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2016-06-29
タネを高い標高に運んで地球温暖化からカスミザクラを救っていたクマ 森林総合研究所2016年春発表
- 2016-06-29 (水)
- _クマ保全
Q:クマがいて何かいいことあるのか
A:最高に豊かな水源の森を造ってくれています。
クマがこの国に存在することの利点はわかっているだけでもいろいろありますが、一つあげるとしたら、保水力豊かな森を造ってくれていることではないでしょうか。クマは森造りの名人なのです。戦後、人間が造ったスギだけヒノキだけの人工水源涵養林が、どれも大荒廃しているのと比べてみてください。水道水を飲むときに、私たち人間はその恩恵に感謝したいものです。
自分のところではクマが滅びてもういないという方もおられますが、水脈は海底でもつながっています。ものすごく遠くにあるクマたちが造る森の水をいただいていることも十分考えられます。
(熊森から)クマをはじめとする多様な生き物たちがこの国にいてくれるおかげで、私たち人間は、酸素を吸い、水を飲み、農作物を収穫できているのです。彼らのはたらきは、いろいろ違います。
人間が知らないだけで、クマ独特のはたらきも多々あります。
最近、「クマがいて何かいいことあるのか」とテレビで何回も叫んでおられたコメンテーターがおられたようです。
すでに、今年の春、多くのメディアで取り上げられた話ですが、「クマがカスミザクラを地球温暖化から救っていた」を、以下に添付します。コメンテーターの方には、クマの恩恵の一端にでもふれていただきたいですね。
<以下、ハザードラボより>
花咲かクマさん?タネを運んで温暖化からサクラを救う
野生のツキノワグマがサクラの花のタネを、300メートル以上高い山へ運ぶことで、温暖化による生息環境の変化から、サクラを守っていることが、森林総合研究所や東京農工大学などの研究で明らかになった。
草木や花などの植物は、環境の変化や捕食者から逃れるために、虫や鳥に食べられたり、風や水流で運ばれることでタネを移動させて生息環境を広げる。
種子の散布については、これまでにもさまざまな研究で明らかにされてきたが、いずれも水平方向ばかりで、山をどれくらい上り下りするかは調査手段が確立されていなかった。
森林総合研究所の小泉透ディレクターらや東京農工大学などの共同グループは、標高が高くなるほど、生育する植物の種子に含まれる酸素の原子の性質が異なることに着目し、種子が垂直方向に移動した標高差を特定する方法を開発。
2012年と2013年に奥多摩地方の標高550メートル〜1650メートルの山の中で採取したカスミザクラのタネと、捕食動物の糞に残っていたタネを分析した結果、ツキノワグマは平均で307メートル、テンは193メートル、標高の高い場所にタネを運んでいることが判明した。なかには最大で738メートル高い場所に種子散布しているクマも確認されたという。
種子を散布していた主な哺乳類は、散布 数の多い順から
ツキノワグマ80%、テン19%、アナグマ0.07%、ニホンザル0.03%でした。
サクラの開花や結実は、山のふもとから標高の高い山頂方向に進むことから、研究グループは、ツキノワグマやテンは若葉や果実を追いかけて山を登り、その途中で糞をすることで、結果として野生のサクラを温暖化による生息地縮小から守る役割を果たしていると推測している。
森林総合研究所の直江将司氏は、「九州地方など、クマが絶滅した地域では、野生のサクラはいずれ見られなくなっていく可能性がある」と指摘されています。