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2015-08-03

7月12日 日本奥山学会第4回研究発表会 

今年も、美しいスペイン風庭園を見下ろす関西学院大学法科大学院で、 日本奥山学会第4回研究発表会が開催されました。

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また、当日、会場で、日本奥山学会誌VOL3が発売されました。大変中身の濃い研究発表誌となっておりますので、関心をお持ちの方は是非お買い求めください。(800円)

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記念講演:Now! Let’s teach our bears well.

     -- 教えて生かす、切り札はベアドッグ」
岩井 基樹 氏(一般社団法人 羆塾)

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北海道の多くの森は、本州と違って、今もヒグマたちに十二分に食料を与えることのできる豊かな生産量を誇っています。この前提を知った上で、岩井氏の講演を聞いていただく必要があります。

 

デントコーンなど、人間活動(農業)に誘惑されて、山から出て来てしまっては撃ち殺されているヒグマたちを救わんと、犬を使ってヒグマたちを山に返す壮大な事業に一人取り組んでおられるのが岩井氏です。

 

彼のヒグマへの深い愛、人生をかけた保護活動には、圧倒されます。岩井氏の活動は、今後、会報や学会誌でも伝えていきます。

 

 

研究発表:

「最近のクマ類生息個体数推定を考える」 

日本福祉大学 経済学部教授 山上俊彦氏

 

MCMC法(Markov chain Monte Carlo Methods)を用いた階層ベイズ法による個体数推定法でクマ類の生息推定数を出している研究者がおり、彼の出した生息推定数を採用している行政が現在いくつかあります。

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山上氏の示す統計学の難しい数式は一般人には理解できませんが、この推定法が、クマ数をとてつもなく過大に推定してしまった例を示していただきました。経済学で用いられるこの推定法で、クマの生息推定数を出すことは無理というのが山上氏の結論でした。

 

 

・「渓流魚はどうなる?」 関 亥三郎 氏 

西宮甲山ライオンズクラブ 幹事

人工林や砂防ダムなど、戦後、山に人の手が入ることにより、渓流の水量は減少し続け形状もどんどんと変化し、魚が消え続けたという歴史があります。

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長年そのさまを見続けてきた渓流釣り歴45年の関氏にしか語れない貴重な証言を、豊富な写真と共に語って下さいました。渓流釣りを愛する者にとって、その危機感には強いものがあります。

 

 

・「ナショナル・トラストの歴史と展望」

一般財団法人 日本熊森協会国際部長 米田 真理子 氏

イギリスのナショナル・トラストは、現在会員数が420万人という、巨大な自然保護団体で、国を動かしています。

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どのように団体を発展させたのか、豊富なデータを提示して伝えてくださいました。今後、私たちが参考にして、日本でも使えるものがあるかどうか、検討していく材料を与えられました。

 

7月10日 幼獣グマは捕獲後山奥に放獣をと、市担当者に願い出る→去年から市の嘱託職員である捕獲隊員(猟友会員)が拒否③

この幼獣グマが殺処分されそうになっているのは、市の意向によるものと判断した熊森は、4名で市の担当者を訪れました。事前にアポをとったところ、午後3時に来るようにと言われました。

 

午後3時にお伺いすると、いきなり、4時から次の公務が入っているので、1時間で終わらせてくださいと行政担当者に言われてしまいました。

 

熊森はあわてて、今回の幼獣グマを殺処分する必要などないと思うのに、なぜ殺処分を決定されたのか、行政担当者に聞き取りを始めました。しかし、この後、何を聞いても、質問に答えられたのは、行政担当者ではなく、全てが、去年から嘱託職員となったという捕獲隊員(猟友会員)の方でした。

 

この捕獲隊員が、このクマを殺処分しなければならない主な理由を6点あげられましたが、私たちにはどれも疑問で納得がいかないものばかりでした。

 

 

熊森から

行政担当者は、ふつう3年で部署が変わるので、一つのことに専門知識を持つのは難しいかもしれませんが、

捕獲隊員に任せずに、しっかり勉強して、行政担当者として自分の頭で考えて責任を持って答えていただきたかったと残念に思いました。

 

この後、熊森はみんなで現地や旅館街を再び見てまわりました。

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住民のみなさんは、もし、幼獣を見つけたら、どんなにかわいくても、心を鬼にして怒って欲しいと思います。棒を持って追いかけまわしてもらっても良いと思います。食べ物は絶対に与えないでください。クマは、山に逃げて帰るはずです。

 

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集落近くに設置された罠の蜂蜜の匂いは、何キロ先ものクマを旅館街に呼び寄せていることにもなります。

この幼獣がかかったら、絶対に山奥へ放獣してやって欲しいです。

 

地球環境を保全し、持続可能な文明を取り戻すためには、日本人ひとりひとりが自然や生き物たちへの共感をとりもどしていかねばならないと思います。

 

この件は、県の本庁に訴えるしかないと思いました。

 

 

 

7月8日 殺処分ではなく奥山放獣を 幼獣グマが目撃された旅館街の現地調査と県出先行政への申し入れ②

さっそく、現地を調査してみようということになり、熊森本部から6名が出かけて行きました。

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旅館街の裏がすぐ山です。どこから幼獣グマ出てきたのか、みんなで手分けしながら探し歩いてみました。

 

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裏山は放置された竹林が繁茂しており、近年はあまり人が入っていない感じでした。

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裏山

 

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民家のすぐ近くの裏山にある空家の前に、クマ捕獲罠が設置されていました。(2基)

 

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誘引剤は、ハチミツや蜂の巣、魚の頭でした。

 

裏山に登って、旅館街を見下ろしてみました。旅館街がどんなところか見に行ってみようと思った幼獣グマの気持ちがわかるような気がしました。人間に親しみを持ったのかもしれません。

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地元の人達の声も聞いてみようと思い、「幼獣グマの目撃が数回あったそうですが・・・」と旅館街で旅館の人や観光客十数人にインタビューをしてみました。一部、早く殺してしまってくれと言う人もいましたが、旅館の人達も含め、多くの方は、捕まえたら山に逃がしてやったらいいと、優しい気持ちで答えておられました。

 

クマとの共存を進めるために、なんとか殺処分を撤回して、山に放獣するように変えてもらえないかと、熊森は殺処分許可を下した県の出先機関を訪れました。お忙しい中、2時間50分も対応いただきました。

しかし、捕獲されたら奥山に放獣してやってほしいとお願いし続けましたが、殺処分撤回は、して頂けませんでした。

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<行政担当者が語った、殺処分を撤回しない理由>

・一旦許可を出した以上は動かせない。

・市が人身事故の恐れがあると言っている。

・防犯カメラにこのクマが写っていた。(熊森には見せてくれませんでした)

・クマは数が増えすぎている。

・土地の所有者の関係で、電気柵設置や藪の刈り払いがむずかしい。

・ここは、観光地なので、特例である。

 

<熊森から>

県の規定では、クマが山から出てきた場合、いきなり殺処分するのではなく、まず、誘引物の除去、防除、追い払い等をすることになっています。しかし、今回の場合、誘引物が不明なのと、観光地という特殊性のため、いきなり殺処分になったようでした。

 

熊森としては、幼獣を捕獲して殺処分してしまうより、捕獲して山奥に逃がした方が、一般に観光地としての評価は上がると思います。

 

兵庫県のクマが増え過ぎているというのは、ある研究者がコンピューターを使って長時間計算した結果、クマが近年爆発増加していると発表されたことによるものです。しかし、生息地の森が、人工林、ナラ枯れ、シカの食害などにより、ことごとく失われていっているのに、なぜ生息数だけが爆発増加できるのか、私たちはこの研究者の推定生息数に大変疑問です。

 

7月6日 クマ生息地の旅館街で5月より幼獣グマの目撃が数回あり、行政は捕獲→殺処分に向け、箱罠2基を設置①

兵庫県(7月16日、県庁担当部署である兵庫県農政環境部環境創造局自然環境課 電話:078-341-7711 FAX:078-362-3069から公表して良いと言われました)のクマ生息地の旅館街で、幼獣グマの目撃が数回あり、行政は捕殺に向けて、7月2日、鉄製箱罠2基を仕掛けました。

 

<旅館街における幼獣グマの住民目撃情報記録> (行政発表)

●5月13日 早朝6:10

幼獣をちらっと見た。

●6月20日 真夜中1:40

幼獣をちらっと見た。人に気づくとすぐに逃げた。

●6月24日 早朝7:35

幼獣をちらっと見た。人に気づくとすぐに逃げた。

●6月30日 早朝7:15

幼獣をちらっと見た。人に気づくとすぐに逃げた。

●6月30日 夕方17:50  幼獣をちらっと見た。

 

(行政は、この時点で、幼獣グマ捕殺を決定し、檻2基を設置)

 

●7月3日    夕方17:00

幼獣をちらっと見た。人に気づくとすぐに逃げた。

 

(熊森から)

独立直後の若グマの下界調査

1歳半の子グマは、6月のキイチゴが実る頃、母グマが交尾期に入るため母グマから放されます。母グマから独立したばかりのオスの幼獣は、どのあたりで今後暮らしていこうか決めるにあたって、しばしば人里にちらっと顔出しします。しかし、それは、人里に棲もうと考えたわけではなく、ただ、山の下がどんなところか見ておこうと思っただけで、自分なりに納得すれば、8月頃には山奥に帰り、その後は、奥で定住するようになります。

 

人間は寛容の精神を

旅館街で数回目撃された上記幼獣も、そのたぐいであると思われます。この程度で捕殺してしまうのであれば、「クマとの共存」などとても不可能です。もう少し行政には、寛容の精神を持っていただきたいと思います。

 

クマの棲める森があるからこその風光明媚

行政は、観光地であり旅館街であるという特殊性からの殺処分判断だという事でしたが、周りの山がクマの生息地であるという自然の豊かさが、人気の観光地としての風景を生み出しているともいえます。

 

風評被害を恐れる現地に熊森も配慮したい

現地では、旅館街に幼獣グマが顔出したことが広まれば、客が来なくなるという不安があるそうです。ならば、熊森としては、現地にも配慮したい。捕獲は仕方がないと思いますが、殺処分するのではなく、奥山放獣をお願いしたいと思います。

 

クマヘの誤解

地元では、人身事故発生の危険性を恐れる声もあるそうですが、あまりにもクマという動物を誤解されていると思います。幼獣が、人身事故を起こした例を私たちは知りません。もし罠にかかったら、殺処分せずに、奥山に放してやってほしいです。この地域では、クマは、絶滅危惧種であり、保護動物と規定されているのです。

クマのこと、知っていますか? -岐阜県のツキノワグマ―

 

変えていくのは私たち

以前、C・W・ニコル氏が、日本人はいたいけない子グマまで殺してしまうが、どうしてそんなかわいそうなことが出来るのかわからないと言われていたのを思い出しました。確かに、日本では、赤ちゃんグマであっても、見つけたら殺してしまうところは現在多くあると思います。しかし、猟師仲間に「3つグマ獲るな」という言葉が残っているぐらいですから、祖先は、厳しい自然のなかで一生懸命生きている野生動物たちに、同じ生きとし生けるものとして共感し、優しい気持ちを持っていたと思います。日本を変えていくのは、今を生きる私たちなのです。

 

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