2026/04/25
くまもりNews4月4日、本部と奈良県支部の役員のみなさんで京都府美山町にある芦生(あしう)原生林に向かいました。
京都に入ってからは、対向車が来たらどうしようかと不安になるくらい狭い一車線の府道363号線を車で長時間北上し続けました。林道の両側は、行けども行けどもスギの放置人工林で、内部が真っ暗です。以前は雑木林だったそうですが、戦後の国策だった拡大造林政策によって皆伐され、スギだけの山に変えられています。
それにしても、林業に使わない山は天然林に戻そうと熊森が声を上げて33年。2019年の森林環境譲与税の国会成立時には、必死にロビー活動を展開し、この税は林業だけではなく人工林の天然林化にも使えるという付帯決議を付けてもらうことに成功したというのに、京都の山にはいまだに何の変化も起きていない様子で、がっかりでした。

ウッディ京北でトイレ休憩を取ってから、この日、芦生原生林を案内してくださる顧問の主原憲司先生(77才)宅に向かいます。
主原先生は昆虫の研究者で、中学時代から森や昆虫の変化などずっと観察して来られた方で、芦生の自然を守る会の副会長も務められました。この日は強風の悪天候で、天気予報は雨。先生の判断で、講義は後にして、先に芦生原生林を案内してもらうことにしました。
芦生原生林に近づいてきました。芦生原生林は4000ヘクタール以上もある広大な森で応仁の乱後、荒廃した都の再建のため、1478年頃一度伐採を受けたましたが、その後放置され、440年後には一般に原生林と呼ばれる極相林となっていました。地元の方たちの共有林であったこの山を、1921年京都帝国大学が99年間契約で借り受け、林業推進のための演習林にしました。面積の半分を人工林にしたあたりで、日本の林業が壊滅状態になってしまい、人工林化は中止。今は、芦生研究林と名を変えて、研究や教育の場となっています。
2000年以前の芦生原生林は積雪が多くて、5月の連休まで雪が残っており、この時期は車でなど入れなかったそうです。今は温暖化で最近は4月初めでも、もう雪はありません。この山は、冷温帯特有のアシウスギーブナ群集として知られ、熊森協会を作った頃は、林床にはササなどの下層植生がびっしりと育っていました。しかし、今や、下層植生は消えています。時たま現れるポツンと残されたわずかな緑は、シカが食べないアセビやエゾユズリハです。湿潤な谷筋の渓畔林に何本か生えている木はこの時期は落葉していましたが、シカが食べないオオバアサガラです。
下層植生としてびっしり生えていたチシマザサが温暖化やシカの食害で消えてしまったことは、クマを初めとする原生林の生き物たちにとって致命的でした。クマたちはササのタケノコだけでなく、葉も好んで食べていました。ササは昆虫たちの食草にもなっていました。下層植生が失われた山からは、クマの好物であるニホンミツバチやマルハナバチ類も激減し、虫媒花植物は受粉ができず花が咲いても実がなりません。

ブナの巨木の下で実や殻斗を探しましたが、古いのも含め、皆無でした。
この10年間、京都のブナの一斉開花はないそうで(ブナの生育温度は年平均気温が6℃~12.5℃)、温暖化の影響のすごさを改めて感じました。一方、ミズナラは、下から上がってきたカシノナガキクイムシによって一気に枯らされ(ナラ枯れ)、倒れてナメコなどに分解されて消えていました。

一時は足の踏み場もないほどシカの糞で埋まっていたこの森ですが、今回は1か所にほんのわずかにシカ糞があっただけで、クマもシカもみんな餌を求めて下に降りて行ってしまったとのことでした。
スギの植林地には、どれもクマの皮ハギ跡がありました。残されたスギの皮を少しめくると、コオロギによく似たカマドウマが数匹いました。この日初めで出会った動物です。嫌われている虫のようですが、やっと生き物に出会えて私たちはホッとしました。
戦後の拡大造林は、はげ山だったところにスギを植えたという記事を最近ネットで見ました。そういう場所もありましたが、拡大造林の多くはクマたちの生息地であった広大な奥山原生林や自然林を伐って人工林にしていったのです。だから、拡大(自然林を切って人工林を拡大する)造林と命名されたのです。
1970年代の燃料革命で主なエネルギーが石油に代わったことで、それまで過剰利用されて細い木しかなかった里山は放置され、今やクヌギなどの木が大きく育っているのは確かです。しかし、それをもって、日本の森が豊かによみがえったというのは間違いです。
日本文明を支えてきた広大な奥山水源の森が、戦後、人工林、奥山観光やスキー場などの開発、地球温暖化、再生可能エネルギーなどで、大荒廃しているのですから、日本の森は全体としては大荒廃していると考えるべきです。
山で学んだこと、主原先生の家で受けた講義、重要なことばかりで書き尽くせませんが、少しずつでも何らかの方法で多くの方に伝えてきたいと思います。
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