くまもりHOMEへ

ホーム > アーカイブ > 2016-11-21

2016-11-21

熊森顧問 宮下正次氏 ご逝去

群馬県在住の宮下正次氏がご病気で入院されたと聞いて、11月18日に本部からお見舞いに行くと、昨晩亡くなられたとのことで、驚きました。

まだ、72才。早すぎます。最後まで、青年のような方でした。

 

2007年9月くまもり東京シンポジウム会場前にて宮下氏0分20秒より(撮影Green TV Japan)
http://kumamori.org/kumamori_broadcast/greentvkumanosumu/

 

宮下氏は、前橋森林管理署に勤めながら、林野庁の森林政策や独立採算制に内部から異を唱えた方で、その勇気、正義感は並のものではなかったはずです。上司やまわりから随分と圧力を受けたと思われますが、あまりにも突出しており正論だったため、ある意味認められていたそうです。

 

10月末には大好きなブータンに5回目の訪問。ブータンの森林保全に貢献されたことで、王様から金の時計を頂いたそうです。一級の登山家として地球規模で大活躍されていたし、ご自身の作られた「森林の会」の事務局長としても、重責を担っておられました。熊森の顧問として、群馬県支部をはじめ、いくつかの支部や本部を指導してくださいました。

 

ご著書もたくさんあります。今回群馬県に行く新幹線の中で、初めて読んだ時の衝撃が忘れられない「消える森甦る森」を、久し振りに読み直してみました。改めて、宮下さんは、やはりただものではない。歴史に残る偉大な人物だと確信しました。お会いして、この本のことを話題にお話ししようと思ったのに、かないませんでした。

 

まだお読みになっておられない方がおられましたら、是非お読みください。永遠に熊森の課題図書です。宮下顧問のご冥福を、心からお祈りします。

p1160606

森の中にあれだけあったササを、シカが食べ尽くせるはずがない

幾つかの山で、原生林の中にびっしり生えていた人間の背丈より高いササが、消えてしまいました。

一般に、シカが下層植生を過採食したことにされています。

img_3617

2000年以降、上の写真のような光景を見られた方も多いと思います。

見渡す限りのササが枯れていますが、犯人がシカであるはずがありません。

そもそもササがびっしり生えた原生林が残っていたら、草原の動物シカはササにはばまれて奥まで採食に入れなかったはずです。

 

ササは、数十年に1回の一斉開花や、地球温暖化による休眠解除後の凍害によって、今、一気に特定場所で大量に枯れています。

 

ササには地下茎がありますから、本来は地上部が枯れても、やがてまた復活します。しかし、現在、そのような場所にはシカが入り込んでしまっているので、地下茎から出てきた少しの若葉をシカが食べてしまいます。よって、シカよけ柵の内側しか、ササは復活しません。

 

熊森を指導してくださっている研究者の一人は、大学で習った森林生態学は、もはや成り立たないと言われます。人間活動によって、現在、自然界ではありえない事態が山で進行しており、森が今後どう遷移していくのか、さっぱり予測できないそうです。

 

すべてをシカのせいにしている研究者がいますが、そもそも、シカを山奥へと導いたのは、戦後の拡大造林です。奥地の原生林を大規模皆伐したことや林道開設によって、シカは自由に奥地まで楽々と移動できるようになりました。皆伐跡地には草が生え、シカの豊かな餌場となって、シカ数を増やしました。

 

現在の、シカ問題、クマ問題、森林の下層植生消失問題、困った事態を引き起こしたのは、みんな人間なのです。私たちは、自分たち人間がしでかしたことを棚に上げ、野生動物を悪者に仕立て上げて、殺して食べる事ばかりを、行政やマスコミを使って進めている兵庫県森林動物研究センターの研究員に、問題を感じています。行政の任命責任が問われます。

学生パワーのすごさ 大学生17人、11月に皮むき間伐

大阪のある大学のクラブから、間伐体験をしたいという依頼を受けました。このクラブの大学生たちは、外国に行って家を建てるというユニークな活動をしているそうです。参加者はなんと17人。こんな大勢だと、のこぎり間伐は危険です。皮むき間伐しかできません。

しかし、季節は11月。水の吸い上げがいい6月なら、つるりとスギの皮がむけますが、水の吸い上げが弱まっているこの時期、皮むき間伐などできるのでしょうか。

山主さんに事情を話して、試しに山に行き、人工林のスギ皮をむいてみました。むけない訳ではありませんが、皮が幹にしっかりとくっついているのが多く、皮をはがすのには力がいります。熊森としては、異例の11月の皮むき間伐会を企画しました。

 

集合して、真剣な面持ちで説明を聞く大学生たち

s-img_2364

 

人工林内に入って、作業開始。ピンクのテープが巻いてあるスギ以外は、かわいそうですが、枯らします。

s-img_2391

人海作戦。どんどん作業が進みます。

s-img_2490

 

昼食後は、熊森紙芝居。

img_2429

お話の中にかわいそうな部分があるからか、みんなしーんとしてしまいました。

戦後の国策であった拡大造林政策によって、水源の森、野生動物、人がどのように大変なことになっていったのか、この機会に学んでもらいました。拡大造林政策のことを知っていた学生は誰もいませんでした。チェンソー間伐も見てもらいながら、皮むき間伐の利点も学んでもらいました。

 

午後、再び皮むきに挑戦

中には、つるりと皮がむけるスギもありました。

img_2467

ついにやりました!

s-s-img_2507

注:本当は、みんなすごくいい顔をしているのですが、肖像権のことを考えて画質を落としています。残念。

 

学生パワーはすごいです。この日、一気に80本の皮むきができました。森に光を入れ、日本の森をよみがえらせる。大学生のみなさん、ありがとう。若いエネルギーをみせてもらいました。

とてもさわやかで感じのいい大学生たちでした。次回は、6月に来てもらえるとうれしいです。

 

 

クマ被害を防ぐため、兵庫県の奥地でクマの棲める森を再生し続ける

クマ問題もシカ問題も、元をただせば、すべて人間が引き起こした森林破壊が原因です。

 

兵庫県のクマの場合、年間の農業被害は少しです。平成25年度の被害面積は約1ヘクタール被害額は120万円程度です。(140頭殺されることになった理由のひとつ)

%e3%82%ad%e3%83%a3%e3%83%97%e3%83%81%e3%83%a31

 平成27年度 兵庫県ツキノワグマ保護計画(兵庫県)より

 

昔からクマと共存してきた集落では、クマはおとなしい動物であり共存できるとして問題になっていませんが、クマに慣れない集落では精神被害や、人身事故の恐れを思い、クマは害獣視されがちです。

 

クマが集落に出て来るようになったのは、本来のクマの生息地がクマが棲めないスギの人工林にされたこと、残された自然林も大気汚染、地球温暖化、シカの食害などによって内部が大荒廃し、クマが棲めなくなったことです。

 

熊森は、あの手この手でこの20年間、人工林を少しずつ自然林に戻してきました。

11月12日、人工林を除去した跡地に、大阪西ライオンズクラブのみなさんが、熊森と共に恒例の実のなる木の大苗を植樹をしてくださいました。

s-img_2111

元人工林だった斜面に、ヤマザクラやシバグリを植樹

 

植樹後は、シカよけ柵を張ります。

s-img_0024

積雪時期を前に、網を外しやすいように工夫します

 

昨年春、皮むき間伐を施していただいたところです。

s-img_0028

スギの葉が枯れて、林床が明るくなってきている

 

1昨年、斜面の下の平地に実のなる木を植えていただいたところです。

img_2122

苗木が大きく育っている

 

兵庫県の樹医さんの話では、斜面と比べて平地は肥沃な大地となるため、植物の成長がいいそうです。国土の平地は、みんな人間が取ってしまっているため、人間のいるところでは植物は毎年良く育つわけです。

 

今年、クマたちが棲む冷温帯のドングリ種は実りがほとんどありません。しかも、兵庫県では、多くの所で、柿も不作年となっています。

 

一方、平地の暖温帯のドングリ種は良く実っています。冬籠り前のクマたちが、暖温帯のドングリを食べに来ることを認めてやってほしいものです。

 

大阪西ライオンズクラブのみなさん、今年も実のなる木の植樹をありがとうございました。

 

国は、ハンターを増やしてクマ・サル・シカ・イノシシを殺すこと、ジビエ料理を広めることばかりに固執していますが、人間としておかしくありませんか。奥山だけでも人工林を除去して、動物の棲める自然林を再生していただきたいものです。私たちは24年間、お願いし続けています。

11月17日のテレビ朝日報道ステーションによると、群馬県赤谷では、日本で唯一、林野庁による人工林の自然林化が始まったそうです。

獣害問題に対して、生息地復元で解決していただけるよう、国民が、もっともっと行政に声をあげていく必要がありそうです。

フィード

Return to page top