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2016-09-21

日本におけるワイルドライフ・マネジメント

元々、ワイルドライフ・マネジメントというのは、1933年、狩猟動物の安定的な利用のためにアメリカで誕生した狩猟動物管理学の概念です。

しかし、1970年代になると、ディープエコロジーの考えが誕生し、自然の権利、動物の権利という新しい思想を生み出して、野生動物管理派と激しく対立することになり、今に至っています。

 

日本では、1970年代から1980年代にかけて、学会で野生動物管理の導入の必要性が提案され、研究者の間で「保護」か「管理」かの基本的な方向性や視点をめぐって論争が行われました。

そうこうするうち、1990年代になると、シカやイノシシなどの野生動物による農林業被害が深刻化するようになり、ワイルドライフ・マネジメントの導入が検討されるようになりました。

ワイルドライフ・マネジメントは、直訳すると、「野生動物管理」となりますが、日本語としては印象が悪いため、「野生動物保護管理」と和訳されました。本格的に、導入されたのは、1999年の「鳥獣保護法改正」で、この時、日本熊森協会は、ワイルドライフ・マネジメントの自然観や動物観は間違っているとして、導入を阻止しようと国会に通い続け、当時の国会議員たちから賛同者が相次ぎました。日本自然保護協会、WWFジャパン、日本野鳥の会、アライブなど、日本の自然保護団体は熊森と一致団結して総力をあげて、導入に反対しました。

しかし、教え子の学生たちの就職先がなくて困っていた生態学者たちと獣害対策に頭を悩ませていた環境庁が結びつき、無理やり「鳥獣保護法改正案」を通してしまいました。

 

しかし、ここで考えてみましょう。どんなに科学技術が発展しようとも、自然界は人間の頭で管理できるような単純なものではないという事実を。私たち日本人の祖先は、自然や生き物たちに畏敬の念を持ち、手を合わせて、かれらと棲み分けることで共存することに成功してきたという現実を。

我が国が、人間にはできもしないワイルドライフ・マネジメントを導入したことで、野生動物たちはみんな泣いています。みんな不幸になりました。生き物なのに物扱いされ、罠で捕獲され、麻酔をかけられ、歯を抜かれ、発信機を付けられ、いじくりまわされて生死をさまよい、研究者たちのおもちゃにされているのです。

推定生息数が何頭だとか、年平均増加率が何%だとか、個体数を調整する為に何頭殺せばいいとか、個体群生態学などという数合わせゲームに使われて、研究者たちに遊ばれているのです。

ほとんどの国民は、都会に住んでいるため、この弱い者いじめを知らず、知った人も見ないふりをしています。

いつか日本人は、深く反省せざるを得ない時が来るでしょう。自然を管理してやろうなどと考えた人間の恥ずべき傲慢さに。人間としての倫理観の喪失に。

 

ある生態学者に、日本で今、ワイルドライフ・マネジメントが花盛りなのをどう思うか聞いてみました。

「学会がアメリカ主導になっているんです。アメリカが国立公園で行っていることの模倣です。しかし、アメリカの国土は広くて、国立公園の組織も管理も日本と比べ物にならないほど整備されている。レンジャーも配置されている。条件が全然違います。

日本は、明治に無計画な狩猟を導入し、野生鳥獣が獲り尽くされそうになるまで激減しました。その結果、江戸時代と違って、明治になると、野生鳥獣による農業被害がなくなってしまったんです。戦後は、野生動物たちの生息地であった奥山を開発と人工林で大破壊してしまい、残された動物たちが山から出て来ざるをえないようになりました。

平成になって数が回復してきたシカ等による獣害が大きく発生し始め、地元が悲鳴を上げるようになってきました。日本は国土も狭く、農林漁業と野生鳥獣がひしめき合っている。歴史も社会構造も全然違う。国立公園の仕組みもアメリカと全く違う。レンジャーの整備もできていない。そんなところに、アメリカのやり方を持ってきてまねてもうまくいくはずがない。

導入したのは、研究者たちです。仕事が欲しかったのです。全てお金です。ワイルドライフ・マネジメントなど人間に不可能なのに、研究者は行政に、ワイルドライフ・マネジメントを導入したら、獣害問題が解決できるようにレクチャーするのです。自分たちの出番が必要なように見せかけてお金を得ようとしているのです。一時の流行なのです。いずれ必ず破綻しますよ。行政は、自分たちの犯してきた自然破壊という失敗を隠すために、ワイルドライフ・マネジメント派の研究者を利用しているだけなんです。

根本問題である、自然林復元をやらない限り、鳥獣被害問題は解決しませんよ」

 

みなさんはどう思われますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

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