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2015-06
熊森本部5名三重県庁へ出向く 放獣グマが無実とわかっても射殺するという三重県に反論
4日、熊森本部5名は、午前中の大事な予定を急遽キャンセルして、三重県農林水産部長に放獣グマを射殺しないように申し入れに行きました。熊森としては、命にかかわる問題を最優先させたわけです。
部長は会議中とのことで、獣害対策課の課長がひとり出てこられて対応されました。報道陣がたくさん来てくださって、本当にありがたかったです。
三重県農林水産部獣害 対策課課長に捕殺中止を要請中の熊森本部 (於:三重県庁6階)
5月17日の三重県のクマ放獣が、全国に知れ渡るこんな大問題に発展し、ご心労はいかばかりかと思いましたが、意外と課長はお元気そうに見えました。
私たちが、5月27日に滋賀県で人身事故を起こしたクマと三重県が放獣したクマは別グマであるという根拠を伝えると、課長も、別グマではないかと思っていると言われました。
放獣したクマの血を採集しているということなので、なぜ、人身事故現場で採集した4種の毛と照合してDNA鑑定を急がないのかたずねると、採集した4種の毛は、そのあたりから拾い集めたもので、けがをされたおばあさんの体についていたわけでもなく、クマの毛かどうかもわからないというあいまいな話でした。
三重県は、放獣したクマと人身事故を起こしたクマが別グマであったとしても、放獣グマを捕殺する予定であると言われました。理由は、地元の人々が山にクマがいることを不安がっているので、不安を取り除くためであるということでした。
地元の人達の不安は、放獣グマが滋賀県で人身事故を起こしたクマであるかのような発表をした三重県側にこそ責任があるわけで、三重県が責任を持って報道内容を訂正すればよい話であると申し入れると、課長は煮え切らない態度でした。
熊森は、人里に出てきてひどい目に合い、山奥に戻ってひっそりと潜んでいるクマを撃ち殺すことは、倫理上、教育上、自然保護上、あらゆる面から間違っていると見解を述べました。
熊森は、誤捕獲グマ対応として、以下の4点を申し入れました。
①今後、イノシシ罠は、富山県のように、クマがかからないクマスルー檻にする。
②クマに負担をかけるので、放獣時発信機を装着したりお仕置きをしたりしないこと。どうしても発信機を付けなければならないときは、遠隔操作で短期間に外せるタイプのものにする。
(今回、三重県は一生外れない旧式の首輪発信器を付けたので、クマのストレスは大変なものになっている。何とか早く、外してやってほしい。)
参考:昨年度兵庫県の誤捕獲グマ87頭・・・放獣に際して一切発信機を装着していないし、お仕置きも全くしていない。
③県境付近で生息するクマについては、今後は各県で連携して広域行政で取り組む。
④このクマは人間を恐れており、慣れ親しんだ奥地の生活場所に戻ろうとしている。人間は、このクマが本来の生息地に戻ったことを確認したら、そっとして、もう追跡しないこと。
課長は、6月5日の午後の会議で、捕殺を進めるか中止するか、みんな(三重県、岐阜県、いなべ市、海津市、養老町、大垣市などの行政と猟友会)で決めることになっているとして、話を終わらせようとされました。
熊森としては、クマが現在三重県いなべ市の山奥にいるため、捕殺の許可権限は、三重県にあるはずだと、しっかりと三重県の責任を指摘しておきました。
三重県で錯誤捕獲され、放獣されたクマの補殺中止を文書で要請
本年5月17日に、三重県いなべ市で、イノシシ用捕獲檻に誤捕獲されたオスのツキノワグマ(140cm、80~100kg、成獣)が発信器をつけて放獣されました。その後、5月27日に、滋賀県多賀町でクマによる人身事故が発生し、三重県は、放獣されたクマが起こした可能性が高いとして、放獣されたクマの追跡し、殺処分する予定です。
しかし、三重県が放獣したクマが人身事故を起こしているなら、5月27日午前4時~5月28日14時の34時間に、23kmも移動していることになり、クマの通常の移動距離と著しくかけ離れており、別のクマであると考えられます。当協会顧問の北海道野生動物研究所所長、門崎允昭博士は別のクマだと断言しておられます。
誤って捕獲されたクマは、鳥獣保護法上、放獣されなければなりません。今回、放獣されたクマが人身事故を起こしたクマでないなら、再捕獲したり射殺する理由は全くありません。紀伊半島のツキノワグマは、環境省により絶滅の恐れのある地域個体群に指定され、三重県でも希少野生動植物種として保護の対象になっています。クマは、放獣後、人目に付かない山の中を移動しており、何の被害を出していません。このようなクマを補殺することは、あまりにも残酷で人間勝手であり、倫理的にも、希少種保護の観点からも大問題です。
6月3日、熊森は、三重県知事、滋賀県知事、岐阜県知事に対し、クマの追跡や補殺を一旦中止し、人身事故を起こしたクマかどうか確定してから方針を決めるよう文書で要請しました。