ホーム > アーカイブ > 2015-05-12
2015-05-12
富山県奥地の森や動物の状況を町役場にたずねる
- 2015-05-12 (火)
- くまもりNEWS
4月29日と30日にくまもりが調査した奥山が存在する町の役場に電話をして、担当者に森や動物の状況を聞きました。
熊森:先日、奥の山を調査しましたが、ミズナラが総枯れという感じでした。クマの痕跡が全くなかったのですが、今もあの山はクマの巣でしょうか。それとも、もうクマはいないのでしょうか。
町役場:クマは、平成22年がピークでした。
熊森:2010年は、奥山の実りがゼロという異常年でしたからね。
町役場:平成22年は、9月から11月まで、毎日のようにクマの目撃情報があり、2~3頭有害駆除しました。あれ以来、クマの目撃はぷっつりと途絶えています。昨年は、年間目撃数が1~2頭で、捕獲もゼロでした。里に出てこなくても、クマは山奥で元気に暮らしているのかと思っていました。
熊森:年間目撃数が1~2頭ということは、もう、クマがいないことも考えられますか。
町役場:昔からクマと共存してきた人たちは、いて当たり前で、クマを見ても届け出ませんから、目撃情報がないからと言って、クマがいないとは限りません。確かにナラ枯れはひどいのですが、みなさんが登られた山の隣の山に去年登りましたが、ミズナラも残っていて、クマ棚も見ましたよ。子グマにも会いました。
うちの町ではクマは問題になっておらず、今、イノシシとカモシカの被害に困っています。
イノシシは以前いなかったのですが、最近は結構います。本来イノシシは、深い雪となる富山の冬を越せないのですが、スギの人工林の中は雪が少ないので、そこに入り込んで冬を越しているのを見ました。
うちの町では、イノシシ捕獲檻の上部には、クマがかかった場合、自力で逃げられるように穴をつけています。その穴にクマの毛がついていたのを見ましたから、クマがゼロではないと思いますが…、移動したかもしれません。最近は、石川県との県境で、クマの目撃が増えているそうです。
ニホンジカの目撃情報もちらほらありますが、まだそんなに気にするほどの事はありません。
カモシカには困っています。下まで降りてきて、被害を出すのです。
熊森:私たちが調査した山にも、機会があれば登ってみてください。もし、クマの生息痕跡があれば、教えて下さいね。お忙しいところ、ありがとうございました。
<山形県佐藤さんからのアドバイス>
春のクマの餌は、山菜なんだけれど、クマっていうのは、同じところでごそっと食べたりはしない。チョッ、チョッとほんの少しだけつまみ食いして歩くので、山菜を調べて、クマがいるかどうか判断することは至難の業だ。ミズバショウを食べた時は、周辺に、クマの足跡が残っていたので、クマが食べたんだなとわかったけれどね。
滋賀県北西部の奥山調査 ふもとから頂上まで下層植生が完全に消滅 クマの最近の痕跡なし
- 2015-05-12 (火)
- くまもりNEWS
滋賀県のクマ生息地というと、一番に思い出すのは北西部のこの大きな町です。十数年前に訪れた時は、ササでびっしりとおおわれた山中のいたるところに鉄格子でできたクマ捕獲罠がかけられており、次々とクマが捕獲されて殺されていました。役場の方に歯止めをかけてほしいとお願いしましたが、聞き入れられませんでした。
しかし、地元の研究者は、今やもうこの町にクマはいないと言われます。なぜいなくなったのかたずねると、みんなで獲り尽くしたからということです。悲しいです。
5月6日、熊森本部は、滋賀県支部のメンバーと、この町の広大な山を調査しました。
ふもとの山に到着。新緑の美しい山です。つい、この中にはいろんな生き物たちが暮らしているように思ってしまうのですが・・・
登山開始。
滋賀県の人工林のスギは、雪国対応の裏スギでした。ふもとから頂上まで、全てのスギにクマ剥ぎ防止テープが巻かれていました。
本部のある兵庫県のクマは、スギの皮ハギをしない文化を持つので、この様な光景は見たことがありません。クマ剥ぎ防止テープが異様で、ギョッとしました。
それにしても、もうこの町のクマは殺し尽くされたのですから、クマ剥ぎ防止テープを巻く必要などないのです。巻いた訳は、補助金がもらえるからです。
私たちの税金が無駄に使われています。
左半分が自然林、下草はシカの食べないアセビ。右半分はビニールテープを巻いた人工林のスギ
急な山道を登っていきます。この山のミズナラは枯れているのもありましたが、まだ残っているのもありました。良かった。しかし、下層植生はゼロです。
かなり急峻な山
それにしても、滋賀県の奥山の広大なこと。360度、見渡す限りの深い山々です。
どこまでも、山また山
今立っている山も対岸の山も、戦後の国策であったスギの分収造林地です。
しかし、手入れが行き届かなかったところは、本来の潜在植生である広葉樹に自然に戻って行って、まるで、針広混交林のようになってきています。
根の浅いスギだけが崩れ落ちたところが何か所かありました。
自然界が、スギに対して、ノーと言っているのが見えるようでした。スギに向かない所に植えられたスギもかわいそうです。
針広混交林化したスギの分収造林地
800メートルを超える福井県境の尾根まで上がってきました。ブナの木がたくさん残っていましたが、まるでこの山は、公園状態です。姿を隠すものがなければこわくておれない臆病なクマは、とても棲めません。動物に出会うことはありませんでしたが、頂上まで、いたるところにシカの糞が落ちていました。シカ以外の糞は見つけられませんでした。シカが下層植生を食べ尽くしたことによって、クマは餌場も生息地を失ってしまいました。
京都府や兵庫県と同じ事態が起きていることがよくわかりました。
頂上近くの尾根。尾根の向こうは福井県。
クマの棲む最高に豊かな森を残したい熊森としては、複雑な気持ちでした。下層植生を消したのはシカだとされていますが、わたしたちはシカのバランスを崩したのは人間活動だと思います。
対岸コースを歩いたグループは、クマの古い痕跡を少し見つけたそうですが、新しい痕跡はゼロでした。
滋賀県支部のメンバーによると、滋賀の別の地域には、まだクマが残っているところがあるということです。
今日1日見てきた滋賀の広大な山々は、野生生物の保全だけではなく、水源の森保全の観点からも危機的な事態です。