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2015-10

人とクマとの臨界距離

元野生グマ「とよ」を観察していると、いろいろなことがわかってきて、とても楽しいです。

 

クマは元々ひとりでひっそりと暮らしているのが好きなのでしょう。

 

人間が現れると、同じところを行ったり来たりの常動行動が始まります。

人が少ないと、獣舎の東端を1分間に11回程度行ったり来たりするくらいですが、人が多くなると、1分間に14回程度行ったり来たりとスピードがアップされます。

人間に何かされないかと、緊張がピークに達しているのかもしれません。ものすごい速さでの常動行動となります。

 

山では、クマは人と会わないようにして人を避けています。人とクマとの臨界距離は12メートルだそうです。(宮澤正義先生による)

それよりも人が近づくと、クマの緊張はピークに達します。

この時クマは、怖いよーと泣き寝入りしていないで、一大決心をして、人を引っ掻くなどの排除行動+逃亡行動に出ます。

これが、他の動物との違いだと思います。

この習性が、クマは凶暴だと人に誤解される原因ではないでしょうか。本当は、こわい人間から離れたかっただけです。

 

うっかり臨界距離を超えて人が「とよ」に近づきすぎると、「とよ」は人に向かって突進してきて、フッと息をかけて飛んで戻ります。

「それ以上近づかないで。こわいからあっちへいって」と威嚇しているように感じます。

 

先日、リンゴを持って近づくと、威嚇せずに近よってきました。

ずいぶん人間に慣れてきたなあと、感激しました。

人間の足もとに転がり落ちたりんごを、一生懸命引き寄せて、人間のそばで食べていました。

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10月9日 大津市の小学校でくまもり環境教育

10月9日、くまもり滋賀県支部は、大津市の小学校で去年に引き続き今年も、くまもり環境教育を実施させていただきました。

いつも素敵なウェルカムボード、 ありがとうございます☆

素敵なウェルカムボード

今回は、4年生の「森と人間」です。本部からも、応援に行きました。

人工林と自然の森の違いを子どもたちとの対話を楽しみながらクイズ形式で進めていきました。

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活発な発言に、驚きや元気をもらいました。

授業後に、スギ・ヒノキ・ドングリの葉っぱを触ってもらったのですが、スギ・ヒノキ「粗い感じ」「スギは硬いけど、ヒノキはやわらかい」ドングリ「さらさらしてる」「布みたい」「優しい感じ」等々、感じたままに素敵な感想をくれました。

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先日、先生方が各クラスで「割り箸を使うのは、いいこと?」という質問をされたところ、クラスの大多数は「よくない」派だったそうです。今回の授業では、間伐の必要性についても触れたので、間伐材や割り箸について、改めて考えてみる機会になったのではないかと思います。

 

滋賀県支部の環境教育部の活動は、今年で2年目。環境教育をやってみようと思われる滋賀県の会員のみなさん、一緒に活動しませんか!♪(SY)

 

アオハダの糞

8月28日に兵庫県豊岡市の農道で拾ったクマの糞を、持ち帰りました。

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糞の拡大写真

 

もみ殻のようなものがたくさんっています。未消化の赤い実も入っています。何でしょうか。くまもりを指導してくださっている研究者に写真を添付してメールで送ると、直ちに答えが返ってきました。落葉広葉樹のアオハダの種です。そういえば、アオハダの真っ赤な実の写真を最近撮ったばかりです。

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アオハダ

クマは、アオハダの実を食べたのだ。

この糞を持ち帰って置いていたのですが、この度、水で洗ってみました。

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果肉が消化されて種だけになっている実も多いが、消化されなくて、赤い実が黒くなり、残っているのも結構あります。

それにしても、いったいこのクマは何粒のアオハダの実を食べたのでしょうか。

野生で生きていくということは、本当に大変なことです。野生動物たちに、敬意を表します。

 

 

 

求む 「とよ」のプールの水入れ隊

「とよ」のお世話で今の所一番大変なのは、プールの水かえです。どういうわけか、「とよ」は、プールの水をうれしそうにごくごくと飲む一方で、泥足でプールに入ったり、水中で糞尿をしたりするのです。これでは、すぐに水が汚れてしまいます。

もしかしたら、クマは谷川に入るのが大好きですから、自然界では、上流を向いて水を飲みながら、谷川の中で糞尿をしているのかもしれません。まさに清潔な水洗トイレです。自然界ではこれでいいのですが、獣舎のプールの水は流れていないので困ります。「とよ」も、なぜプールの水は流れないのか、もしかしたら理由がわからずに悩んでいるかもしれません。という訳で、週1回は最低限、プールの水かえが必要です。

しかし、獣舎のある場所は山上ですから、水道がありません。いくつもの20リットルのポリタンクいっぱいに水を入れて(=20キログラム)車に乗せ、獣舎近くに車を止めて、ポリタンクをプールまで運び、水をプールに移します。水は重いので、高齢者や女性が多いボランティアのお世話隊にはきつすぎます。いろいろと代替案を考えたのですが、なかなかいいのが思いつかず、ついに、プールの水入れに関しては、本部の若い職員たちが担当することになりました。

 

9月30日に行った職員は2名ですが、途中でクマを見に来ておられた若い男性が手伝ってくれました。それでも、プールを満タンにするのに、3人で取り組んで4時間かかりました。

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満タンになったプール

 

くまもり本部職員も最低一人は出ますので、何人かの方に、当分、プールの水入れボランティアを手伝っていただけないでしょうか。満タンにするのは大変ですから、出来るところまでで結構です。本部としては、タンクで水入れをする一方で、いい対策がないか考え続けていきます。

 

この日、とよは、水替えをする前の汚れた水のプールに、長いこと何回も入っていました。本当に、クマは水が好きなんだなあと思いました。

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この日担当した二人です。

獣舎の裏の柿の木に、実がびっしりと付いていましたが、弱いシブ柿でした。「とよ」は口に入れてから、いったんあわてて吐き出し、その後、再びゆっくりと食べてしまいました。

 

各地から次々と届く秋の実りをおいしそうに食べる大阪クマ「とよ」

「とよ」の為にと本部事務所に、9月14日にクリ、9月17日にヤマボウシ、9月24日にアベマキ、9月25日にクヌギがそれぞれ今年初めて届きました。その後も、クリ、アベマキ、クヌギが別の方々からも届き、とよは秋になってやっと自然界の食料にありつくことができるようになりました。みなさんありがとうございました。

(注:春の山菜は与えましたが、なぜか一切食べませんでした)

おいしそうに食べているとよの顔を見てやってください。

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口の横から殻を出しながらドングリを猛スピードで食べていく「とよ」

 

 

赤ちゃんの時から人間に育てられた和歌山の太郎や花子は、腰を据えて座り込んで、ドングリをおいしそうにゆっくり味わって食べますが、大阪のとよはものすごいスピードでクリやドングリをみるみるうちに食べていきます。ただし、殻はきっちり外して口の横からポイポイ出しています。

とよは昨年まで野生だったからでしょうか、食べながら、絶えず周りをきょろきょろと警戒して後ろを見たりずっと動き回るため、写真を撮ろうとしてもなかなかピントを合わせることができません。また、あまりにも急いで食べるからでしょう、クリの殻に、まだ白い実が少し残っていたりします。しかし、次の日には、白い実は完全になくなっているので、みんなが帰って一人になったら、ゆっくりともう一度きれいに食べなおしているのかもしれません。

 

ドングリを食べ終わると、今度はいつものように、獣舎の東端を行ったり来たりの常動行動にもどります。この時も絶えず動いているため、とよの写真がなかなか撮れず、カメラを構えたものの、ため息が出ます。一度だけ、動くのが何秒間か止まったので、チャンスと思い写真を撮りましたら、普通に4つ足で立ったままオシッコをしていました。

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四足で立ったまま、オシッコをしているとよ

 

「とよ」は、お寺のみなさんと、熊森お世話隊のみなさんの愛情をたっぷりと受けて、元気に夏を乗り切りました。

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プールの水で汚れたすのこを洗う

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プールの水替え

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獣舎の裏もお掃除

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9月17日にお世話してくださったお世話隊のみなさんです。

9月18日伊丹市いきもの講座3回目、「とよ」に会いに行きました!

兵庫県伊丹市の市民講座第3回目は、大阪府豊能町高代寺のくまもり熊保護施設に、受講者の皆さんをご案内しました。

 

 

能勢電鉄のときわ台駅から約3キロの道のりを植物を見ながらゆっくり歩いていただきました。

道中、曼珠沙華やホオノキ、クズなどについて説明をしました。

途中、スギ、ヒノキの人工林になっている所もあり、受講生の皆様にも天然の森と人工林の違いを見ていただくことが出来ました。

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高代寺に到着。副住職さんが、とよを飼うと決めてくださった時のお寺の人達の心境や、とよの行動の変化などユーモアたっぷりにお話くださいました。

とよは獣舎に入った最初の頃、高いところまで登って脱出口はないかとよく探し回っていたそうですが、最近はもうそういうことはしなくなったということです。

最初の頃は、エサ入れ引き出しに餌を入れている間、とよは離れて待っていましたが、最近は、引き出しを入れ終わらないうちに餌箱に手が伸びてくるようになったそうです。人間に慣れてきたのかもしれません。

みなさんに、えさのブドウやりを体験して頂きました。「とよ」は、大勢の人が来たにもかかわらず、終始穏やかにしていました。

「思ったよりも小さいな」「かわいいですね」など、参加者のみなさんも笑顔でご覧になっていました。

今回のコースは、高代寺山頂までの道のりで様々な植物が観察でき、山頂では「とよ」を見学できる楽しいハイキングコースです。

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みなさんも、ぜひどうぞ。訪れて下さい。

9月22日 くまもり神奈川県支部主催の講演会が盛況に終わる

<以下、神奈川県会員のブログより転載>

くまもり 神奈川支部: 第2回神奈川支部講演会「くまもりは、どうあってもクマを守る」を開催しました。

日本熊森協会神奈川支部では、922日に横浜市技能文化会館(横浜市中区)
で第2回講演会「くまもりは、どうあってもクマを守る」を開催しました。
会場では、当協会の書籍やグッズなども販売。多くの方々にご来場いただき、どうもありがとうございました。
当日は、元山形大学農学部文部技官である佐藤八重治氏が「ツキノワグマと暮らす20余年」と題して講演。ツキノワグマのクロちゃんと暮らし始めた経緯や体験などとともに、クマとの暮らしで感じた思いや母クマの愛情深い様子などを紹介。同時に放映した『クロちゃん子育て奮戦記』の貴重な動画に、思わず歓声もあがりました。
佐藤氏はツキノワグマのやさしさに触れ、「ツキノワグマはメスで80100kgくらいで、基本的に肉や魚を食べません。絶滅危惧種でありながら、正確には分からないが、毎年多くが殺されています」と述べ、「私はクロちゃんと暮らすことで人生が変わりました。ぜひ、多くの人にクマの実態を知ってもらいたい」と結びました。
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森山まり子会長は、「くまもりは、どうしてそこまでクマを守ろうとするのか」と題して講演。最初に、日本熊森協会はクマとその生育地である森や山をセットで守る団体であることを強調し、クマがなぜ必要なのか?なぜクマをシンボルとしたのか?を説明しました。
大きく3つの理由があります。
 
クマは早晩絶滅する可能性が高い動物であること(ワシントン条約では絶滅の恐れが高い種とされ、国際自然保護連合ではツキノワグマは野生絶滅が高いとしています)
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アンブレラ種であることつまり日本で一番大きな動物であるクマを守ることで、様々な動物とその暮らしを守ることができる(ケニア国立公園のオリンドウ博士では、アフリカゾウを守ることを提唱)
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日本の貴重な落葉広葉樹林である水源を守っている(野生のクマは、湿地や広葉樹林の森など、色々な環境がないとクマは生きていけない→その環境には多くの動植物が生育している→シンボルであるクマを守れば、命の源である水源と動植物も守れる)
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また、大阪府で誤って捕獲されたクマを熊森協会会員が協力して救った記録も放映。森山会長は、「人とクマが共存するためには住み分けが必要で、動物から奪った奥山生息地をクマや動物に返すことが重要」と締めくくりました。

(な)

 

 熊森本部からも4名が参加しました。
(参加者から)本日はお疲れ様でした。参加者70名。すごいですね。並んだ椅子がどんどん埋まっていってほぼ満席になるのを見て、感激でした。
神奈川の皆様が、いろいろな準備をすごく積極的に自分から進んでやって言っておられたのには、本当に感心しました。
佐藤さんのお話はとても楽しく聞けました。森山会長のお話は、いつもながら迫力満点で、とても力づけられました。

9月27日 本部「太郎と花子のファンクラブ」太郎くんご機嫌の巻

「本部タロハナお世話隊」のみなさんは、月1回2頭のクマたちのお世話ができることを、人生の楽しみとして、苦労を苦労とも思わず、本当にお世話日を心待ちにして、楽しんで毎月和歌山に通ってくださっています。

今月も、秋のさわやかな1日、初参加者1名と共に6名で、和歌山県有田川町生石(おいし)高原にある、太郎と花子の獣舎を訪れてくださいました。

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ここの2頭のクマたちは、赤ちゃんの時、母熊を人間に殺されたみなしごグマたちです。花子の場合は不明ですが、太郎の場合は、母熊が殺された時は、まだ目も開いていませんでしたから、母の愛を全く知りません。

 

そんな太郎を我が子として育てたのが、当時の和歌山県の猟友会組織のひとつである鳥獣保護連絡会会長の東山省三先生です。東山先生は、鉄砲を持たない唯ひとりの和歌山県猟友会員で、どんな鳥や獣が減っているかを猟友会員に伝えて、獲らないように指導されていました。

 

先生の太郎の育て方を、甘やかし過ぎと批判される方もいましたが、先生は、母の愛を一度だって受けられなかったこのクマには、甘い愛情だけでいいのだというお考えでした。

先生は亡くなられる少し前に、「私の和歌山の会を、日本熊森協会和歌山県支部にしてくださらないか」と、願い出られました。私たちは、先生にまだまだお元気に生きてご活躍いただきたかったので、お断りしました。ただし、太郎のお世話は生涯させていただきますとお誓いしました。

その後、くまもりの和歌山県支部が出来て、今や、和歌山県支部を中心に、本部、大阪南地区、京都府支部が協力して、日曜ごとに太郎と花子のお世話にあたっています。東山先生は、心のこもったくまもりのお世話がずっと続いていることを天から見られて、喜んでくださっていると思います。

平日のお世話をして下さっている山田さんには、会員有志からご寄付いただいた「太郎と花子のファンクラブ」基金から、毎月の餌代をずっとご支援させてもらっています。

 

この日、花子は最初少し寝室から顔を出して私たちを見ていました。まだ9月末だというのに、まるで冬籠り前のように眠そうでした。そのうち、自分で寝室の奥に入って、扉をぴしゃんと閉めて出て来なくなりました。

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眠そうな花子

私たちは、そっとしておくことにしました。

 

そのため、いつもは2頭に分けて与えている愛情を、この日は太郎が独り占めすることができました。太郎はとてもうれしそうでした。体を触ってもらおうと寄ってきて、甘えっぱなしでした。

2015/ 9/27 13:45

 今日は自分ばかりがみんなに背中をかいてもらって上機嫌の太郎

 

今回は、秋の果物をたくさん持っていきましたが、山田さんに、大好物の炊き込みご飯をすでにたらふく頂いたあとだったようで、もうお腹がいっぱいという感じで、あまり食べませんでした。お掃除を終えてから、運動場に持って行った果物を並べて帰ってきました。ナシは食べていましたが、よく見ると、真ん中の芯の酸っぱいところだけは残していました。クマも人間と同じで、芯は食べたくないようです。

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ここは、2頭のクマたちとお話がいっぱいできる貴重な場所です。まだの方は一度、訪れてみてください。地球上に、人間と心を通わせ合うことのできるこんな素晴らしい動物がいたのかと知ることによって、人生がさらに楽しく優しく豊かになります。

 

今回お世話に行ったメンバーです。

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皆さん、ご苦労様でした。

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