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2017-02-25
2月25日(土)マジですか?兵庫県森林動物研究センターが、兵庫のクマが絶滅の危機を乗り越えたというシンポジウムを開催されるそうです
兵庫県森林動物研究センターが開設10周年を記念して、「絶滅の危機を乗り越えたツキノワグマの保全管理」という題で、シンポジウムを企画されています。(シンポジウムの詳細チラシ)
そこまでやるかと、熊森は驚きました。
本気で、兵庫県のクマは絶滅の危機を乗り越えたと思っておられるのでしょうか。
優秀な方たちばかりなのに信じられません。
チラシには、「平成8年度、兵庫県内のツキノワグマの生息数は減少を続けており、このまま放置すれば絶滅が心配されたため、県は保護を目的に狩猟を禁止しました。それから20年、絶滅の危機を脱したと判断できるまでに推定生息数が回復しました。この間に取り組んできた研究成果を紹介し、今後の保全管理の在り方を考えていきます。」とあります。
あきれ返るとはこのことでしょうか。
まるで、平成8年度に、県が自主的にクマ狩猟を禁止したことになっています。事実を曲げ過ぎです。
しかも、センターができて10年ですから、20年間の研究成果はないはずです。
平成4年に、兵庫県ツキノワグマが絶滅寸前に陥っていることを知った当時尼崎市の中学生たちが起こした激しいクマの保護運動があります。署名を集めたり新聞やラジオ、テレビに次々と出て、中学生たちは、「兵庫県のクマが絶滅する。みんなで守ろう」と、大運動を展開しました。
兵庫県に狩猟禁止を何度も申し入れましたが、当時、県は、全く聞き入れようとしませんでした。
また、平成4年には、猟友会の狩猟自粛発表がありました。
当時、環境庁は、平成6年に、兵庫県クマ狩猟禁止を発表しました。
多くの声があって、やっとのことで県が最後に動いたのです。
そのことは、きちんと書くべきでしょう。
次に、平成8年に兵庫県が狩猟を禁止したから、クマの絶滅が回避されたのか、兵庫県森林動物研究センターの説を検証してみましょう。
以前、兵庫県でどれくらいのクマが狩猟されていたのか、以下のグラフをご覧になって下さい。
グラフは2度クリックしていただければ、大きくなります。
現在、平成以前の有害駆除数が未入手となっています。近々、入手次第、差し替えます。
兵庫県でクマを狩猟していた人など昔からほとんどいませんでした。
平成8年の狩猟禁止前20年間のクマ狩猟数は194頭(年間平均約10頭)です。
平成8年の狩猟禁止後20年間のクマ有害捕殺数は237頭です。(年間平均約12頭)です。
狩猟で獲られていたクマよりも有害捕殺で獲られたクマの方が多いのです。
兵庫県のクマが絶滅の危機に陥ったのは、戦後の奥山の人工林化と開発という行政の奥山破壊政策の結果です。兵庫県森林動物研究センターは、まだ、主原因を隠し通そうとされるのでしょうか。
当時新聞に載った朝日稔兵庫医科大教授(動物生態学)のコメントをかみしめてほしいです。
●1992.1.14 朝日新聞
スギ、ヒノキといった人間にとっては有用な人工林に山がどんどん変わっていく。冬眠に必要なブナや天然スギの大木が伐採されている。開発が進んでいる西日本では特に深刻で、九州で絶滅したように西日本でもクマは絶滅の危機にある。
●1992.3.24 神戸新聞
過去の森林伐採で破壊された生息環境を動物たちが棲める状態に戻さないと、餌を求めて畑を荒らすなどの被害はなくならない。国などが中心となってクマの生息地の自然環境の保護に取り組む必要がある。
広大な人工林は今もそのまま放置されており、全く改善されていません。その上、10年ほど前からは、クマたちにとって生きていく上で最後の頼みの綱であったわずかに残された自然林まで大荒廃してしまいました。この状況でクマが絶滅の危機を脱したというのなら、兵庫県森林動物研究センターのみなさんは、生きられなくなって人里に出てきたクマの数だけしか見ていないのではないかと、心配になってきます。
関心のある方は、シンポジウムに参加してみてください。