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2015-12-31

なぜこのクマは殺されねばならないのか 12月24日本部柿もぎ→12月28日クマ捕獲罠撤去確認

わたしたちは、12月22日、兵庫県北部のクマ生息地を巡回中に、クマの捕獲罠を発見した。12月15日に仕掛けられたものだ。黒色の直方体の箱罠だった。クマがかかれば、すぐに射殺される。

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確かにこの柿の木に、今秋、クマは来ていた。しかし、すごく背の高い木で、もう上の方しか実が残っていない。いくらクマでも、あんな上の細い枝まで登ったら、枝が折れて落ちて死ぬだろう。

今後、ここへまたクマが来るのか。もう来ないような気がする。

 

檻の中をのぞいてみた。

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これはだめだ。クマを奥に誘導するように、ハチの巣が点々と奥まで置かれている。柿にはもうクマは来ないかもしれないが、この蜂の巣の匂いにつられて箱罠の中に入るかもしれない。おびきだして殺すとはこのことだ。

 

とりあえず、あたりの柿の木に残っている実を、もげるだけもいでみようと思い、許可をもらいに周りの家を訪ねて回って驚いた。空き家ばかりだ。胸が痛む。

周りの山にはすごく人間の手が入っている。ここまで山を壊されたら、クマは冬籠り前、もうこの柿を食べるしかないのではないか。

誰も取らない柿だから、クマにあげればいいのに、なぜ、行政は罠をかけたんだろう。

 

いろいろ考えながら、集落を回り、人が棲んでおられる家を見つけて、話を聞いてみた。空き家の方たちの連絡先を訪ねたが、知らないと言われる。クマが柿の実を食べるのはいいらしいが、いつも夜遅くに仕事から帰ってこられる方がいて、この近くを通られるということだ。その時、人身事故が起きては困ると言うことで、罠がかけられたようだ。その方が、通られる道に、まぶしいぐらいの明るいLED街灯を付ければどうだろうか。または、この柿の木にやってきたクマが、人が通る道に出て来ないように電気柵を張ればどうか。

 

それにしても、人を恐れて、夜そっと、空き家がならぶ場所の柿の実を食べに来ただけで、死刑判決とは。絶滅危惧種に対する保護策としては、間違っているし、こんなことで殺されるなら、クマの命がいくらあっても足りない。柿の実をもいでしまいたいが、持ち主のわからない柿の実はもいではいけないことになっているので、もげない。どう考えても、この柿の持ち主が、この柿の実を取りにだけ何年振りかで帰ってこられるようには思えない。第一、帰ってこられても、あんな上の柿の実をもぐことは、木を伐らない限り不可能だ。

行政が調べても持ち主のわからない柿の実は、もいでもいいことにしたらどうか。

兵庫県に、そのような条例を作ってもらいたい。それだけでどれほどのクマの命が救えることか。

 

仕方がないので、この檻の周りの柿の木はあきらめて、それより手前の、持ち主に許可を得た柿の実だけをもぐことにした。24日に出かけて、4人で作業した。クリスマスイブの日に、罠にかかって撃ち殺されるクマが出ませんように。もぐのが難しいところは、許可を得て、枝を一部落とした。

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もいだ実は少し前のクマの糞をたどって、山に運んだ。

27日に、また訪れてみた。クマは檻の場所には、あれからもう来ていなかった。

山の中に置いた柿の実の山を見に行った。ここにもクマは来ていなかった。

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空き家の柿に来ていたクマたちが、今頃どこで何をしているのか、さっぱりわからない。

しかし、人間に見つからないように、ひっそりと生きているクマたちを、これ以上追うのはやめる。

28日に、捕獲檻が撤去されたことを確認した。

生息地を回ることによって、クマ捕殺の実態が少しずつ見えてきた。

 

くまもりの<クマ保護活動>と<森再生活動>が全国に広がっていくように、来年もがんばります。会員のみなさん、応援してくださいね。

 

 

 

12月29日 今年度最終「とよ」飼育報告 冬ごもりに入る気配なし

多くのみなさんに応援してもらって、4月9日から高代寺とくまもりで始めた5才の野生グマ「とよ」の保護飼育。

今年、最後のくまもりお世話日となった12月29日の報告です。

 

①獣舎をきれいにお掃除してあげたいと、総勢11名の熊森会員が集まりました。

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獣舎裏で、責任者の諸注意を聞くお世話隊員たち

 

しかし、最近なぜか、「とよ」は、おいしい食べ物でつっても、寝室に入ってくれなくなりました。この日も、とうとう、入ってくれませんでした。

「あーあ。おそうじができないよ」

仕方がないので、獣舎の外からできる範囲でお掃除します。

 

②プールの水の確保問題が解決したと思ったら、次は、排水問題です。

 

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外から、プールの水を替えてやりました。「とよ」は、プールが本当に好きです。この日は、12月というのに、お世話に行っている間に5回もプールに入って体を沈め、お風呂みたいに水に浸ってうれしそうでした。(冷たくないのかな)

そして、突然上がってくるのですが、犬のように、ブルンブルンと体の水切りを一切しないのです。よって、獣舎の地面は、水浸しになります。プールの水は、ごそっと減っていく。(「あーあ」獣舎が、びちゃびちゃや。「とよ」がうれしそうやから、ええけどな)

この獣舎の床のコンクリートには、直径10センチぐらいの穴がいくつかあけられていて、水は、この穴から地面の中にしみ込むように設計されています。しかし、この獣舎の下が、たまたま分厚い粘土層であったため、水が抜けないのです。

 

どうしたら獣舎の水はけを良くできるか、いろいろ考えてはみたのですが、難題です。一応今は、「とよ」の足が濡れないように、木製のすのこやパレットを通り道に敷き詰めてやっていますが、この際、専門家に入っていただこうと思います。来年になりますが、排水に関して専門知識のある会員さんがおられたら、熊森本部にご一報願えませんか。

 

③1本の棒を介して、人間とのふれあいが始まった?

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自分から頭をコツンと棒にあてて、甘えたり楽しんだりしているように見える「とよ」。すぐ横にお世話の人がいる。

 

以前は、人間を怖がって寄せ付けなかった「とよ」ですが、この頃、変化してきました。まず、常同行動のスピードがスローになってきました。

常同行動の道中に、お世話の方が箒の棒を突っ込むと、トコトコと歩いてきてわざとその棒に頭をコツンとぶつけ、向きをくるりと変えて元来た道に戻ります。何度も何度も、まるで楽しんで遊んでいるかのように、この行動を繰り返します。自分のすぐ横に人がいるのに、威嚇もしません。1本の棒を通して、人間とクマが身体をふれ合わせることができるようになってきたのでしょうか。

 

④この日、獣舎に、「とよ」がここに来たいきさつや、クマの生態について書かれたパネルを、取り付けました。

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⑤獣舎にお正月飾り

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「とよ」の食べる量は減りました。糞も1日に5個ぐらいで、多い時の半分以下です。

寝室に厚い板を敷いて、わらをたくさん入れてやり、窓には風よけのシールを張るなどして、いつでも冬ごもりに入れるようにしてやりました。

丸々と太ったことだし、みんなで冬ごもりに入るのを期待しているのですが、この日、そのそぶりもありませんでした。

今年は、観測史上始まって以来の暖冬で、神戸市の12月の平均気温は10.8度でした。当分、冬ごもりは無理かな。

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木製パレットの上をうまく歩く「とよ」

 

「とよ」良いお年を!

 

2015年のブログは、これで最終です。

熊森は、現場に通っていろいろな自然保護活動をしています。

忙しすぎて、なかなかブログにまで手が回りませんでしたが、がんばりました。

1年間読んでくださって、ありがとうございました。

みなさんも、良いお年を!

 

環境省鳥獣保護管理室による報道発表 (平成28年度種々検討会等の傍聴・パブリックコメント)

第8回くまもり東京シンポジウム

さる11月22日、第8回くまもり東京シンポジウムが、お茶の水女子大学で開催され、117名のみなさんがご参加くださいました。良いシンポジウムだったと思います。

 

 

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シンポジウム会場風景

 

まず最初に、くまもり東京都支部川崎支部長が、「環境省は現在、増えすぎているとして、大型野生動物たちを大量捕殺する政策ばかりを進めていますが、問題の原因を作った人間たちについては全く反省がありません。今回のシンポジウムが、このようなことを考えるきっかけになるように願っています」と、あいさつされました。

 

続いて、一般財団法人 日本熊森協会の森山会長が、会の名前になぜ熊という字が入っていなければならないのかを、わかりやすく説明されました。

また、人間は、トラやライオンのような肉食獣とも共存しなければならないことを思うと、ほとんど植物食といっていいような雑食動物である熊とは、祖先もこの国で共存してきたし、これからも共存できると話されました。

ただ、現在、多くの山で、増えたシカによって自然林内の下層植生が消えてしまい、熊がシカによって山で棲めなくなっているという危機的な状況にあることなどを紹介されました。

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環境省資料より

 

続いて、公益財団法人 奥山保全トラストの室谷理事長が、「日本では、土地所有権というのは大変強い権利です」として、ナショナル・トラストという手法が、自然を守る手段として大変有効であるという話をされました。

 

この日のメインは、信州大学山岳科学研究所の高畠千尋さんの講演「クマが人里にやってくる理由」でした。

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データの結果を説明する高畠さん

 

28頭のクマにGPSの首輪を装着したことによって得られたデータが、高畠さんによって次々と発表されました。

これによってわかってきたことの一つとして、人間が住みやすい平地や里山は、クマたちにとっても住みやすい、そして、住みたい場所であるということです。クマが人里に出てくると、現在、大問題にされますが、クマたちは、できる事なら、山岳地帯ではなく平地や里山に住みたいと思っているということでした。

 

下の本(信州大学山岳科学研究所出版)には、高畠さんの研究論文も入っています。今回、東京都支部が高畠さんをお呼びしたいと思うに至った本です。とてもいい本なので、熊森会員のみなさんにも是非読んでいただきたいです。

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今回の講演内容等は、何らかの形で文字にして、会員のみなさんにお伝えしたいと思っています。

この後は、大阪府で誤捕獲されたツキノワグマ「とよ」の救命までの道のりを13分でまとめた動画の上映や、東京都で今年有害捕殺された5頭のクマたちの報告、関東地区の熊森支部の支部長のみなさんによる活動報告などがありました。

 

準備してくださったみなさん、ご参加くださったみなさん、ご苦労様でした。

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