ホーム > アーカイブ > 2017-01-08
2017-01-08
兵庫県クマ狩猟再開結果の考察① 猟期が始まると、毎年、クマ目撃数が激減
ーー 爆発増加したクマ数を低減させるため、20年ぶりにクマ狩猟を再開する。(2016年兵庫県)ーー
マスコミを大動員して狩猟頭数140頭を上限目標に再開した兵庫県クマ狩猟の結果は、狩猟数4頭ということで、完全に失敗でした。
このような見当違いの恥ずかしい政策を兵庫県にとらせた人たちは、責任を取らねばならないと思います。
驚いたことに、誰の入れ知恵か知りませんが、「4頭しか狩猟できなかったが、猟期に入ってクマ目撃数が激減したから、クマ狩猟再開の成果はあった」と、知事に負け惜しみのようなことを、定例記者会見で言わせています。
毎年11月15日から猟期が始まり、鉄砲の音がパンパンと鳴り響くと、野生動物たちの姿は一斉に消えます。みんな人間に撃たれたくないからです。
もちろん、クマの目撃数も激減します。今年度も激減しました。
しかし、それは、クマ狩猟再開の成果ではなく、毎年のことです。
狩猟再開の効果は何もなかったということです。
近年の猟期前と猟期後1か月間のクマ目撃数の変化を以下に提示します。
今年度のクマ猟期は11月15日から12月14日まででした。
兵庫県ツキノワグマ出没数2010~2016年 (黄色10/15~11/14、青11/15~12/14 水色12/15~1/14)
9年前の兵庫県野生動物育成林事業地を再チェック
- 2017-01-08 (日)
- くまもりNEWS
30ヘクタールでクマの餌場が復元されたことになっている場所です。
①入り口です。
②どこかに餌場が復元されていないか探しながら、険しい道を上がって行きます。
③間伐された木が林床にきれいに並べられています。
斜面が急なので、大変な作業だったと思います。
しかし、この程度の弱間伐では、9年たっても草1本生えないことがわかります。
④1時間半かけて、頂上近くにまで登ってきました。
⑤ついに人工林のくり抜き部分を発見!
実のなる木の植樹苗は全く見当たらず、植樹した形跡さえありません。
シカよけ柵の網が破れて穴が開いていたので、苗木はシカに食べられたのでしょう。
近くに、もう一つの人工林のくり抜き部分がありました。
ここは数メートルにもなる木が多く育っています。
よく見ると、どの木も樹種が同じで、幹にトゲトゲがびっしりついています。
先駆種であるカラスザンショウの群生地になっていました。
植樹した苗木が残っていないか探し回ったら、成育不良で未だに小さなシバグリとコナラの苗木がほんの数本見つかっただけでした。
人工林くり抜き空間は、カラスザンショウの群生地になっていた
⑥尾根の広葉樹林には、シカよけ網で囲った部分が数か所あるはずなので探してみましたが、見当たりません。生き物の生息痕跡がない死んだ山でしたが、ここで1匹のリスに出会いました。(この日出会った唯一の動物です)
やっと、シカよけ網で囲った広葉樹林を1か所見つけました。中で何か良き変化が起きているのかと期待しましたが、柵が倒れていたのでシカが入っていることでしょう。
下層植生が消えた周りの広葉樹林と何の違いもありませんでした。
シカ除け柵の網が倒れていた
今の所、この事業は9年経過していますが、クマの餌場は全く復元していないと言ってもよいでしょう。兵庫県は、クマが山から出て来るとして悪者扱いする前に、また、クマ狩猟をハンターに楽しんでもらうという前に、クマの生息地を復元してやるべきでしょう。
兵庫県の環境保全部門は、この20年間いったい何をしていたのか。
生息地を破壊したまま、クマ狩猟を楽しもうなど、人間のすることではないとくまもりは考えます。今年度のクマ狩猟などありえません。
第一、日本の法律では、クマは狩猟獣だから狩猟を再開するのだと兵庫県は単純に主張してきましたが、世界の流れはすっかり変わってきています。日本だけではなく、ヨーロッパでも、笛吹けどスズメ踊らずで、狩猟者の成り手が激減しているそうです。
日本野鳥の会は、「野のものは野に」として、野鳥の捕獲飼養を全面禁止してしまいました。すばらしいと思います。
確かに今、地元では獣害が大変ですが、大きな原因は、自然の山を壊し続けてきた人間にあるということを忘れてはならないと思います。
県と民間が協力して、この山を何とか野生動物が棲める餌場の森に戻せないものでしょうか。
最後に、いい話です。
尾根近くの数十年と思われるコナラの木々の幹を見ると、あちらでもこちらでも黒い樹液がカシノナガキクイムシが開けたと思われる穴からしたたり出た跡がありました。
穴から、コールタールのような樹液を出して、カシノナガキクイムシを撃退したコナラ
もちろん、ナラ枯れに負けて枯れたコナラも何本もありましたが、こうやって、自力で必死に樹液を出してカシノナガキクイムシと闘い、枯れずに生き残ったコナラもたくさんあったのです。自然界は実にうまく出来ている。
自然界から勇気と力を得ました。
【くまもり本部】イノシシがクマ用カキ園の金網柵内に侵入 電気柵設置へ
平成のクマ止め林を造ろうと、2年前兵庫県宍粟市で、熊森と地元がカキ苗を植樹しました。ここに、イノシシが入ったという連絡が、地元から入りました。こんなことは初めてです。
この現場は、広さ約1800㎡に約50本のカキの木が植えられています。
シカが入らないように、周囲を高さ2.5m程の金網で囲っています。
平成のクマ止め林
イノシシは、金網の下を掘って柿園へ侵入していました。
植樹した柿の苗木は、ほとんど無事でしたが、苗木の盛り土が全て崩されていました。
柿の木の盛り土が崩されている
地元の方の話では、イノシシはカキの木の盛り土に繁茂したカズラ(つる草)の一種であるクズ(葛)の根を掘り起こして、食べているのだということです。くず餅からもわかるように、クズの根には良質のでんぷんが蓄えられています。
地面を這って広がって行くクズの根
イノシシがあの鼻で土を掘り返すのは大変なことだと思います。(どうやって土を掘るのか見たことがありませんが)しかし、カキの苗木の盛り土に生えたクズなら、土が柔らかいので簡単に掘り起こせます。
ここに目を付けたイノシシは賢いです。
大きくて真っ黒なイノシシの糞に交じって、いくつもの小さな糞が散乱していました。子供を何頭か連れて侵入しているのでしょう。
イノシシ糞(写真右下)
この時期、イノシシの親子のえさ探しの大変さを思うと、同情を覚えます。しかし、カキの苗木を枯らされたら困るので、この日は地元の方と、イノシシが入った金網の下の穴をふさぎ、植えたカキの木の盛り土を直して、電気柵を設置しました。
組み立て
つなぐ
がいしに線を掛ける
通電テストをして、電気柵張りは完了しました。
最後に、手袋をはいた手でワイヤーを触ってみたら、手首にバンと電気が来ました。
参った。
電源は乾電池8個の12ボルトですが、それを数千ボルトぐらいに高めて流しているのだろうと思います。しかし、電圧は高くても、流れている電流自体は微弱なので、イノシシの鼻に電線が当たっても、心臓をやられて死ぬようなことはありません。
兵庫県では、年間15000頭ものイノシシが狩猟や有害駆除で殺されています。
しかし今回のように、イノシシによる被害が出ても、殺さずに電気柵を張ったり、侵入経路を塞ぐなどの対策で、被害をなくしていくことができます。
祖先は昔から、こうやって被害防止に汗を流して、野生動物たちと共存してきました。
その根底には、同じ生きとし生けるものとしての共感がありました。
この共感を子々孫々、民族の文化として伝えていくことが、人間の生息環境でもある自然を守ることにつながるのです。
これでもう、イノシシは入らないよと、地元の方が保証してくださいました。
電気柵張り作業に初めて参加してみて、祖先が石や泥を積んでシシ垣を造ったことを思うと、今は、各段に簡単に被害防止柵が張れる時代だと思いました。
もちろん、夏に草が茂ってくると、漏電が起きますから、電気柵の下の草刈りが必要です。
その時は、会員のみなさん、ボランティア草刈り隊をお願いします。
この日、地元のみなさんに教わって、電気柵張りをマスターでき、うれしかったです。
クマの生息地でイノシシ被害に困っておられる地元があれば、電気柵張りの応援をしていきたいです。