2024/03/15
くまもりNews3月6日、参議院予算委員会で串田誠一参議院議員(比例関東ブロック、動物愛護議連、維新)が、クマを指定管理鳥獣とする環境省案について質問されました。
質問中の串田誠一議員
串田誠一議員の質問:
次にクマについてお聞きをしたいと思います。
(クマを)指定管理鳥獣に4月にするという報道がございます。被害が連日昨年は報道をされたということでありましたが、昨年のクマの捕殺数は、ついこの前発表されました9030頭が捕殺された。その前は3000頭だったのが、いきなりすごい数が捕殺されたわけでございます。
九州は絶滅している、四国ももう数十頭しかいない。そして繁殖力が大変弱いというのがクマの特徴でございます。
日本オオカミも同じような経路を辿って1905年に絶滅をしてしまいました。
(略)今年見なくなったなあというようなときに、実は絶滅していたというようなことが起こりうる可能性もあります。環境委員会でこの問題があったときに、環境大臣、大変その慎重な対応されていて私も色々熟慮されているのだろうなあと思っているんですけど、クマを捕殺をするのではなくて、里に入らないよう強化していく必要があるんじゃないかと思うんですけど、環境大臣のご意見をお聞きしたいと思います。
伊藤信太郎環境大臣(宮城県、衆議院議員)の答弁:
環境省では昨年秋のクマ類による深刻な被害状況を受けて、専門家による検討委員会を設置いたしました。そしてまた科学的観点からの検討を経て本年の2月8日に被害防止に向けた総合的な対策の方針のとりまとめをしていただきました。
この方針の中ではゾーニング管理、広域的な管理、順応的な管理の3つの管理、これを推進しながら、クマ類の地域個体群の維持、これを前提としつつ、人の生活圏への出没防止によって、人とクマの空間的な棲み分けを図ることとしました。
また絶滅の恐れのある四国の個体群を除いたうえでクマ類を指定管理鳥獣に指定するとの方向性を整理いただいたとこでございます。
環境省ではこの方針を受けて必要な関係省令の改正を行うために4月中に指定の手続きを完了させる予定でございます。
クマ類を指定管理鳥獣にして、またこの関係省庁や都道府県等と連携しながら捕獲に偏らない総合的な対策を講じてまいります。
具体的にはクマ類の生態等の調査やモニタリング、人の生活圏への出没防止のための環境管理、また人材育成等の各地域の状況に応じた効果的な対策を講じてまいりたいと思います。
串田議員:
エサがなくなる原因としては、太陽光パネルが森に、高速道路などを走っていると山肌にずっと太陽光パネルがあったりとか、あとは人工林とか、下が真っ暗になってしまっていて、木の実が育たないとか、そういうような人間がクマが食べられないような状況になって、そして出没したら捕殺をしていくというのは、これは反省しなければいけない面もたくさんあると思うんです。私が心配しているのは、太陽光パネルや人工林は、たとえば農水だとか、太陽光パネルは経産だとか、そういう他省庁にまたがった意味で総合的に検討をしていかなくてはならないと思うんですけども、環境大臣としてこうだというだけではなかなかできないと思うんですが、これについての連携は十分になされるんでしょうか。
伊藤環境大臣:
お答え申し上げます。ご指摘のように、太陽光パネル、あるいは木の種類の偏在、そういったことが今回の人的被害の原因の1つになっているとも考えられます。
したがって先ほど申し上げたように捕獲に偏らない総合的な対策を講じることが重要だという風に考えております。
環境省が設置した見解でもクマ類の地域個体群の維持、これを前提としつつ、人の生活圏への出没防止によってクマ類と人の空間的な棲み分けを図るという方向を示しているところでございます。
捕獲以外の対策としては、クマ類の個体数等の適切なモニタリング、これをやっぱりエビデンスとしてしっかり押さえる必要があります。それから人の生活圏への出没を防止するために、また例えば果樹ですね、放任果樹にクマが寄って来る、誘因物の管理の徹底、それから農地への進入を防止するための電気柵の設置、それから専門的な知見を有する人材育成など、それぞれ地域によって多少事情が違いますので、その地域の実情に応じて、都道府県等によって実施していただくことが重要だと思っております。
環境省としては関係省庁、農林水産省も含めてですね、関係省庁や都道府県等とも連携して、人の生活圏の出没を防止をはじめとした被害防止策を推進し、国民の皆様の安全・安心の確保をしっかり守っていくという支援を進めてまいりたいと思います。
熊森から
人の生活圏へのクマ出没防止のためにまず一番に必要なのは、クマ類の個体数等の適切なモニタリングではなく、実り豊かな山の再生であり、農水省と組んで、まずこの根本問題の解決から手掛けていただくことを、熊森は環境省にお願いします。
串田議員の質問によって、伊藤環境大臣から「関係省庁や都道府県等と連携しながら捕獲に偏らない総合的な対策を講じてまいります。」という答弁を引き出せたことは、良かったです。
しかし、現実には、ほとんどの地域で捕殺一辺倒の対応となっているわけで、今後、環境省の強力な指導が望まれます。
2023年度 東北・北海道クマ捕殺数
※クマの正確な生息数推定が不可能なため、北海道ヒグマの場合も、95%限界の生息推定数は6600~19300頭と幅が大きく、中央値は11700頭となっている。この数字がどこまで正確か不明。他県の中央値についても同様。
クマを指定管理鳥獣に指定などしなくても、東北地方では現行の管理計画だけでも、推定生息数の50%ものクマ捕殺ができている県が2県あり、そのうちの1県では今年度になってからも、保護対策なく、雪の中をさまよっている子グマを次々と駆除しています。
令和6年2月16日に 北海道東北地方知事会が環境省に提出した要望書を見ても、クマをシカ・イノシシのように指定管理鳥獣にして、捕獲報奨金の引き上げなどを要求されていますが、昨年度の捕殺一辺倒となったクマ対応や、生息数を激減させてしまったことに対する反省など全くみられません。
やはり、環境省が専門家による検討委員会を設置するおり、自分たちの主張に沿った有識者だけを集めるのではなく、28年の歴史を持つ日本熊森協会のような民間団体を委員に入れる必要があると思います。
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