しいところです。

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しかし、森の中をのぞいてみて、 ショックを受けました。

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下草植生が 消えています。シカがこんな高いところまで来ていることがわかりました。外から見ると、昔と同じように美しく自然豊かな南アルプスですが、内部では大異変が起こっているのかもしれません。クマをはじめとする森の動物たちの悲鳴が聞こえてきそうでした。

 

この日出会った地元の皆さんは、感謝の心でまっすぐ真面目に生きておられる本当にすばらしい方たちばかりでした。初めて会う自然保護団体である私たちに、親切にいろいろな所を見せて下さり、いろいろなことを教えてくださいました。今後の熊森活動に生かしていきます。本当にありがとうございました。

宿で夜、今日お会いした方々の事を思い出して大変幸せな気分になりました。

 

都市と郡部、国民みんなで力を合わせて、

全生物のために、次世代のために

自然に恵まれたすばらしいこの国の国土を守っていきたいと改めて思いました。

 

 

富山県奥地の森や動物の状況を町役場にたずねる

4月29日と30日にくまもりが調査した奥山が存在する町の役場に電話をして、担当者に森や動物の状況を聞きました。

 

熊森:先日、奥の山を調査しましたが、ミズナラが総枯れという感じでした。クマの痕跡が全くなかったのですが、今もあの山はクマの巣でしょうか。それとも、もうクマはいないのでしょうか。

町役場:クマは、平成22年がピークでした。

熊森:2010年は、奥山の実りがゼロという異常年でしたからね。

町役場:平成22年は、9月から11月まで、毎日のようにクマの目撃情報があり、2~3頭有害駆除しました。あれ以来、クマの目撃はぷっつりと途絶えています。昨年は、年間目撃数が1~2頭で、捕獲もゼロでした。里に出てこなくても、クマは山奥で元気に暮らしているのかと思っていました。

熊森:年間目撃数が1~2頭ということは、もう、クマがいないことも考えられますか。

町役場:昔からクマと共存してきた人たちは、いて当たり前で、クマを見ても届け出ませんから、目撃情報がないからと言って、クマがいないとは限りません。確かにナラ枯れはひどいのですが、みなさんが登られた山の隣の山に去年登りましたが、ミズナラも残っていて、クマ棚も見ましたよ。子グマにも会いました。

うちの町ではクマは問題になっておらず、今、イノシシとカモシカの被害に困っています。

イノシシは以前いなかったのですが、最近は結構います。本来イノシシは、深い雪となる富山の冬を越せないのですが、スギの人工林の中は雪が少ないので、そこに入り込んで冬を越しているのを見ました。

うちの町では、イノシシ捕獲檻の上部には、クマがかかった場合、自力で逃げられるように穴をつけています。その穴にクマの毛がついていたのを見ましたから、クマがゼロではないと思いますが…、移動したかもしれません。最近は、石川県との県境で、クマの目撃が増えているそうです。

ニホンジカの目撃情報もちらほらありますが、まだそんなに気にするほどの事はありません。

カモシカには困っています。下まで降りてきて、被害を出すのです。

熊森:私たちが調査した山にも、機会があれば登ってみてください。もし、クマの生息痕跡があれば、教えて下さいね。お忙しいところ、ありがとうございました。

 

<山形県佐藤さんからのアドバイス>

春のクマの餌は、山菜なんだけれど、クマっていうのは、同じところでごそっと食べたりはしない。チョッ、チョッとほんの少しだけつまみ食いして歩くので、山菜を調べて、クマがいるかどうか判断することは至難の業だ。ミズバショウを食べた時は、周辺に、クマの足跡が残っていたので、クマが食べたんだなとわかったけれどね。

滋賀県北西部の奥山調査 ふもとから頂上まで下層植生が完全に消滅 クマの最近の痕跡なし

滋賀県のクマ生息地というと、一番に思い出すのは北西部のこの大きな町です。十数年前に訪れた時は、ササでびっしりとおおわれた山中のいたるところに鉄格子でできたクマ捕獲罠がかけられており、次々とクマが捕獲されて殺されていました。役場の方に歯止めをかけてほしいとお願いしましたが、聞き入れられませんでした。

しかし、地元の研究者は、今やもうこの町にクマはいないと言われます。なぜいなくなったのかたずねると、みんなで獲り尽くしたからということです。悲しいです。

 

5月6日、熊森本部は、滋賀県支部のメンバーと、この町の広大な山を調査しました。

 

ふもとの山に到着。新緑の美しい山です。つい、この中にはいろんな生き物たちが暮らしているように思ってしまうのですが・・・

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登山開始。

 

滋賀県の人工林のスギは、雪国対応の裏スギでした。ふもとから頂上まで、全てのスギにクマ剥ぎ防止テープが巻かれていました。

本部のある兵庫県のクマは、スギの皮ハギをしない文化を持つので、この様な光景は見たことがありません。クマ剥ぎ防止テープが異様で、ギョッとしました。

それにしても、もうこの町のクマは殺し尽くされたのですから、クマ剥ぎ防止テープを巻く必要などないのです。巻いた訳は、補助金がもらえるからです。

私たちの税金が無駄に使われています。

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左半分が自然林、下草はシカの食べないアセビ。右半分はビニールテープを巻いた人工林のスギ

 

急な山道を登っていきます。この山のミズナラは枯れているのもありましたが、まだ残っているのもありました。良かった。しかし、下層植生はゼロです。

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 かなり急峻な山

 

それにしても、滋賀県の奥山の広大なこと。360度、見渡す限りの深い山々です。

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 どこまでも、山また山

 

今立っている山も対岸の山も、戦後の国策であったスギの分収造林地です。

しかし、手入れが行き届かなかったところは、本来の潜在植生である広葉樹に自然に戻って行って、まるで、針広混交林のようになってきています。

根の浅いスギだけが崩れ落ちたところが何か所かありました。

自然界が、スギに対して、ノーと言っているのが見えるようでした。スギに向かない所に植えられたスギもかわいそうです。

 

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針広混交林化したスギの分収造林地

 

800メートルを超える福井県境の尾根まで上がってきました。ブナの木がたくさん残っていましたが、まるでこの山は、公園状態です。姿を隠すものがなければこわくておれない臆病なクマは、とても棲めません。動物に出会うことはありませんでしたが、頂上まで、いたるところにシカの糞が落ちていました。シカ以外の糞は見つけられませんでした。シカが下層植生を食べ尽くしたことによって、クマは餌場も生息地を失ってしまいました。

京都府や兵庫県と同じ事態が起きていることがよくわかりました。

 

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頂上近くの尾根。尾根の向こうは福井県。

 

クマの棲む最高に豊かな森を残したい熊森としては、複雑な気持ちでした。下層植生を消したのはシカだとされていますが、わたしたちはシカのバランスを崩したのは人間活動だと思います。

 

対岸コースを歩いたグループは、クマの古い痕跡を少し見つけたそうですが、新しい痕跡はゼロでした。

滋賀県支部のメンバーによると、滋賀の別の地域には、まだクマが残っているところがあるということです。

今日1日見てきた滋賀の広大な山々は、野生生物の保全だけではなく、水源の森保全の観点からも危機的な事態です。

 

富山県の奥山調査 ナラ枯れのひどさに絶句、クマの痕跡を見つけられず

4月29日、くまもり本部調査研究部は、地元の方に案内を頼んで、念願であった「富山のクマの巣」と言われてきた奥山の調査に富山県会員らと入りました。

 

写真の奥にそびえる残雪が少し残った山々が、今回の調査対象の山です。

手前に見えるのは、奥の森から流れ出てくる水をせき止めた水力発電用ダムです。

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山の近くまでやってきました。雪解け水も入っているのでしょうが、川の水量の多さに驚きます。透明で、本当にきれいな水です。

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案内人によると、ここから奥は、タテヤマスギ、ミズナラ、ブナなどの巨木からなる原生林だそうです。もしタテヤマスギを伐り出せたら、大変なお金になるが、道がないため、伐っても運び出す方法がないので無理と言われていました。

 

このあたりの山に入るチャンスは、4月下旬から5月上旬だけだそうです。それ以降になると、下草がびっしりと生い茂って山に分け入れなくなるということです。さらに、夏になると、オロロという大きなアブの一種が猛威を振るい人を襲うため、地元の者も怖くて山に入れないということでした。

 

すばらしい原生林に感動しつつ、カメラをズームアップしてみてびっくりしました。 ミズナラが総枯れです。クマを支えているのは数年に1回しか豊作にならないブナではなく、豊凶はあるもののそれなりに実るミズナラなのです。そのミズナラが失われた山に、クマが生存しているのだろうか。心配になってきました。この日、クマの生存痕跡は全く見つけられませんでした。

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白く箒のように見えるのは、枯死したミズナラ

 

翌30日、丸1日かけて森の奥まで入っていきました。

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広大な富山の奥山

 

1頭のカモシカを見かけましたが、それ以外の哺乳類を見つけることはできませんでした。クマの生息痕跡であるクマ棚、爪痕、糞を探して歩きましたが、残念ながらどこまで行っても見つけられませんでした。この辺りは雪が深いため、シカはいません。シカがいない山なら、今もクマがいるだろうと思ってやってきたのですが、古い爪痕すら見つけられませんでした。一体これはどう考えればいいのでしょうか。

 

地元の方は、去年は、山からクマが出てこなかったと言われていました。クマは山にいるのか、もういないのか、連休が明けたら、役場に電話して役場の方の見解も聞いてみようと思います。

 

帰宅してから、グーグルアースでこのあたりの山々を最大限にクローズアップしてみると、白骨化したミズナラがまるで幽霊のように、緑の木々の間から次々と浮かび上がってきました。ミズナラが総枯れしていることがわかります。

 

2007年に来た時は、山が枯れたミズナラの葉で赤くなっていたので、クマが大量出没して大量駆除された2006年にミズナラの総枯れという異常事態が起きたのだろうと推察されます。奥山水源域の山で、とんでもないことが起きているのに、気づいている人は研究者でもまだほとんどいないと思います。行政も、クマについて述べる時、生息地の異変については一切言及しません。

突然歩けなくなった「とよ」の看護と回復まで

4月27日とよが歩けなくなった

お寺から、「今日は、とよが寝室から全く出てこなかった。どうしたのか寝室の隙間から覗いてみると、足の裏から血を出しており、歩けなくなっている。どうしてやればいいのか。死んじゃうんじゃないか。よほど痛いらしくとよがしょげかえっている」という、悲痛な電話が入りました。クマ専門の獣医などいませんから、さっそく熊森は、近くの犬猫病院の獣医さんに尋ねてみました。野生は舐めて治すから、様子を見るしかないという答えでした。

 

4月28日足の裏にヨードチンキをぬってやる

とよは、足の裏を地面につけないように肘をついて寝室から出てきてオシッコをし、また寝室に戻ったそうです。お寺のみなさんはその痛々しい姿に胸を痛め、かわいそうでたまらないと、あちこちに相談の電話をされたそうです。うれしいことに町や府の方も心配してくださって、とよの獣舎に飛んで来たり、動物園の獣医さんを紹介したりしてくださったそうです。結果、お寺の方が、水鉄砲に薄めたヨードチンキを入れ、とよの足裏めがけてかけたところ、うまく患部にあたったということです。お寺のみなさんの必死の看護話を聞いて、胸が熱くなりました。

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前両足の裏を付けないように、肘を付けて寝室から出てきたとよ

 

4月29日食事はとれている

とよは動けないが、水や食べ物だけはとれているときいて、熊森もホッとしました。とよの獣舎の地面は、オシッコがたまらないようにと砕石を敷いてあるのですが、その上をとよがあまりにも(人々を威嚇するため?)走り回ったため、どうも、足裏の皮がめくれてしまったようだということがわかってきました。対応を考えねばなりません。

 

4月30日(木)獣舎地面にわら敷き

この日はくまもりのお世話日です。とよが痛そうにして足の裏を地面につけないように持ち上げているので、足裏の写真を撮ってみました。これはひどい。これは痛いと思います。しばらく、ヨードチンキを塗ってもらわねばならないでしょう。

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皮膚が破れて血が出ている 痛々しいとよの前足の裏

 

対策として、寝室からプールまで、とよの歩く道に、藁を敷き詰めてやりました。そうしたら、足裏を付けてゆっくりととよが四足で歩いたのです。また歩けるようになった。みんな大喜びです。

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 藁の上を四足であるいたとよ

 

偶然ですが、クマを見に来られた方の中に、獣医さんがおられました。とよが歩けなくなった話をすると、原因を教えてくださいました。9か月以上も、狭い檻に閉じ込められている間に、とよの足の裏の皮はすっかり薄くなってしまった。その足で、とよを見に来てくださった人たちに対応しようと、激しく砕石の上を走り回ったため、足裏の皮がむけてしまったということでした。

こんな状態なのに、とよはこの日、何回もプールに飛び込んでいました。よほど水が好きなんでしょうか。

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5月2日すだれ囲い

見に来てくれた人間たちに、とよが神経をすり減らさないように、獣舎の周りをすだれで囲ってやりました。これで、とよはほっとして落ち着いたように見えました。

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5月7日(木)芝生敷き

とよの足裏により優しいものとして、寝室からプールまで芝生を敷いてやりました。

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とよは気持ちよさそうに、芝生の上を四足で歩いていました。

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とよが四足で歩いている。こんな当たり前のことが、今回、本当にうれしいわたしたちです。

 

まだまだ課題はこれからでしょうが、お寺とくまもり、とよを見に来てくださった方々、みんなで協力し合って、とよを大事に育てていきたいと思います。

みなさん、これからも、元野生グマとよと、とよの飼育を応援してください。

 

4月25日 くまもりも参加しているリニア市民ネット・大阪 第3回勉強会報告 

リニアの多々ある重大な負の側面を、

国民は何も知らされていない。

いったん事業を凍結し、国民的議論を深めるべき

 

ジャーナリストの樫田秀樹氏が、「リニアって、本当に大丈夫?」という演題で、豊富な取材を通して知り得たリニアの数々の負の側面を、次々とご披露くださいました。

 

80人会場は満席。まだ、二リア乗り入れ工事が具体化されていない大阪で、これだけの人がリニアの問題点を知ろうと集まられたのですかと、講演冒頭、神奈川県から来られた樫田氏がびっくりされていました。

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 講演中の樫田氏 於:大阪市弁天町生涯学習センター4月25日

 

現在リニアは、政策を推進している国や一応事業主体とされているJR東海の顔色をうかがってか、「夢の超特急」という観点以外の報道は国内タブーとなっています。この日も、大阪の全マスコミに取材を呼びかけましたが、取材はゼロでした。

 

リニアの余りにも多くのかつ重大な負の側面を初めて知らされた参加者の方々は、それでもリニアを走らせようとする考えがあることを知って、戸惑っておられました。

 

リニア問題は、直接被害を受ける沿線住民だけの問題ではなく、速さのためには、全生物の命も地球環境も犠牲にしてよいという現代文明の病理を問う全国民・全人類の問題です。今後は、沿線外の町でも、リニア学習会を開催していきたいです。

 

この日、維新の議員さんの参加もあったそうで、うれしいです。超党派で勉強してほしいです。

 

次回のリニア勉強会は6月7日(日)、奈良県生駒市たけまるホールで14時から開催されます。資料代500円。

奈良県や三重県の議員、市民のみなさん、ぜひ、誘い合ってご参加ください。現在、熊森本部では、参加申し込みを受け付けております。

「とよ」と命名 大阪府豊能町誤捕獲グマ

4月26日、獣舎の前に、名前の札をかけました。

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獣舎の東側に、クマ飼育開始を記念して、お寺の方と甘柿を記念植樹しました。柿は本当は1日中日が当たる場所がいいのですが、とりあえずこの場所に植えました。

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日曜日だったせいか、次々と家族連れやカメラを持った若い人たちが、クマを見に来られていました。ありがたいことに、皆さんとてもクマに好意的で、やさしい目で見て下さっていました。

 

しかし、とよは、獣舎の東端を、行ったり来たり走り続けるという常動行動を繰り返していました。人間が近づくと、飛んで行って、フッと威嚇しているときもありました。

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獣舎の東端を走り続ける「とよ」

 

私たちがお世話を終えて帰る時、とよは寝室に入りました。疲れてぶっ倒れているような感じでした。あれだけ何時間も走り続けていたら疲れただろうと思います。

 

このクマは、野生で大人になったクマですから、まだ人間が怖いようです。ひとりで必死に人間に対応してフラフラになっている感じでした。

 

まだ、一般公開は無理だったかなとわたしたちも考えてしまいました。わたしたちは、野生グマを飼ったことがないので、わからないことが多々あります。対応策を考えてみます。(4月26日)

 

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