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2016-07-31

無慈悲なクマ狩猟再開を発案した兵庫県 ③有害駆除と狩猟は全く別物

有害駆除:クマが山から人里に出て来て農作物に被害を与えるなど、人間側に被害があり、被害改善が望まれない場合にやむおえず殺す制度です。銃で撃ち殺したり、ハチミツを入れた捕獲檻やくくり罠を設置して、捕獲後クマを銃や薬で殺します。殺処分後のクマの体は、埋葬や焼却処分されることになっており、売買して儲けたりすることは許されません。

 

・一つしかない貴い命を奪うのですから、人間の側にも、クマを殺す前に、電気柵を張って田畑や養蜂箱を守るなど、クマ被害防止対策を取ったり、追い払いをしたりするなどの努力が求められます。人間が何も防除せず、クマによる被害が出たからといきなり殺すのは、ルール違反です。

 

・ハチミツ入りの罠を仕掛けてクマを捕獲する場合、何キロも先から匂いを察知して、被害を出したクマと関係のないクマがやってきて罠にかかることも十二分に考えられます。これではクマを山からおびき出していることになり、本末転倒です。

 

・一時期兵庫県では、ハチミツを使ってクマを捕獲することを禁止した時期がありました。(残念ながら、今は、使用可)

 

・全国的に、これまで冤罪で殺されたクマが、多数存在する見込みです。

 

 

狩猟:明治になるまでの1200年間、わが国では殺生が禁止されていましたが、明治に西洋文明である狩猟が導入されました。

人間がクマの生息地である山などに犬を連れて入っていって、クマを見つけて追いかけまわし、クマを銃で撃ちます。スポーツやレジャーとして自らの楽しみのために殺すのです。殺したクマは、獲物として、狩猟者の物となり、売買して儲けてもよいことになっています。

熊の胆(くまのい)が、漢方薬として金より高く売れるため、うまくいくと、熊1頭で熊の胆・肉・毛皮、計100万円のもうけとなるそうです。お金目当てでクマ狩猟を希望する人が、あとを絶ちません。

 

現在、クマを狩猟するために罠を使用することは、法律で禁止されています。クマにとってハチミツなどハチ関係の物は麻薬のようなもので、罠に使用すると、危険を冒してもやってくるため、獲りすぎてしまう恐れがあるからです。

 

・我が国には、生活するために許可を得て、やむおえず必要最低限のクマを殺してきた古来のマタギがあります。このマタギと狩猟は、全く別物です。現在、我が国に、クマを殺さねば生活できない人はまずいないと思われます。

 

・西洋は日本と違い長い狩猟文化があったため、密猟監視人などが整備され、狩猟者が暴走しないような取り決めが様々に制度化されています。日本には、残念ながら、現地で狩猟者を監視する制度がありません。狩猟者が法を守っているかどうか、狩猟者の良心に任されているだけです。これまで当協会が、クマ密猟の情報を得ても、行政も警察も現場写真がないなどを理由に、動いてくれませんでした。今後は、知事に訴えようと思います。

 

・現在、銃の性能が著しく向上し、高性能の望遠鏡までついています。そのため、クマを追いかけまわさなくても、遠距離から撃って殺すことが可能になっています。山の中にいるクマにとっては、人間の姿が全く見えないまま、銃弾に倒れることになり、何が起きたのかさっぱりわからないうちに殺されていく例も多いそうです。

 

・熊の胆が余りにも高価なため、暴力団の資金源になっている例が報道されたことがあります。

 

 

無慈悲なクマ狩猟再開を発案した兵庫県 ②狩猟再開理由と政策決定に至るしくみ

2016年度、兵庫県は、クマ目撃数増加の真の原因を隠し、ツキノワグマの推定生息数の中央値が※940頭

を超えたとして、残虐無慈悲な狩猟再開案を発表しました。

※(90%信頼限界691頭~1212頭、推定自然増加率中央値19.7%、豊凶により、15.5%~24.0%)

 

狩猟再開理由は、環境省が、800頭を超えたクマ個体群は安定という目安を発表しているからだそうです。

 

クマ狩猟再開がどのようにして決まっていったのか、担当部署に聞いてみました。

 

(1)データから始まる

兵庫県内クマ爆発増加、今年度県内ツキノワグマ2地域個体群推定生息数合計940頭のデータを出した人

  ・株式会社 野生鳥獣対策連携センター  代表取締役 坂田宏志氏

  本社:〒669-3811兵庫県丹波市青垣町佐治8番地2

  認定鳥獣捕獲等事業者:認定証番号(香川県第002号)

 

坂田氏は、元、兵庫県森林動物研究センター

〒669-3842 丹波市青垣町沢野940

メール:infowmi-hyogo.jp TEL:0795-80-5500 FAX:0795-80-5506

の研究部員でしたが、退職し、2014年に野生動物の捕獲等を行う会社を立ち上げられました。

 

兵庫県内には、東中国山地地域個体群と近畿北部地域個体群の2つのツキノワグマ個体群が東西別々に存在すると言われていますが、坂田氏はなぜか、合計推定生息数しか出しておられません。

彼は、階層ベイズモデルを構築し、目撃数と捕獲数を2大因子としてその他諸要素を加味し、マルコフ連鎖モンテカルロ法によって生息数を推定されたそうです。

他に兵庫県のツキノワグマ推定生息数を出した方は?

いないんだそうです!

たったひとりの推測データで、兵庫県の政策が決まっていく?!

怖いことに今、マスコミが940頭をまるで真実かのごとく取り上げ、数字が独り歩きし始めました。

 

 

(2)兵庫県庁農政環境部 環境創造局がクマ狩猟再開案を作る

 自然環境課

〒650-8567兵庫県神戸市中央区下山手通5-10-1(兵庫県庁1号館2階)

電話078-362-3463   FAX:078-362-3069 

E-mail: shizenkankyo@pref.hyogo.lg.jp

 

ただし、今年から、クマ狩猟再開案は、今春新設された新しい課が引き継いだそうです。

鳥獣対策課(塩谷課長)

650-8567 兵庫県神戸市中央区下山手通5-10-1(兵庫県庁1号館2階)

FAX:078-362-3069  E-mail:choujutaisaku@pref.hyogo.lg.jp

鳥獣保護管理班078-362-9084  被害対策班078-362-3463

(3)クマ狩猟再開案を認めるか認めないかは・・・最終的に知事が決めます。

知事がノーと言えば、狩猟再開案は消えます。

井戸敏三兵庫県知事秘書課

〒650-8567 兵庫県神戸市中央区下山手通5-10-1(2号館6階)

電話078-362-3009    FAX:078-341-2021  

E-Mail:hishoka@pref.hyogo.lg.jp

残念ながら、現在井戸知事は、担当部署の信頼する職員のレクチャーを受けたとして、クマ狩猟再開を認めておられます。

無慈悲なクマ狩猟再開を発案した兵庫県 ①これまでの兵庫県クマ対応政策の経緯

<1992年(24年前)絶滅寸前に>

兵庫県ツキノワグマは、戦後の奥山開発と拡大造林政策により、人間に奥山生息地を大破壊されてえさ場を失いました。食料を求めて人里に出て来ては有害獣のレッテルを貼られ、狩猟と有害獣駆除の2種で撃ち殺されて、絶滅寸前に陥っていました。

 

<狩猟禁止、有害獣駆除はOK>

わたしたちが大きく運動した結果、1994年に当時の環境庁が、1996年には兵庫県が、とりあえず、狩猟だけでも止めようと、「兵庫県ツキノワグマ狩猟禁止令」を出してくださいました。人里に出てきたクマを有害獣として捕殺することはこの後も認められ、現在に至っています。

 

<兵庫県民緑税で森林整備を開始>

その後、兵庫県は県民一人当たり800円の県民緑税の徴収を発案しました。当協会は林業整備だけではなく、野生動物たちが昔のように山で暮らせるように、えさ場復元のための事業にもこの税を使うという約束で、県民緑税の導入に協力しました。

2006年から県民緑税の徴収が開始されました。

 

<野生動物育成林事業に失敗>

兵庫県は、県民緑税の一部を、野生動物育成林事業に投入してくださいました。ある事業実施地を数年後、当協会が点検したところ、1か所約30ヘクタールの放置人工林に付き約3千万円ほどの多額のお金を投入したにもかかわらず、結果として、野生動物のえさ場は全く復元・再生されていませんでした。

現地はほとんどが元の放置人工林のままで、ほんの数か所、教室程度の広さの人工林のくり抜きがあり、広葉樹を植樹した跡はありましたが、シカに食べられて苗木が死んでいました。次の実施地も見てみましたが、野生動物育成林事業とは名ばかりで、実際はひどいものでした。

「詐欺ですね」とわたしたちが感想を漏らすと、県庁担当者も、「詐欺と言われれば詐欺ですが」と答えられました。

 

なぜこんなことになってしまっているのか、追及されねばならない問題です。県民緑税評価検討委員会の委員に当協会も入りたいと兵庫県に申し出ましたが、断られました。

 

いったん破壊した森の復元・再生の難しさを、人間は思い知らねばなりません。

 

<進む、残された自然林の大劣化>

この後、スギやヒノキの人工林だけの荒廃ではすまなくなり、残された自然林内でもナラ枯れやササ枯れが猛威をふるうようになりました。地球温暖化が原因という研究者もいますが、よくわかりません。バランスを崩して増えたシカが下層植生を食べてしまうという食害も、目を覆うほどの惨状で広がっています。

以前にも増してクマが山から出て来るようになり、集落周辺に住み付くものも出てきました。

 

<地元の悲鳴と、焼け石に水の公共事業>

地元の皆さんは、悲鳴を上げておられます。

兵庫県としては、集落を田畑ごと囲う金網柵や電気柵の設置を進めています。おそらく被害防除対策としては、見たところ全国一、力を入れてくださっています。

 

また、バッファゾーン造りと称して、集落に野生動物たちが近づきにくいように、放置されてうっそうと茂っている集落裏の山の刈り払いも進めてくださっています。しかし、地元はどこも過疎化高齢化しており、私たちが見回ったところ、県の事業は地元にとってはありがたいのですが、焼け石に水の感があります。

 

<保護政策が実ってのクマ数増加>

兵庫県は一時期、全国一のクマ保護県としての名をはせました。その結果、クマの生息数は以前より回復してきていると思われます。クマの場合、何頭いるかということは、一般に考えられるほど簡単ではなく、人間の能力では数えることは不可能です。あくまで推察ですが、私たちは、現在300頭ぐらいいるのではないかと思っています。しかし、増えたことを、手放しで喜べません。なぜなら、集落周辺の農作物や、山に大量に放置されたシカの死体に依存しての増加かもしれなのです。

 

つまり、安定的な増加ではないのです。

昔は何頭いたのでしょうか?…誰にもわかりません。

何頭いたら適正なのでしょうか?…人間にはわかりません。山の実りの変化などに合わせて増減を繰り返しながら、自然界が安定的な生息数を決めていたはずです。

 

このような状況の中、2016年3月、兵庫県が、残虐無慈悲なクマ狩猟再開案を、西日本で唯一出してきたのです!!!

狩猟再開???いったい誰が望んでいるのか???

 

p.s 兵庫県猟友会長のお話では、猟友会がクマ狩猟の再開を要望したりお願いしたりした事実は一切ないということです。それよりも、クマたちはこの20年間、自分たちは狩猟されないと安心しているので、突然の狩猟の再開で獲られすぎてしまうのではないかと、大変危惧されておられました。

 

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