お知らせ

2026/10/28

要望・提案
【青森県・津軽半島のクマ「全頭捕獲」方針の白紙撤回を求める】宮下知事へ申し入れ書と提言を提出、県庁で記者会見

2026年10月27日、日本熊森協会の森山名誉会長、鈴木理事、青森県支部の石戸谷支部長ら支部員3人の計5人が青森県庁を訪れ、ツキノワグマの管理計画について30分間にわたり、自然保護課の課長代理を含む職員2人に申し入れを行いました。

主な議題は、青森県が津軽半島地域で進めようとしている、クマの生息密度をゼロに近づける管理方針についてです。

当協会は、津軽地域のクマの根絶を認めてしまえば、同様の安易な声が他県にも波及する恐れがあること、そうなるとわが国はオオカミの次にクマを滅ぼしてしまう恐れがあることを危惧している、クマを守ることは森を守ること、森を守ることは私たちの未来を守ることであるとして、事業の白紙撤回を求める宮下宗一郎知事宛ての申し入れ書と、青森県中原副支部長による提言を提出しました。

 

  • 県の管理計画には「全頭捕獲」と明記

青森県が2025年11月に策定した「青森県第二種特定鳥獣管理計画(第1次ツキノワグマ)」では、津軽半島地域の2025年度推定生息数を61頭とし、基準となる捕獲目標数も61頭と記載しています。

さらに、計画の表には「全頭捕獲」と明記され、津軽半島地域では捕獲上限を設定しない方針も示されています。

県の説明によれば、津軽半島では過去にツキノワグマが一度絶滅したと考えられ(熊森:絶滅の証拠はない)、その後、周辺地域から再び流入して定着した可能性がある(熊森:流入の証拠はない)ことから、人との軋轢を防ぐため、生息密度をゼロに近づけ、恒久的に定着させないことを目指すとしています。

今回の話し合いで、自然保護課の課長代理は「こちらは全頭駆除とは言っていない。生息数をかぎりなくゼロに近づけることを計画しているだけだ」と説明しました。

しかし、県の計画に「全頭捕獲」と記載されていることは事実です。

当協会は、生息密度をゼロに近づけ、定着を認めないという方針は、実質的に津軽半島からクマを根絶することにつながると考えており、強く反対しました。

なお、計画に記載された61頭は基準となる捕獲目標数であり、2026年度中に61頭すべてを捕獲するという意味ではないそうです。

 

  • 宮下知事へ3つの申し入れ

当協会は、県民の安全を守ることが重要であるとしたうえで、捕殺を中心とした管理から、人とクマの棲み分けと生息地の保全を重視する政策への転換を求めました。

申し入れの主な内容は、次の3点です。

 

  1. 津軽半島のクマ根絶計画を白紙撤回すること。
  2. 絶滅のおそれがある地域個体群とされる下北半島で、推定生息数の20%にも及ぶ捕獲目標を見直し、狩猟を禁止するとともに、有害駆除を5%までに抑えること。
  3. 生息数の調査や頭数管理に偏るのではなく、人身事故を未然に防ぐための被害防除と地域支援に予算を投入すること。

 

青森県では2023年と2025年、山の実りが大凶作となり、多くのクマが食べ物を求めて人里や市街地に出没し、人身事故も相次ぎました。

当協会は、大量出没の原因をマスコミが報道しているようなクマの個体数急増とは捉えておらず、山の実りの不作、ナラ枯れ、シカやイノシシの増加による餌資源への影響など、原因追求には生息環境の変化を十分に調べる必要があると考えています。

また、集落周辺の誘引物の除去、山と里の間の緩衝帯の再構築、地域の防除体制の充実とともに、クマが本来生息する自然の森を守ることが欠かせません。

申し入れ書では、青森のクマや自然に詳しい人々や自然保護団体を県の検討会に加えること、捕獲されたクマの放獣体制を整えることも求めています。

 

  • 青森県副支部長からも生態系保全の提言

当日は、青森県弘前市で自然農法による家庭菜園の普及活動に取り組む中原副支部長による提言も提出しました。

提言では、森と海のつながりや、クマが植物の種子を運び、森林の生態系を支える役割に着目しています。

また、人とクマの距離が近づいた背景として、緩衝地帯となっていた里山の衰退を指摘。

里山の再生と移住促進、マタギ文化の継承と犬を活用した追い払い、大規模風力発電による山の尾根筋の開発の見直しなどを提案しています。

人とクマの問題をクマの捕獲だけで解決しようとするのではなく、森を守り、地域の暮らしを立て直すことが根本的な対策につながるという考えです。
日本で唯一、県名に「森」という字が入っている青森県こそが、森を守るトップランナーとしてのすばらしい政策を実施してほしい、それによって青森県への移住者が促進されることを願っていますという言葉で提言書は締めくくられています。

 

  • 県は「撤回するつもりはない」と回答

話し合いの最後に、当協会は津軽半島のクマ根絶につながる方針を白紙撤回するよう、改めて求めました。

これに対して課長代理は、「最終的には宮下知事が判断を下すが、自然保護課としてはこれを撤回するつもりはない」と回答しました。当協会は、県の管理計画が地域のツキノワグマの存続及び日本国の将来に関わる重大な問題を含んでいることを、直接伝えることができました。

提出した申し入れ書と提言は、自然保護課を通じて宮下知事に届けられました。

 

  • 記者会見には6社が参加

県との話し合いを終えた後、青森県庁内の記者会見室で記者会見を行いました。

会見にはテレビ局も含め6社の報道機関が参加し、この問題に対する関心の高さがうかがえました。

約1時間にわたる会見では、石戸谷支部長が自然保護課への申し入れ結果などを報告したあと、森山名誉会長が、日本の森林環境の変化やクマが生態系に果たす役割、生息数の推定幅があまりにも大きすぎて何頭いるか不確かな中、まず頭数低減ありきで、推定生息数の上限数を用いた有害捕殺目標数だけが1ケタに至るまで明示されていることはおかしい、頭数を大幅低減したところで、被害防除対策を主にしない限り、人身事故や農作物被害はなくならないことを説明しました。

最後に鈴木理事が、宮下知事宛ての申し入れ書と中原副支部長の提言を読み上げ、当協会の考えを報道関係者に伝えました。

今回の申し入れと記者会見については、デーリー東北、東奥日報、陸奥新報などでも報じられました。

 

  • クマを根絶するのではなく、人とクマが共存できる青森県へ

人身事故を防ぎ、県民の安全を守ることは何よりも重要です。

しかし、そのために地域のクマを根絶するという選択が、本当に適切なのでしょうか。

私たちは、出没したクマを捕殺するだけでは、人とクマの問題を根本から解決することはできないと考えています。

必要なのは、人里にクマを引き寄せない対策を徹底し、人とクマが適切な距離を保てる環境を整え、クマが安心して生きられる自然の森を守ることです。こちらの目標にこそ数値目標を明示すべきです。

 

日本熊森協会は、津軽半島のクマ根絶につながる管理方針の白紙撤回と、下北半島を含む地域個体群の保全を求めています。

この問題について、今後も動向を注視してまいります。

 

948e23963b72fbb5265f58a46487fa2b-1793190915.jpg
2fd418b0b26e7180b5f3df76052aa4da-1793190898.jpg

P.S 本部が青森まで遠征できたのは、会員のみなさんが会費で熊森活動を支えてくださっているおかげです。会員の皆さん、ありがとうございます。今年度会費未納の方は、ぜひ、ご納入をお願いしたします。

お知らせ一覧に戻る

ページトップに戻る